天宮仙:19歳
天宮霞:享年15
天宮燐:22歳
天宮暦:21歳
天宮景:20歳
天宮陣:48歳
仙はいつもと同じく大きな広場で正座をする。
こうして姉を待つのは三回目。
そして次に戦うのは長女の燐。
燐と言えば、いつもゆっくりとした話し方で、温厚。
しかし、本気を出せば異常な強さを発揮する。
甲赫の堅牢な守りで相手の攻撃を全て防ぎ、重い一撃を的確に叩き込む。
仙は深呼吸をして焦りを落ち着かせる。
すると広場に足音が響いた。
「あっ。仙もう来てたんだー」
無言で頷く仙を見て燐は微笑む。
「どう?今までの訓練は力になったー」
「うん」
「そっかー。それは良かったねー」
最後の姉。
そして次は育ての親である陣。
陣に繋げる為にこの戦いは負けられない。
「じゃあそろそろ始めよー」
「お手柔らかに、、、お願いね」
燐の目は赤く染まった。
そして大きな盾の様な甲赫が二つ飛び出す。
甲赫を相手にする場合に至って先手必勝はお約束だ。
重く機敏な動きが出来ない甲赫の弱点を突くために、体勢が整う前に攻撃する。
甲赫が守りの体勢に入るとそれを壊すのは中々難しい。
仙は開始直後、羽赫を展開しながら間合いを詰めて弾幕を浴びせる。
しかし、燐の体勢は既に整っていた。
信じられない。
守りの体勢に入るまでの速さ、流石だ。
一度退いて状況を見る。
二枚の甲赫はどちらとも分厚く端は研ぎ澄まされ鋭利だ。
攻めと守りを兼ね備えた甲赫、近寄れば切られこの程度の弾丸なら全て防がれる。
暦とは違った攻めにくさ。
弱点を見抜こう仙は考える。
燐の間合いは広い。
しかし、暦のように俊敏に動いて攻撃することは出来ない。
暦が何度も攻撃を防ぐことが出来ないように。
なら、燐の間合いの外から一方的に攻撃するまでだ。
そしてこの程度の弾丸は 防がれる。
もっと大きく、もっと速く、もっと強い弾丸を。
身体中の赫包が熱くなる。
そして何度も肩に赫包が生成される。
あの喰種の男が言っていた細胞を操作するという意味とその感覚、積み重ねた訓練で仙は身に付けた。
肩に集まった赫包は赫子を出す。
赫子は纏まりそれは大きな翼を成す。
白く、大きな翼。
「綺麗、だね」
「なら、私も本気を出すよ」
燐の盾はさらに大きく、凶暴な刃となる。
仙は弾丸を放つ。
一発一発を強化した弾丸の弾幕。
それは確実に燐の甲赫を砕く。
「防ぎきれないー!」
燐は守りの体勢を崩し、仙に近付く。
大きな二つの盾は、仙の身体を刻む。
守りから攻めに転じた燐。
しかし燐が素早く長い距離を移動することは出来ない。
仙は移動しながら結晶を放つ。
ゆっくりで良い。
着実と相手を弱める。
燐は結晶を放つ仙に真っ直ぐ突撃し、仙は弾き飛ばされる。
しかし立ち上がり、結晶を放つ。
そして遂に燐の赫子は砕けた。
空かさず仙は距離を詰める。
燐を逃さないようにしっかりと掴まえると羽赫は燐の方向を向いて更に大きくなり、ただ一つの結晶を生成する。
「強くなったんだね」
燐は呟く。
大きな結晶は羽赫から発せられる光を受けて赤く輝いた。
燐は眼を瞑る。
そしてそれは高速で放たれた。
勝った。
仙の白い赫子は灰のように宙に舞って消えた。
自分の目の前には結晶に貫かれた燐が横に成っていたがやがて身体中の傷が再生され、戦う前の状態に戻った。
「とっても強かったよー」
何時もの調子で燐は言う。
この声を聴いていると仙の焦りは消える。
「次は陣と戦ってー、勝ったらもうコクリアを破りに行くんだよねー?」
「本当に凄いなぁー。仙はどこまでもいっちゃうなー」
「仙。行っておいで。そしたら帰っておいで」
何を言いたいのかと首を傾げる仙をみて燐は微笑む。
「ううん。一人言だよー」
「仙。仙は色んな所に行きなさい。そして今よりももっともっと強くなりなさい。私達が行けないほど遠くへ行きなさい。そしたらまた帰ってきなさい」
確りとした声。
仙は頷く。
燐の顔はとても満足そうだ。
三人の姉を破り、残すは育ての親である陣。
何度か訓練で打ち合ったが、それとは違う本気の陣。
不安感は無い。
あとは本気で戦うのみ。
仙は決意をし、その場を後にした。