仙はコクリアの地図に目を通しながら作戦を組み立てる。
先日、捜査官を狩って回りコクリアのキーを見つけた。
先ずはそのキーを使ってコクリアの中に潜入。
潜入後は中の捜査官を殺しながらレート等からヒナミが居ると予測出来る第三層に向かい、ヒナミを探索。
そして、ヒナミの独房の扉を解放する。
「どうやってこの地図を?」
仙は地図を差し出してきた暦に聞く。
「CCGをハックしてデータベースから抜き取った。」
色々な手を尽くしてくれたのか暦の目の下には大きな隈が出来ている。
仙は暦に感謝しつつ作戦を組み終えた。
時刻は午後の5時。
作戦決行は6時。
仙は準備を始めた。
薄暗い部屋の中で仙は準備を始める。
昨日に取り込んだ赫包の力は完全に自分の身体に反映され、身体の調子はすこぶる良い。
仙は真新しいブーツの靴紐を結び、黒いコートを着る。
そして深くフードを被り、最後に鬼のマスクを身に着ける。
いよいよこの時が来た。
不思議と緊張はしていない。
後はやるという覚悟のみ。
「仙。そろそろ出ろ」
陣に呼ばれ、仙は立ち上がる。
「地下を通っていけ。ここを道なりに進んだ所にある最後の出口が一区に繋がっている」
陣がそう言うと、三人の姉妹が集まってくる。
「仙!頑張って!」
「仙なら、、、できる。」
「絶対に帰ってきてよー」
「やってこい!」
確りと頷く仙。
歩き出したらもう振り返らない。
次にここを見るのは無事で戻ってきたその時だ。
暗い地下の中を仙は歩き始めた。
「コクリアに喰種が侵入!見つけ次第殺せ!」
「侵入喰種とSSSレート喰種業鬼との照合結果が完全に一致!」
「コクリア内の全捜査官は直ぐに業鬼の討伐へ向かえ!」
警報が鳴り響くコクリアを仙は歩く。
攻撃をしてくる捜査官は全て殺す。
未だ無傷でコクリアを進む仙の通った道には沢山の死体が転がっていた。
第一層は突破そして制圧。
独房内の喰種を念のため確認して回ったが、雛実は居ない。
階段を降りて、第二層へと足を踏み入れた瞬間に仙を銃弾が襲う。
しかし弾丸は当たらない。
止めずに射ち続ける人間達だったが仙は羽赫を展開し一人づつ殺していく。
逃げ出す捜査官には長く延ばした尾赫を。
やがて、第二層の入り口は静かになりそこを仙が歩く。
「これ以上深く潜らせるな!」
単体でコクリアに潜り込み、ここまで被害を与えた喰種はいない。
故に捜査官達は焦る。
そして焦る捜査官を仙は殺していく。
第二層に雛実は居ない。
やはり、読み通り第三層だろう。
仙は階段を下り第三層へと降りた。
第三層は異様に静かだった。
仙は警戒をしながら雛実を捜す。
そして遂に雛実の独房を見つけ、カードキーをかざすが扉は開かない。
仕方なく赫子を出した仙は、渾身の力を乗せて鉄の扉にぶつけた。
仙の赫子を受けた鉄の扉は轟音を響かせながら破け、力なく開いた。
独房の中から不安げな顔で仙を見つめる雛実。
仙はフードを捲り、鬼のマスクを見せた。
「、、、。」
そこにいるのが仙だと分かった雛実は涙を流し、仙に抱き着いた。
「、、、。迎えに来た。帰るよ」
「うん!」
一先ず目的は達成した。
後は最下排出口を目指すだけ、そう考え雛実を連れ歩き出した時だった。
コクリアの天井が開き、沢山の同種が降ってくる。
そしてその先頭に居るのは黒い兎のマスクを着けた青年、アヤトだった。
警報はさらに鳴り響く。
単独で潜り込んできた災害。
天蓋から侵入してきた沢山の喰種。
コクリア内の独房を解放して回っている捜査官。
そしてそれらを排除するために煙が放出された。
cRCガス。
喰種が戦う為になくてはならないrc細胞の動きを抑制するものだ。
仙は雛実がガスを吸わない様に赫子で覆いながら安全な場所へと退散する。
すると聞いたことのある声が聞こえた。
「お前、まさかセンか!?」
振り向くとそこには黒いウサギのマスクを身に着けた青年が居た。
「、、、。アヤト。久しぶり」
仙の横から雛実が顔をのぞかせる。
「アヤトくん!」
「お前、雛実を助けに、、、!」
仙は頷く。
お「一層から三層にかけて捜査官は粗方殺されていたが、まさかお前の仕業か?」
もう一度頷く。
アヤトはどこでそんな力を、と呟くが仙は何も言わない。
仙の目の先にアヤトは居ない。
仙が仮面の中から見ているのはその奥、確かな足取りで近付く人物だった。
それの影は歪で右手には箱、左腕は無く、不思議な形をした銃と同化していた。
仙の異変を感じた雛実は直ぐに仙と同じ方向を見て、何が来たかを察した。
次の瞬間、男の歪な左腕から大きな弾丸が仙に向かって放たれた。
仙は弾丸を撃ち落として冷静に見据える。
「敵だ!」
アヤトはそう言い、周りに居る喰種をかき集めたが雛実は声を上げる。
「アヤトくん!あれはセンさんにやらせてあげて!」
仙はアヤトに強い眼を向ける。
アヤトは一回舌打ちをすると喰種達を解散させる。
しかし喰種達は警戒は解かずに座り、仙を見つめた。
仙は不安そうな雛実の頭に手を置いた。
「心配しないで。少し時間を頂戴」
そうして隻腕に向かっていく。
「遺言は遺したのか?」
隻腕は不敵な笑みを浮かべて言う。
「一つ約束しよう。お前を殺すまでお前の仲間は手を出さないで置いてやろう」
そう言い、隻腕は箱を展開する。
「本気のお前を殺してこそ意味がある!」
それは真っ直ぐで長い刀だった。
仙は鱗赫を展開して隻腕に向ける。
隻腕は駆け出した。
そして仙の懐へと潜り込もうとするが、仙はそれを難なく避ける。
隻腕は引き下がり、間合いから外れて弾丸を撒くがそれも全て弾き落とす。
恐らく陣より弱い。
おまけに強者の赫包を取り込み仙の身体は大幅に強化されていた。
「アヤト!ヒナミ!あの喰種は!?」
「SSSレート、業鬼だ」
仙の結晶が間近にいた隻腕の身体を貫き、鬼のマスクを返り血が塗らす。
「センさん。とっても強い喰種だよ」
隻腕は必死に刀を振る。
しかしそれは当たらない。
遊びはそろそろ止めにしよう。
仙は赫子に力を込めて、全身の細胞という細胞を送り込む。
赫包が燃えるように熱い。
仙の赫包と身体中を巡る管は紅く光り、白い鱗赫に走る筋までもが紅く輝いた。
復讐という炎に焼かれた一人の喰種の赤は攻撃的で見るものに恐怖を与える。
しかしこの瞬間は誰もが美しいと思うのだ。
仙は音の速さで男に近づき、蹴り飛ばした。
脳裏に浮かぶ健気な少女。
仙は赫子と拳に怒りを乗せて隻腕を攻撃する。
眼からは赤い涙が垂れ流れ、鬼のマスクを伝って落ちた。
どれだけ泣いても、どれだけ叫んでも、霞は
仙の鱗赫は隻腕の刀を割ってそのままの勢いで隻腕を貫いた。
腹に風穴を開けた隻腕は口をパクパクとさせて倒れ込む。
仙はくるりと振り替えって歩き出す。
仙はマスクを取る。
鬼の面の中から露になったのは少し幼さを残し、女性味もあるような端正な顔立ちだった。
その目は雛実が出会ったときと同じく虚ろであるが少し柔らかくなったように感じた。
大きな赫子、紅く輝く赫包等、そして鬼のマスク。
まさしく百戦錬磨、歴戦というような印象に喰種達は静まり返る。
仙の鱗赫は段々と灰になって崩れ落ちた。
赫包等は輝きを失い、赫子が自らの主を捕食した痕が生々しく残っていた。