仙は金木に呼ばれて、いつかに話を聞いた広場に来ていた。
仙と金木の周りには沢山の喰種が居て、二人を見ていた。
隅には雛実が、タオルを持って手を振っている。
「えっと、先ずは訓練に付き合ってくれて有難うございます。けどこんなに観客が来るのは予想していませんでしたね」
苦笑いする金木。
今日、仙は金木と訓練の為に手合わせをする約束をしていたのだが、いざ来てみれば沢山の喰種が広場に居た。
「なんでこんなに?」
仙は金木に疑問を口にした。
「多分、西尾先輩の仕業かと、、、。センくんの腕が気になったのでしょう」
仙は納得して、開けていた上着のボタンを締めた。
「まぁ観客は別に良い。それと、、手は抜かないで」
仙の殺気が飛び出した。
それだけで広場の喰種を全員赫眼に、臨戦体制にさせてしまう程の異様な殺気。
次に金木の殺気も飛び出す。
2つの異様な殺気が混同しているこの状態はまさに最強を決めるぶつかり合いだった。
仙が無言で白い鱗赫を構えて、金木に掛かってこいと眼で合図した。
金木の赫子は高速で動き、さらに的確に相手の弱点を狙った。
仙は甲赫を展開してそれを防いだ。
「前から気になっていたんだけど、仙くんの本当の赫子はなに?」
「、、、。あとで教える」
甲赫を引っ込めた仙は使いなれた鱗赫を展開した。
そしてぐるぐると回して、金木の攻撃を防ぎながらゆっくり距離をつめていく。
仙が動かせば動かすほど力は増していく赫子に金木は苦戦する。
しかし仙が赫子に喰われていっていることに金木は未だ気付かない。
仙の赫子が金木の身体を掠めた。
そしてそのほんの少しの攻撃が金木の体制を崩した。
体制を崩した仙に追撃を仕掛けていく。
「似ているな、、、」
雛実の横にいた四方が呟いた。それに雛実が反応した。
「誰にですか?」
「陣にだ。良く似ている」
四方は目の前で戦う喰種に陣の姿を重ねる。
あの灰色の髪、そして戦い方、綺麗な顔立ち、全てが陣とよく似ていた。
次の瞬間、仙の白い鱗赫が金木の紅い鱗赫を切り落とした。
「強いっ!」
金木はそう呟くと、赫子を再び生やした。
それと同時に仙は血を吐いた。
血を吐いた途端に赫子はさらに強大になる。
合わせて金木の赫子も強くなる。
仙の身体からは汗と血が流れていた。
金木の攻撃は一段と重くなる。
流石は新たな隻眼の王だ。
太く、百足のような赫子は仙の盾、身体を切り裂いた。
「そろそろ終わりにしよう」
金木がそう言い、仙が頷く。
そして二人は赫子をしまった
広場は新たな隻眼の王、そして喰種喰らいの力にざわついた。
「ケン。僕に赫子は無い」
「無い、とは?」
首を傾げそう言った金木に分かるように説明をする。
「全ての赫子を使えるということですか?」
「まぁうん。そして喰った赫包を確実に反映する。羽赫の赫子なら羽赫を。鱗赫なら鱗赫を。だからこの赫子は今まで喰種の赫子と自分の赫包を全て束ねたもの」
仙は金木に頷くと一度全ての赫子を出してみた。
羽赫、甲赫、鱗赫、尾赫。
全ての赫子を出し、化物のような姿をした仙に広場の喰種は絶句した。
「ありがとうございました」
観察し終えた金木の声を聞き、仙は赫子を仕舞う。
一度眼を閉じてもう一度開けるとその目はいつも通りの紫だった。