椎名静馬のIS学園生活   作:榎本くん

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あけましておめでとうございます。

こんなアホみたいな内容ですが、今年もお付き合い頂けたらと思います。



第十二話

「ってなことがあったんですよ」

 

「……近いうち織斑先生をしばらく休ませるよう、学園長に直訴してくるわ」

 

 俺の話しにそんな答えをくれたのは、蒼穹の痴女として名高い生徒会長、更識楯無先輩だ。

 表情は真剣なのだが、着ているものは相変わらずのスク水プラスエプロンのみ。このギャップが何とも堪らなく酷い。人としてどうかしてる。

 

「あの人、あんなでも実は結構人のこと見てますからね。あっちこっちで気を使ってストレスも溜まってるんじゃないですかね」

 

「そうよねー。特に最近非常事態ばかりだし、その度に織斑先生が指揮取ってあれこれやってるものね」

 

 クラス対抗戦の無人機乱入から始まり、タッグトーナメントの時のラウラ暴走、夏合宿に学園祭への集団強盗の乱入とまだまだあるのだが、数え上げればキリがない。

 

 解決したのは確かに一夏その他諸々だが、後始末をしたのは全て教員たち。セキュリティチェックにフィールドの整備点検、破壊された校舎の壁や備品の修理と発注等、一体どれだけの仕事が生まれたのだろうか。

 

 よくみんな止めないよな、この学校。こんなリアルに命に関わる上超ブラックな職場で働くとか、ドMの極みだよ。

 

「っていうかよ。あなたたちただでさえ目立つんだから、あんまり勝手な行動は慎んでほしいんだけど」

 

 ズズ、と淹れたばかりのお茶を一口啜りながらそう言うと、楯無先輩はこちらに向ける目を僅かに細めた。この人どっから声出してんだ。

 

 先輩の言う勝手、とは今日一日俺と一夏がやっていたバイトのことだろう。言われてみれば確かに配膳やら売店やら、接客ばかりで目立つものばかりだ。

 

「ちゃんと虚さんに聞いて、許可は貰ってますよ」

 

「何で私に聞かないで虚ちゃんに聞くのよ。そういう時は生徒会長である私に聞くべきじゃないの?」

 

「そのつもりだったんですけど、俺らが生徒会室に行った時先輩いなかったじゃないですか。仕事放ってどっか行っちゃったって、虚さんから聞きましたけど」

 

「……そうだっけ?」

 

 視線を逸らし、すっ呆けた様子を見せる。忘れたふりして誤魔化そうとしないで下さい、ばればれですから。のワの。

 

「そうですよ。あんまり虚さん困らせるの止めて下さいね、あの人も苦労人なんですから」

 

「わかってるわよ、もう。まったく、静馬くんは昔っから虚ちゃんには優しいわよね」

 

「俺にとって虚さんは、一夏で言うところの千冬さんですからね」

 

「あらやだ、静馬くんは虚ちゃんが好きだったのね」

 

「訂正します、俺にとって姉みたいな人ですから」

 

 

「また話が逸れたわ」

 

「勝手に逸らしたんでしょうが」

 

 二杯目のお茶を淹れつつツッコミをいれる自分に、思わず律儀だなあと思う。

 そういえば以前、淹れたてのお茶を飲ませるという約束をさせられたけど、これで果たしたことになるな。

 それを楯無先輩に言うと、「じゃあ今度は私が部屋に戻って来たら淹れるようにしてね」とか言い出すのだった。

 

「別に淹れるのは構わないんですけど、先輩はいつまでここにいるつもりなんですか?」

 

 先輩は本来、護衛をするために無理やり一夏の部屋へと割り込んだのだ。しかしこの間一夏の部屋が爆散したため、予想外に浮いた状態になってしまった。

 

 そのまま一夏に付いていくつもりだったらしいのだが、千冬さんと同室というこれまた予想外の出来事が起きてしまった。

 

 そのため代わりとばかりに俺の部屋へと転がり込んで来やがった訳なのだが、どうにも元の部屋へと戻る気配が全くないため、ついこん言葉が出てしまった訳だ。

 

「あら、私と一緒にいるのは嫌なの?」

 

「はい」

 

「……前から聞きたかったんだけど、静馬くんって私の事嫌いでしょ」

 

「冗談ですよ、どちらかと言えば好きな方です」

 

 一時期更識家でお世話になった恩もあるし、先輩自身の為人も好感がもてる。脱ぎ癖は止めて欲しいけど。

 

「嬉しいこと言ってくれるじゃない。じゃあお姉さんと付き合っちゃう?」

 

「痴女とは付き合うなっていうのが母の遺言でして」

 

「それウソよね!? 絶対ウソよね!? っていうか静馬くん私のことそんな風に思ってたの!?」

 

 むしろ思われていないと思っていたことが不思議に思う。立ち上がって荒ぶる楯無先輩には、今すぐ鏡を見て貰いたいものだ。そのスク水エプロンという格好をしている、自分の姿を。

 

 そう思って鏡をそっと差し出そうと思ったのだが、このパターンは以前千冬さんが酔った時と同じ流れなので止めることにした。勢いで脱がれたらまた面倒なことになる。

 

「まあまあ。例え楯無先輩が痴女でも、俺は楯無先輩の性癖を否定したりしませんから」

 

「痴女じゃないわよ! ……いいわ、そこまで言うならこっちにも手があるから」

 

 急に態度を翻すと、座ったままの俺に文字通り見下すような視線を向け、不敵な笑みを浮かべた。

 俺が不思議に首を傾げていると、先輩はわざとらしく含み笑いを声にして出しながら窓の方へと歩いて行った。

 

 何をするのかと思いそのまま目で追っていると、先輩の目的地は窓ではなくどうやら俺の机のあたりだったようでそこで歩みを止めた。

 

「静馬くん、これが何かわかる?」

 

 言いながら先輩が指し示したのは、俺の机の上にある愛用のノートパソコンだ。もう何年も前に販売された物で型は古いが、母さんから買ってもらった大切な品でもあるため買い替えることなく使っている。

 

 先輩の問いに訝しげながら頷いて答えると、妙に満足そうな笑みをして見せた。それは先輩が一夏をからかう時によくする、やらしい笑い方だ。

 嫌な予感がする。

 

「今のは前置き、ここからが問題ね。じゃあ聞くけど、そも静馬くんたちが生徒会室を訪ねた時、何で私がいなかったと思う?」

 

「それはどこかに出かけてたからでしょう?」

 

「うん、合ってる合ってる。それじゃあもう一つ質問。静馬くんならわかると思うけど、私が仕事を放ってまでどこかに行く時って、どんな時?」

 

 虚さんに後で怒られるのをわかっておきながら仕事を放って行く時は、大抵何か面白いものを見つけた時だ。

 俺のその答えに、楯無先輩再び満足そうに頷く。

 

「最後の問題。昨日あった面白そうなことって、なーんだ?」

 

「いや、さすがにそんなことまではわかりませんよ」

 

「じゃあヒントをあげましょう。この学園で私の知らないことはない!」

 

 立てた人差し指を天へと向け、仰々しく動きを付けて言ってみせる。それはこの前簪を含め三人で見た、戦隊物の赤がやっていた決めポーズだ。先輩の場合青でしょ、髪の色的に。

 

 いや、そんなことはどうでもいいんだ。

 昨日あった面白そうなこと……まあ普通に考えるなら、俺と一夏の件意外ないだろう。先輩のヒントを加味すれば、全部見ていたんだぞと言いたい訳だろうし。

 しかしそれだけで何を言いたいのかがイマイチわからない。先輩の方へと僅かに目を向けると、相変わらずニヤニヤとした笑みを浮かべているだけだ。その表情に、思わず眉を顰めてしまう。

 

 と、何を思ったのか先輩は不意に後ろを向くと、前屈みになった。上半身を深く曲げ、お尻を突出す姿はまるでこちらを挑発するかのようだ。水着姿なので、ラインがくっきりと出て見える。

 わざとらしくこちらに向けた部分の水着を指先で捲り上げ、二つの白い肌を大きく露出させるのは、もはや誘っているとかさえと思ってしまう。

 

 この状況と、先輩のニヤニヤした顔さえ見えなければ、蹴飛ばしたくなるより先に飛びかかっていたかもしれない。

 

 何がしたいんだ、この人は――そう思った瞬間はっと閃いた。いや、閃いたなんて言葉を使ったら何か凄いことのようだが、そんなことは一切ない。むしろ、酷い。

 

「……ま、まさか、いやもしかして」

 

「あら、ようやくわかった? それにしてもお姉さんもちょっと驚いたわー、まさか静馬くんにそういう趣味があったなんて」

 

「うわぁああああ!」

 

 俺は思わず声を上げ、そのまま恥ずかしさのあまりテーブルへと頭を伏せた。真っ赤に染まった顔を見られないよう、しっかりと顔を隠しながら。

 

 

「うっふっふー。久しぶりに見るわねー、その慌てる姿のし・ず・ま・く・ん」

 

 愉悦、という言葉がぴったりと合うぐらい楽しそうな口ぶり。イラつくが、それ以上に恥ずかしさが勝っているので、何を言うにも叶わない。

 

 一体何がどうしたのかと言えば、簡単な話だ。パソコンの中に隠してあったものを、先輩に見られたのだ。以前一夏が見た履歴から、画像動画と思春期の男子高校生御用達の逸品を。

 

 前置きと言っていたパソコンと、先輩の「この学園で知らないことはない」という言葉は、ここで繋がっていた訳だ。

 

「一夏君と二人きりでいるから、何してるのかなーと思って覗きに行ったんだけど、予想外の収穫にお姉さん大満足よ」

 

 つまり生徒会室にいなかったのは、俺の部屋にずっと潜んでいたからということか。後から追えば間に合うのに、それもしなかったのはPCの中を見ていたから。

 

「……どうするつもりだ?」

 

 言ってから敬語でないことに気が付いたが、それどころではないのでもういい。

 

「んー、別にどうもしないけど、みんなに知られたら大変よねー?」

 

 暗に、知られたくなければ言うことを聞けと言っているのだ。

 

「この……刀奈……あんたって人は……」

 

 顔を上げれば、近くで満面の笑みをこちらを見下ろす刀奈の姿。完全に下僕扱いする気満々だ。

 

「あらやだ。久しぶりに名前で呼んでくれたのは嬉しいけど、年上なんだからちゃんと『さん』を付けないとダメよ。あ、今なら『様』って付けてもいいのよ」

 

「何だよもう……刀奈様」

 

「え、ちょ、ちょっと冗談よ、静馬くん?」

 

「おーい、静馬。昨日のおれ――ってあれ、楯無さんも一緒か、何やって……静馬どうしたんだ!?」

 

「ああ、一夏。かた……楯無様に、ちょっとな……」

 

「楯無『様』!? 本当にどうしたんんだよ! まさか楯無さん、静馬に何かしたんじゃ」

 

「し、失礼ねっ、何もしてな……なくもないけど」

 

「やっぱり楯無さんが……。静馬、どうした、何されたんだ!?」

 

「……恥ずかしくて言えない」

 

「ま、まさか楯無さん、とうとう静馬のこと襲ったんですか!?」

 

「とうとうってどういうことよ!」

 

「だってこの前俺の部屋にいた時、『静馬くんが欲しいなあ』って言ってたじゃないですか」

 

「確かに言ったけど、そういう意味じゃなくて生徒会役員になって欲しいって意味!」

 

「なら何で静馬はこんな――」

 

「違うわ――」

 

 

 この言い合いは皆が集まり、千冬さんが止めに来るまで続いた。

 俺がもっと早く止めれば良かったのだが、するとパソコンの件も話さないといけなくなるためどうにも間に入り辛く止めるに止められなかった。

 

 

 もっとも、結局千冬さんの事情聴取時に言うハメになったのだが。加えて、画像や動画の、その中身も。

 もういっそ殺せと言いたくなる所業に、更に追い打ちを掛けるようにこんな噂が俺の耳へと届いた。

 

 

 俺が生徒会長と浮気し、その現場を一夏に見つかり修羅場になっていた、と。

 

 

 千冬さんはもうどうしたらいいのかわからなくなっていたが、俺はもっとわからない。

 




一番来てほしくない時、それ(一夏)はやって来る。


生徒会のお話でした。のほほんさん出てないけど。
ISなのに女子が二人しか出てないという不思議。千冬さん?ハハッ、女子て(笑)

たっちゃん一番扱いやすいわ。
口調がおかまっぽくなるのが難点
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