椎名静馬のIS学園生活   作:榎本くん

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今更ですけど誤字脱字ありましたら、ご一報頂けると助かります。

あ、一か所だけわざと間違えたところもありますので、そこはスルーして頂けると。


第十四話

「相棒、入ったぞ」

 

「おかしいだろおい」

 

 ノックどころか音もなく部屋へと侵入して来たラウラに、俺は思わず立ち上がって声を上げた。

 誰一人としてノックして入ってこないんだけど、みんなこの部屋フリースペースか何かと勘違いしてない? っていうか事後承諾にも程があんだろ。

 

 しかも俺のツッコミすら無視して勝手に座ってるし。おいそこ、俺が座ってた場所じゃねーか。しかも俺の飲みかけのお茶にまで手を出して飲み始めた。やりたい放題だなおい。

 何で家主の俺が立って、勝手に入って来たヤツが座ってお茶飲んでんだよ。

 

「ふむ。静馬、このお茶少し温いぞ」

 

「ふむじゃないだろこのドアホ」

 

「なっ、何で叩くんだ!?」

 

 俺が叩いた後頭部を銀髪越しに抑え、こちらを向いて訴える。赤い瞳が恨めし気に俺を睨むが、それを無視してもう一度額を軽く叩いた。

 

「勝手に人の部屋に入った挙句お茶まで勝手に飲んで、逆に何で叩かれないと思ったのか俺が知りたいわ」

 

「に、日本には『お前の物は俺の者』という故事があると教わったから、それを実践しただけなのだが、何か間違っていたのか?」

 

「何かどころか全て間違ってる」

 

「なに!?」

 

 と驚き深刻そうに考え込むラウラ。

 ……最近思うのだが、部隊長を務めてたというのは実は嘘とかじゃないよな? いや、ラウラの実力は十分に知っているから、IS操縦者としては何一つ疑いはないんだ。

 

 けれど常識の方があまりにも……アホの子過ぎるだろ。部隊長、本当に部隊長してたんだよな? 

 これに関しては教えた奴が悪いんだけどさあ。

 

「ところでラウラ、その言葉誰に教わったんだ?」

 

「変態女からだ」

 

 楯無さん、今度説教な。虚さんと簪交えて。

 

 

「実はな、話があって来たんだ」

 

 改めて淹れ直した緑茶を飲み干したところで、ラウラはようやく喋り始めた。

 

 ちなみに緑茶と言っても日本のものではなく、ラウラに合わせてドイツの緑茶だ。日本のものとは違い、どちらかと言うとフルーツティーに近い。香りよく美味しいのだが、日本の緑茶を知っていたから味に慣れるまで時間がかかった。

 

 実のところ、ラウラもドイツの緑茶より日本の緑茶の方が慣れていたりする。というのもドイツにいた頃は、お茶という嗜好品に手を出すことができなかったからだ。

 

「元々お茶に興味などなかったし、何よりそんなものに手を出す暇があれば訓練をしていただろう」

 

 と過去を振り返ったその言葉が、当時のラウラの心境をよく表している。

 

 そのため先に俺が飲ませた日本の緑茶の味に慣れ、ドイツのフルーツフレーバーのする甘い緑茶、というのに未だ違和感があるらしい。

 

「話、ねえ」

 

 ラウラにそう言われて、頭を過るのはついさっき楯無先輩からされた、訳の分からない『相談』だ。結局自己完結して帰っていったし、そもそも簪に告白とかもう意味不明過ぎる。

 

 あの人、前以上に簪に嫌われるんじゃないか。

 

「ああ。誰にも言うつもりはなかったのだが、相棒である静馬にだけは打ち明けておこうと思ってな」

 

 言ってラウラは薄く笑みを作るのだが、正直こちらとしては胡乱気だ。なぜかと言われれば、何度も言うが先輩の後だから。

 

 しかしまあ、純粋なラウラに人を騙そうという発想はないか。戦闘や作戦時となれば話は別だが、今は日常。陥れるようなことはされないだろう。

 

「まあいいか。いいよ、言ってみ」

 

「実はだな、静馬」

 

「ああ」

 

「私には前世の記憶があるんだ」

 

 陥れられた気分。

 

 

「……もう一回聞くけど、なんだって?」

 

 思わず頭を抱えそうになったが、それを堪えて聞き直した。眉間に皺が寄ったままなのは、仕方がないと思う。

 

「私には、前世の記憶があるんだ」

 

 一字一句相違なく答えるどこか得意げな表情のラウラに、俺はとうとう頭を抱えてしまった。

 

「どうした静馬?」

 

「どうしたもこうしたも……ラウラ、それ誰に教わった?」

 

「教わったんじゃない、私の記憶が蘇っただけだ。……前世の私が生まれたのは、人口百人にも満たない小さな村でな」

 

「ああ、勝手に語り始めるんだ」

 

「そこで私は平凡に暮らしていたのだが、ある日村を魔物に襲われてしまったのだ。逃げ惑い、殺される村人たち。ついには私も襲われそうになったその瞬間、あの人が現れたのだ。漆黒の様な黒髪に、射ぬくような鋭い目。今でも覚えている、あの凛々しい佇まい。その方こそ、教官……織斑千冬の前世である、勇者チ・フユ様だ」

 

 あー、千冬さんまで出てきちゃったよ。名前雑過ぎだし。っていうか勇者って。あの人どっちかって言うと皇帝とかそういうタイプだろ。もしくは魔王。救う側じゃなくて、支配する側。「跪けぇ!」とか言ってそう。

 

「私は彼女に見初められ弟子となり、その後亡くなられたチ・フユ様に代わり二代目の勇者として魔王へと挑むことになった」

 

 おい、即行で千冬さん死んでるぞ。しかもあの人がやられるとか、魔王どんだけ強いんだよ。

 

「通り名はチ・フユ様の『双黒』にちなみ、『三星』だ。これは銀の髪と、オッドアイである私の瞳から来ている。現世に於いて私がこの風貌なのは、その頃の名残だ。うっ……左目が……疼くっ……」

 

 ……銀髪はともかく、ヴォーダン・オージェをそんな扱いでいいのか。眼帯越しに左目を抑えるラウラを見て、そんなことを思わずにはいられなかった。

 

 

「だいぶ省いたが、大体こんなところだ。どうだ相棒、理解できたか?」

 

「できれば遠い彼方に葬り去りたい」

 

「なっ、なんだその心を揺さぶられる言い方は!」

 

「うるせえ」

 

 頭をぶっ叩き黙らせる。少し強く叩きすぎたか、若干涙目になってるが知らん。

しかしまったく、一体誰がラウラにこんなこと教えたのか。なまじ銀髪オッドアイに眼帯とか容姿が完全に邪気眼御用達仕様なせいで、本人もノリノリだ。

 

 何をする、と文句を言って睨みつけてくるラウラに睨み返しながら、俺は電話を持ってコールした。

 相手はこの学園で一番ラウラの事をわかっているだろう、ラウラの同室のシャルロットだ。

 

『も、もしもし静馬、どうしたの?』

 

 長いコール音の後、あからさまな躊躇いを含んだ声が聞こえてきた。ああ、これは何か知っているな。

 

「今すぐ俺の部屋に来てくれ」

 

『な、なんで?』

 

「いいから今すぐ。でないとベッドの下にある薄い本のことみんなに言うぞ」

 

『今すぐ行くよ!』

 

 通話は切れ、シャルロットが俺の部屋へと来たのはそれから五秒も経つ前のことだった。早過ぎ。

 

「そ、それで、静馬、どうしたの?」

 

 相当急いだらしく、呼吸が乱れて声が途切れ途切れだ。が、俺はそんなことはお構いなしに話を切り出した。

 

「ラウラにあんなこと教えたの、誰だ?」

 

「さ、さあ、誰かなあ。それよりも、あんなことって一体何の事かな?」

 

 明らかに動揺しているのが、いつもより僅かに高くなったその声音でわかる。というか、まず最初に誰かな、とか言ってる時点で誤魔化せてないぞ。

 

「すっ呆けるならそれはそれでいいけど、言わないと一夏の写真でキスの練習してたとか、毎晩告白の練習してることみんなに言うぞ」

 

「ちょっ、しずっ、何で知って――違う、違うよそんなことしてないよ!」

 

「じゃあ金に物を言わせて、等身大抱き枕作ろうとしてるのは言ってもいいか? あとはそうだな――「もうわかった、言うよ、言うから!」」

 

 俺の声を遮って、シャルロットの声が部屋に響く。

 

 ちなみにラウラもちゃんと部屋にいるが、黙々とお菓子を食べお茶を飲みながら、いつの間に点けたテレビを見ている。子どもか。

 

「……会長、生徒会長さんがラウラに教えてたんだ」

 

 顔を真っ赤にして、涙目になりながらぼそぼそと話すシャルロット。

 

「やっぱりか、あの痴女め……」

 

「っていうかだよ、何で静馬は知ってるのさ」

 

「知ってるって、何が?」

 

「何がって、僕が……その……」

 

「ああ、みんなに内緒で一人織斑家周辺を巡礼してることか?」

 

「だから何で知ってるの!?」

 

「ラウラから聞いた」

 

「ラウラあああああ!!」

 

 がっくりと崩れ落ちながら叫ぶシャルロットなのだが、名前を呼ばれた当の本人はうるさいとばかりに肩越しにこちらを見るだけだった。ブレなさ過ぎだろう。

 

 実際はラウラだけでなく、楯無先輩経由の情報もあったりするが。室内の情報はラウラ、室外……というか、学園外の情報は楯無先輩。正確には更識。

 前にも言ったけど、代表候補生が監視や護衛なく外を出歩ける訳ないだろって。

 

 その後、シャルロットはラウラを連れて俺の部屋出て行った。「絶対誰にも言わないでよ!」と念押ししていったのだが、断ると『とっつき』でやられそうだったので素直に頷くことにした。

 

 ラウラはというと、俺のお茶請け兼おやつとして用意してあったお菓子を両腕いっぱいに抱え帰って行った。普段こういったジャンクフードを食べないせいか、甚く気に入ったようだ。

 まあ俺はまた買えばいいだけだし、シャルロットと一緒に仲良く食べてくれ。

 

 最後に、がっくりと肩を落とすシャルロットと、満足気な表情を浮かべるラウラが実に対照的で面白かったことを述べておく。

 

 

 

 追加で、後日談。

 

 ラウラが邪気眼にハマってしまい、誰も言い回しが理解できず困ったことになった。

 同じ道を通って来た簪に通訳を頼もうと思ったが、「く、黒歴史……」と言って嫌がられたため手におえなかったのだが、最後はやっぱりあの方。

 

 チ・フユ様の聖剣もとい出席簿によって矯正され、事なきを得た。

 そしてそれからしばらくの間、クラスメイトの間で出席簿のことを聖剣と呼ぶことが流行った。

 

 

 以上、すごくどうでもいいことでした。

 




中二病でもラウラしたい!
正確には邪気眼。まあどうでもいい。
シャルロットは一夏をこじらせ過ぎてちょっとしたストーカー。ごめんシャルロット。

ラウラが楯無さんのことなんて呼んでたか思い出せないから、とりあえず変態女って呼ばせることにした。
他はともかく、我が家の楯無さんはそれで間違ってないので、今後ラウラが楯無さんを呼ぶときは変態女になる。

あと翔鶴さん全然出てきてくれないので那珂ちゃんのファン止めます。
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