椎名静馬のIS学園生活   作:榎本くん

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まさかこんな日の、こんな時間に更新するとは誰も思うまい・・・


第二十三話:静馬と束

「という訳で束さん窓から颯爽ととーうっじょぉおおー!!」

 

「そしてそのままドアへと駆け抜けるぅ!」

 

「よーし束さん怒涛のスーパーダアアアッシュ!」

 

「さすが天才早い早いっ、廊下から外まで一直線だあ!」

 

「フハハハハこの天才神速神風束さんにいぃぃ――」

 

「――はいドアバタンのカギガチャンと」

 

 今日もIS学園は平和です。

 

 

「たばねフラアアアッシュ!」

 

 再び束さんが姿を現したのは、それから数分後のことだった。

 

 掛け声と同時、ドアをぶっ壊すどころか光で消滅させて入ってきたのだから、もう驚きと恐怖でおしょんしょんが止まりません。ドアの近くにいたら俺どうなってたんだろう……。

 

「しーくんっ、さっきのはさすがの束さんもにこにこぷんぷん丸だよ!」

 

 どっちだよ。

 

 束さんはげっ歯類さながらに頬を膨らませると、足早にこちらへと近づき『怒ってるんだぞ』アピール全開で俺を下から睨み上げた。腰に手を当てるのがポイント。

 

 これを見ると正直怖いと言うより可愛らしいという風に思ってしまうのだが、しているのが俺より年上の二十ほにゃらら才の人かと考えると一瞬にして可哀そうに思ってしまう。

 

 大人になれよ、篠ノ之。

 

「しーくんが煽るから、思いっきり走って外まで行っちゃったじゃないか、まったくもう!」

 

「頭のいいバカって束さんのためにある言葉ですよね」

 

「そうでしょうそうでしょう頭がいいっていうのは束さんのためだけにある言葉だからね、他の勘違いした有象無象共にそんなまともな言葉なんて必要ないんだよ!」

 

「まあそれはいいとして、何しに来たんですか?」

 

「さすがの束さんもびっくりなぐらいサラッと流したねっ、まあいいや!」

 

 さっきまでの仏頂面はどこへやら。満面の笑みを浮かべてそう言うと、急に俺へと向かって飛び跳ねて来た。

 近距離過ぎて避けることも叶わず、どころか反射的に両手を回して支えてしまったせいで、抱っこしているみたいになってしまった。

 

「うっひっひ、しーくんと抱っこだいぇい!」

 

 顔の近さと胸に当たる束さんの特大バッキューン、そして両手の平から感じるお尻の柔らかさで、鼓動が早まるのが自分でもわかった。顔が赤くなっているかもしれない。

 

 けど直後、一夏が箒に追いかけられ、俺に縋るように抱き着いて来たこと思い出し一瞬のうちに冷めた。ありがとう一夏、今度改めてぶん殴る。

 ちなみにその時の顔面距離は約五センチ、違う意味でドキドキした。人生終わったと。

 

「さあて、束さんが一体何しに来たかというとだね」

 

「その前に下りません?」

 

「さあて、束さんが一体何しに来たかというとだね」

 

 あ、下りる気ないですかそうですか。

 

「何だと思う?」

 

「暇だから遊びにきたんですよね」

 

「だっいせーかいドンドンパフパフ! もうしーくんとは以心伝心拈華微笑不立文字の仲だから言わなくても全部何でもわかっちゃうね、もうテレパシーで会話しようテレパシー!」

 

「それはちょっと無理ですかねー」

 

「DA☆YO☆NEー!」

 

 

「で、本当は何しに来たんです?」

 

 いつものようにお茶を差し出し、互いに落ち着いた所でようやく本懐へと移る。

束さんとの会話は、いつも中身のない勢いだけのものになるから、どこかでこうやって冷静にならないと始まらないんだよな。

 

「んー、本当にただちょっと来てみただけだよ。急にしーくんに会いたくなっちゃったりしちゃったりしてさ!」

 

 両手で持った湯呑みを静かにテーブルへと戻しながら、いつもの半分ぐらい静かに話した。対して頭に付いたうさみみは、辺りを警戒するように頻繁に動いているのだからおかしなものだ。機械じゃなくて、本当に意思があるのかと勘違いしてしまう。

 

 まあドアフルオープンどころか消滅してるんで、警戒もへったくれもないんですけどね。

 

「あとついでだから『木花開耶姫』の様子も見ようかなとも思ったけどね」

 

 木花開耶姫。俺の持つISの名で、コノハナノサクヤビメと読む。長い。

束さん曰く「暮桜の後継機的存在だっよーん」ということらしいが、まず近接用の武器がない時点でツッコミせざる得ない。

 

 暮桜は確か、千冬さんがモンド・グロッソで優勝した時に使ってたISだったはず。近接用の『雪片』だけで世界一とかいう異様……じゃなかった、偉業を成し遂げた、界隈における伝説的ISだ。

 

 なのに俺のサクヤは遠隔用武器のみ。嘘だろ。

 

 強いて似ているとしたら、名前ぐらいだ。暮桜に付く桜という言葉は、木花開耶姫が由来であるとかなんとか。でも桜の語源っていうなら木花開耶姫が先で、暮桜が後継機だと思うんだがこれ如何に。

 

 ちなみに待機状態は指輪で、左手の薬指に固定されて取ることが出来ない。

というのもコノハナノサクヤビメと言えばほら、ニニギノミコトとの逸話で有名だし。そういうことで結婚指輪にしたらしいんだけどふざけんなバカ。色々飛躍し過ぎ。逸話になぞるなら、待機状態はマッチかライターでいいじゃん。火繋がりで。

 

「いいですけど、それほど大した変動はないと思いますよ。模擬戦の相手もずっと一夏たちだけですし、形態移行もした訳でもないですから」

 

「まあまあ、その辺は束さんにスッバラスィー考えがあるからいいのだよ!」

 

「白式と変身合体とか言いませんよね?」

 

「それも面白いけど違うよーん。それともしーくんはいっくんと合体したかった?」

 

 にしし、といたずらな笑みを浮かべ、指で作った輪っかに人差し指を抜き差ししている。いったいどういういみなんだろうなー、ぼくにはよくわからないなー。

 

「まあしーくんと合体するのは例えいっくんでも許さないけどね! しーくんとっ、合体するのはっ、この束さんっ、だけだあ!」

 

「うるせえバカ」

 

 

「なんだかお腹すいちゃったね。しーくんご飯は?」

 

「とことん自由ですね。俺はもう食べましたよから作りませんよ」

 

「じゃあ代わりにしーくん食「食堂行きましょうか」ちぇー」

 

 ってな訳で食堂へ。

 

 ところで色んな意味で有名な篠ノ之束が、しかもIS学園内をそんな堂々と歩いていていいのかと思うが、もちろん良い訳がない。

 ということで変装して貰った訳なのだが。

 

「……なんでIS学園の制服なんですか」

 

「それはもっちろん、ここがIS学園だからに決まってるじゃないかっ。どうどう、似合う、似合う? まだまだ学生でもいけちゃう?」

 

 なんて言いながらスカートの両端を掴み、くるくると回る束さん。収まりきらないのか肌蹴させた胸元のせいで、どう見てもそっち系のお仕事のお姉さんにしか見えない。

 頷きづらいしとりあえず日本人らしく曖昧に笑っておこう。日本人って便利。

 

 ちなみにISの制服は、一般校と同じく採寸の後の完全オーダーメイド制だ。ただ違うのは、三年間通して着るものではなく、申請すれば新しい物と交換して貰える。税金。

 

 つまり大きくなることを見越して大き目にする、ということをする必要がない。もちろんそのまま着通してもいいが、特に理由がない限りはみんな新しいものと取り換えている。

 

 但し、改造されたものは進級するまでいくら申請しようが交換して貰えない決まりだ。だから鈴の肩口の切れた制服も、冬になっていくら寒かろうが交換することはできない。どうすんだアイツ。

 

「ところでその制服、どこで手に入れたんですか?」

 

「箒ちゃんからちょこーっとだけ借りてきちゃった、えへ?」

 

 えへ、じゃねえよ。俺は知らないからな。まあアリススタイルよりかは……いや、どっちもないな。まだ千冬さんのスーツとかの方がましだわ。

 

 けど束さんのほうがデ……じゃなくてふくよかだから、入らないかもしれない。仕方ないね。

 そういやこの人、アリス服しか着てるとこ見たことないな。きっとクローゼットの中はあの服でいっぱいなんだろう。もしずっと同じ服とかだったらマジえんがちょー。えんがちょえんがちょー。

 

 まあ着るには問題なさそうだし、触れるの止めとこう。アリス服よりは綺麗だろうし。

 

「それじゃあ食堂行きますか」

 

「おっけーしーくん、れっつごーごーごー!! よーっし束さん食うぜー、超食うぜー!」

 

 右手を掴まれた俺は、束さんに引っ張られるようにして食堂への道を進んだ。

 

 

 その後、昼ご飯を食べて満足したのか、束さんは「ばっははーい」と言って特に何をするでもなく帰って行った。

 

 ……制服姿のままで。

 

 

 翌日、箒は制服がないと言って剣道着で授業を受けていた。当然千冬さんに怒られていたが俺は見なかったことにした。

 

 

 アリス服は後で燃やした。

 




本当は束さんに髪結わいてセロハンテープで釣り目にして「箒ちゃんだっよーん」ってやらせようと思ったけど制服の時点で無茶があるから止めた。

静馬のIS設定ちょい出したけど、動くところはきっと出てこない。
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