そしてサブタイが最終回っぽくなったっていう。
「静馬ってさ、将来の夢ってあるか?」
いつものように、その前振りすらなく言い出した一夏の一言から、今回の話は始まった。
またか、と苦笑を漏らしながらも、同時に嘆息をも漏らす。せめて「そういえばさ」ぐらいのワンクッションを置くとか出来んのかこいつは。
まあ得意技が瞬時加速からの零落白夜で切り捨て御免の抜刀術だもんな、話をぶっ込んでくるぐらい訳ないか。
言い出した本人はというと、少なからず真面目な話のつもりらしく、姉の千冬さんそっくりに眉間に皺を寄せ、悩ましげな表情をしていた。顔をパーツだけなら本当に似ているので、ここだけくり抜いたらきっと判別がつかないだろう。はんこえ。
これは果たして千冬さんが男前なのか、一夏が女顔なのか。言うまでもなく前者だ。千冬さんの男らしさときたら、俺なんて適いっこない。
世界初のIS男性操縦者って、実は千冬さんなんじゃないかと、俺の中で専らの噂だ。
という冗談を頭の中で繰り広げるぐらい、一夏の表情に反してこの場に真面目な空気など存在しない。
なにせ寸前まで『ISを部分展開した場所に人がいたらどうなるか』という、実にくだらないことを話していたからだ。
ちなみに俺の『お腹からバズーカ』案と一夏の『ISと合体』案で意見の相違からケンカになったが、『合体してお腹バズーカを出す』ということで互いに納得した。本当にくだらねえ。
そういえばセシリアって、ちょっと前まで腕を横に上げて展開する癖があったような……。
「おい、聞いてるか静馬?」
「聞いてるって、将来の夢だろ? どうしたんだよ急に、小学生の作文みたいなこと言い出して」
「それが昨日さ、ち」
「あ、もういいわ、わかったから」
「マジかよ!? まだ『ち』しか言ってないぞ!?」
「一夏が『ち』から始まる単語の中で、言うものなんて『千冬』以外にあるわけないだろうが」
「うっ……いいや、他にもあるって。例えばほら……」
と言いながら視線をさ迷わせ、三分近く悩んだ挙げ句最終的に出てきた言葉が小学生レベルの下ネタなのだから、こいつはもういっそ頭にISコアを埋め込んでしまえばいいと思う。何でそんな自信満々なんだよ。
「ち○○!」
「うるせえ二度も言わんでいいわ! ……詰まるところ、あまりにも座学の成績が悪いから、千冬さんに『もっと将来のことを考えて勉強しろ』とでもお説教を受けたんだろ」
「正にその通りなんだけど、あれだけでわかった静馬が凄いを通り越して怖いぞ」
いや、これぐらい誰でもわかるだろ、むしろわからないヤツいるのか。いや、普通わからないだろ。じゃあ試してみるか。
という流れで、実際他の人で試してみたところ、どういう訳か誰一人としてわからなかった。それどころか気持ち悪いとまで言われた。なぜだ。
「将来の夢、ですか?」
持っていたナイフとフォークを空中で止め、一番に聞き返したのはセシリアだった。
例のごとく集まった専用機持ち達。メンバーは相変わらずの一夏シャルロットセシリア箒ラウラ鈴、そして俺の七人だ。読み上げた順番に意味はなく、ただの五十音順。
この場に簪がいないのは一夏がいることと、姉である楯無先輩と一緒に昼食を取ること選んだから。
先日俺の部屋で露出狂まがいのことをしてからまた避けられていたが、ようやく誤解が解けたのでその記念の昼食会らしい。カップルかお前ら。
ちなみに仲直りは、楯無先輩が土下座することで出来たらしい。これのどの辺りが仲直りなのか誰か教えてくれ。
そんな俺の複雑な内心をよそに、周囲の会話は進んでいく。
「ああ。さっき静馬と話しててさ。それでちょっと気になったんだ、みんなはどうなのかなって」
「そ、それは……」
一夏の問いに、顔を赤らめ視線をあちらこちらへと飛ばす四人。
全員何を考えているか一発でわかるんだけど、せめて一人ぐらいは「国家代表になること」って答えてほしかったな。
それと「嫁と教官と私の三人で、お菓子を食べながらISに乗って仲良く暮らすこと」とか意味不明なことを言ったラウラは、今すぐドイツ軍を辞めてシルバニアファミリーの世界にでも行ってこい。
「そ、それじゃあ一夏の将来の夢ってなあに?」
ラウラの発言をスルーし、引きつった笑みを浮かべながらも話を進めたシャルロット本当にありがとう。シャルロットのコミュ力の高さに脱帽するわ。帽子被ってないけど。
「俺か? 俺の夢は……そうだな、恥ずかしいからあんまり言わないでくれよ。実はさ、先生になりたいと思ってるんだ」
「先生って……IS学園の?」
鈴の言葉に「ああ」と一夏は頷いて答える。
みんな一夏の告白に驚いた表情をしていたが、それも一瞬のこと。すぐに笑みを浮かべ、納得とばかりに首を縦に振ってみせた。
俺はすでに聞いてるので、みんなの反応を見てるだけ。
「いいね、一夏にピッタリだと思うよ!」
「ええ、素晴らしい夢だと思いますわ!」
シャルロット、セシリアの賛同の声に続いて、残った三人も同意の声を上げる。
その反応に照れながらも、嬉しそうにはにかむ一夏。
もし一夏が教師になったら、どんな風になるのかを楽しそうに語り合い、笑い合う。
しかし皆は知らない。一夏がISに乗れさえすれば、学園の教師になれると思っていることを。
しかし皆は知らない。一夏が学園の教師になるためには、教員免許が必要だとわかっていないことを。
しかし皆は知らない。一夏が卒業して教師になるどころか、二年に上がることすら危うい成績であるということを。
俺知ーらないっと。
ISに乗りながら笑顔でお菓子を食べる千冬……
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