椎名静馬のIS学園生活   作:榎本くん

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これキャラ崩壊してないだろうか……


第六話

「静馬まで来たのか」

 

 備え付けのインターホンを鳴らし、一夏を呼び出した。この短時間で五人もの来客があったせいか、口調は実にうんざりした様子だった。

それでも快く迎え入れてくれるこいつは、やっぱりいいヤツだろう。

 

「まあ色々あって……」

 

「なんかよくわかんないけど、大変そうだな。入れよ、お茶くらい出すぜ」

 

「ああ、悪いな」

 

 誘われるまま、躊躇することなく部屋の中へと入り込む。互いの部屋を度々行き来しているせいか、少しくらい時間が遅かろうとも微塵も気にしなくなっていた。それが例え、女性と相部屋になっていてもだ。

 

 もっとも、相手は楯無先輩なので一切欠片も気にはしないが。あの人はちょっとくらいなおざりに扱ったところで、どうということはない。怒られるけど。

 

「どうしたんだよこんな時間に」

 

 先程シャルロットにもしたように、一夏はお茶を出してそれを俺の前へと置いた。コップはこの部屋に常備してある、俺専用のものだ。

 

「さっきみんなも来たんだ。でもなんかどこか変だったんだよなあ」

 

 止めろ、余計な事を言うな。思わずそう叫びそうになるが、そんなことができるはずもなく、お茶と一緒に飲み込んで我慢した。

この光景を、皆俺の部屋で見ているに違いない。

 

 あちこちに設置された楯無カメラは未だに回ったままだし、それどころか胸のポケットにはペン型の録音機まで先輩によって取り付けられている。今の技術ならペンどころかもっと小さい、ピアスや指輪といったアクセサリーの類のサイズで容易く録音機として作り出すことが可能なのだが、それをあえてペン型にするあたり意地が悪いというか何と言うか。うん、性格が悪い。

 

「ど、どうしたんだ静馬?」

 

 急に黙り込んでしまったせいだろう、そう言って一夏は心配気に俺の顔を覗きこんできた。顔が近い。

 

「悪い、何でもない」

 

「そうか、ならいいんだ。それでさ、いい加減教えてくれよ。こんな遅い時間に何しに来たんだ?」

 

「あ、ああ。そうだった、そうだったな」

 

 そうだ、俺はこれから一夏に告白をしなければならないんだ。 

 思わずカメラがあるであろう位置に目を向ける。何となく、にやにやと笑う先輩の顔が見えた気がした。ちくしょう。

 

 ただ正直言うと、俺はそんなに悲観的じゃあなかったりする。なぜかと言えば、最大の抜け道をわかっているからだ。

 それは一夏誤解ワードナンバーワン、「付き合ってくれ」があるから。

一夏に「付き合ってくれ」と告白して「いいぜ、どこに行くんだ?」の返答は、もはやテンプレとまで言われる程固定化された流れだ。

 これを使えば自然と告白は失敗し、何事もなく済ますことができる。よし。

 

「なあ一夏」

 

「なんだ?」

 

「……付き合ってくれ」

 

 よし、言った。言ってやったぞ。若干の間がガチに聞こえるが、一夏相手にそんなの些細なことだ。鈍感王の名は伊達じゃない。

これで後は一夏が「どこに~」と言えば、終了だ。俺は内心にやりとほくそ笑みながら、一夏の返答を待った。

 

 ……のだが。

 

「……本気か?」

 

 返ってきた一夏の声は、予想していたものからかけ離れたものだった。

 

「え?」

 

「いやさ、俺も静馬と一緒にいるのが楽しくて、こうやって話してるだけでも何かこう……高揚感っていうか、千冬姉と一緒にいるみたいな感じがするんだよ」

 

「え、え?」

 

「もしかして緊張でもしてんのかと思ったけど、俺が今更静馬相手に緊張なんてする訳ないし。でも最近千冬姉と二人だとなぜか緊張するな、なんて思ったらもう何がなんだかわからなくなっちゃって」

 

「ええ?」

 

「結局わからなくて、この感覚のことを箒に聞いてみたんだ。そしたら『それは恋だろう』って教えてくれたんだ。一瞬納得しかけたけど、でも静馬にまさかって思って。だからつい『そんなことある訳ないだろ』って言い返しちゃったんだ。せっかく教えてくれたのに、箒には悪いことしたなあ。まあ殴られたからお相子みたいなもんか」

 

「え……」

 

「結局わかんないままだし、その上箒には鈍感って言われるしで、頭の中ごっちゃごちゃになっちゃってさ。それで昼に静馬の所に聞きに来たんだ」

 

「……」

 

「でも、今わかった。静馬に言われて俺、自分の気持ちに気付いた」

 

「……」

 

「静馬。俺さ、お前のこと「「「「「「だめえええええええええええええええええ!!」」」」」」へ?」

 

「いいい一夏あんた、なななに言おうとしてみたりしちゃったりしたりしてんの!?」

 

「一夏そうだよ、良くないよ、そんなのってよくないよ! ほら、代わりにボクがそういう恰好するよ、それでもだめなら生やすよ! だから男同士だなんて落ち着いて考え直してよ!」

 

「ふ、二人とも何言って「嫁よ、どうした、頭がおかしくなってしまったのか? さっき私が鞭と称してレーゲンで殴ったのだいけなかったのか?」」

 

「いいいいいいいいいちちかかかっかかささっ、いちかかさんんんんんんんんん、いちかささっさささささ――!?」

 

「わかった一夏。ああ、わかった。そうか、そうだったんだな。ああ、ああ。わかった、わかったから私と一緒に死のう。それがいい、それがいい。ほうら、一夏もそう思うだろう?」

 

「ダメよ一夏君! これはね、実はお芝居だったの、だから静馬くんも本気じゃなくって、私が無理やり言わせただけなのよ! だから一夏君も冷静になってね、ね? ほら、静馬くんも何か言って……静馬くん?」

 

「……」

 

「静馬くん、どうした……座ったまま気を失ってる。同性に告白させられたら、想い通じちゃいましたなんて……そりゃ気を失いたくもなるわよね。ましてや、それが幼馴染なんだもの」

 

「……」

 

「とりあえず、簪ちゃんの部屋にでも運びましょうか。一夏君はまあ……あの子たちに何とかして貰うとして。それにしても一夏君がゲイだったとはね……あれ? 織斑先生の良い話を聞かない理由って、もしかして……。……これ以上深く考えてはダメね。織斑家が今代で断絶するかもだなんて、思っても口に出しちゃいけないわ。ええ、ダメよ、絶対」

 

「……」

 

 

 

 翌日、目を覚ました俺は一夏の部屋を訪れたのだが、そこにはは部屋であった名残と、床に埋まる一夏が残されているだけであった。

 

 それを見た千冬さんが修羅と化したのは、また別のお話。

 

 

 




ついには一夏の部屋もなくなった。
これ幸いと自室に泊まらせる千冬さんがいたとかいないのか。


もう一話で終わり。
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