皇女戦記   作:山本 奛

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捕捉がてら追加でーす


無防備都市

【無防備都市宣言に関するレポート】

執筆者:()()()()()()()()()()()()

査読担当:ハンス・フォン・ゼートゥーア

提出日:統一歴1916年5月1日

 

『無防備都市宣言』(以下、宣言と表記)とは「無防備地区宣言」とも言い、近年ハァーグ陸戦法規に追加(第23条)された、事実上の()()()()()()()()である。

宣言と旧来の降伏、休戦協定との最も大きな相違点は、国家単位ではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことにある。以下に要点を抜粋する。

 

 

 

 

(原則)

宣言を行う場合、宣言者は以下の条件を履行する必要がある

イ すべての戦闘員ならびに移動兵器及び移動軍用設備が撤去されていること

※ただし、諸条約及びこの議定書によって特別に保護される者並びに法及び秩序の維持のみを目的として保持される警察組織の存在は可。

ロ 固定した軍用の施設または営造物が敵対的目的に使用されていないこと

ハ 当局または住民により敵対行為が行われていないこと

ニ 軍事行動を支援する活動が行われていないこと

 

(無防備地区の境界及について)

宣言は、敵対する紛争当事者に対して行われ、宣言者はできる限り正確に無防備地区の境界を定めるものとする。

 

(境界の表示について)

無防備地区を実行支配する紛争当事者は、できる限り、他の紛争当事者と合意する標章によって当該地区を表示するものとし、この標章は、明瞭に見ることができる場所、特に当該地区の外縁及び境界並びに幹線道路に表示すること。

 

(紛争当事者の義務)

宣言が向けられた紛争当事者は、速やかにこれを確認し、上記イ~ニの条件が実際に満たされている限り、当該地区を無防備地区として取り扱う。なお、条件が満たされていない場合には、その旨を直ちに宣言を行った紛争当事者に通報する。

 

(条件の例外)

上記イ~ニの条件を満たさない場合であっても、宣言者と宣言が向けられた紛争当事者間(以下、当事者間と表記)で合意に達した場合、当該地区を無防備地区として取り扱うことが出来る。この場合、当事者間で明確な合意文書を取り交わすことが望ましく、またその合意文書には「出来る限り正確な無防備地区の境界」を定め、記述することが望ましい。

 

(宣言の担保)

宣言の確実な履行を期すため、当事者間の合意について、必要な場合には監視の方法を定めることができる。

 

(宣言の効力の喪失)

上記イ~ニの条件、又は当事者間の合意に定める条件を満たさなくなった地区は、無防備地区としての地位を失う。そのような場合にも、当該地区はハァーグ陸戦法規の他の規定及び武力紛争の際に適用される他の国際法の諸規則に基づく保護を引き続き受ける。

 

 

 

 

 

 

宣言をすることの出来るものの明確な規定はないが、宣言の実効性を担保する、担保させる観点から、当該都市・地域の属する国家の中央政府によることが望ましく、それ以外の政治団体による本宣言は、実効性に疑問を生じることとなる。

適用対象に制限はなく、大都市、過疎地を問わず宣言可能と解されている。

またこの宣言は事実上、紛争相手国の占領を無抵抗で受け入れることを宣言するもので、()()()()()()()()()()である。である以上、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()(法務部確認済み)。

 

本宣言の問題は、条件又は合意から逸脱したと()()()()()場合、容易く効力が失われる事にある。また虚偽の宣言であったと()()()()()場合、「虚偽の降伏」として戦争犯罪に問われる事にある。特に後者については、上記23条採択の際、付帯決議に明記されているので留意する必要がある。

また、宣言をした者が宣言を破った場合には上記のようなペナルティ(効力の喪失)があるのに対し、宣言を受けた側に関する罰則規定がないことも問題である。

 

以上のことから、本宣言は戦争当事国が自己の主権下にある特定地域の戦災被害を避けたい場合、防衛不可能と判断した地域から撤退する場合に実施されると推測する。

 

また、帝国陸軍法務部門の討議資料によれば、宣言で()()()()()()抑止されるのは都市・地域への直接的な攻撃のみである。また、相手国が占領を行った時点で宣言は完了し、その後に当該地域へ軍事力を展開する事は制限されない。

加えて、無防備地域に対する敵の進駐を確認した後に奪還作戦を実行する事も制限されていない。

 

更に終戦を意味する国家の降伏と異なり、宣言を行った都市の属する国家の戦争が終結していない以上、戦局の変化によっては宣言対象地域であっても再び戦火に見舞われる可能性がある。

 

以上のことから、宣言によって当該地域に居住する民間人の生命、財産の安全を確保できるとは言い難く、その効果は「一時的な戦力温存のみ」と解した方が良い。しかも敵戦力を温存させたまま領土を失うのであるから、最終的には味方により多くの苦難を強いるのみの結果となる可能性が極めて高い。

 

(私見)

宣言により、防衛の放棄が宣言された時点で当該地域の治安は崩壊し、宣言を遵守させるような統制は喪われる可能性が高い。当然、市民の暴動ないし抵抗の発生リスクが極めて高く、占領側はそのような暴動、ひいては非合法戦闘員の出現を念頭において占領を行うこととなる。

つまり、占領側は全ての現地市民が潜在的な非合法戦闘員であるものと疑って行動することとなる。このような前提条件で行われる軍事的占領・軍隊による治安維持は、非常に高い蓋然性で虐殺的な衝突を引き起こすことが予想される。

 

 

査読者コメント(一部)

近年の戦時国際法に関してよく纏められたものである。

一方で、特に最終の「私見」に論理の飛躍があるように思われる。現下の諸紛争、戦争は文明国間において生じるものであり、その軍隊とは極めて統制の取れた集団である。また、斯様な国家の国民というものは一定水準以上の教育を受けているものである。よって無秩序な暴動、抵抗の可能性は比較的に低いものとなることを指摘したい。

また、テーマ選定理由にも不明瞭な点があり、これは今後の課題である。

 

 

 




先に出しておきまーす

…さて、明日からワクチン接種の応援業務だ(ガクブル
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