皇女戦記   作:山本 奛

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文字数が増え過ぎそうなのでキリの良いところで投稿


制圧

――突然だが、読者諸兄は『クレムリン』と言う言葉の意味をご存じだろうか?

そんなの一般教養だろ馬鹿野郎という知識人の皆様、どうかご容赦を。なにせ今回のお話でとても重要なところだから。

なになに教えて?というピュアな皆様、どうか悪い大人に騙されませんよう。奴らはいつでもどこでも何度でも諸君の●ツを狙っているのだから。

 

…とまぁ、冗談(前半)はこのくらいにして、『クレムリン』とはルーシー語で「城塞」を意味する。

つまり、元々固有名称ではないし、事実モスコー以外にも幾つか現存する。

しかしながら、その中で最も壮麗かつ()()にして、代々のルーシー皇帝が1700年代まで居所とし、革命で全てを簒奪した共産党政権が人民宮殿完成まで本拠地としたのがモスコーのクレムリン。故に、世間一般にクレムリンと言えばモスコーのものを指す。

そして統一歴1928年現在、一昨年帝国陸軍第203航空魔導大隊によって圧し折られた人民宮殿に代わり、モスコーの中心として、そしてルーシー連邦の中枢として君臨するのがこのクレムリンなのだった。

 

――そして、今回取り上げたいのは以下の二点である。

 

一点目はその立地。

モスコーのクレムリンの場合、それは「城塞」の名に恥じぬものがある。

すなわち、この城塞は南にモスコー川、北から西にかけてはネグンナヤ川を望む合流点、そこに面した河岸段丘に築城されており、文字通り天然の要害。

後にネグンナヤ川は地下河川となったが、その部分は公園、緑地帯(開けた遮蔽物のない空間)として、モスコー市民の憩いの場となっている(党公式見解)。そして残る東側については今日『赤の広場』となっており、城壁に寄り添うようにラーネン廟が立地している。

 

二点目はその堅牢さ。

モスコーのクレムリンは、一説には統一歴12世紀に原型が造られたとされるほど、実に長い歴史を持つ。その間、モスコーが敵軍に攻撃され、蹂躙されたことは一度や二度ではない。ゆえに敵の侵入、攻撃を受けるたびにその城塞は強化され、修繕され、改良を積み重ねていった。

結果、統一歴1926年の開戦劈頭、帝国陸軍が誇る第203航空魔導大隊の攻撃を、文字通り弾き返す強度を有するに至ったのである。

 

 

 

――では、ここでクエスチョン

 

「問」

貴官は連邦軍歩兵将校である。

今まさに、モスコーのクレムリン、その城壁を帝国軍航空魔導師部隊が占拠した。

敵は堅牢な城壁を利用し、あるいは尖塔を占拠して防御戦闘を展開中。

貴官はこれを排除し、クレムリンを奪回せねばならない。その方法を論ぜよ。

 

――なお、城壁上に展開している敵魔導師一個大隊(507大隊)のほかに、クレムリン内部に侵入している敵魔導師一個大隊(203大隊)があり、両者は緊密な連携を保ち、相互に援護可能なものとする。

また、奪還目標の特殊性に鑑み、貴官は120ミリ口径以上の火砲は使用できないものとする。

 

追伸

同志書記長はクレムリンの早期奪還を切に願っておられる。

この点、特に留意するように。貴官の健闘を祈る

 

 

◇――◇――◇ ◇――◇――◇

 

統一歴1928年12月12日 午後8時46分

ルーシー連邦首都モスコー クレムリン周辺 

 

「――無茶言わんでください同志政治将校殿!?」

 

連邦軍少佐、イワン・ゴーネフは悲鳴のような声をあげた。

否、真実それは悲鳴であった。

 

「魔導師相手に生身の歩兵で、重砲も無しにクレムリンを奪還せよ!?無茶な!」

 

それくらい()()()だって分かるでしょう?言外に込められた問いに、政治将校、ボリス・ゴーネフは溜息をもって返した。

 

「…同志書記長からのお達しだ。『可能な限り、これ以上の損傷なく奪還せよ』とな」

「無茶苦茶な…。第一、書記長は脱出してご無事なのでしょう?だったらどうして…」

「政治の要請と言う奴だな、同志少佐」

 

皮肉気に語る中年ゴーネフはそこでタバコを吸いかけて、止めた。

現下のモスコーにおいて、タバコの火ですら自殺行為だと気付いたからだ。

――そもそもの話、親戚関係の二人が同じ部隊にいるというのは、政治将校制度の目的(政治将校による軍監視)を思えば本来あり得ない。そのあり得ない状況が発生している理由はただ一つ。

 

「軍管区司令部も発電所も中央駅もやられて、これ以上何を恐れているのです?」

 

――原隊の壊滅。

彼らのいた部隊は、このわずか数時間の間に爆撃機の自爆攻撃(ミステル)*1で吹き飛ぶか、降下してきた敵魔導大隊(406)によって、木っ端みじんに吹き飛ばされていた。

両ゴーネフが無事だったのは、単に代々のゴーネフの名に恥じぬ不良中年だったから。――要するに、煙草休憩と言っておいて市内のバーで一杯ひっかけていたからに過ぎない。

 

「同志…いや、イワンよ。お前さん、在りし日の人民宮殿を見たことは?」

「そりゃ勿論。モスコーのどこからでも見えたからな」

「そうだ、あれはモスコーの、ひいては連邦のシンボルだった。言い換えれば『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』だったわけだな」

 

それが今や、アレだ。

ボリスが指さす方向――()()()()()()()()()()()()()――、そこには二年前爆砕され、最近漸く瓦礫撤去が終わったばかりの人民宮殿『跡地』がある。

 

「これに加えてクレムリンが廃墟になってみろ。……俺は考えることすらしたくないね」

「…全く同感だ。なるほど、状況は了解したとも。しかし――」

 

そう言って、イワンは湿気った兵隊煙草に素早く火を点け、即座に表の通りに向かって放り投げた。すると――

 

――表通りに小銃弾と思しき火花と、遅れて銃声が響き渡る。

 

ここはクレムリン正面、赤の広場へと続く通りの一つ、その脇路地。

もっと分かりやすく言えば、『表通りに出た瞬間、クレムリンから丸見えになる場所』。

ついでに言ってしまうと――恐ろしくてゴーネフらは試してすらいないが――、手鏡か砲隊鏡で広場の方向を見たなら、無謀な突撃で斃れた連邦軍歩兵隊の屍の山を見ることが出来るだろう。

 

「――この状況だぞ?既に同志先任将校達は揃って二階級特進だ。()()()()()(少佐)が取っている時点で末期状態だろう!」

「…お前さんの言うとおりだ。何より遮蔽物が無いのが痛い」

「国立博物館*2まで辿り着ければまだ何とかなるかもしれんが…」

 

クレムリン(城塞)

南側を流れるモスコー川は天然の堀の役割を果たし、残る二面――モスコーのクレムリン外壁はおおよそ三角形状を成している――の前には広場が広がる、ゴーネフらにとっては文字通り「城塞」。

 

「接近すらままならんな…。塹壕を掘りたいところだが」

「…お言葉ですが同志政治将校殿?我々が石畳を剥がし、穴掘りをするのを悠長に眺めてくれる帝国軍とお思いで?」

「全くもってその通り。いやはや、まさかモスコーで攻城戦をする羽目になろうとは」

 

ちなみにクレムリン西―北方向、彼らとは別の部隊でも全く同じ状況が広がっていたりする。

 

「だが、何もしない訳にもいかんだろう…。二年前のモスコー守備隊指揮官がどうなったか、知らぬわけではあるまい?」

「…まだ突撃を敢行した方がマシな気がしてきたよ、同志政治将校殿」

「奇遇だね同志少佐。私も全く同じことを考えていたところさ。…ふむ」

「どうした?何か良い手でも?」

「…どうにかして戦車隊に協力してもらえないだろうか。そうすれば接近できるかもしれない」

「俺の同期が郊外の戦車大隊にいたはずだ。連絡を取ってみる」

「頼んだ」

 

 

◇――◇――◇ ◇――◇――◇

 

「…連中、馬鹿なのか?」

 

帝国陸軍第507航空魔導大隊指揮官、マイヤー中佐は首を傾げた。

 

「砲火力も無く、魔導師相手に突撃など…兵が哀れでならん」

「同感であります、中佐殿」

 

コルディッツ副官の意見に首肯する彼の視線の先、そこには広場のあちらこちらに散らばる連邦軍歩兵の骸がある。

 

「それと出撃前に203大隊員に聞いたのですが、この城壁は魔導師の貫通術式で傷一つつかなかった逸品だそうで」

「…ますますもって連中が哀れだ。しっかり使わせてもらおう。(尖塔)の連中は何か言ってきているか?」

「はい、中佐殿。『先ほどから人っ子一人見えない。連中、逃げたのでは?』と」

「あのイワン共が諦めるものかね。引き続き、全周警戒を厳となせ」

「ハッ!」

 

…しかしまぁ。

()()()()()()()()()()()()()()()マイヤーは思う。

 

「流石は『白銀』。目の付け所が常人と違うな」

 

『クレムリンへの挺身突入』

搭乗前ブリーフィングでそれを聞かされた時、203大隊を除く全将兵が絶句した。捨て身の特攻か!?と思ったのはマイヤーだけではあるまい。

 

ターニャ・フォン・デグレチャフ大佐。

生きて叙勲するもの皆無と呼ばれていた銀翼突撃勲章を、開戦以来複数回受勲している化け物の中の化け物。だが、彼女と直接関わりを持つことになった魔導師は揃ってこう言っていた。

 

「共に戦場を駆ければ分かる。『どうりで生きて何回も銀翼突撃勲章をもらう訳だよ、あいつは』とね…」

 

そう語っていた時の友人が、やけに草臥れた表情だった理由も、今なら分かる。

 

「広場故に遮蔽物がなく、石畳故に塹壕も掘れず、か…。なるほど、連隊長殿はこれを分かっておられたのだな」

『そう言うことだよ中佐』

「!失礼いたしました大佐殿、通信機が入ったままでありました」

『構わんよ。むしろこちら(203)としては外の状況が分かるので助かる。…順調な様だね?』

「ハッ!連中、さっきから性懲りもなく歩兵で接近を試みておりますが、全て殲滅できております。まるで鴨撃ちですな」

『実に結構だが、油断はするな。…とは言え、モスコーの通りはクレムリンを中心に放射状に延びている。油断さえしなければ、接近される前に捕捉できるだろう』

「了解であります。…ところで、そちらの状況は?」

『実に順調だとも』

 

無線越しでも分かるほど、小さな大佐殿の声は弾んでいた。

 

◇――◇――◇ ◇――◇――◇

 

「外()順調な様だ」

 

臨時混成魔導連隊長、ターニャ・フォン・デグレチャフ大佐は副官のセレブリャコーフ中尉にそう告げた。

 

「それは何よりです。流石に小官も、今回ばかりは覚悟を決めておりましたが……」

「おっと、気を抜くは早いぞ中尉。何しろ迎えの馬車は早くても明朝0500(マルゴーマルマル)にしか来ないのだからな」

「はっ!失礼いたしました」

「ま、貴官の言うところも分からんではない」

 

何しろ連邦首都モスコー、更にその中心たるクレムリンなのだ。普通の歩兵や空挺作戦では絶対に成功しなかっただろう。

 

まず歩兵部隊の場合、そもそもモスコーまでたどり着けない。そのことは西暦世界のバルバロッサ作戦が証明している。よしんば攻略できたとしても、それまでに重要書類は持ち出されるか焼却され、否、クレムリン自体に火がかけられていることだろう。

ならば空挺降下ならばどうかと言うと、これはさらに困難極まる。無謀と断言しても良い。

なるほど歩兵部隊より素早く突入することは出来るだろう。

だが、空挺降下とはその実、脆い。風に流されて部隊は散り散りになるのがほぼ確実なうえ、重量のある装備、火力にも制限がある。その様な部隊が、敵国首都のど真ん中に降下作戦をしようものなら、そこにいるのが二線級の後方警備部隊だったとしても、成功はおぼつかない。

 

――ゆえに、この作戦は航空魔導師でしか実行不可能なのだ。

魔導師は歩兵の制圧能力、軽戦車程度の防御力、中口径榴弾砲程度の火力、そして降下猟兵のような、否、彼らにすら不可能なピンポイント降下をもなしうる兵科なのだ。

 

今回の作戦で見れば、まさに降下猟兵の上位互換と言えるだろう。

風に流されることなくピンポイントで突入し、降下途中の段階で榴弾砲クラスの火力をばら撒き、慌てて飛び出してきた警備部隊、衛兵の小銃ごときに貫通されない防御を有しているのだから。

そして、唯一の懸念事項であった『硬すぎるクレムリンの城壁』が『ミステル』という珍兵器でこじ開けられた時、この城塞の運命は決まった。

なにしろ突入を許してしまったが最後、もう手の施しようがないのが魔導師なのだから。屋内の魔導師とは、ハッキリ言ってしまえば『人しか入れない空間に乗り込んできた、人間サイズの軽戦車』にほかならない。

――これを、衛兵や歩兵でどうやって止めろと?

 

この点、書記長は運が無かったとしか言いようがない。

何しろ彼は、前線が遥か千キロ西に移動しても警戒を緩めず、クレムリン内部に歩兵2個大隊を配置させていたのだから。むしろ、普通に考えれば十分すぎるほど、過剰なまでに自身の身の安全を確保していたと言っても良い。――だが、相手が悪かった。

何しろ突っ込んできたのは開戦以来の古強者共揃い、各人が大魔導師クラスの怪物集団『帝国陸軍第203航空魔導大隊』だったのだから。

 

その結果が、ターニャらの前に広がる場景だった。

 

「副長、状況は?」

「ハッ、元老院宮殿(書記長室のある建物)は完全に制圧しました。中にいた職員はご指示のとおり、身体検査のうえ、およそ10人ごとのグループにして北門から退去させています」

「他の施設はどうか?」

「元老院宮殿を優先したため、遅れてはおりますが、今のところ抵抗は軽微とのこと」

「結構。…まぁ、前線後方千キロの首都に、我らに抗しうるほどの戦力を残しているとは思えんがね」

「大佐殿の仰るとおりでした…」

「聞いたかね諸君、これが『前回はともかく、今回もそう上手く行くとは…』と言っていた副長だぞ?」

 

ターニャの冗談に、部屋にいた隊員が揃って笑い声をあげる。

 

「ここは前回同様、帰還後は02秘蔵のボトルを干したいところだが?」

「お言葉ですが大佐殿。小官の棚は既に空っぽであります」

「だそうだ諸君」

 

その声に、今度は同じ室内はおろか、無線越しに他の中隊からもブーイングの声が上がる。

 

『騙されてはなりません大佐殿!02のことです。きっとどこかに隠し持っているに違いありません!』

『04に同意します。大佐殿、02の酒にかける情熱は常軌を逸しております。ここは帰還後、02宿舎の強制捜査が必要と意見具申いたします』

「貴様ら…!!」

 

ここはクレムリンの心臓。元老院宮殿にある『書記長執務室』。

ここに最短ルートで突入せんがために、ターニャは『ミステル』を二発、北東方向から叩き込んでもらったのだ。――なお、うち一発は城壁の前にあったラーネン廟に当たり、ものの見事に粉砕してしまったのだが…、まぁ、死者が安らかな眠りを望んだ結果だろう、そう言うことにしよう。

 

「諸君、あんまり副長を虐めてやるのはよしたまえ」

 

そこで提案なのだが、と我らが隊長殿はニヤリと笑う。

 

「現在の仕事が片付き次第、ここの厨房にお邪魔しようと思うのだが、どうかね?酒も肴も食料も、フォアグラの類もたんまりとあるぞ?」

「それが良いと思います、大佐殿!!」

「そういう訳で諸君、キビキビと荷造りをしてくれたまえ。明日の朝にはずらかるのだからな」

「「「「「了解!」」」」」

「…しかし、書記長を逃がしたのは痛いですな」

「運が良ければ、程度のものだったからな。あまり気にするな」

 

――ターニャ率いる第一中隊が突入した時、部屋の明かりは勿論、暖炉の火も明々と燃え上がっており、つい今しがたまで誰かがいたのは明白だった。

 

『まだ暖かい…上野介は近くにいるぞ!』

『コウズ…え、なんです?』

『この椅子冷えてますよ?』

『…いや、ついやってしまった伝統芸能だ。気にするな』

『はぁ…?』

 

そんなお約束(忠臣蔵)をターニャがやってしまうほどだったが、逃がしたものはしょうがない。実際冷えてたし。

その後、グランツ中尉が一階で地下通路入口を発見したが、ターニャは突入ではなく入口の爆破を命じた。

 

『宜しいので?』

『どこまで続くか分からん地下通路に突入など、正気の沙汰ではない。むしろ連邦の逆襲部隊が入ってくる方が危険だ。念入りに塞いでおくように』

『ハッ、直ちに』

『それと同種の通路がないか、全館くまなく捜索するように。発見次第、爆薬でも術式でも何でもいい。とにかく徹底的に塞ぐように』

『了解!』

 

そんなこんなで突入から2時間も経たぬうちに、クレムリンの中心は制圧された。

やはり戦線後方1,000キロの彼方にあり、ここ一年爆撃も食らってない首都の警戒レベルなどこの程度のものだろう、というターニャの読みは正解だった。

唯一の懸念は連邦の航空戦力だったが――

 

『…本当に高性能なんですね』

『…人は見た目によらないとは言いますが…。鎧袖一触ですな』

 

降下の最中、思わずと言った感じに呟く副官と副長を見て、ターニャも首肯したものだ。

――確かに、あの見た目で水平最高速770キロは詐欺だよなぁ、と。

それが高度10,000メートルから降ってきて、毎秒百発の20ミリ機関砲弾を撃ち込んでくるのだ。首都防空隊とはいえ、初見では対処のしようがないだろう。

燃料がギリギリと言うこともあり、ガーランデ中将たちは文字通り一撃で離脱していったが、熟練の航空魔導師たちにはそれで十分だった。

 

「しかし、逆に困りましたな」

「どうしたのだね副長?」

「大佐殿、これだけの資料です。押収して持ち帰るのは相当骨が折れるかと」

「ふむ…。床を剥ぐなり机を壊すなりして、搬送用の木箱を作らせろ。あとはノイマンがどうにかしてくれる(ヤツなら担いで持っていく)

「なるほど、その手がありましたな」

 

遠くで第四中隊長の声なき叫びが聞こえたような気がしたが、きっと気のせいに違いない。

 

「ところで通信室はどうだ?」

「残念ながら、通信機は斧で滅茶苦茶にされていたそうです。連邦にもできる奴がいるようですな」

「ふむ…ちなみにその壊れた通信機、持ち出すことは可能か?」

「確認させましょう。しかし何故そのような……、まさか?」

「そのまさかだよ、中佐。ここでは当然無理だが、参謀本部まで持ち帰れば復元できるやも知れん」

「承知しました、最優先で確認させましょう」

「頼むぞ。…ああ、ついでだ。破られた通信記録の類も全て頂戴しよう」

「はい?…お言葉ですが大佐殿、コレも、ですか?」

 

びりびりに破られ、あるいは短冊状に切り刻まれた紙片を両手でひらひらさせるセレブリャコーフ中尉の疑問は、この時代ならばごもっともだろう。

だがターニャは知っているのだ。

あの米帝様がやられた様に、切り刻んだ程度の隠滅処理では、頑張れば復元できてしまうことを。――中東の学生に出来たことを、帝国陸軍参謀本部に出来ぬ道理があるだろうか?

 

「とにかく資料と名の付くものは片端から押収しろ。無理そうなものは暖炉の前に並べておけ。私が確認したうえで、適宜暖炉に投げ込む」

「あぁ、寒いですものね」

「それもあるが、嫌がらせだよ中尉」

 

ターニャは知っている。

仕事の資料が丸ごと消えてなくなってしまったら、その部署は当分仕事にならない事を。

 

「『人の嫌がることを率先して』だ」

 

後にヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフは語る。

あの時の大佐殿は、とてもとても、それこそ大戦始まって以来一番楽しそうでした、と。

 

 

 

*1
この時点で、連邦はそれが無人機とは気づいていなかった

*2
赤の広場北側にある赤レンガ建築





>忠臣蔵
筆者が小さいころ(小学校低学年ころ?)、中村勘三郎さんがやってたのを見た気がする。雪の中の討ち入りを今でも覚えている。
…待て、私の歴史好きの原点あそこなのでは……?渋いな小1当時の私!?
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