…終わらなかったぜ
【機体各部解説】
【円盤翼】
ナレー:さて、ここからは機体解説に移ろう。まずは何と言っても「円盤翼」だ
ヤマモト:それ以前に胴体が無い件
ナレー:その通り、こいつの「円盤」はその実「主翼兼胴体」、厚いところでは厚さが1.2mある。ある研究者はシュワルベについて『尾翼の付いた全翼機の亜種』と表現しているぞ
レイ:…なるほど、まともじゃないことだけ分かりました
ナレー:当然、構造も在来の飛行機とまるで別物だ。具体的には左右各2分割、合計4分割で構成される「円盤」に、機首(操縦席等)と尾翼、プロペラやら動力延長軸を「差し込む」構造になっている
ヤマモト:断片的にもおかしな文言がチラホラしている件
ナレー:ちなみにA型とB型があるが、両者は搭載エンジンとこの「機首部分」以外は全く同一だ。生産性に配慮しているという
レイ:意外に合理的なところもあるんですね
ナレー:ところがぎっちょん、こいつの円盤は予想外にも合理的だ!まず量産性確保のために外板を「厚板」、即ちプレス加工で成形し、枚数を抑えることで工数削減を図っているぞ
ヤマモト:そもそもこの形状、プレス加工でもないと量産できないでしょうねえ…
レイ:そう言えば、昔見た書籍にはメタライト構造なんてのも出てましたが?
ナレー:ああ…あれな
ヤマモト:なんかすごく遠い目をしてますが
ナレー:研究者を散々悩ませた挙句、「試作機では取り入れていたようだが、大量生産向きではないということで、量産機では使っていない」と言うのが定説だ
レイ:定説っていうと…?
ナレー:そもそも『メタライトって何ぞや?』と言うのが問題でな。…ライヒ語ではないから何らかの造語らしいんだが、結局のところよく分かっていない
ヤマモト:えぇ…(困惑
ナレー:どうやら『バルサ材とアルミ鈑を用いた、ハニカム構造を有する特殊な外皮構造』らしいんだが…。残っている量産機にそのような構造は使用されていないのでよく分かっていない。「アルミ節約と強度向上、軽量化を実現する夢の構造」らしいんだが…
ヤマモト:そもそも厚さ1.2mある時点で、翼としてはかなりの強度では?
レイ:エンジン内蔵できる厚みですものね
ナレー:その辺も、謎多き『メタライト』が消えた一因かもしれない
【水平尾翼】
ナレー:次に尾翼に移ろう。まずは水平尾翼だ
ヤマモト:図面で見る限り、まだまともですねえ…(必死に垂直尾翼から目をそらしつつ
レイ:なお燃料消費に伴う重心移動に対処して、
ヤマモト:やっぱりネタが紛れ込んでるじゃないか!
ナレー:ちなみに残されたスケッチの中には、水平尾翼が『
ヤマモト:ちょっとオーパーツ入ってませんかねぇ…?
レイ:実機がまだマトモだったという驚愕の事実
【垂直尾翼】
ナレー:次に垂直尾翼だが…。見てくれ、こいつをどう思う?
ヤマモト:すごく…(垂直尾翼が)大きいです
レイ:下にも飛び出てますね。最近の戦闘機でもたまに見かける奴ですが……
ナレー:これには円盤翼の弱点が影響している
ヤマモト:弱点?
ナレー:そう、「仰角時にすこぶる安定性が悪い」と言う弱点が
レイ:それ駄目な奴!?
ナレー:考えてみて欲しい。通常の飛行機の場合、仰角時でも主翼と尾翼の間を通った風が垂直尾翼に当たるだろう?それが方向安定性をもたらしているんだ。
だが、「円盤翼の上にある垂直尾翼」の場合…
ヤマモト:仰角時にはすこぶる効きが悪そうですね
レイ:方向舵どころか安定を保つことすら難しそう
ナレー:実際、上面にしか垂直尾翼が無かった試作1号機が上昇テスト中に、2号機が着陸時に操縦不能に陥り、後者はそのまま墜落事故を起こした。このため、尾輪の高さも工夫したうえで、下面に設置できる最大限度の垂直尾翼を追加したそうだ
ヤマモト:胴体着陸の時とか引っかけそう
レイ:つんのめって操縦者が前方に投げ出されそうですよね
ナレー:良いところに気付いたな。それもあってか垂直尾翼は上下とも木製だ。胴体着陸時には飛散するようにと言う配慮、加えて金属資材の節約も図ったらしい
ヤマモト:ネタの集合体なくせに、ちょくちょく合理的で腹が立つ
【エンジン回り】
ナレー: 次にエンジン回りだが…はぁ
ヤマモト: おっ、どうしたどうした?
レイ: 溜息なんかついて、更年期か?
ナレー:違うわ!!…いや、シュワルベの中でも
ヤマモト:…今までも十分『迷』だったんですがそれは
レイ:これ以上がある…だと?
ナレー:そうなんだ。まずは一番マシなエンジン、過給機周りを見てみよう
ヤマモト:シュワルベのエンジンは当時帝国が実用化していた最大のエンジン、Wespe037、空冷3列星形21気筒エンジンを搭載しています
レイ:かなり開発に苦労したエンジンらしいですね
ナレー:そのあたりは過去の解説を見てもらうとして…。これを円盤翼に収めるにあたり、一番の問題は冷却だった
ヤマモト:上下は兎も角、左右側面は熱が籠りそうな形してますよね
レイ:どうやって解決したんでしょう
ナレー:まずは正面図を見て欲しい
ナレー:実は上図のうち、過給機空気取入口、中間冷却器空気取入口は操縦席寄りに開いている長方形の所だけなんだ
ヤマモト:え?じゃあエンジン正面の丸い穴は…?
ナレー:全てエンジン冷却用空気の取入口だ。図示はしてないが、強制冷却ファンも付いているぞ
ヤマモト:どんだけ!?
レイ:一応潤滑油冷却器もここにあるそうですが、ほぼほぼエンジン冷却用ですね
ナレー:それだけ冷却に気を使う必要があったということだ。工夫はエンジンナセル後端でも見ることが出来るぞ。こいつをよく見て欲しい。おかしなことに気付かないかな?
ヤマモト:あれ?これってもしかして…
レイ:エンジンナセル、途中でバッサリと終わってる!?
ナレー:正解!試作初号機では滑らかに円盤翼上面に接合するよう処理されていたらしいが、2号機からは図に見えるようにナセルを「断ち切り」、そこに【推力式排気管】を配置した。排気で焼かれるから、ここから後ろの外板は途中まで鋼板になっているぞ
ヤマモト:推力式排気管っていうと…
レイ:ロケット式と言ったりもするやつですね。機種にもよりますが、10キロ程度の速度向上効果を得られたものもあったようです
ナレー:まさにそれだ。もっともシュワルベの場合、主たる目的は『負圧によるエンジン冷却空気誘導』だったが
ヤマモト:そんなことできるんですか?
レイ:確か、幾つか類例があったような気がします。我が秋津洲皇国の5式戦闘機も同じような処理をしていませんでしたっけ
ナレー:これまた正解だ。ついでにシュワルベの場合、『ただでさえ三次元的曲線を描く円盤翼に、これまた三次元的造形のエンジンナセルを接合するなんて、恐ろしく量産に不向き』とタント技師が考えたというのも大きいだろう
ヤマモト:まぁ、そうでしょうねえ…
レイ:製図段階で相当苦労しそう
ナレー:加えて、この方法だと『カウルフラップ』が不要になるから、量産に適しているとも言える
ヤマモト:そうなんですか?
レイ:あれ、図面で見ると開閉機構が地味に複雑ですものねぇ…
ナレー:そうなんだ。だがシュワルベのやり方の場合、高出力時=冷却が必要な時は排気量の増加に伴い、負圧が増加してより大量に吸い出される。低出力時には排気量も少ないから負圧も抑えられて過冷却を防止できるという、実に理に適った、そしてカウルフラップと違って空気抵抗を生じないやり方となっている
ヤマモト:めっちゃ考えられてる!?
レイ:ところでナレー、これはなに?
ナレー:あぁ、気付いちゃったか。それは量産直前で追加された『摺動式冷却気調整口』だ
ヤマモト:…つまり?
ナレー:冷却ファンと負圧だけでは完璧じゃなかったらしい。
レイ:駄目じゃん
ナレー:だが、ただでは転ばないのが帝国の技術者だ。この『摺動式冷却気調整口』、有名なコマンドゲレートで制御されている。つまり自動化されているぞ!
ヤマモト:妙なところで技術力発揮するな!?
レイ:そもそもコマンドゲレート自体、帝国以外モノに出来なかったトンデモ技術なんですがそれは
ナレー:とまぁ、そういう理由(推進力、冷却空気の誘導に使用する)で排気タービンは採用していない。機械式の2段3速式を採用している
レイ:まぁ、ついに帝国は排気タービンを量産できずに終わってますからね
ヤマモト:試作機や実験的性格の機体にはちょくちょく積んでいますが…
ナレー:まぁ、工場で量産するのにはまた別の技術が必要と言うことだろう
ヤマモト:最近では「機械式でも十分な性能が出せた」って説もありますからね
レイ:排気タービンは場所を喰うし、相当重たいですからね。『P-47』なんて見てくださいよ。胴体内に排気タービンがあるのか、排気タービンにガワを付けたら胴体なのかってくらいに場所喰ってます
ナレー:連合王国が誇る『マリリン』も機械式だが高高度性能は十分あったからな。効率は兎も角、重量と場所を考えると機械式と一長一短と言うのが正確なのかも知れん
ナレー:さて、エンジンナセル周りでもお腹一杯になりそうだが、ここからが問題の『動力伝達機構』の話だ
ヤマモト:めっちゃ嫌な予感がする。
レイ:奇遇だな、私もだ。
ナレー:シュワルベの動力機構、それは分割型連結シャフト式動力延長軸と名付けられている
【分割型連結シャフト式動力延長軸】
ヤマモト:分割型…なんて?
レイ:分割型連結シャフト式動力延長軸…名前の時点で色々とアレですねえ…
ナレー:要するにエンジンからプロペラまでの延長軸の事だ。
――ただ、名前からお察しいただける通り、同時代の他国が如何に延長軸を頑丈な一本棒にするかに腐心していた時期に、帝国は
ヤマモト:…シレっとオーパーツじゃありませんか、それ?
レイ:具体的には?
ナレー:当時、延長軸が一本だけだと、曲げや捻じれが多方向に複雑に発生し、延長軸が長くなればなるほどその問題は大きくなり、最悪破断することを帝国は熟知していた。――その手の機体をほかの国より造っていたということだが
ヤマモト:まぁ、そうなるな
レイ:変なモノばっかり作るから…(呆れ
ナレー:そこでシュワルベで導入された分割型連結シャフト式動力延長軸は一本の延長軸を用いるのではなく、延長軸を分割された複数のシャフトで構成、ジョイント部分で曲げや捻じれを吸収する構造となっている
ヤマモト:…よく分からんけど、そんなことできるの?
レイ:出来たんでしょうねえ…多分
ナレー:シュワルベの延長軸は「内筒」と「外筒」の二重構造になっている。このうちエンジンからの動力を受けて回転するのは「内筒」だ。これが先にも述べた通り複数連結されており、そのジョイントとジョイント部分を支える架台をかなり頑丈に作り、さらに架台を保持する「外筒」をトーションボックス構造とする事で、振動やらに対処しているぞ。ちなみにこの「外筒」、そのまま主桁の役割をも果たしている。
――まさにシュワルベの
ヤマモト:キールって船の構造だと思うんですけど…
レイ:気にしたら負けよ
ナレー:ちなみにこの頭のおかしい構造を設計、量産したのは現在においてもライヒ有数の飛行機メーカー、特に飛行艇分野で有名な『ドゥーニエ社』だ
ヤマモト:…そう言えば『双発串形機』なんて試作してましたよね
レイ:あれも延長軸使ってましたよね
ナレー:うむ。シュワルベのも同系統…ただしシュワルベは2回ほど回転軸が90度クランクしているが
ヤマモト:そう言えば航空技術省主導のシュワルベに、どうしてドゥーニエ社が参加しているんです?
ナレー:例によって例の如く、だ…。
ヤマモト:え…
レイ:もしかしなくても?
ナレー:前代未聞の「長さ約6mかつクランク2回の延長軸」に頭を抱える開発陣に、どこぞの誰かが吹き込んだらしい。『ドゥーニエ社が技術を持ってるぞ』って
ヤマモト:ま た お 前 か
レイ:壊 れ る な ぁ
ナレー:持ってる方も持ってる方だがな。何しろこの時期のドゥーニエ社、『プロペラ角度変更
…特に後者なんて、90度横に倒せばシュワルベの動力伝達軸と同じ並びだぞ?
ヤマモト:もうヤダ帝国!?
レイ:変態はHENNTAIを呼ぶにちがいありませんね
ナレー:全く同感だ
ヤマモト:お前が言うな!?
ナレー:――しかも、この話には続き。それも
ヤマモト:え“…
ナレー:さっき言っただろう?『
レイ:ま、まさか…?
ナレー:さぁ君の目の前の箱は飾りかね?さっさと「V-22ドスプレイ」の協力メーカーを検索するんだ
ヤマモト:まさか…そんな、まさか!
レイ:こんなことがあって良いのか!?
ナレー:ドスプレイの設計に加わったドゥーニエ社エンジニアの言葉を借りれば――
動力伝達機構において、
ヤマモト/レイ:う、うわぁああああ!!??
ナレー:まぁ仕方のないことではある。何しろ分割型連結シャフト式動力延長軸の技術蓄積において、ドゥーニエ社の右に出るものはいないからな
ヤマモト:だとしても、こんなのってありかよ!?
レイ:変態は遺伝じゃったか……
ナレー:ちなみにドスプレイには『ブレード折り畳み機構』が備わっているが…
ヤマモト:ま、まさか…
ナレー:それもシュワルベの艦載型『Ta362
ヤマモト/レイ:う、うわぁああああ!!??
ナレー:さーて、続いては降着装置の話に移ろう。こちらも地味に面白いぞ
ヤマモト:なん…だと…?
レイ:まだネタがある……だと……。(ガクッ
ナレー:おいおい、『どこを切り取ってもネタしかない』シュワルベだぞ。
――こんなのまだ序の口だよ?
ヤマモト/レイ:う、うわぁああああ!!??
XF5Uの水平尾翼の事。よく見るとこれになっている。米帝ェ
ドゥーニエ社
西暦世界のドルニエ社。彼らの考案したヤバい飛行艇(本稿で取り上げたヤツ)の数々は世界の傑作機シリーズDo335 23ページに概要図が乗っています。こいつら頭おかしい。
分割型連結シャフト式動力延長軸
Do335に使われている技術。つまり史実準拠
●そして終わらなかった…だと?
……つ、続きはそのうち書くから許して……