意訳:資源がカンストしたので暇になった
統一歴1926年3月16日 午前10時
ルーシー連邦首都モスコー 秘密警察本部
「…流石にサービス過多かな?」
「はい?」
「いやなに、
――貴官からの意見具申を良しとする。
第203航空魔導大隊は現刻を以て敵集積地への攻撃を中止。
直ちにモスコーへ転進しこれを襲撃すべし。なお攻撃目標等は一任す。
「政治的配慮」については、参謀本部及び統合作戦本部にて対処する――
それが、3月15日深夜のターニャからの意見具申「首都直撃計画」への
そもそも、連邦の参戦は確実視されていた。
ゆえに、開戦前に魔導師部隊を連邦内部に潜入させ、開戦と同時に後方―― 物資集積地や鉄道、工場や司令部 ――を襲撃させることが考えられ、実行された。
誰が閃き、どんな集団が磨き上げ、どういう連中が実行に移したのかはご想像にお任せしよう。
ともあれ、第203航空魔導大隊は『空挺降下からの対地攻撃の訓練』のために帝国南部の飛行場より飛び立ったまでは良かったが、輸送機の航法士が『
あくまでも事故である。事故と言ったら事故なのである。
宣戦布告もない状態での国境侵犯など、栄えある帝国軍人がするわけがあるまい?
妙なルビが見える?それは貴官らの見間違いだ。
そしてこの「開戦劈頭の後方地域襲撃」計画策定時、モスコーは一度ならず目標候補に挙げられていた。
なにせ連邦の首都であり、工業地域であり、交通の要衝である。検討しない方がおかしかった。けれども「困難すぎる」と見なされ、結局目標リストからは外されていたのである。
だが、ここにもう一つの要因が加わった。
宙に浮いていた、戦略航空艦隊による『
この二つが連邦軍の猛攻を前にして、3月16日午前1時に悪魔的な合体を果たした。
「先行する魔導師によって対空戦闘力を削ぎ、しかる後、戦略爆撃機を突入させる。
また、戦略爆撃機に簡易の魔力反応検知器を積むことで航法設定の問題を解決する。
…どう思う?」
「…確かにそれならば、戦略爆撃の航法問題、対空砲火の問題を解決ないし低減できますが……」
「203へのリスクが高すぎるのでは?」
「では、他にこれを実行しうる部隊のアテがあるか?」
「…ありません」
「私もそう思う。そして前線への圧力軽減は急務だ。で、ある以上、これが最善の方法と信ずる」
ツェツィーリエとしては、仮に失敗したとしても「襲撃された」と言う事実だけで連邦軍に首都防衛のための戦力抽出を強要できるとの判断があった。それだけ、前線にかかる連邦軍の圧力はすさまじいものがあったのである。
かくして、悪魔的合体は15分足らずで「命令文」となり、第203航空魔導大隊に追加で下令された。
―― 現下の情勢を鑑み、延期されていた『
―― これに伴い、第203航空魔導大隊への先の命令を撤回し、代わりに以下の命令を発す。
攻撃命令。
同大隊は明払暁を以て、以下の目標を破壊すべし。手順、方法は一任す。
第一目標:モスコー近隣の連邦軍飛行場
第二目標:モスコー周辺の高射砲陣地
ただし、任務達成困難と現場指揮官が判断した場合、中止を許可する。その場合は
当然だが、大隊の面々は顔を顰めた。
ただでさえ困難極まりない首都襲撃なのに、それに加えて敵の反撃拠点たる飛行場と対空砲の破壊任務である。無謀すぎます、と言ったのはヴァイス少佐だけではなかった。
ターニャもまた危惧した。
彼女はかの国の首都にセスナで着陸できた例があることを知っていた。
だが、あれは
ゆえに彼女は「示威飛行程度ならば容易い」と思って意見具申しており、本格的な対都市爆撃は厳しいと思っていたのである。
無論、統合作戦本部も無茶は承知しているのだろう。なればこそ、命令文の最後に「大隊長判断での中止を許可する」とあるのだ。
とは言え、命令は命令である。
藪をつついて蛇を出してしまった気分を味わいつつも、ターニャは部隊を率いて東へ向かった。
だが、結果は――
「来たか!さすが帝国軍人は時間に正確だ。
――こちらピクシー01。貴隊を視認した」
『こちら
「ははっ、戦争が終わったら考えるとしましょう」
『そのときは是非とも招待してくれ。…で、今回のチップはどこに入れれば良いのかな?』
「生憎とシルクハットの持ち合わせがないので、代わりに共産主義に犯された哀れなモスコーにその
『そいつは良い考えだ。早速始めるとしよう。ところで、お邪魔な外野はどんな状況だ?』
「それについては心配ご無用。
『そいつは素晴らしいな!重ねて賛辞を述べさせてもらいたい。チップは弾ませてもらおう――全機、突入用意!!』
――そう、203は成し遂げてしまった。
彼らは夜明け直前に
連邦軍は東からの襲撃を予想しておらず、その警戒はもっぱら西の空に向けられていた。
しかもレーダーのない時代である。対空監視は目視と聴音によるしかなく、飛行機と比べ極めて小さく、かつ音も少ない魔導師による薄暮攻撃は完全な奇襲となった。
ギリギリまで察知されないよう、夜間に大きく迂回したターニャの作戦勝ちである。
付け加えると、道中ではついに連邦軍戦闘機に出くわさなかったので、「もしかしなくても連邦軍の防空網はザルか」という確信が生まれつつあった。
ともあれ、飛行場を吹き飛ばしたのち、モスコー市街地上空に突入した第203航空魔導大隊はそこでお世辞にも上手とは程遠い対空砲火「らしきもの」に遭遇した。
それらは三々五々に撃ってくるだけで、しかも方位も高度も的外れ。これで撃ち落とされる方が難しかった。
ターニャたちは知る由もないが、これには複数の原因があった。
まず、『開戦劈頭に首都が攻撃されるわけがない』と言う慢心。
次に革命以来、魔導師を粛正してきた結果、「魔導師の厄介さ」を忘却していた―― だからこそ、外国人義勇軍部隊を入れることを許したとも言える ――こと。
とどめは、首都防空を総括する『防空本部』が、戦闘機隊への迅速な指示のため、近郊の飛行場に併設されていたこと。
なるほど、合理的な考えと言えるだろう。
ただし、その飛行場が瓦礫の山になっていなければ、の話である。
これにより、モスコーに配備された高射砲はまともな射撃管制も射撃指示も受けられず、自分たちの目視で―― 当然、弾幕形成も敵機の未来位置予測も不可能 ――、めいめい勝手に対空射撃を開始せざるをえなかったのである。
当然、
むしろ、ターニャたちからすれば有難い限りである。何しろ、破壊目標が自分からノコノコ出てきて、盛大に所在を示してくれるのだから!
結果、襲撃から30分とたたず――
「困ったな。命令された目標を潰しきってしまったぞ」
――という「仕事がありません」状態に。
戦闘機も高射砲もない安全な空になってしまったため、第203航空魔導大隊は空中でのんびりと今後の行動を協議し始める始末。
その時、地上にはターニャを見つめる
ターニャたちは誰にも邪魔されず、追加の業務を決定する。
彼女は、この後に空軍の戦略爆撃機隊が来ることを知っていた。
そして連邦軍の防空網がほとんど機能していないことも知ってしまった。予想以上にザルだ、と。
ゆえに。
「大隊諸君。追加業務だ。空軍の連中が来る前の地ならしと行こう」
「と、おっしゃいますと?」
「第1、第2中隊は私に続け。連邦軍ご自慢の参謀本部、軍司令部を潰す。第3中隊は秘密警察本部、第4中隊はモスコー中央駅を破壊しろ」
「工場やクレムリンはどうするのです?」
「空軍に残しておこう。
我々は爆撃機の手の届かないところを掻き毟って差し上げるのだ。
実にお優しい心遣いだと思わんかね?」
そもそも、大型爆撃機からの都市爆撃は、民間人への誤爆が避けられない。
誘導技術が進歩した西暦世界の21世紀でさえそうなのだ。この時代の「落とすだけ」爆撃ではいったいどれほどの無辜の血が流れる事か!戦略爆撃が最終的に「都市無差別爆撃」となったのもむべなるかな。
ゆえに、「戦時国際法にのっとり正々堂々、クリーンな戦争をする」我ら第203航空魔導大隊は、市街地に近接しており、誤爆を誘発しかねない【モスコー中央駅】―― 駅利用者には申し訳ないが、交通機能の中枢ゆえ破壊せざるをえないし、住宅を狙うよりはマシでしょう ――や、市民を威圧する、それどころか避難しようとする市民を反動分子として撃ち殺しかねない【秘密警察】、ついでに防空指揮を回復されないよう【軍司令部】を狙うのだ。
そう、これは罪のない一般市民、モスコー市民を思いやった実に『人道的な攻撃』なのだ!!
モスコー中心部に纏まっている党本部だのクレムリンだの連邦人民宮殿だのは空軍に纏めて更地にしてもらおうじゃないか!
決して、対空砲が生き残っていそうなところを回避したわけではないし、戦時国際法で禁じられている民間人への攻撃(で問責されること)を押し付けたわけではないのだ!!
「では、各位行動を開始せよ。…ああ、空軍部隊の撤収後、落穂拾いをする可能性もあるのでそのつもりで」
「「「「「了解!」」」」」
◇◇◇
統一歴1926年3月16日 午前10時
ルーシー連邦首都モスコー
地下鉄
「どうしても駄目かね?」
「危険過ぎます同志長官!地上は目下攻撃を受けている最中なのですよ!?」
「そうか…」
内務人民委員部長官、ロリヤは残念そうに項垂れた。
30分前まで「
そのときの彼は『堪らなく滾る』天使から自分を引き裂こうとする部下の脳天を撃ち抜きたい衝動にかられた。
部下の判断は
このとき、モスコー上空では第203航空魔導大隊が見事な編隊飛行を行い、さらに帝国国歌の斉唱まで開始していた。
ご丁寧なことに、連邦の映画撮影所でかっぱらったレコードによる伴奏を伴って、同じく分捕り品の帝国国旗を掲げて、である!
ルーシー連邦、いな共産主義は「プロパガンダ」が大好きである。ゆえに「そういった映画」の撮影のために帝国国旗やレコードを潤沢に取り揃えていた。
ターニャたちが乗り込んでまず困ったのが「どのサイズの国旗が見栄えの良さと取り回しのしやすさを両立できるか」であった事からもそれは窺える。
そして、広場に帝国旗を突き立てるターニャたちの姿をロリヤが見続けていたならば、彼はきっとその場から梃子でも動かなくなり、帝国空軍戦略航空艦隊の爆撃で消し飛んでいたに違いない(むしろ消し飛んでしまえばよかったのに)。
その意味で彼の部下は実に正しかった。
…そうとは知らぬロリヤは、この命の恩人をラーゲリ送りにしてしまうのだが。
ともあれ、目下この地下鉄には同様に逃げ込んできて難を逃れた党の要職にある人間、さらには書記長の姿まであり、さながら連邦の頭脳が一堂に会しているような状況となっていた。
また、モスコーの地下鉄駅の多くは社会主義リアリズムの様式に沿った豪華な装飾が施されている。後に西側諸国から「地下宮殿」と呼ばれるほどの華麗さを誇るそこは、どこからともなく持ってこられた会議卓のおかげで、まるで日頃の党本部と同じような空間へと生まれ変わっていた。
いや、視界の端に建設途中と言うことで作業道具が転がっているところなどは、いつもの会議以上に『党にふさわしい空間』とも言えよう。
モスコー地下鉄。
それは連邦人民宮殿に引き続いて党が推し進める「モスコー近代化計画」の一環である。
予定では市内の人の移動を円滑ならしむる画期的なプランだったが、その地下構造物は今、当初の想定に無かった「地下壕」としての能力をいかんなく発揮していた。
…余談だがこのモスコー襲撃後、モスコーの地下鉄は全ての駅が当初から地下壕としての利用を念頭に置いた構造に変貌を遂げる。それだけの衝撃であり、被害であった。
それゆえ、そこにいる面々の表情は優れない。
「同志ロリヤ、君の部下の言うとおりだ。今出ていくのは危険すぎるだろう」
「同志書記長…」
「まさか開戦翌日に首都を襲撃されるとは…。軍は何をやっているのだ?」
「分かりません。残念ながら、ここにいるのは我々だけですから…」
「困ったことだ…。ほかの同志諸君の安否確認を急ぎたまえ」
「ハッ!」
敬礼とともに駆け出す彼は知らないのだろうな。
ロリヤは思う。
我らの同志書記長がこういう時に行う「安否確認」とは、要するに誰に責任を取らせるかを決めるための第一歩であることを、と。
「…同志書記長、我が軍の防空体制は完璧でした。それがこれほどの事態を招いている。…どこかで情報が洩れている可能性があります。至急、調査を行いたいのですが」
「…認めよう。君の言うとおり、これだけの奇襲を許したこと自体ありえない」
「ご理解いただけて何よりです…。では、さっそく」
「うむ、頼んだ」
◇◇◇
同時刻
モスコー上空
「このタイミングで魔導師だと!?」
ターニャ・フォン・デグレチャフは臍をかんだ。
予定をほぼ消化し、あとは空軍に丸投げするだけの簡単なお仕事だと言うのに!
折角見つけた、空軍の爆撃機を美しく撮影できるポイントが無駄になったではないか!!
「ハッ!2時方向より急速接近中!!」
「あれか…。チッ、仕方ない。大隊、対魔導師戦闘用意!――リッター01応答せよ」
『こちらリッター01、状況は把握している。攻撃は続行可能か?』
「投弾高度9,000以上なら可能だろう、どうぞ」
『了解した。――全機、高度9,000まで上昇せよ!』
「こちらも仕事に掛かろう。――大隊はこれより、敵魔導師の排除にあたる。最低でもリッターに近づけさせるな! 全騎突撃!! 」
このとき、ターニャにとっては幸運で、相手にとっては不幸だったのは彼我の練度差があまりにも開いていたことだろう。
そもそも、義勇軍派遣は極めて政治的な要請によるものであった。
自軍を出したくない連合王国と、最初から激戦区に送りたくない合州国の思惑の一致が、彼らをモスコーに送り込んだことはすでに述べた。
たしかに、連合王国がルーシー連邦首都の防空を重視していたのは事実である。
だが、ここで連合王国軍上層部は致命的な予測ミスを犯した。
彼らは、ルーシー連邦首都が魔導師に襲撃されるとすれば、それは秘匿性に特化した少数部隊によるものだろうと想像していたのである。
あるいは連邦軍航空隊に散々に叩かれ、かろうじて到達できた部隊だろう、と。
帝国が送り込んでくるのが爆撃機ならば、前線を飛び越える時点で察知されるだろうから、連邦軍戦闘機が対処すると思っていたのである。
連合王国はその程度の魔導師部隊ならば、練度にやや難のある義勇軍部隊と言えど「第42飛行師団第5連隊」、そう「連隊」ならば対処可能であり、かつ練度向上も図れると踏んでいたのだ。
彼らの予想は至極ごもっともであり、責めることは出来ない。
むしろ政治的要求と現実を考えた時、最良の判断でさえあった。
まさか連邦軍戦闘機隊の昼間の出撃が多すぎて、政治将校殿の座学が夜間に集中しているなど、誰が予想できるだろうか!!
しかもカリキュラムの都合上、ほとんど毎晩なんて!!
『しかも相手が悪すぎた』
後日、モスコーに派遣されていたサー・アイザック・ダスティン・ドレイクが提出した報告書のこの一文がすべてを表している。
『よりにもよって襲撃を行ったのは【ラインの悪魔】とそれが率いる第203航空魔導大隊(※懸命な諜報活動により、この時点で連合王国は部隊名まで特定していた)。
現時点の情報から、この大隊は構成員全員がネームドクラスの実力を有すると目されている。そんな連中に、連隊とは言うもののひよっこばかりの我が第42飛行師団第5連隊が勝てる道理が無い』
『義勇軍部隊はよく奮闘したが、彼我の練度差は絶望的なまでの開きがあった。
空戦を20分程度で切り上げ離脱したドレイク中佐の判断は適切なものであり、敵前逃亡だと騒ぐ連邦側の抗議は考慮するに値しない』
『小官は自信をもってそう断言する。
これが伯父の贔屓目で無いことは、連隊の
『現時点で判明しているモスコー被害状況と敵情を報告す。これを見れば、小官の、そして中佐の判断が間違っていないことは一目瞭然である』
かくして、モスコー上空に帝国空軍戦略航空艦隊は侵入を果たす。
懸念材料だった敵戦闘機も高射砲もなく、敵魔導師は第203航空魔導大隊と交戦中でこちらには手出しできない状況。
『訓練ならともかく、実戦ではありえないと思われていた理想的環境』
報告書にそう記載されることとなる状況で、彼らは民間人居住地を避け、徹底してルーシー連邦政府、軍関係施設を狙った攻撃を行った。行える余裕があった。
その攻撃を、後世の軍事関係者はこう評価する。
『戦略爆撃かくあれかし』
>必要な機材と小道具を連邦の映画撮影所で調達
原作小説で読んで「なるほど!」と手を打った場面。
>政治将校殿の座学
意外にソビエト兵からの評判は悪くなかったそうな。
曰く「話を聞いているだけで良いから」。…なるほど
>筆者の現況
イベント前日あたりで資源がカンストするよう調整する。
これぞ鎮守府運用の要諦なり
意訳:イベント終了時点で資源が残っていたら、全部大型建造で吐き出す。
レシピは4k-2k-5k-6kの20。
前回投稿の感想の数にびっくりしますた。今までで一番多いってどういうことなのwww
重ねて言いましょう!
私は健全です!普通です!!一般人です!!!淑女です!!!!
むさ苦しい男共よりスレンダーな美少女に目が行くというだけの話です!!(全部台無し