皇女戦記   作:ナレーさんの中の人

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次回投稿がいつになるか分からないといったな













あっさり書けた!(おい


戦闘団
突き進む帝国軍


統一歴1926年8月6日

連邦首都モスコー 某所

 

居並ぶ列席者の表情は青を通り越して白一色。

誰も彼もが不機嫌そうな同志ヨシフ書記長の顔色を窺い、互いの顔をチラチラ見ては視線を逸らす。いや、息をすることさえ憚っている始末。

 

…無理もない。

 

ルーシー連邦共産党最高軍事会議に所属するベルゼチョフは思った。

何と言ってもここ最近は帝国相手に負け続き。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()軍関係者の顔など、もはや貧血で倒れていないのが不思議なほどに白かった。

 

「戦況は?」

「な、南部オデーサを死守していた我が連邦軍ダキア方面軍ですが…」

「…聞こう、同志将軍」

「ほ、本早朝、こ、『これより帝国軍に吶喊す。偉大なる連邦と党に栄光あれ』と…」

 

その場の面々から、声にならぬため息が漏れる。

 

 

 

 

またか、と。

 

彼らがそう思ったのも無理はない。

 

 

 

 

7月20日

帝国国境付近ブレスト=リフースク要塞、ひと月余りの籠城戦の後全滅。

 

7月25日

連邦北部タルトゥにて、連邦軍北部方面軍司令部が降伏。

残存部隊は古都レ()ングラードへ壊走しているが、混乱のなか同士討ちすら演じている始末。

 

7月30日

連邦西部ミルスクにて、連邦軍西部方面軍主力が包囲される。

モスコーからの増援部隊もミルスク東方ボルソフで撃破されており、救出は絶望的。

 

 

 

 

 

連邦軍の被害は甚大であり、7月30日現在判明しているだけでも兵士約100万、航空機約3400機、砲約14,000門、()()()()()200箇所を喪失。

そしてこれは陸軍のみの損失であり、先のバルテック海海戦で組織的戦闘能力をほぼ喪失したバルテック艦隊の()()は含まれていない。

 

「…同志諸君、聞いてのとおりだ。早急に手を打つ必要がある」

 

同志ヨシフ書記長は会議の面々を見渡すが、誰一人として声をあげる者はいない。

なにしろ、同志書記長の質問に答えるのは危険が多い。

なるほど提言が上手くいけば権限と功績を得ることも出来よう。だが、失敗すれば家族揃ってラーゲリ送り…で済めば御の字という実態。

その事を考えれば、列席者らが覚悟を決めたまなざしで物音一つ立てず、同志ヨシフを凝視して動かないのも無理からぬことであっただろう。

 

しかも議題は破竹の勢いで進撃してくる帝国軍への対処である。

彼らは連邦の春季攻勢を頓挫させるにとどまらず、今や連邦領に怒涛の如く流れ込んできていた。これを止める方策など、そうそう簡単に見つかる訳もなく…。

 

 

 

 

「同志書記長、発言をよろしいでしょうか?」

 

 

 

 

「ッ」

ベルゼチョフは思わず息を呑んだ。いや、他の列席者も皆同様であった。

とんだ命知らずがいたものだ!…という驚きからではない。その理由は発言者が「()」だったからである。

 

「許可しよう。同志ロリヤ」

 

 

ラヴレンティ・パーパラヴィチ・ロリヤ。

 

 

同志ヨシフ書記長の腹心の部下にして、その『仮借なきボリシェヴィキ』と呼ばれる誠実さから同じ共産党員からも忌避され、そして恐怖されている存在。

そんな彼が発言を求めたことに、場の面々に衝撃に似たものが走ったのである。

 

「発想を変えるべきでしょう」

 

案の定、彼の口から出てきたのはとんでもない提案であった。

 

 

 

「我々は今や、帝国軍を引き込むことに成功しております。…ここは、彼らが下がれなくするべきかと」

「つまり?」

「国境地帯をくれてやりましょう。南部の穀倉地帯も多少入れれば、帝国の奴ら喰いつくに相違ありません」

 

…一理ある。

 

この時期の政治将校には珍しく、モスコー陸軍大学出身の生粋の陸軍人―― 彼の場合陸軍を経て共産党に入党し、そして最高軍事会議の席を得たというのが正しい ――であるベルゼチョフは感心した。

連邦の国土は広大だ。しかもインフラの発達が遅れ、特に帝国国境方面はまともな舗装道路が「モスコー街道」のみと言うありさま。

国家の発展という意味ではマイナスだが、現下の防衛戦においては極めて好都合と言えよう。帝国軍は道なき無限の荒野を歩き続けねばならず、対するこちらは策源地に近いところで戦えるということなのだから。

 

ましてや消耗戦に引きずり込めば連邦軍が絶対的に有利。

なるほど帝国軍は強い。前線からの報告によれば、彼我の損害比率は1対5より良くなることはないという。

…だが、無限に広がる縦深、無尽蔵とも言える兵士諸君、前線との距離が縮まった工場群から吐き出される兵器の群れ、これらを組み合わせればどうだ?

 

なるほど、最終的には勝てるだろう。

それまでに支払われるルーブルと人民の血の量を考えなければ、だが。

 

しかしながら、現状では最も確実な方法と言えるだろう。

もっとも――

 

「同志ロリヤ!いくらなんでも、国土を明け渡せというのは!」

「そうです!」

 

――生粋の軍人であればあるほど認めがたい方策なのだが。

 

『連邦軍野外教令』

他国で言うところの「教範」、その冒頭にはこんなことが記されている。

 

第一 労農赤軍の任務は、労働者農民の社会主義国家を防衛するにあり。従って赤軍は如何なる場合にありても吾が社会主義共和国連邦の()()(および)独立の不可侵権を保全せざるべからず。

(いやし)くも労働者農民の社会主義国家を犯すものあらば、吾人(ごじん)(その)何者たるを問わず、吾が強力なる連邦の全武力を挙げて(これ)()反撃し、進んで敵国領土内に侵襲(しんしゅう)すべし。

 

連邦軍将校たるもの、士官学校で教範を徹底的に叩き込まれる。

しかも冒頭ともなればなにをかいわんや。ロリヤの発言はこれを完全に無視した、生粋の軍人であればあるほど受け入れがたい内容なのだった。

…いや、軍人でなくとも認めがたい内容だろう。国土を明け渡すというのは。

場の面々が口々にロリヤに反論するのを眺めながら、ベルゼチョフは思った。

同時に彼は沈黙を守る。…多分、反論した連中は揃って彼の『黒革の手帳』(粛清対象リスト)に記されるのだろう、と思われたから。

 

「…ロリヤ、続けたまえ」

「ありがとうございます」

 

そして、我らが同志書記長は頭ごなしに否定するつもりはないらしい。

ロリヤの意見は続く。

 

後退による帝国軍への消耗戦の強要。

機動戦を得意とする帝国を、釘付けにするために都市を差し出すという判断。

督戦隊の派遣まですると聞いたときには、ベルゼチョフは思わずうなった。そこまでするのか、と。

 

なるほど有効な作戦だろう。

しかし、自国民をも駒とみるその冷血極まりないやり方には嫌悪感しか出てこない。いや、…あるいはそれくらいでなければ、『上』には上がれぬのだろうか?

 

だが、次の瞬間ロリヤの口から飛び出した言葉に、ベルゼチョフは仰天することとなる。

 

 

「同志書記長閣下、その代わりと言っては恐縮なのですが、お願いがあるのです」

 

 

…この状況下で、お願いだと!?

愕然とするベルゼチョフの方には目もくれず、何やら興奮した表情でロリヤは続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのモスコー襲撃犯を、…いえ、あの幼女だけでも私の手で裁かせていただきたく思います!!!」

 

 

 

 

 

 

…ああ、なるほど。

ベルゼチョフを含む、その場にいる全員が納得した。

もっとストレートな感情を言ってしまえば、『道理でやる気十分なわけだこの変態め!』である。

 

 

確かに、あらゆる人間には欠点がある。

聖人君子などそうそういないのだ。

それは自然の摂理とも言える常識であり、この場にいる人間たちは十分知っている。

 

だが、だがしかしである。

 

 

 

 

 

この男、欠点がいささか以上に飛びぬけている!!

 

 

 

 

 

それは連邦の共産党員ならばほとんど知っている「悪癖」であり、市民に恐怖をまき散らしているが、誰にも止められない。

モスコー警察に()()失踪の通報があった際、彼らがまず確認するのが同志ロリヤの所在と言うのだから筋金入りだろう。そして当該時刻に同志ロリヤがモスコーに()()()()()()()()確認されれば捜査が始まるという…。

なにせ下手をすれば通報した側()行方不明になったり、数日後にヴォルガ河に浮かんでいたりするくらいなのだ。彼らを臆病と謗ることは出来まい…。

 

「…同志ロリヤ、君の嗜好に適ったのかね?」

 

そう問いかける―― 心なしか、距離を取っているように見える ――同志書記長でさえ、娘を彼の視界内に決して入れないよう、細心の注意を払っているというのは共産党噂話の一つであり、事実である。

他の共産党員は言うまでもないだろう。娘がかわいいと心配になるのは万国共通の親心だが、ことルーシー連邦では意味合いと深刻さが異なるのだ。

 

 

「はい!あれこそわが理想であります!!

ぜひとも、是非とも我が下で喘がせてみたいものです!!!」

 

 

声高らかにそう宣う姿は、まるで敬虔な信徒のよう。

…だが内容が内容だけに、場の面々は思わず顔を顰める。

はっきり言って、薬物を決めた中毒者もかくや、と言わんばかりの熱狂がこのときの内務人民委員長の顔には張り付けられていたからである。

 

…こんなのでも仕事が出来れば評価される連邦の人事評価制度を褒めるべきなのか、それともこんな変態が国家中枢にいる現実を憂うべきか…。

 

本気で悩みだす内心とは裏腹に、話は進む。

 

「…しかし、かの部隊は帝国本土に帰還したと聞くが?」

「問題ありません同志書記長。泥沼にはまればはまるほど、帝国は増援を送り込んでくるに違いありません。さすればかの部隊も出てくることでしょう。…それを一網打尽にすればよいのです」

「…さすればわが連邦の勝利となる、と?」

「左様でございます。…同志書記長、どうか、どうかご決断を」

 

そして、変態は賭けに勝つ。

 

「……よろしい、憂いを取り除けるのであれば許そう」

「おお、感謝いたします!同志書記長!!」

 

 

 

その同志ロリヤ(変態)の興奮した眼差しに、ベルゼチョフは確信する。

帝国軍が健在な限り、モスコーの幼女失踪事件は減少するに違いない、と。…まぁ、()()()()事件発生数はもとより皆無に等しいのだが。

彼はこの戦争が始まって初めて、帝国人を哀れんだ。

 

 

 

…どこの誰かは知らんが、帝国の幼女将校とやらも可哀そうに……、と。

 

 

 

◇◇◇

 

同時刻

帝都ベルン近郊

帝国陸軍所管 ポズダム演習場

 

 

「ッ!?」

 

 

ターニャ・フォン・デグレチャフ大佐は急にこみ上げてきた悪寒に震えあがった。

 

「大佐殿、どうされたのです?」

「い、いや、何か急に悪寒がしてな…」

「大丈夫ですか?医務室に薬を頼むことも出来ますが…?」

「…いや、いい。それにはおよばん」

 

それに――

 

と、第203航空魔導大隊大隊長は気を取り直して上を見上げる。

 

 

「あのヴァイス少佐達が一方的に押し込まれる光景など、なかなか見られるものではないからな」

 

 

…大佐殿ならお一人で出来そうですが――」

「何か言ったか?」

「――ハッ!いいえ、なにも!!」

 

実に賢明なセレブリャコーフ大尉も見上げる先、そこには驚くべき光景が広がっていた。

 

 

 

 

「ハハハッ!!なんですか少佐殿!?歴戦の203とやらはこの程度ですか!」

「くそっ!調子に乗るな新入り!!」

「その言葉そっくりそのまま…そこだッ!!」

「グワーッッ!!!」

「ノイマン!?…くっ、ピクシー11、第3中隊を引き継げ!!」

「りょ、了解!」

 

「おや、おしゃべりとは余裕ですね?」

「っ!?」

 

()()()()()()()声に、彼は己の運命を悟る。

 

 

 

 

 

「「「副隊長―――!!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…不甲斐ない。…これは再訓練が必要だな」

「だ、大隊長殿?」

「ああ、心配いらんよヴィーシャ、貴官を仲間はずれにはしないとも」

「あ、あはは…ですよねー

 

 

 

この日、第203航空魔導大隊古参メンバーは、補充された()第4中隊に完敗を喫することとなる……。

 

 

 

◇◇◇

 

 

話はひと月余り前、東部戦線から帰還した直後に遡る。

 

 

この当時、ターニャ・フォン・デグレチャフは東部戦線での勇戦と、それ以前の戦訓から作成した『今次大戦における部隊運用と作戦機動』が評価されて大佐に昇進していた。

 

そう、大佐である。

 

通常ならば連隊長、海軍だったら艦長に相当する階級である。

少なくとも大隊長の職位にあるものの有する階級ではない。よって異動は時間の問題であり、夢にまで見た中央勤務も秒読み段階だと踏んでいたのである。

 

まさに前途は洋々と言えた。

ついでに帝都に帰還してからというもの、護衛という名目で皇女摂政宮ツェツィーリエ・フォン・プロイツフェルンのお供をすることがしばしばあり……、要するに、多方面に顔を売ることに成功していた。

 

「このところ皇女殿下が引き連れているのはいったい誰だ?」

「あれこそ生ける銀翼突撃勲章、ターニャ・フォン・デグレチャフ大佐だ」

「おお、あれが!あの歳で大佐とはすさまじいな…」

「ウム、それに見ての通り、皇女殿下の覚えもめでたいと聞くぞ」

「ほう…それはそれは……」

 

そんな声がちらほらと聞こえてくるに至り、彼女は自分の前途は明るいと確信するに至る。だが、いやだからこそ、彼女にとって決して忘れてはならない業務があった。

 

そう、「引き継ぎ」である。

 

部署移動の際、あとに厄介ごとを残す社会人の何と多いことか!

頑固な地権者との協議だとか、土地収用だとか立ち退きだとか、そういう案件ばかり残しやがってあの野郎…、え?なんか偏っている?…気のせいでしょう。

 

 

 

と、ともかく模範的社会人、企業人を自任するターニャ・フォン・デグレチャフ大佐は断言する。「立つ鳥跡を濁さず」の言葉どおり、203航空魔導大隊長引き継ぎも万全ならしめねばならぬ、と。

 

…まぁ、彼女の場合、それが自分自身の評価につながるからという、かなり利己的な考えに基づいているのであるが。

 

そういう訳で、彼女は203とともに帝都に帰還してからというもの、各方面との打ち合わせの類にはかならず『ヴァイス少佐』を帯同した。

ターニャ自身が異常な昇進スピードなので忘れそうになるが、彼をはじめとする第203航空魔導大隊部隊員の昇進スピードも帝国軍の通例と比較すればかなり早い方に入る。

その筆頭であり、階級も少佐と言うことで大隊長を引き継ぐ要素は揃っている。さらにターニャの推薦もあると来れば、彼が次期大隊長になるのはほぼ確実といえた。

 

そして「帝国軍」という巨大組織といえども人の集まりである。

その中で大隊を円滑に運営していくためには、関わりのある人間と顔を繋いでおくに越したことはない。自分の経験から、彼女はそう確信してやまない。

だからこそ、今日も今日とて彼女はヴァイス少佐を引き連れて、参謀本部へ赴いたのだ。

 

 

 

その目的は単純明快。

 

 

 

 

 

一個中隊(損耗)の補充を求ム』

 

 

 

 

 

「…これはいったい何の冗談だね、大佐?」

 

この時点で、同席しているヴァイス少佐は後悔しつつあった。

さもありなん。

親愛なる大隊長殿の『ちょっと付いてきてくれ』という言葉に従ってみれば、着いた先の重厚な扉を大隊長殿は実に慣れた感じでノック。ヴァイス少佐が見上げてみれば、そこにあったのは燦然と輝く『戦務参謀次長室』なるプレート。

かくして、何の心構えをする猶予も与えられず、ヴァイスは前線将校からすれば雲の上の存在である戦務参謀次長と対面を果たすこととなった。心臓に悪いことこの上ない。

 

――なお、頻繁過ぎて彼らは感覚がマヒしていることがある。…それは、彼らの駐屯地にはゼートゥーア以上の存在が入り浸っているということである。

 

 

「はい、いいえ。冗談ではございません」

「この時期に補充魔導中隊が欲しい、それも出来れば練度十分な部隊を、だと?

…もう一度言わせてもらおう。正気かね?それとも冗談の類かね?」

 

 

だが、その雲の上の存在が不機嫌な顔を隠そうともしていないともなれば、ヴァイス少佐の胃痛もやむなしか。なんと言っても、相手は帝国軍に2人しかいない次長なのである。

だが――

 

「正気ですし、本気であります。もとより損耗の補充は早急になされる必要があります。それが参謀本部直轄の特殊な部隊であればなおのことかと」

「損耗だと?貴官の第203航空魔導大隊は精鋭揃いで、損失らしい損失は無いと聞いているが」

「ご冗談を!閣下、閣下ほどの方ならご存じのことでしょう。たとえ個々の戦闘における損耗が軽微であっても、時間と共に積み重なると膨大なものとなることくらい!」

「…なるほど。結成から今までに一個中隊がすり減ってしまったと?」

「ハッ、その通りであります」

 

――…我らが大隊長殿の心臓には剣でも生えているらしい。

しかも大隊長は「一個中隊の損失」と言ったが、実のところそこまでの損失は出ていない。負傷による長期入院やら病気休職を全部差し引いた、「即時戦闘可能」な部隊が3個中隊少々というのが正確な数字であり、一個中隊の補充と言うのはいささか贅沢な要望ではないか。

もしターニャがその考えを聞いていたら、副隊長を一喝したに違いない。

 

「甘い!甘すぎる!!」と。

 

なにせ軍隊とて官僚組織である。

である以上、要求したところで与えられるものは半分程度(予算要望の半額になるのがお役所)と覚悟した方が良い。2個小隊が必要である以上、1個中隊くらいは要求せねばならぬと彼女は考えていたのである。

 

だが、ゼートゥーア中将は盛大な溜息をついた。

 

「この戦況で一個中隊とは…。無茶を言う」

「必要なものを要請したまでであります」

「大佐、貴官なら知っているものと思っていたが、使える魔導部隊はほとんど前線に投入済みだ」

 

だが、作戦局からはそれでも足りぬという声すら上がっている。

本音を言えば、203大隊だって早期に戦線復帰させたいところなのだ。

彼女たちの武勲が巨大であり、かつ連戦続きで休養が必要だと認められ、さらに「皇女殿下のお気に入り」だからこそ帝都での休養が認められている部分がある。

それに加えて更なる増強だと?

戦務参謀次長は頭を抱えた。

 

「言うまでもないが、魔導部隊は急拡張がなされているが、それでもなお前線からは足りないという悲鳴のような声が連日のように届けられていることを理解したまえ」

「それほどに、深刻なのでありますか?」

「第203航空魔導大隊が編成されたときとは状況が異なる。魔導師の不足は深刻そのものだ。東部方面()()()()での奪い合いに近い」

 

 

 

そう言って、戦務参謀次長は語り始める…。

 

 

 

 




新章もよろしくお願いいたします。


■■
参考文献
田村尚也2015『各国陸軍の教範を読む』イカロス出版
※同一筆者が「歴史群像」で連載したものをまとめ、加筆修正を加えたもの。ざっと350ページあり、寝る前の読書に最適(ヤマモトレイ評)。
親戚の子供との雪合戦には大いに役立つが、日常生活の役には立たない。

【連邦軍野外教令】
『赤軍野外教令』を抜粋加筆。と、言っても「ソヴィエト」をに書き換えた程度でほぼそのまま。つまり事実。

【同志書記長でさえ、自分の娘をロリヤと会わせたがらない】
なおヨシフおじさんの娘の場合、ベリヤの膝の上に座っている写真が残されている。
うまく嗜好を隠していたのかもしれないが、ぜったいベリヤの脳内は煩悩にまみれていたと思う(確信

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