ガールズバンドの子たちに甘やかされる日常【完結】   作:薮椿

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 遂にニートくんが外に!


さよひなに甘やかされる(後編)

「いいですね那須原さん。もし外の空気を吸って体調が悪くなったり、歩き続けて疲れることがあれば、すぐ私と日菜に言ってください。早急に弦巻家系列の病院に連絡を入れますので。ちなみにどれだけ予約が入っていようとも、あなたを優先的に診察してもらえるように手筈は整っていますから安心してください」

「安心できないから!! 僕なんかより他の患者さんを見てあげて!!」

「自分より他人を優先するなんて、相変わらずあなたはお優しい人……」

「いやいや、普通に予約順なだけだから……」

 

 

 むしろ相変わらずはこっちのセリフで、ちょっと外に出るだけでもこの過保護具合。心配してくれるのはもちろん嬉しいんだけど、これだと僕の体調を気遣うばかりでデートにならない気がする。それに全世界から有能な医者が集まると言われている弦巻病院まで抑えてあるなんて、逆に体調を悪くして行ってあげなきゃ損に思えちゃうよ……。

 

 僕は氷川姉妹に連れられ、遂に外出を果たした。これまではガールズバンドのみんなから外に出ることを禁止されていたため……というか、そもそも外に出る用事がなかったため、こうして外の土を自分の足で踏み締めるのは久しぶりだ。何か欲しいモノがあっても、みんなが先読みして買ってくれるから僕が外に出る必要はない。それにみんなに買ってきてもらうのが憚られるモノ、例えばR指定の本やゲームは通販を利用すればいい。料理はみんなが作ってくれるし、外に出る必要は全くなかったんだ。

 

 そんな状況で外に出た感想は、とにかく目が疲れる。

 これまでずっと家にいたためか、遠くの景色を見るという行為が久々だ。だからこそ、周りの情報をインプットする処理が僕の中で追いつかない。家の中はあらゆるモノがいつも決まった場所に置かれているため、周りの状況変化がない。それに慣れてしまっているためか、目まぐるしく変わる状況に目も脳もメモリの使用量が半端ないことになってるんだ。

 

 

「秋人くん大丈夫? こんなところでへばってたら、今日のデート全然楽しめないよ?」

「そうだね、2人に満足してもらえるように頑張るよ」

「那須原さんの心意気は嬉しいですが、日菜、あまりこの方の負担になるような行動はしないように。私たちにとって、この方の健康と安全が第一なのだから」

「分かってるって! 男の子だからと言って荷物持ちにはしないから安心して。それと、秋人くんが気になるモノがあったらあたしたちが好きなだけ買ってあげるから。最近パスパレの活動が軌道に乗ってきて、お金もたくさんあるし」

 

 

 なんか女の子に働かせてる最低野郎みたいで心が痛いんだけど……。いや、生活必需品から料理の食材、趣向品に至るまで全部買ってきてもらっているのに、そう思うのはもはや今更か。むしろ、日頃みんなにお世話されっぱなしだから、今日はその恩返しができるといいな。僕と一緒にデートをして楽しいのかは分からないけど、せめて2人が退屈な思いをしないように頑張ろう!

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 僕たちは早速街へと繰り出した。

 ショッピングモール街のためか、やたらと若者が多い。もう歩いているだけでも、陰キャの僕は陽キャたちの楽しそうな雰囲気に押し潰されそうだ。周りは僕のことなんて気にしちゃいないどころか目にすら入っていないだろうけど、僕の場違い感が半端ないよこれ……。さっき紗夜ちゃんと日菜ちゃんを喜ばせようと意気込んだばかりなのに、もう挫折しそうだ。

 

 

「ねぇねぇ秋人くん! このゲームって面白い? CMや雑誌での宣伝が凄いから、ちょっと気になってるんだよね」

「あっ、これか。うん。1人用のストーリーモードも、複数人の対戦もどっちも面白いよ」

「それでしたら、近いうちにみんなで遊びましょう。那須原さんに手取り足取り教えてもらいながら……」

「なんで少し含みのある言い方なの……? それに、紗夜ちゃんってゲームやるんだね」

「いやいや、お姉ちゃんは隠れゲーマーだよ。あこちゃんと燐子ちゃんがやってる、NFOだっけ? 最近それにハマっちゃってるから」

「知ってたの!? あなたに話したことはないのに……」

「お姉ちゃんのことなら何でもお見通しだって! 秋人くんと一緒にゲームがしたいから、コントローラーを握ってゆっくり遊べるRPGでゲーム慣れしてるんだよね?」

「そんなことまで……。当たりだから何も言い返せないわ……」

「あたしもゲームは大好きだから、いつか秋人くんとお姉ちゃんと一緒にやりたいよ」

 

 

 とても単純な感想だけど、今もの凄く楽しい。

 何が楽しいって、2人が僕の趣味に合わせて会話をしてくれることだ。しかも紗夜ちゃんは僕と一緒にゲームがしたいがために、日々ゲームを嗜みながらも慣れようとしているらしい。僕は外に出ないせいか、会話で発揮できる話題がオタク趣味かSNS、ネットのまとめサイトで得た知識くらいしかない。紗夜ちゃんの印象的にゲームもしなければネットに入り浸ったりもしないだろうし、わざわざ僕に合わせてくれるのがありがたいと言うべきか、余計な時間を使わせて申し訳ないと思うべきか……。

 

 

「じゃあまずはここのゲーム屋さんに入ってみようよ! 見たところレトロゲームもたくさんあるみたいだし、楽しみだね」

「そうだね―――――ん? あれは……」

 

 

 ゲームショップから見たことのある女の子2人が出てきた。

 1人はツインテのロリっ子、宇田川あこちゃん。もう1人は綺麗な黒髪にスタイル抜群の白金燐子ちゃんだ。

 

 

「そっか、2人もゲーム好きだもんね。お~~~い――――むぐっ!!」

「ちょっと那須原さん!? 何をしているのですか!?」

「わわっ、お姉ちゃん、そっちから秋人君を抱きしめて! あたしはこっちから……」

「えっ、2人共!? んっ、ぐっ……」

 

 

 どうしてこうなったのかは分からない。気付いたら僕は紗夜ちゃんと日菜ちゃんにサンドイッチにされていた。

 もう何度も味わっている感触だけど、女の子の象徴ともいえる胸がね……。僕の身体はみんなより一回り以上小さいため、背もそこそこ高くてスタイルのいい2人に挟まれたら、周りからは僕の存在が包み隠されてしまう。しかも背丈の差もあってか、高低差のないところで抱きしめられると僕の顔が丁度女の子の胸に押し潰されちゃうんだよね……。

 

 息苦しいけど気持ちいい。これが生き地獄ってやつ……?

 ていうか、どうしていきなりこんなことを!?

 

 

「何をしているのですか那須原さん! あなたは本来家にいなければならないお方なんですから、軽率に誰かに声をかけられては困ります!」

「あちゃ~。あこちゃんと燐子ちゃん、こっちに気付いたみたいだよ。秋人くん、苦しいかもしれないけどちょっと我慢してね」

「うっ、ぐぅ……」

 

 

 ダメだ、2人の胸に押し潰されて呻き声しか出せない。女の子の胸で圧死しそうになるなんて、幸せ者なのかお気の毒なのか……。どちらにせよ、興奮が漲って居ても立っても居られなくなっているのは確かだ。

 

 そもそも、そこらの物陰に僕だけを隠れさせるという選択肢はなかったのだろうか? そうすればわざわざ2人で抱き合う必要もないうえに、僕が女の子の胸で生死の境を彷徨うこともなかったはずだ。でもまぁ、これはこれで悪くはない……かな?

 

 

「紗夜さんにひなちん、やっほーっ!」

「やっほーあこちゃん! 燐子ちゃんも!」

「こ、こんにちは。お二人は……このゲームショップに?」

「え、えぇ、実は少し興味がありまして……」

 

 

 遂に僕たちはあこちゃんと燐子ちゃんの2人とエンカウントした。とは言っても、僕は氷川姉妹によって包み込まれているため、2人は僕がいるなんて想像もしていないだろう。今この瞬間だけは、自分がチビで良かったと思ってるよ。僕が一般の思春期男子と同じ成長過程を辿っていたら、氷川姉妹の身体に隠れることができず、間違いなくここでアウトだったはず。そうなればガールズバンド全体に連絡が行き渡り、家に連れ戻されることは必至だろう。

 

 

「ひなちんはともかく、紗夜さんがゲームに興味津々なんて意外かも。あっ、もしかしてNFOの影響……ですか?」

「そ、そうね。それに那須原さんがゲーム好きですから、私もある程度の知識は身に着けておこうかと……」

「そうなんですね! だったらNFO以外でも、あこたちと一緒に遊びましょうよ!」

「それ、あたしもさんせーい! パスパレのみんなはゲームをする人がいないから、こうしてガールズバンドのみんなでゲームをするのは るんっ♪ だよね!」

 

 

 紗夜ちゃん、ちょっと堅くなってるけど大丈夫かな? 元々そこまで緊張するタイプには見えないんだけど、今は切羽詰まっているからか声が若干高めだ。見るからにお堅い雰囲気だから、お芝居とかは苦手そうだもんね……。

 

 対して日菜ちゃんは芸能界でアイドルをしていることもあってか、僕を匿いながらもあこちゃんとの会話をいつも通りに熟している。さすが天才と言われる存在、突発的な演技もお手の物らしい。

 

 2人が頑張ってくれているのは嬉しいんだけど、2人の身体の僅かな隙間から、燐子ちゃんが不思議そうな顔をしているのが見えた。

 もしかして、気付かれちゃった……??

 

 

「あ、あの、氷川さんたち、近くないですか……? 近いからどう、ということではないですけど……」

「そ、そそそうですか?? し、姉妹の距離感はこんな感じだと思いますが……」

 

 

 く、苦しいよ紗夜ちゃん!? 動揺してるのが目に見えて明らかなんだけど!?

 燐子ちゃんのあまりの察しの良さにも驚いてしまったが、幸いにも僕の存在には気付いていないみたい。でも少しでも紗夜ちゃんと日菜ちゃんが動けば僕の身体がチラ見する可能性はあるため、ここは何としてでも2人に耐え抜いてもらうしかない。つまり、僕はまだ氷川姉妹のサンドイッチを堪能できるって訳だ。まぁ、状況が状況だから楽しんでいる余裕なんてないんだけど……。

 

 

「あたしとお姉ちゃんは仲良しこよしだから、さっきまで手を繋いで歩いてたもんね?」

「み、道の真ん中でそんな恥ずかしいこと――――い、いえ、そうね、そうだったわね」

「氷川さん、いつもより声が高いような……? 大丈夫……ですか?」

「大丈夫よ本当に! え、えぇ、大丈夫……」

 

 

 せっかく日菜ちゃんが自然にアシストしてくれたのに、紗夜ちゃんが緊張しっぱなしのせいでプラマイゼロ、いや、むしろ不自然に見えてしまう。しかも燐子ちゃんにまでテンパっていることを心配される始末。紗夜ちゃんって嘘を吐いたり演技をするのが苦手そうなイメージだったけど、ここまで取り乱すとはね……。

 

 

「ん~? それにしても紗夜さんとひなちんが近すぎるような……。抱きしめ合っていると言った方がいいかも……?」

「それだけあたしとお姉ちゃんの絆が深いってことだよ! あこちゃんと燐子ちゃんも仲が良いでしょ? だったら一度でいいから手を繋いで歩いたりしてみなよ。相手のことをもっと好きになれるから!」

「えぇっ!? あことりんりんが!?」

「そ、それは恥ずかしい……い、いや、あこちゃんと手を繋ぐのがイヤとか、そういう意味ではなくて……!!」

「あこもりんりんと同じだけど、いざ繋ぐとなると……。うぅ、恥ずかしい……」

 

 

 2人は赤面しながらそわそわしている。そこはかとなく漂う桃色の百合オーラは、一部界隈の人が見たら悶絶しそうだ。あこちゃんと燐子ちゃん、純粋っ子同士か……うん、いいかも。

 

 そんなことはどうでもよくて、2人が怯んでいる間にここを離脱しよう。日菜ちゃんもそれが目当てだったようで、紗夜ちゃんを目配りで諭し、僕を身体で挟み込んだままこの場を脱出した。この体勢だと歩きにくくてカニ歩きになってしまい、周りの人の目が痛かったけど、最悪あこちゃんと燐子ちゃんにバレなければいいのでこれでいい。

 

 そして、当の本人たち2人は、僕たちが目の前からいなくっても顔を真っ赤にしたまま俯いていた。

 なんかとてつもなく申し訳ないことをしたから、後で謝っておこう……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「ふぅ~。何とか切り抜けられたね。燐子ちゃんの察しが良くてヒヤヒヤしたよ~」

「こうなると、知り合いが行きそうな場所は避けるべきね。そうなると、喫茶店や映画館に居座るのが無難なところかしら……?」

「でも同じところにいたら、デートにならないんじゃ……。せっかく僕を誘ってくれたのに、僕のせいで行き先が限定されるのは申し訳ないけど……」

「あたしはそれでもいいけどね。秋人くんと一緒にいられれば、それはどこでもデートだよ!」

「そうですよ。私たちの一番の楽しみは、買い物でもお食事でもない、あなたと一緒にいることなんですから」

「そ、そっか、ありがとう」

 

 

 こうやって唐突に自分への好意を示されると、心がくすぐられて吃ってしまう。そもそも女の子への耐性が激弱なのに、メンタルを揺さぶられるともうされるがままだ。さっきのあこちゃんや燐子ちゃんのように、身体を熱くして俯くしかない。慣れない外にいるからこそ、なおさら緊張しているんだよ……。

 

 

「秋人くんってば、照れちゃって可愛い~♪」

「ちょっ、ちょっと日菜ちゃん!? 頭を撫でないでもらえると嬉しい……かな」

「無理♪」

「いい笑顔をありがとう……。紗夜ちゃんも、可愛い子猫を触る時のような顔しないで……」

「私だって、那須原さんにあんなことやこんなことを……」

「何をしようとしてるの!?」

「破廉恥な意味ではありません! 猫をお腹を撫でるように可愛がりたいだけですから!」

 

 

「猫? どこにいるのかしら?」

 

 

「「うわぁっ!?」」

「ひゃっ!? み、湊さん!?」

「う゛っ、また……」

 

 

 突然の友希那ちゃん登場で、僕たちは地から足が浮きそうなほど驚いてしまった。

 それでも紗夜ちゃんと日菜ちゃんは、咄嗟に僕を自分たちの身体と近くの壁で匿った。あまりにもいきなりだったためか、またしても2人の身体の一部、言ってしまうと臀部(おしり)に僕は押し潰されている。この状況、なんか尻に敷かれてるみたいで情けないことこの上ないな……。もちろん、そんなことを言ってる場合ではないんだけど……。

 

 元々友希那ちゃんからは2人の身体が邪魔をして僕が見えなかっただろうから、彼女にはバレていないだろう。

 

 

「さっき猫って言っていなかったかしら? 見たところ、そのような影はないけれど」

「き、気のせいでは……? こんな街中にいる訳がないじゃないですか」

「それよりも、友希那ちゃんはお買い物? 結構荷物を持ってるみたいだけど……?」

「えぇ。秋人に服を作ってあげようと思って、そのための材料を買っていたのよ。リサや燐子から助言を貰って必要なモノを買っていたら、意外と多くなってしまったわ」

 

 

 僕のために両手が荷物で塞がるくらい大量買いをするなんて、もうガールズバンドのみんなの優しさには頭が上がらないよ。こっちが感謝の言葉をかけたら、女の子たちは必ず『秋人(くん)のためなら普通のこと』と返されてしまう。その菩薩のような心はどこで身に着けたんだろうか……。

 

 そんな友希那ちゃんを騙すようで心苦しいけど、氷川姉妹とのデートを完遂するためにも、ここはやり過ごすしかない。

 

 

「あら……?」

「湊さん? どうかされましたか?」

「秋人の匂いがするわ」

「「え゛っ……!?」」

 

 

 早速バレそうなんですけどぉおおおおおおおおおおおおおおお!?!? しかも匂いって犬か!!

 確かに僕は氷川姉妹の後ろにいるけど、友希那ちゃんからは絶対に見えないはずだ。でも、謎の嗅覚により僕の存在を察知するなんて、そこらの犬より絶対に鼻が効くよ……。

 

 友希那ちゃんの野生本能に紗夜ちゃんだけではなく、あの日菜ちゃんまでもが冷や汗を流している。あこちゃんと燐子ちゃんの登場時には全く動揺していなかったから、それだけ友希那ちゃんの本能に驚いたのだろう。僕は手助けも何もできないから、何とか2人で切り抜けて欲しいところだ。

 

 

「近くに秋人がいるわね。どこにいるのかしら?」

「それこそ気のせいではないですか……? 周りに人も多いですし、単なる勘違いかと」

「いいえ。私が秋人の匂いを間違える訳ないじゃない。もう何度あの子と一緒にベッドを共にしたか……。そのたびにあの子を抱き枕にして、秋人のフェロモンに包まれて眠る。この世にあれほどの幸福はないわ」

「えぇ~いいなぁ~私もやりたい!!」

「日菜! 今はそんなことを言ってる場合ではないでしょ!?」

「……? 別にいいのではないかしら? もしかして、急いでる最中に私が呼び止めてしまった……とか。それなら悪いことをしたわね」

「い、いえ、湊さんが謝ることでは……」

 

 

 流れが一切好転しない。友希那ちゃんの勘は鋭いから、氷川姉妹の様子が少しおかしいことには気づいているだろう。

 これだけ苦労するなら、やっぱり自宅デートの方が精神的にも100倍マシだったかもしれないね……。

 

 

「そういえばあなたたち、やけに近くないかしら? 姉妹で仲睦まじいのはいいけど、そっち系の趣味だと思われるわよ」

「あたしはお姉ちゃんとなら、別にいいかなぁ~なんてね♪」

「ちょっと日菜!? あまり誤解を招く発言をしないで欲しいわ……。那須原さんもいるのに……」

「さ、紗夜ちゃん!? あっ!?」

「あら? さっき秋人が紗夜を呼ぶ声が聞こえた気がするけど……」

「あはは、気のせいじゃないかな……」

「いいえ。秋人が発した言葉を一字一句聞き逃さないように日々自分の耳を訓練しているから、そんなはずはないわ。そのために、毎晩こっそり盗聴――録音した秋人の声を子守歌代わりにして寝ているのよ。この世にあれほどの幸福はないわ」

 

 

 さっきもこれ以上の幸福がないとか言ってなかったっけ?? 更に盗聴って言いかけたどころか言っちゃってるし。それ以前に、盗聴されていたことを初めて暴露されたんだけど……。もし僕がこのまま隠れ続けていたら、友希那ちゃんのあることないことを全部引き出せそうだ。絶対にまだ叩けば埃が出てくるよね……。

 

 そうしたいのは山々だけど、彼女が僕の存在に勘付いているのも事実。下手に隠れ続けるよりかは、早めにご帰宅をお願いした方がいいかもしれない。このまま長期戦にもつれ込んだら、確実に嘘を付いている側がボロを出す。ここは何とか紗夜ちゃんと日菜ちゃんに僕の考えを伝えて、言葉巧みに友希那ちゃんにご帰宅を促してもらおう。

 

 そうは言っても、2人のおしりに挟まれているこの状況では動くに動けない。友希那ちゃんが妄想に耽っている間に、2人に僕の作戦を伝えられるといいんだけど……。

 

 その時だった。この場を切り抜けることに集中していた僕は先走ってしまい、少し手を動かしてしまった。

 

 

「「ひゃあっ!?」」

 

「えっ、2人共どうしたの……? いきなり大声を出して、驚いたじゃない……」

 

 

 やってしまった……!! 少しでも動いたらダメだってことくらい分かっていたのに、作戦を伝えることに集中し過ぎて身体が揺れ動いてしまった。2人のおしりに挟まれているこの状況で身体を動かしたらもちろん、肉付きの良い双丘をこの手が鷲掴みにしてしまう訳で……!!

 

 

 うん、柔らかかった!

 

 

 じゃなくて、状況を更に悪化させちゃったよどうするのこれ!?

 紗夜ちゃんは頬を赤くしながら僕を睨み付けてくるし、日菜ちゃんは恥ずかしそうにこちらを見つめている。こうなったのは僕のせいだけど、そこまで背後に注目してたら僕の存在が友希那ちゃんにバレるって!!

 

 

「紗夜、日菜。あなたたちの後ろに誰かいるのかしら?」

「な、何でもないよ何でも!」

「何でもないような奇声には聞こえなかったのだけれど……」

「わ、私たち、最近しゃっくりが良く出るのです。突然発症して突然治るので、心配はいりません……」

「そう。でもさっきからずっと後ろを気にしているじゃない。隠し事をされているようで気になるから、ちょっと確かめさせてもらうわ」

「「あっ……」」

 

 

 マズい、このままでは僕が無断外出していることがバレてしまう!!

 まさに背水の陣。この絶望的な状況を打開できる決定的な一打は何かないのか? これまで幾多のアニメや漫画で見てきた、危機回避のシチュエーションを思い出せ。どんな窮地にも負けない、二次元主人公たちの勇気と英知を集結させて考えろ、考えろ……!!

 

 

 うん、もうこれしかない。どうせこのまま黙っていてもバレるだけなんだから、ここで賭けに出るしかないだろう。

 僕はありったけの息を吸い込んで深呼吸をし、喉が潰れること覚悟で伸びの良い高音を出した。

 

 

「にゃぉ~~~ん」

 

 

 は、恥ずかしい……!! 顔が沸騰して今にも爆発してしまいそうだ。この方法で結局ボロを出してしまったら、何のために襲い来る羞恥心に耐えて猫の真似をしたのか分からない。紗夜ちゃんも日菜ちゃんも、目を大きく見開いて僕を見つめようとしている。一応友希那ちゃんに見つからないよう気を配ってはいるが、あまり注目されると僕の渾身の作戦が……。

 

 

「秋人の声色をした猫がいるわ!! 声の大きさから察するにまだ近くにいるはず。紗夜、日菜、申し訳ないけど、ここで失礼させてもらうわ。もしその猫を見つけたら、連れ帰ってRoselia第6のメンバーにするつもりだから、よろしく」

「み、湊さん!? あっ、行ってしまいました……」

「秋人くんのおかげで、何とか助かった……かな?」

 

 

 ふぅ~よかったよかった。あのまま友希那ちゃんに見つかっていたら、猫の真似をしていたという辱めを感じるだけでなく、勝手に外出した罰として猫のコスプレをして彼女へご奉仕させられる展開になりかねなかった。まぁ、結果的に助かったから万々歳だろう。そうだよ、過去を振り返るより、今から本格的なデートができることを楽しもう。

 

 すると、紗夜ちゃんがまたしても顔を真っ赤にしながらこちらを睨み付けてきた。日菜ちゃんも頬を染めながらもじもじとしているし、2人共危機的状況を脱して嬉しくないのか??

 

 

「那須原さん。すっきりとした顔をしていますが、さ、さっき私たちの臀部を触ったことに関して、何か言うことはあるでしょうか……?」

「あっ、そういえば……」

「あ、あはは……私は別に構わないって言うか、むしろ秋人くんが興味を持ってくれて嬉しいって言うか……」

「い、いや、そういうつもりで触ったんじゃないよ!? あれは紛れもない不可抗力で……」

 

 

 2人の様子がおかしかったのは、僕が不意におしりを触ってしまったからか。確かに不可抗力とは言えど、異性に痴漢紛いなことをされるのは女性として黙っていられないのだろう。

 

 でも、その時の光景を思い出せば思い出すほど僕の手にあの時の感触が蘇る。あぁ、女の子の身体って胸だけではなくて、ありとあらゆるところが柔らかいんだなぁとしみじみと感じた瞬間だった。あの時は切羽詰まっていた状況だったけど、2人のおしりに触れた時は時間が止まったみたいだったからね。背水の陣に立たされていたってことを忘れるくらいには程よい柔軟性だったよ。

 

 ――――って、なんで解説してるんだ僕!? 変態か!?

 

 

「私も触るなとは言いませんが、事前に一言いただけないと心の準備というものが……」

「えっ、触られたかったの……?」

「時と場合と場所によります!!」

「でもお姉ちゃん、ちょっと嬉しそうな顔してたよ? 秋人くんも気持ちよかったでしょ?」

「そりゃもうね――――あっ、こ、これは違う!!」

「な、那須原さん!!」

「ちょっ、日菜ちゃん!? 誘導尋問はやめてよ!!」

「もう、やっぱりお姉ちゃんも秋人くんも可愛いなぁ♪」

 

 

 一難去ってまた一難。

 僕たち、このあとちゃんとデートできるのかな……?

 




 もっと甘い雰囲気のデートを描きたかったのですが、ラブコメのコメに寄っているこの小説ではまともな恋愛描写はほぼ皆無です(笑)


 登場キャラの配分に関してですが、全員のキャラを均等に登場させるのは話のネタ的にも難しいので、登場キャラの頻度に差があっても怒らないでくださいね(笑)



この小説が気に入られましたら、是非お気に入り、感想、評価をよろしくお願いします! 
小説を執筆するモチベーションに繋がります!

新たに☆9以上をくださった

ホンギィさん、よっぺーさん、uruTUBEさん、ムーンフォースさん、辛いさんさん、Forestさん、ディセプティコンさん、多田野エミリアさん、ティアナ000782さん、ヒローキさん、タチャンカ田村さん、megane/zeroさん、

ありがとうございました!
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