ガールズバンドの子たちに甘やかされる日常【完結】   作:薮椿

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 たまには甘やかす側になっても良くないですか??
 とは言っても主導権は女の子たちに握られっぱなしですけど()


お寝惚け少女たちを甘やかす

 

「秋人様」

「わっ、黒服さん!?」

 

 

 あまりにも唐突な登場に、僕は椅子から転げ落ちてしまう。耳元で囁かれるまで彼女の接近に全く気付かなかったんだけど、どうやって僕の部屋に忍び込んだんだろう? こころちゃんを影ながら見守るのが仕事だから、そのスキルを活かして隙だらけの僕の背後に忍び寄るのは余裕なのかもしれない。

 

 黒髪、黒スーツ、黒サングラスの黒服さんは、弦巻こころちゃん専属のボディガードだ。噂によるとどうやら四六時中見守っているらしく、時折ライブの手伝いで美咲ちゃんにも接触しているみたい。見た目は麻薬Gメンのような厳つい風貌なのだが、実際には自分たちの主人やその友人たちをこっそりとサポートする優しい人たちなんだ。まぁその裏で何やら怪しいことを画策しているみたいだけど……。変なアロマを開発し、それを僕の部屋に振り撒いてこころちゃんを発情させ、僕に襲い掛からせたのは記憶に新しい。

 

 もしかして、今日もまた何か厄介事を持ち込んできたのか……?

 

 

「突然のご訪問、申し訳ございません。今日は秋人様を実験台――いえ、日頃の感謝の気持ちとして、我が弦巻財閥の新製品をお届けに参りました」

「ねぇ、さっき不穏な言葉が聞こえたんだけど? ねぇねぇ??」

「日々お嬢様が笑顔でいられるのもあなたのおかげです。あなたこそお嬢様の婿殿に、そして弦巻家の未来を担うに相応しい。そんな秋人様のために我が弦巻財閥は、予算数億をつぎ込んだ新製品を開発したのです」

「スケールが大きすぎる!! ニート1人を相手にする規模じゃないでしょ!?」

 

 

 弦巻家の人たちは僕をどんな目で見ているのか知らないけど、自分たちの未来を担う人材に僕を選んだのは明らかな人選ミスと言わざるを得ない。それにいつの間にか僕の未来を勝手に決められちゃってるし。もちろんこころちゃんと結婚すれば弦巻家がバックに付くから怖いものなしになるけど、ニートの僕が財閥を背負うには余りにも重すぎる。こころちゃんの思考回路がぶっ飛んでいるのって、もしかして弦巻家の血筋によるものなのかな? そうと言わざるを得ないくらいおかしいよ弦巻家。

 

 

「こほん、話が脇道に逸れてしまいました」

「その割にはテンションが高くてノリノリだったけどね……」

「秋人様の前だとどうしても舞い上がってしまいまして……。それよりも、今日は弦巻財閥特製の新製品を――――」

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「ふわぁ~もうこんな時間だね」

「このメンバーでお泊り会をするのは初めてだったから、ついつい話し込んじゃったね」

「明日も学校があるから、今日はもう寝ましょうか」

 

 

 黒服さんが襲来した日の夜、僕の家ではパジャマパーティが行われていた。とは言っても、僕は女の子たちが楽しそうに喋っている様子を見ているだけだったんだけど……。

 この場にいるのは僕を除いて彩ちゃん、花音ちゃん、千聖ちゃんの同学年仲良しトリオだ。同じバイトだったり同じクラスだったり同じバンドメンバーだったりと、輪を描くような繋がりを持っているのがこの3人。そして赤、青、黄色で信号機メンバーでもある。3人の頭だけを見てると目がチカチカするんだよね。そのせいで目が覚めちゃいそう。

 

 

「秋人くん、何か失礼なことを考えてない?」

「えっ!? い、いや別に?? 僕も眠たいから早く寝たいなぁって思ってただけだよ」

「いいえ、卑猥な顔をしていたもの。罰として、今日は私の抱き枕になってもらうわ」

「こじつけでしょそれ!? 目的を達成するためなら難癖でも何でも良かったやつだよね!?」

「そうだね。秋人くんエッチな顔してたし、私の抱き枕にもなるべきだよ」

「秋人くんに舐め回されるような目線で見られてたし、私の抱き枕にもなって欲しいな」

「2人も乗ってくるんだ。ていうか3人も抱き着けるような身体の大きさしてないからね……」

 

 

 それ以前に卑猥でエッチで女の子を舐め回す目線を送っている男に抱き着きたいって、矛盾しまくりでもう訳分からないな……。やはり僕を抱き枕にするための口実が欲しかっただけらしい。

 しかし、僕の身体は一般の女子高校生よりも一回り小さい。りみちゃんや千聖ちゃんとどんぐりの背比べができるくらいなので、僕の背丈がどれだけ男子離れしているのか分かってもらえるだろう。もちろんそんな反論をしたところでみんなが引く訳ないのは重々承知してるけどね。

 

 そんな感じで相変わらず女の子たちの勢いに流されそうになった僕だけど、流石にベッドに4人は窮屈過ぎるため彩ちゃんたちは布団で寝ることになった。とは言うものの一緒の部屋で寝ることには変わりなく、部屋もそれほど広くないため人口密度はそれほど大差ない。まぁこんな可愛い子たちと同じ空気を吸いながら睡眠が取れるだけでも役得だと思っておこう。

 

 そして、僕はここで黒服さんから貰った弦巻財閥の新製品を取り出した。それは安眠効果のあるアロマミストを放出するデフューザー。これの電源を入れて置いておくだけでアロマミストが部屋中に散布され、その効能により快適な睡眠が取れるとのこと。僕が日々女の子に囲まれて性欲が溜まり、夜な夜な自慰行為をしているせいで睡眠不足になっているだろうとのことで開発されたらしいんだけど、余計なお世話だよ……。

 

 そんな余計なことを考えながらも、僕のために作ってくれたのなら無下にするのは弦巻家に申し訳ないと思い使ってみることにした。

 効果は思ったより凄く、プラシーボ効果かもしれないけどベッドインしてから熟睡までの時間はあっという間で寝心地も良かった。いくらプラシーボ効果であっても、気持ちよく睡眠が取れるのならそれに越したことはない。彩ちゃんたちも同じようにすぐに眠ってしまったので、体感だけじゃなく本当に効果があるみたいだ。

 

 

 夜も更け、当然ながら部屋は静けさに包まれていた。僕は寝る際に部屋の電気を完全に消灯させる派閥のため、夜更けになると部屋の中は闇に支配され何も見えなくなる。でも眠っているのだから何も見えようが見えまいが問題ない。そう思っていた。

 そんな中、耳元で何かを囁かれる声が聞こえたことで僕は目を覚ます。

 

 

「秋人くん、秋人くん……」

 

 

 声を掛けられるのと同時に身体を軽く揺らされているせいか、眠気が残りつつも意識が目覚めるのは早かった。視界も最初は真っ暗闇に支配された空間に遮られながらも、部屋に僅かに残る電源タップのスイッチの光を目が吸収し、徐々に僕を起こした張本人が明らかとなる。

 

 

「彩ちゃん? どうしたの……?」

 

 

 僕を起こしたのは彩ちゃんだったんだけど、何やらやけにそわそわしている。普段から慌ただしい彼女だけど、こんな夜中にこれほどまでに焦燥に駆られているのには理由があるのだろう。暗い部屋の中では彼女の表情を完全には窺えないが、相当困った様子なのは確かだ。

 

 

「あのね秋人くん……」

「う、うん……」

「おしっこ……」

「はい?」

「おしっこ……」

「いや2回言わなくていいから! 聞こえた上での『はい?』だよ!?」

 

 

 麗しき女の子が決して口にすることのない言葉を実際に聞いてしまったから、思わずツッコミを入れることすら忘れて聞き返してしまった。もしかして僕は夢を見ているんじゃないかと思ったけど、残念、これは現実だ。

 

 彩ちゃんがどうしていきなりこんなことを言いだしたのかは分からない。仮にもアイドルなんだし、アイドルでなくとも思春期女子として相当マズい発言であることは確かだ。

 

 

「トイレに行きたいの? だったら1人で行けばいいでしょ……」

「暗くて何も見えないから、千聖ちゃんや花音ちゃんを踏み付けちゃったら悪いなぁと思って。だから秋人くん、連れてって」

「踏み付けちゃ悪いのは分かるけど、僕がついて行く必要はないっていうか……」

「秋人くんは私のおしっこ見たくないの? 私のおしっこが見られないっていうの??」

「酔っ払いの絡みみたいになってるよ!? ん……?」

 

 

 ここで気付いたことがある。彩ちゃんの顔が赤い。トイレを我慢しているからとか、そんな理由では片付けられないくらい赤かった。女の子のこの表情は見覚えがある。そして、彩ちゃんがこうなっている原因はすぐに分かった。

 

 

「秋人様」

「黒服さん、やっぱり――――って、またガスマスク着けてるし……」

 

 

 今朝と同じように、黒服さんが僕の背後からにゅっと現れる。ただでさえ部屋が暗いのに、黒のスーツに黒のガスマスクだとカメレオンのような擬態のようで近くにいても気付きにくい。正直声を掛けられるまで気配すら察知できなかったよ……。

 

 

「また何か仕組んだでしょ……」

「仕組んだとは人聞きの悪い。秋人様がお嬢様に手を出されなかったのが原因だといいますのに……」

「こころちゃんが発情して母性たっぷりになっちゃったあの事件ね。ていうか僕関係なくない?」

「秋人様がお嬢様と子作りしなかった理由、それはお昼だったから気分が乗らなかったのだろうと判断しました。性夜という言葉があるように、人間の性欲が最も活発になるのが夜。つまり、秋人様が性欲に支配された獣になる夜こそ性行為のヤり時。そのため女性の方々には積極的になっていただくよう、少々細工を加えさせていただきました」

「なるほど――――ってなると思う!? それに全然少々じゃないじゃん! 彩ちゃん今にもお漏らししちゃいそうだよ!?」

「排尿プレイもまた一興ですよ」

「どこが……」

 

 

 僕の予想通り、彩ちゃんがこうなってしまったのは黒服さんが持ち込んだアロマのせいだ。どうやら今回は発情の促進と同時に女の子の尿意を加速させるような成分が含まれているらしく、彩ちゃんを見てみると股をもじもじさせているのでその効力が良く分かる。性行為を促すなら促すで、もうちょっとノーマルなプレイになるように仕向けてくれないかな……。いや別にみんなと性交渉をしたいなんて欲望はないけどさ。

 

 

「ちなみに皆さんは夢見心地の状態です。これもアロマの効力ですね」

「それって寝惚けてるってこと?」

「そういうことです。つまり、今ならどんなアブノーマルなプレイをしようが皆さんの記憶には残りません。端的に言えばヤり放題なのです」

「弦巻家は僕に感謝の気持ちを送りたいのか、それともレイプ魔に仕立て上げたいのか分からなくなってきたよ……」

「どちらにせよ、秋人様が女性との性交渉に興味を持っていただければ私たちの勝利でございます。その勢いでお嬢様としっぽりとなさってくだされば、もう何も言うことはありません」

「もう裏事情を隠す気全くないよね……」

 

 

 僕に何を期待しているのかは知らないけど、こんなニートの相手をする時間なんて無駄だと言ってやりたい。ただこの家を貸してもらっている手前、弦巻家の人たちには強く出られないのが実情。そのため定期的に送られてくる謎の新製品の実験に素直に付き合うしかないんだ。知ってはいたけど、ヒモって尊厳ないよね……。

 

 

「それでは私はこれにて失礼します。ガスマスクをしているとは言えども、この空間にいたら私まで秋人様に排尿を手伝ってもらうはめに……。悪くはないですが」

「ちょっ、悪く思ってよ!?」

「あとは皆様とごゆっくり。お子さんのお名前、明日にでも教えてくださいね」

「教えないよ!? そもそも作らないし!!」

 

 

 言いたいことだけを言い放ち、黒服さんは部屋から姿を消した。相変わらず音もなく消えていったけど、やはり弦巻家の黒服さんたちはみんな特殊な訓練でも受けているのだろうか……。

 

 

「秋人くん、トイレ……行こ?」

「1人でも行けるでしょ、彩ちゃん」

 

 

 黒服さんとの会話が終わったのも束の間、また彩ちゃんとトイレプレイの駆け引きが始まる。

 どうやら寝惚けているのは間違いないようで、顔を見るだけでも眠そうにしているのが分かる。それでもトイレに誘ってくるあたり、弦巻家特製のアロマが強く効きすぎている影響だろう。

 

 

「仕方ないなぁ秋人くんは。だったら私も秋人くんのおしっこを手伝ってあげるよ」

「どうして僕が妥協される立場になってるの……。それに私『も』って、僕は彩ちゃんのトイレを手伝うって承諾した覚えはないからね」

「もう~秋人くん文句が多いよ。女の子のおしっこに興味があるって素直になった方がいいよ」

「素直になったら僕が異常性癖の持ち主だと思われるからヤダ」

「だったらここでしちゃうよ? それでもいいの?」

「うっ、それは……」

 

 

 彩ちゃんは寝惚けているのでどこまで本気なのかは分からないけど、寝惚けているからこそ判断が鈍ってここで垂れ流すという暴挙に出てしまいそうだ。それがご褒美なのかそうでないのかは個人の性癖に委ねられるけど、少なくとも僕は女の子のお漏らしで悦ぶような変態ではない。かと言ってトイレに行くとなれば一緒に個室に入ることになる訳で……。それはそれで彩ちゃんが寝惚けているから誤ってぶっ掛けられそうなんだよね。

 

 とにかくここで垂れ流されては困るので、トイレについていくフリをして、いざトイレの前に付いたらやや強引だけど彩ちゃんだけを個室に押し込む。この作戦で行くしかない。

 

 

「ほらほら、秋人くんも一緒にすっきりしよ? なんなら一緒にトイレ入る?」

「入らないから!! トイレの前までは一緒に行ってあげるから、それで勘弁してくれない?」

「え~おしっこした後に拭いてくれないの~?」

「ふ、拭くわけないでしょ!? 変なこと言ってないで、早く行くよ!」

 

 

 ダメだダメだ、想像しちゃダメだ!! 彩ちゃんは清きアイドルなんだから、例え妄想であっても彼女を穢すことだけは許されない。してないしてない、あそこをふきふきするような妄想は絶対にしてないから……。

 

 雑念を振り払うため、彩ちゃんを連れてこの部屋から出ようとする。

 しかし、何故か僕の足が動かない。部屋はみんなが片付けてくれているはずなので、散らかっているモノに足を封じられているってことはないはず。いや、それどころか僕の足を拘束する力がどんどん強くなっている。そういえば彩ちゃんとのゴタゴタで忘れてたけど、このアロマの効いた部屋にはまだ2人ほど――――――

 

 

「秋人く~ん、おしっこ~」

「花音ちゃんもか……」

「彩ちゃんだけおしっこのお世話をしてもらうとかズルいわよ……」

「千聖ちゃんも起きてたのか……。ていうかお世話しないからね」

 

 

 僕の両脚をがっちりとホールドしていたのは予想通り花音ちゃんと千聖ちゃんだった。2人もアロマ効果でお寝惚け状態に入っているのは間違いなく、声にイマイチ覇気がない。それでもなお本能的に用を足そうとしているのはアロマのもう1つの効果、興奮状態の促しによるものだろう。ただでさえ彩ちゃん1人を相手にするだけでもやっとなのに、これから3人を同時に相手しなきゃいけないのか……。無理じゃない??

 

 

 そんな訳で、僕とお寝惚け少女たちの熾烈なトイレプレイ攻防戦はこれからが本番だ。

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 もはや『甘やかす』というよりかは『お世話をする』と言った方がいいかも……
 甘やかそうが甘やかされようが、秋人くんが苦労するのは分からないですがね()


 バンドリのアニメ3期も始まり、バンドリ界隈が再びお熱になっていますね。この小説を読んでしまうとアニメのキャラをまともな目で見られなくなってしまう弊害がありそうですが……




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