ガールズバンドの子たちに甘やかされる日常【完結】   作:薮椿

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 イラストやSSなんかでは良くあるネタですが、この小説ではやったことがなかったので。
 今回は閑話01のような短編集の中の短編集です。


閑話04:○○しないと出られない部屋

 

【奥沢美咲の場合:キスしないと出られない部屋】

 

 

「なるほどね。だったらさっさとしようか」

「一切躊躇いがない!?」

 

 

 美咲ちゃんは何の躊躇いもなく僕に顔を近付けてくる。普段は気だるそうな言動をしてるけど、何故か僕との身体接触だけはやけに積極的なのが彼女。今も謎の力によって2人して変なミッションが掲げられた部屋にぶち込まれたというのに、それに対しての動揺は微塵もないようだ。いつも奇行の多いこころちゃんたちを相手にしてトラブルには慣れているのか、それとも……。

 

 

「秋人は私とキスしたくない?」

「その質問はズルいでしょ……。そもそも軽いノリですることじゃないと思うけど」

「欧米では挨拶みたいなものだから。この世はグローバル社会、日本の閉鎖的な習慣はもう古いんだよ。視野を広げてもっとオープンにならないと」

「それ、美咲ちゃんがただキスしたいだけだよね? ただのワガママだよね?」

「だからなに? ほら、余計なこと言ってないで準備して。それとも私からした方がいい?」

「開き直らないでよ……」

 

 

 いつにも増して美咲ちゃんの圧がヤバい。キスすることがさも当然かのような感じだし、何より無表情でこちらに迫ってきているのでかなり怖い。もはやキスするだけのbotと言われてもおかしくないくらいにはどこか事務的で、そして何の躊躇いもないようだ。彼女からの圧力に僕は少し後退りしてしまう。

 

 

「逃げるのはいいけど、こんな狭い部屋の中で逃げ切れると思わない方がいいよ。それにいざとなったら華奢な秋人なんていつでも押し倒せるしね。普段テニスやミッシェルで鍛えてる私とニートの秋人、どっちが強いと思う?」

「何その脅し!? 完全にエロ同人展開じゃん!!」

「あぁ~もしかしてキスの先までお望みの感じ? しまったなぁ、今日はそんなに可愛い下着じゃないんだよね。秋人と一緒の密室に閉じ込められるって分かっていたら喜びそうな下着を着けてきたのに」

「そんな用意いらないから!! 別にその先なんてしないからね!?」

「あぁなるほど、可愛い下着よりも私が普段使いしてる下着の方がいいってことか。だったらテニスが終わった後の蒸れた下着でやるってのはどう?」

「そういう意味じゃないって!! 美咲ちゃん今日テンションおかしいよ……」

「そりゃ秋人と密室空間だなんてテンション上がるよ」

 

 

 その割には淡々としているというか冷静に見える。彼女のテンションはいつもそこそこに冷めてるけど、今日は冷めながらも口数や言葉選びだけはハイテンションだ。変に雰囲気だけ高揚されるより、こうして淡々とした口調で迫られる方が断然怖いんだけどね……。

 

 

「もうグダグダと話すのは面倒だからキスしていい? するよ? するね」

「ちょいちょいちょい!? 待って待って待って!!」

「あのね秋人、キスはムードなんだよ。そんな大声を出されたらムードが台無しになるの分かってる?」

「事務的な感じでキスしようとしてる人が良く言うよ……」

「本気だよ、これでも」

「えっ……?」

「隙あり」

 

 

 このあとメチャクチャ○○した……かもしれない。

 

 

 

 

【白鷺千聖の場合:混浴しないと出られない部屋】

 

 

「ちょっと!? どうしていきなり脱ぐの!?」

「脱がないとお風呂に入れないじゃない。もしかして秋人くん、着衣したままの入浴に興味があるの? あまりいい趣味とは言えないわね」

「いきなり男の前で脱ぎ出す奇行をしている上にあらぬ誤解を振り撒かないでよ……」

 

 

 それほど広くない部屋に小さい湯船が1つ。どう見ても2人で入るには密着するしかないのに、千聖ちゃんは何の躊躇いもない。いつものことと言ってしまえばそうなんだけど、もっと女優としての威厳や、そもそも女の子の貞操観念としてどうなんだ……。

 

 

「私、このあとドラマの撮影があるのよ。だから一刻も早くこの部屋から出たい。つまり、どうすればいいのか分かってくれるわよね?」

「そう言いながら僕の服に手をかけないでよ!? それに若干息荒くなってるし、絶対に興奮してるでしょ!?」

「そんなはしたない真似をするわけないじゃない。私は女優よ? 例えプライベートであろうが平静を乱すことはないわ」

「ちょっ、力強いって!! 異性を無理矢理脱がそうとしてる時点で煩悩塗れだよ!!」

 

 

 冷静さを気取っているが、やっていることはただの犯罪である。自分が情欲に支配されていることを押し隠そうとするのは女優としての性なのかもしれないけど、残念ながら滲み出る性的興奮は抑えられていない。僕が絡まなければ高潔で清楚な女の子なのに、一体どっちが千聖ちゃんの本当の顔なんだろうか……。

 

 

「秋人くん、よく考えて。女子高校生が自ら一緒にお風呂に入ろうと誘っているのよ。それなのにあなたは拒んでいる。健全な思春期男子ならば返答すらせず女の子を抱くと思うけど?」

「それは流石に年頃の男性をケダモノ扱いし過ぎだよ……。まぁ中にはそんな人もいるかもしれないけど、少なくとも僕は違うからね」

「あなた、まだ自分がどれだけ優遇された立場にいるのか分かっていないようね」

「え……?」

「タダで女優と混浴できるのよ? 白鷺千聖と一緒にお風呂に入りたいと思っている人はこの世で何人いると思う? それも自分の今後の人生を潰してでも大金を支払う人が多いでしょうね。そんな私とタダで、しかも私の方から誘っているというのにあなたは拒んでいる。全世界の男性よりも優位な立場なのにも関わらずね。私を抱きながら入浴して、全ての男性を見下すような優越感に浸たることだってできるのに……」

「しないよそんなこと!? 千聖ちゃんのファンに殺されちゃうよ僕!?」

 

 

 背徳を感じられるという点であれば魅力的かもしれないけど、それで優越感に浸れるほど僕は堕ちぶれていない。そりゃ僕だって男だから女の子と同じ湯船に浸かるのは嫌というわけじゃないけど、千聖ちゃんの場合は別の問題があるから怖いんだ。今も僕を捕食するかのような眼光。そう、僕は彼女に襲われないか心配なんだよね……。

 

 

「口で言っても分からないのであれば、身体で分からせるしかないわね」

「な、何する気!?」

「この世にはソーププレイというものがあるらしいわ。そしてこの部屋には私たちと泡が満ちた湯船が1つ。その意味は分かるわよね?」

「せめて普通にお湯を張って欲しかった……!! でも千聖ちゃんってソープできる身体じゃない……い、いや、聞かなかったことにして」

「なるほど、私の身体が貧相と言いたいのね。確かに間違ってはないけど、だったら余計に私という存在をあなたに刻み込んであげる……」

「じょ、冗談だって!! ちょっ、あっ……あああっ!?」

 

 

 このあとメチャクチャ逆レ……されたりされなかったりした。

 

 

 

 

【弦巻こころの場合:セッ○スしないと出られない部屋】

 

 

「ねぇ秋人、セッ○スって何かしら?」

「ぶっ!!」

 

 

 良くも悪くも純粋なこころちゃんの口からそんな単語が飛び出すなんて……。いいところの娘だから汚らわしい言葉の意味を知らなさそうだとは思ってたけど、まさかここまでとは……。流石に学校の授業でも『セッ○ス』なんて直接的な言葉は使わないだろうから仕方ないと言えば仕方ないけどさ。

 

 そして、今回は今までとはパターンが違う。これまでは女の子から襲われる展開だったけど、今回は僕が導かなくちゃいけない。こんなに純粋なこころちゃんを? 本当にやるの??

 

 

「どうしたの秋人、顔が赤いわよ? もしかして熱でもあるのかしら?」

「な、なんでもないよなんでも!!」

「ならいいんだけど。それよりセッ○ス? っていうのをしないとこの部屋から出られないらしいじゃない。私、このあとハロハピの練習があるから早く行かないといけないのよ。でもセッ○スって良く分からないし……。だから秋人に全部任せるわ」

「全部!?」

「えぇ、秋人の好きにしていいわ」

 

 

 好きにしていいって、それ僕が善良な男子だから良かったものの、僅かでも性欲に溺れた思春期男子だったら間違いなく騙されるよ……。そもそも好きにしろと言われても未だ童貞(だと思う)の僕には女の子を襲う度胸はないんだけどね。

 

 それにしても、この状況をどう脱しようか。美咲ちゃんや千聖ちゃんの時のようにただ受け流すだけでは事態は解決せず、僕から何かを提案して切り抜けなければならない。もちろんこころちゃんに余計な汚らわしい知識を植え付けたくないため、セックスの意味は伏せる必要がある。うん、どう足掻いても無理ゲー。

 

 

「もしかして、秋人もセッ○スをしらないのかしら?」

「えっ、あ、あぁ実はそうなんだよ。知らないことをやれって言われてもできないから、それを伝えればここから出してもらえるんじゃないかな。どうせこれも黒服さんの仕業だろうし……」

「ん? 何か言った?」

「う、うぅんなんでもないよ!! とにかくもうこんなおふざけに付き合ってる暇は――――」

「あっ、こんなところにタブレットが落ちてるわ。何か書いてあるわね――――『セッ○ス初心者講座』?」

「え゛っ……!?」

 

 

 なんでそんなものがここに!? と思ったけど、黒服さんのことだからこころちゃんが性知識に無知なことを知っていてタブレットを仕込んでおいたのだろう。彼女は物事に一度興味を持ち出すと他のことを忘れてそれに一直線になるから、もしここで性行為の知識を得たら非常にマズい。美咲ちゃんや千聖ちゃんも大概積極的だったけど、こころちゃんに付き纏われたら逃げ切れる気がしない。だとしたら今すぐに彼女を止めなければ……!!

 

 

「こころちゃんそれ僕に貸して!!」

「待って、今いいところだから! ふむふむ……うん、なるほど。秋人!」

「な、なんでしょうか……」

「とりあえず服を脱ぎましょう!」

「こうなると思った! ていうかとりあえずのハードルが高いよ!!」

 

 

 こうなってしまったらもう腹を括るしかないのか……? 密室にセックス指南書を置くくらいだから、これはもう本格的に性行為をしなければ部屋から出してもらえそうにない。男の欲望という観点では最高のシチュエーションかもしれないけど、社会的、倫理的、その他諸々を考えるとこの状況は大変危険だ。

 

 

「こころちゃんは恥ずかしくないの? 僕の前で裸になるって……」

「恥ずかしい……? 確かにドキドキしてるかも? ライブの時のような楽しいドキドキじゃない変な感じ……」

 

 

 これだ! こうやってこころちゃんの羞恥心を引き出すことができればセックスを嫌がって回避するはず。黒服さんも彼女の拒む姿を見れば流石に諦めてくれるだろう。というかこころちゃんにもしっかり羞恥心があるんだね。ただひたすらに猪突猛進な女の子だと思ってたけど、年頃の女の子っぽさも残っていたと安心したよ。

 

 美咲ちゃんや千聖ちゃんの時は僕の敗北で終わっちゃったけど、今回は完勝できそうだ。今もこころちゃんは頬を赤くしてこちらを見つめている。つまり羞恥心を感じ始めていると言うこと。それをあと少しくすぐってあげれば……よし、勝った!

 

 

「身体が熱いわ……。こんな気持ちになったのは初めてかも……」

「うん、それが普通なんだよ。だから――――」

「この気持ちが何かを確かめるためにも、秋人とセッ○スするのがよさそうね! それじゃあ秋人、早く服を脱いで!」

「へっ……? ど、どうしてそうなるの!? ちょっ、無理矢理脱がさないで――――あ、あぁっ!?」

 

 

 そうだった。こころちゃんは自分の分からないことがあればとにかく行動する子だったよ……。

 

 

 

 このあと何とか踏み止まり、性行為の代わりに性知識を与えることで難を逃れた。

 彼女の純潔は守ったけど、余計なことを教えてしまったから清純を穢す大罪を犯してしまった気がする……。

 

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