この正月休みに2023年のアニメでも名作と言われたMyGOを観てたら、そういやこんな小説もあったなと気づき、いつの間にかキーボードを打ってました(笑)
ちなみにバンドリ知識は3年半前で止まってるので、その間にキャラが進級したり卒業したりしたみたいですが、そのあたり設定はあまり知りません。
でも今回はMyGO以外のキャラは出てこないので多分関係ないです。
「僕、バイトをしようと思うんだけど……」
「えっ?」
ちゃぶ台を挟んで大地を揺るがすような告白をする僕と、その言葉に驚く高松燈ちゃん。
驚くのも無理はない。だって僕は長年自宅警備員であり、ここ数年でも外に出た記憶は指で数えるほどしかなかった。そんなド底辺の環境に身を置いていたくせにバイトをしたいなんて豪語するものだから、そりゃ彼女が目を丸くするのも当然だ。
燈ちゃんは割と最近知り合ったガールズバンドグループ『MyGO!!!!!』のメンバーで、ボーカル担当の子。このグループがまともに結成してライブするまでに精神が干からびるかってくらい紆余曲折あったけど、今では特に問題なくバンドを続けられているみたい。僕もそのゴタゴタに巻き込まれたけど、まあ最終的に何とかなって良かったよ。
「ど、どうしてバイトを……?」
「僕ももうすぐで大学生の歳でしょ? だからこのまま引きこもってばかりでいいのかって危機感を覚えちゃって。だったら何をやるかと言われたら、とりあえず社会貢献してる実感が得られるバイトかなって」
「なるほど……」
いつの間にか高校卒業(通ってないけど)に近い年齢になってきて、ようやく危機的状況を理解し始めた。特に最近だとみんなから外出許可が出て外に出ることもあったから、そこでバイトをしてる学生さんを見つけちゃうとそりゃ引きこもりに対して懐疑的になっちゃうよね。
こんなニート野郎にバイトができるかって話だけど、幸いにもコミュニケーション力はあると思っている。だって普段からガールズバンドのみんなと交流して、その奇々怪々な行動にいつもツッコミを入れてるから声も張っている。おかげで陰キャ特有の口ごもった声にはなってないので、そこだけは安心だ。
「で、でも、どうしてそのことを私だけに……?」
「それは一番相談しやすかったから、かな。ほら、僕この前風邪引いちゃったでしょ? それは外出したのが原因だってみんなが大袈裟に心配するものだから、あれ以降僕が外に出ようとすると警報が鳴っちゃう設備がこの家の周りに導入されたらしくて……。そんなことされたらバイトなんてできっこないよ。だから抜け出すための練習をしておきたいんだ」
「は、はぁ……」
「でもまだ心が黒に染まり切ってない燈ちゃんなら、僕がここから脱出する手助けをしてくれると思って。どうかな?」
「私が、ですか……!?」
正直、押しに弱い燈ちゃんであればこっちの主張を押し通せると思った。彼女には悪いと思ってるけど、他の『MyGO!!!!!』メンバーじゃないとダメなんだ。そもそも『MyGO!!!!!』メンバー以外は論外。僕をここに幽閉した元凶なんだから、そもそも交渉をする相手候補にすらならない。
「これは燈ちゃんにしか頼めないことなんだ。愛音ちゃんも立希ちゃんもそよちゃんも、なんか僕を見る目がギラギラして怖いし、楽奈ちゃんは野良猫だから……」
「私に……私にしか……?
「そうだよ燈ちゃん。なんなら、1時間くらい僕をキミの好きにしてくれても構わない――――あっ、やっぱこれなし……にはできないか」
「言質取りました。私が秋人さんを好きに……!? 1時間だけ……何をする? はふはふする? ぎゅってする?? 持って帰る?? 妄想が止まらない……歌詞書きたくなったきた……!!」
うえぇ、目が血走ってるよ燈ちゃん。頼む相手間違えた??
勢いが付き過ぎて好きにしていいって言っちゃったけど、こうなるって途中で思い出した時にはもう遅かった。動物とか好きな話題になるといつもの寡黙さがウソのように饒舌になるからなぁ……。
「協力、します。さっきの条件であれば……」
「分かった、これで契約成立だね」
とりあえず協力者を確保できたので最初の関門は突破した。
燈ちゃんは僕の知り合いのガールズバンドの中でもまだ話が通じやすい人だし、それに押しにも弱いから協力を取り付ける相手としてはうってつけだった。こう見ると彼女を利用しているように思えるけど、その代わり自分の身体を差し出しているから許して欲しい。さっきの目の血走り具合、一体何をさせられるのやら……。
「それで、一体どうやって家から抜け出すんですか……?」
「これ、3泊の荷物も余裕で入るカバンなんだけど、これに僕を入れて抜け出してくれないかな? ほら僕って身体小さいから、旅行カバンにも余裕で入れちゃうんだよね……」
「でも、秋人さんが抜けだしたらセンサーが作動するって話じゃ……」
「監視カメラに直接映り込まなかったら大丈夫……だと思う。だからカバンに僕を詰めて、安全圏まで運んで欲しいんだ」
浅はかな作戦かもしれない。でもこれしか方法はないし、燈ちゃんが外に出ただけであれば見逃してくれる可能性が高い。彼女は最近自宅ではなく僕の隣で歌詞を書くのが日常となっているくらいなので、今更この子がこの家に出入りしていても何もおかしくないしね。
そして、早速作戦の準備をする。
僕がカバンの中に入り、燈ちゃんがファスナーを閉める。ただ完全に密閉すると酸欠になるため、カメラに映り込まない程度に外気の通り道を確保するようにした。
燈ちゃんがカバンを持ち上げる。一瞬小さい声で『軽い』と聞こえたが、自分の身体が小さいことに対してここまで感謝したことはない。男としてこんな未熟な身体なのはどうかと思ってこれまで生きてきたけど、もしかしたら自分の人生でこういった脱出劇があることを想定されていたのかもしれない。まさに運命だ。
「秋人さん、苦しくないですか……?」
「うん、問題なし。身体を丸めてるからちょっと痛いところがあるけど、長時間ここに居るわけじゃないから大丈夫だよ」
「それじゃ、行きます―――――ッ!?」
「燈ちゃん……?」
早速部屋から出ようとした矢先に、燈ちゃんの様子が少し変わったような気がした。カバンの開いている隙間からチラッと見えたけど、スマホを見ていたような気がする。
何があったのかはよく分からないけど、少しして燈ちゃんは部屋を出て、階段を降り、そして玄関のドアを開けて外に出た。センサーに引っかかる心配は恐らくないだろうけど、念のためカバンの隙間からカメラに見つからないよう限り身体を縮める。
そして、予想通りセンサーは感知せず警報は鳴らなかった。これで燈ちゃんが離れた場所へ僕を連れて行けば、そこでミッションコンプリートとなる。
意外と簡単だったなぁと余裕をこいていると、カバンの揺れが収まったように感じた。燈ちゃんが足を止めたのだろう。
安全圏に到着したっぽいので、僕はカバンの開いているところからこっそり声をかける。
「もう出ていいの?」
「はい……。でも、先に謝っておきます……」
「へ?」
カバンのファスナーがゆっくりと開かれる。一気に日差しが入り込んできたから手で光を遮ると、すぐにまた影がかかった。
手を顔から離してみると、そこには可愛い女の子の顔面があった。
燈ちゃん――――ではなく、愛音ちゃんの。
「はい、つっかまえた~♪」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおいっ!?!?」
僕はカバンから飛び出て後退りした。
僕の眼前に映るのはにこやかな笑みを浮かべる愛音ちゃんと、如何にも怒ってますよ感を放っている立希ちゃん、そして手を合わせて申し訳なさそうに首を垂れては上げてを繰り返す燈ちゃん、そう『MyGO!!!!!』のメンバーだ。
見つかってはいけない人たちに見つかったことによる驚きもそうだけど、それ以上にまだ逃げられると心のどこかで思っていたのだろう、みんなから顔を逸らさずゆっくり後退する。
しかし、急に身体に火照りが走る。誰かが後ろから抱き着いてきた。
そして、僕がまだ『MyGO!!!!!』のメンバーを3人しか視認できていないと把握するのが遅いと感じた瞬間でもあった。
「ダメですよ~、逃げたら」
「そ、そよちゃん!?」
メンバーの1人であるそよちゃんに後ろからガッツリ抱き着かれる。そのせいで胸が僕の背中で形が変わるくらいに当たっているけど、向こうはそんなおかまいなしだ。
それに彼女の本性を知っている今だからこそ見せているゆったりとした笑顔が怖い。だから話したくなかったんだよ!!
「燈ちゃん、どうしてこんな裏切りを……」
「すみません。でも……でも――――秋人さん1日優待券を貰うためには仕方なかったんです!!」
「えっ、なにそれ!?」
い、1日!? 1時間じゃなくて?? 一体何がどうなって!?
燈ちゃんの裏切りの真相。それはニヤついている愛音ちゃんが知っているみたいだ。
「ともりんだけが今日お呼ばれしたのが気になって、もしかしたら秋人さんがよからぬことを企んでいるんじゃないかってみんなで結論付けたんですよ」
「それで事前に燈と交渉して、もし秋人さんにガールズバンド界隈の条約を破る手助けを持ち掛けられた場合、同調するフリをするように話をしました」
「それだけだと押しの弱い燈ちゃんが流されてしまうのではないかと危惧し、さっきメッセージでダメ押ししておきました。もしバレずに秋人さんを捕獲できたら、ガールズバンド界隈で流通しているとても貴重な『秋人さん1日自由にできる優待券』を燈ちゃんに進呈するという条件付きを」
「そ、そんな……。あの心優しい燈ちゃんを利用したの!?」
「いや思いっきり利用したのは秋人さんの方ですよね!? まぁ、ともりんも相当欲望が出てましたけど……」
燈ちゃんを見てみると、俯きながら『1日あれば秋人さんを〇〇〇できる……』(※放送禁止用語なので言えない)みたいなことを幸せそうに永遠に呟いているので、欲望に駆られていたのは本当みたいだ。おとなしそうに見える子ほど欲望が爆発した時に激しい性格になるんだよね。知ってるんだ、何人ものガールズバンドの子たちと交流があるからね……。
「ここで立ち話もアレですから、戻りましょうか♪」
「そよちゃん何その笑顔!? こわっ!? ていうか抱き上げるな!!」
「早くベッドに戻りまちょうねぇ~♪」
「赤ちゃん言葉やめぃ!!」
「そよりん! 私にも秋人さん抱っこさせてよ~!」
「赤ちゃんじゃない!! お~い離してぇええええええええ!!」
そんなわけで、そよちゃんに抱き上げられたまま自宅にリターンすることになった。
年下の女の子に赤ちゃん扱いされる男とはこりゃいかに。作戦も失敗するし、何とも情けない姿をさらしてしまった。いやまぁ、引きこもりの時点で情けなさは振り切ってるけども……。
そういやこのバンドのメンバーはもう1人いるはず。
楽奈ちゃんっていうエキセントリックで自由気ままな子がいるんだけど、どこに――――
「ほら野良猫。猫ばかり見てないで行くよ」
「うん」
いた。
~※~
「おいしい……」
ところ戻って僕の部屋。
ちゃぶ台の肘をついて不貞腐れている僕の隣で、楽奈ちゃんが抹茶パフェを頬張っていた。最近よく遊びに来るので冷蔵庫に備蓄してあるんだけど、毎回何も言わずに勝手に食べてしまう。まあそのために買いだめしてあるから別にいいんだけど、そういうところ本当に身勝手な野良猫っぽいな……。
「あきと、食べる?」
「食べる」
「あ~ん」
楽奈ちゃんがスプーンを向けてきたのでありがたくパフェをいただく。
一応間接キスの類に入るんだろうけど、僕が不機嫌タイムなのと楽奈ちゃんがそう言ったことを気にする性格でないのも相まってスルーした。
そして反対側の隣では、愛音ちゃんが笑顔で僕の膨れた頬を突っついていた。
「もう秋人さん、そろそろ機嫌治してよ~」
「年下に図られた自分に腹が立つ……」
「出し抜けると思ったんだ。でも秋人さんって引きこもりなのに意外と賢いよね。私だってたまに勉強見てもらってるし」
「だからプライドがあったんだよ、ちっぽけだけどね」
引きこもりクソニートが一般の方々と同じくプライドなんて持っていいのかという議論が発生するが、いいんだよ。いつも自堕落な生活で己の底辺さを身に染みて感じているから、プライドの1つや2つ持ってないと自我が保てなくなり精神が潰れてしまう。
まあ今回それを容赦なく叩き潰されちゃったわけだけど……。
そうやって不貞腐れてる中で、正面に座る立希ちゃんが自慢のツリ目で僕を睨みつけてきた。
「どうしてバイトを?」
「え、えぇっと、社会との繋がりを感じたくて……」
「繋がりなら私たちや、他のガールズバンドの先輩たちがいるので大丈夫です」
「自分でお金を稼ぎたいって言うか……」
「欲しいものがあるなら言ってください。買ってくるので」
「立希ちゃんと一緒にバイトしたいなぁ~なんて」
「ッ~~!? う゛っ……うぅ……ダ、ダメです! ぐぅ、ホントはダメじゃないけどダメ……!!」
今ちょっと、いや結構揺らいだよね……? 僕に何を言われても淡々と反論しようと思ってたけど、予想外の攻撃に対して僕と働く妄想をしてしまって動揺している感じだ。顔真っ赤だし、これでさっきしてやられて荒んだ僕の心もちょっとスッキリした。
立希ちゃんが使い物にならなくなったので、代わりにそよちゃんが会話に割って入って来た。
何故か立ち上がって僕の背後に移動し、また後ろから抱きしめてくる。
「好きだね、僕をこうするの……」
「ここが私の居場所だって感じがして、死んでも離したくないんですよ。もう秋人さんの背中に住んでもいいかもしれません」
「うわぁ、メンドくさいそよちゃん出ちゃってる……」
過去の出来事から自分の居場所に拘る彼女。気持ちは分かるけど、だからと言って人の身体を居住区にするのはやめてもらいたい。何かにつけて僕をこうして抱きしめて自宅宣言するものだから、ずっと木に抱き着いてるコアラみたいだ。
いやこんな長身清楚美少女に包まれてるのは嬉しいんだけどね。待てよ、清楚……う~ん、まだギリ清楚か。腹黒いところあるけど。
このままだとバイトをさせてもらえない。
でも許可を得られる可能性がある提案が1つだけある。それに賭けるしかない。
「じゃあさ、バイトするなら『RiNG』でならどうかな? それだったらみんなと会う時間も増えるし、ここにいるのとそんなに変わらないと思うけど……どう?」
どう、と聞いた瞬間からダメそうな雰囲気が漂っていた。パフェに夢中な楽奈ちゃん以外の4人が不機嫌になっているが、不機嫌になりたいのはこっちだとツッコミを入れたい。今そんなことをしたらこの子たちの不満の導火線に火をつけるだけだからやらないけど……。
「秋人さんが『RiNG』でバイトすると他のガールズバンドが惚れまくって、営業にならなくなるのでダメです。私のバイト先を潰す気ですか?」
「いや、んなことないでしょ……」
「でも私たちがごたごたしてた頃、秋人さん頻繁に『RiNG』に来てたよね? あの時なんて熱い視線を送りたいがために女の子が集まって大変だったんだよ?」
「秋人さんを見たバンドの子たちの荒れた心が浄化され、解散寸前になっていたグループが速攻で一致団結し出したって話もありました」
「なにその打ち切り展開みたいな雑な解決方法!? バンドのいざこざ展開ってもっと複雑でしょキミたちみたいに!? 創作物にしてももっとマシなエピソードあるよ!」
「私がまたボーカルできたのも、私たちがここにいるのも秋人さんのおかげですから……」
「だったら僕の考えも尊重して欲しいなって……」
「します。なので秋人さんも私にしたいことがあれば何でも言ってください。その代わり、私も1日秋人さん好きにさせてもらうので……」
燈ちゃんは僕を図って獲得した1日優待券を見せびらしてくる。こんな性格の子だったっけと疑ってしまうが、好きなものに対しては周りが見えなくなるくらい盲目になるので、現在も絶賛欲望を解放中なのだろう。
そんなこんなで『RiNG』でバイトをする提案もあっさり蹴られてしまった。もはや僕はあぶく銭で人の好意を貪り食う生活しかできないのか。
そんなことを考えていると、楽奈ちゃんが頬を突っついてくる。パフェの容器は綺麗に空になっていた。
「バイト、したいの?」
「うん、まぁ自分でお金稼ぎたいなって」
「だったら膝枕して、眠いから」
「えっ?」
「「「「へ?」」」」
「枕代払う。100円くらいでいい?」
「「「「ッ!?!?」」」」
楽奈ちゃん、まさか僕を買おうって言うの……?? いや能天気な彼女のことだ、僕がお金を欲しいと言ってるからお小遣いを渡す感覚なんだろう。現に硬貨1枚で僕を釣ろうとしてるわけだし。しかも『100円くらい』だから払わない可能性だってあるわけで。
そんなことよりも、もっとヤバいのはバイトの代わりに僕に金を渡す、つまり僕を買う発想をこの4人に与えてしまったことだ。燈ちゃんたちは『その手があったか』と口を開けて唖然としながらも、沸き立つ欲望オーラが部屋中を包み込みそうなくらい充満させていた。
そんな中、真っ先に動き出したのは愛音ちゃんだった。
「じゃあこの洗濯カゴにあったこのシャツ、1000円で買っちゃう!」
「ダメだよ!!」
「だったら2000円で!」
「値段の問題じゃないよ!!」
それでも愛音ちゃんは諦めきれないのか、今月のお小遣いの支出を計算し始めた。計算とは言いつつも、女の子の命である美容代や洋服代などをどこまで削って僕の服の買値を上げられるかを検討しているようで、もうなりふり構ってはいないようだ。
次は立季ちゃんが僕の下着を持ってきた。もはや他の子たちもやっているいつもの光景過ぎてツッコミをする気にすらなれない。いつの間にか下着が新品になってるが常だから……。
「5000円で。手持ちがないので電子マネーでいいですか?」
「円滑に決済しようとするんじゃないよ!!」
「でもいい匂いがするので、更に上乗せたいです。10,000、20,000、いや30,000以上は固いかも。でもバイト代が……」
「そうだよ思い出して! キミのバイト代はドラムの質を一回り上げるとか、親孝行したりとか、華やかな青春を送るために放課後お出かけするためとか色々あるでしょ!? こんなことに金使っちゃっていいの!?」
「ドラム、親孝行、お出かけ、パンツ……うぅ!!」
「天秤にかけてる。敗けるな立希ちゃん!!」
「パンツ! 40,000で!!」
「負けたぁああああああああああああああ!!」
天秤にかけてた割には値段をいい張る時に超堂々としてたけど?? もしかして天秤してたってのは僕の妄想で、どれだけの値段で買おうか迷ってたってこと?? もうめちゃくちゃだ……。
そして、次は燈ちゃんがおずおずとしながらやって来た。
「何かな……?」
「わ、私が商品として売られます……」
「パパ活みたいなこと言ってるけど大丈夫……? 商品? 燈ちゃんが?」
「はい。お金を出すので、私を秋人さんの物にさせてください」
「ちょっとどこから得たのその知識!? とんでもないこと言ってるよ!?」
「床下収納から出てきたこの本を見ました。『不思議ちゃん系少女が僕を買おうとしてきたので逆にこっちから好き勝手する話』。土下座すればエッチしてくれそうな女の子がヒロインって書いてあったので……。容姿も似てるし、もしかしたら、わ、私のことなのかなって……。秋人さんならいいですけど……」
「そ、それはマジでゴメン!! 僕が書いたわけじゃないけど!!」
どうして隠してあるのにあっさり見つけるかなぁ、って責任転嫁はよくない。僕も知り合いの子に似た子のR指定本を買う癖をやめないと、今回みたいに超ド級の恥をかくだけだから……。
そんな中、まだ僕に抱き着いているそよちゃんが勝手に服を脱がそうとしてきた。思わず彼女の拘束から逃れて部屋に隅に逃げる。
「な、なにするの!?」
「秋人さんの貞操を買います。いくらですか? お値段、好きに設定してもいいですよ」
「今度は僕自身を売れってことか。いや売らないけども」
「そう簡単には秋人さんを買えないか。そうですよね、簡単だったらもう既に先輩のガールズバンドの皆さんに食べられちゃってますよね」
「意志は強いんだ。期待に沿えず申し訳ないね」
「そういう強気なところを堕とすのもまた一興……うふふ」
また黒いところ出ちゃってるよ大丈夫!?
ていうか流石はお嬢様学校の生徒、僕を直接買おうとするとは……。でもさっきも言った通り僕はギリギリのラインを死守できるタイプだ。そう簡単に脱いだりはしない。お風呂には女の子と一緒に入ること多いけども。
「お風呂、入る?」
「えっ、楽奈ちゃん? ちょっ!?」
お風呂のことを考えていたせいなのかどうなのか、いつの間にかまた隣に来ていた楽奈ちゃんだったが、なんといきなり脱ぎ始めようとした。
驚き過ぎて一瞬硬直したけど、捲り上げようとしていた服を急いで元に戻してやったおかげで事なきを得た。ていうか胸元まで捲れ上がっても下着が見えなかったんだけど、この子ちゃんと着けてるよね……?
「あきととお風呂、何円?」
「えっ、そ、それは……」
全く何も考えてないような純朴さで、綺麗なオッドアイの瞳で僕を見つめる楽奈ちゃん。
まさかこの子、ソーププレイって言葉を知ってる……!? いや流石に世間知らずなこの子がエロ同人みたいな展開を――――
「こうすれば男が嬉しいって知ってる」
「ホントに!? 意外と俗に飲まれてた……??」
「この本に書いてあった。『もう1人の不思議ちゃん系少女を騙して一緒に風呂に入って禁断プレイ』。興味深かったよ」
「マジでゴメン。何度でも言う。マジでゴメン」
そうです続編も買ってしまいました。よく燈ちゃんが不思議ちゃん系って言われるけど、楽奈ちゃんの方がよっぽど不思議ちゃんだと思う。それに加えてその本のヒロインが楽奈ちゃんっぽい気まぐれ少女だったから、勝手に彼女を憑依させて妄想してたら昂っちゃって――――って、男の性的な話はどうでもいいか。
先決なのはお風呂プレイを止めること。このままだとみんなまで――――
「あぁ~そういえば、今日は体育のあとシャワー浴びてないからなぁ~。入りたいなぁ~」
「バンドの財布から光熱費を出します。なので行きましょう」
「プ、プレイとか良く分からないですけど……頑張ります!!」
「女の子と入浴するバイトだと思えば大丈夫ですよ」
「どこが!?」
あぁ、ダメだ。みんなやる気だ。これもう一緒に入らなきゃ帰らないやつだよ絶対。
「初バイトが女の子とお風呂する仕事って、これから履歴書になんて書けば……。見られたらなんて思われるんだろ……」
「おもしれー男」
「その程度で済めばいいけどね……」
このあとめちゃくちゃ入浴した。
なんか完結してないのが気持ち悪いので、次回くらいで完結予定です。
今月中には投稿できればなぁと見通しの悪い予定を立ててます。
そういやアニメの続編で「Ave Mujica」メインもやるみたいで。
すっごいギスギスしそうですけど、この小説にその子たちが出たらどうなるのか……