ガールズバンドの子たちに甘やかされる日常【完結】   作:薮椿

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 甘やかすってよりは、超過保護になってる気がするパスパレ編。


Pastel*Palettesに甘やかされる

「こ、これは!? この本にはこんな特典が付くのか……!!」

 

 

 僕はパソコンのモニターに顔を近付け、目の前に広がる情報に歓喜していた。

 相変わらず昼間っからお菓子を片手にネットを徘徊している訳だが、たまたま目に入った情報に衝撃が走る。それは僕が好きな同人作家さんの単独単行本が発売されたという情報だ。その情報自体は前々から仕入れ済みだったんだけど、僕が驚いたのは単行本の特典の方だ。まさか本に登場するヒロインのタペストリーが出るとは……しかも全裸姿、これは特典付きで買うしかない。そういや単行本が発売するって情報に歓喜して、続報を見るのを忘れちゃってたな。

 

 どうしよう、ネットで注文するか……? いや、でも今すぐに見たい! ネットで注文しても届くのは2、3日後だろうし、それまで禁欲することなんて不可能だ。だけど、買いに行くとなると外に出ないといけないし……。

 

 僕はニートであり、しかもガールズバンドの女の子たちに身の回りのお世話までしてもらっている立場だ。そんな僕だからこそ外へ出るのは過酷な試練。ただ近くのオタクショップへ行くだけなのに、『はじめてのおつかい』に出てくる子供のように緊張してしまう。

 でも、ここで逃げたら特典のタペストリーが配布終了となり手に入らないかもしれない。それに宅配だと到着までに時間がかかる以前に、ガールズバンドのみんなの検閲が入る可能性がある。みんなが来る時間に規則はあるけどランダム性も捨てきれないため、いくら時間指定で荷物を受け取ろうとしても、その時間にみんながいる可能性もある。

 

 そうなると、やはり今みんながいないこのタイミングで出かけるのがベストだろう。速攻で店へ向かい速攻で本を購入、その後はみんなに見つからないように速攻で隠し、みんながいない深夜のタイミングで本を読み耽ける。うん、いい作戦だ。

 

 

 思い立ったが吉日。僕は適当な服に着替え、自室から玄関へ向かい、家から――――――出られなかった。

 なんで!? 何故だか分からないけど、ドアの鍵が壊れているのか開けることができない。いくら鍵の摘まみを回しても、ドアが開く気配すらない。

 

 それに、さっきからどこからか目線を感じる。そういえば、僕の家って防犯カメラってあったっけ? 家の中の玄関に取り付けられているのが見えるんだけど、そもそも防犯カメラって外の玄関に取り付けないと意味ないんじゃ――――――

 

 そう考えた瞬間、大方の事情を察した。

 同時に背後から気配を感じ、その気配と距離を取りながら後ろを振り向く。

 

 

「どこへ行こうとしているのかしら、秋人くん……?」

「ち、千聖ちゃん!?」

 

 

 ガールズバンドの子たちは忍びの術でも身に着けているのだろうか。いつの間にか僕の背後に千聖ちゃんが、笑っているけど笑顔ではない表情で僕を見つめていた。

 そう、僕は明らかに監視されていた。家主の許可もなく家の中に監視カメラを設置して、僕が外出しないように見張っていたのだろう。僕の性事情を赤裸々にしたり、隠してある薄い本を探そうともしてくるので、みんなにプライバシーという言葉はないんだろうか……。

 

 

「黙ってないで、質問に答えてくれるかしら?」

「う゛っ……。ちょ、ちょっとコンビニに……」

「それなら私が行ってくるわ。何が欲しいの?」

「い、いや、女優の千聖ちゃんが外をウロウロするのはやめておいた方が……」

「それじゃあ私が行ってくるよ!」

「うぇっ!? 彩ちゃんまでいたんだ……」

 

 

 家のドアの鍵、閉まってるよね……? いや壊れてるのか。なんにせよ、どうして2人がここにいるんだろう……。そんなことを言ったら合鍵を渡していないのに、ポピパやRoseliaのみんなが家に入れる理由も分からない。まあガールズバンドのバックにはあの弦巻家がいるので、僕の家の鍵ごときなんて簡単に複製できるだろう。相変わらず、僕にプライバシーもプライベートもないよね……。

 

 彩ちゃんも千聖ちゃんも、僕を取り囲んで尋問体勢に入っている。どちらも自分が納得するまで物事を追及するタイプだから、適当な受け答えではまず許してくれないだろう。だからと言って『R-18の本と好きなキャラの全裸姿が写ってるタペストリーが欲しい』とは流石に言えない。しかも芸能事務所に所属するPastel*Palettesの子たちにならなおさらだ。

 

 

「秋人くん、私残念だよ。まさか勝手に外出しようとするなんて……」

「いや別に禁止令なんて出されてないんだけど……」

「だったら今出すよ! 秋人くんは私たち、ガールズバンドの全員から許可を貰わないと外出しちゃダメ!」

「えぇっ!? それじゃあ絶対に無理じゃん! 25人もいるんだよ!?」

「みんなはそれくらいあなたのことを心配してるのよ。万が一外に出て、転んで膝を擦りむいたらどうしようとか、汚い車の排気ガスを吸って体調が悪くなったらどうしようとか、誰とも知らない雌猿にナンパされらどうしようとか……」

「過保護すぎるよそれ!!」

 

 

 みんなが僕に対して甘々なのはいつものことだが、まさかここまで甘やかされるとは……。いや、これは甘やかされるってよりは束縛されているだけのような気も……。女の子に甲斐甲斐しくお世話されるのも心配されるのも、嬉しいと言えば嬉しいんだけどね。

 

 それにしても千聖さんの最後の言葉。雌猿って……相変わらず容赦ないけど、千聖ちゃんの笑顔も怖いし触れない方が良さそうだ。

 

 

「そもそもさ、誰がいつ、何の目的であの防犯カメラを設置したの? お金持ちの家じゃないんだし、家の中に設置しても意味ないんじゃ……」

「それはガールズバンド会議で決まったからだよ。秋人くんを盗撮――――勝手に外出しないように監視するためにね!」

「言い直しても遅いよ!? 明らかに犯罪目的だよねそれ!?」

「秋人くんは何も気にしなくてもいいのよ。あなたのお世話は私たちが全てやってあげるから……ね?」

「そんなことで誤魔化されたりは――――って、ふぁ……」

 

 

 いきなり千聖ちゃんに頭を抱き寄せられ、胸を枕にするように押し当てられる。言ってもそこまで豊かな胸ではないのだが、人気女優の胸に包まれているってだけでも高揚感が半端ない。盗撮の事実を暴露されて気が動転していたけど、こうして女の子に抱きしめられておとなしくなるあたり、僕ってまだまだ子供なんだって思うよ。それに僕でなくとも、若手女優のパスパレのメンバーに抱きしめられたら、そりゃ心地良くなっちゃうって。

 

 

「ズルいよ千聖ちゃんだけ、私にも秋人くん貸してよぉ~」

「そうだよそうだよ! あたしもやりたい~!」

「ひ、日菜ちゃん!? 急に入ってきたね……」

「秋人くん! 次はあたしね!」

「ちょ、ちょっと日菜ちゃん、順番抜かしはダメだよ! 次は私の番なんだから!」

「えぇ~!? 最近仕事で忙しくて会えなかったら、早く秋人くん分を補充したいのに~!」

「フフ、モテモテね秋人くん」

 

 

 僕も本心を曝け出していいのなら、今すぐにでも女の子たちに求められるこの快感に浸りたいんだけどね……。でも、本心を露わにすると、ただでさえニートの僕が更にダメ人間になってしまいそうで躊躇われる。もうクズニートなんだから堕ちるところまで堕ちちゃえって言う子も多いけど、前にも言った通り、ニートにだってゴミクズ程度のプライドはある。だからそれを守るためにも、ここはみんなの玩具になる訳にはいかないんだ!

 

 

「そういえば秋人くん、まだ私たちの質問に答えてないよね? どうして外出しようとしてたの?」

「彩ちゃん、思い出さなくてもいいことを……」

「あたしも知りたいな~。だってさぁ、秋人くんがして欲しいことは全部あたしたちがやってあげるんだよ? もし買い物に行きたいんだったら、あたしたちに頼めばいいのに」

「そうね。仮に何か食べたい物があれば、私たちが総力を上げてお料理するわよ? もしかして、私たちのご奉仕が及ばず秋人くんに不満を抱かせてしまったかしら……」

「い、いやそうじゃない! そうじゃなくてね……」

 

 

「落ち着いてください皆さん! 秋人さんがひっそり隠している謎、ジブンたちが解き明かしてみせましょう!」

「はい! アキトさんの忍びの極意、私が全て赤裸々にしてみせます!」

 

 

「麻弥ちゃん、イヴちゃん!?」

 

 

 これは2人の登場に驚いたのではない。僕の外出の動機を自信満々に晒そうとするその行動に焦りを感じただけだ。だけとは言っても、その動機を知られることで僕にどんな仕打ちが襲い掛かってくるのかを想像すると、もう冷汗が止まらない。もしかして僕、もう一生外出できなくなるかも……。それにエッチな本を買いに行くとみんなが知ったらどんな反応をされるのか、ちょっと怖いな……。

 

 

「麻弥ちゃんもイヴちゃん、秋人くんの秘密を知ってるってホント?」

「本当っす。なんたってジブンは、防犯カメラの調整役なんですからね」

「えっ、じゃあ家の中に防犯カメラを設置したのって麻弥ちゃんなの!?」

「いやぁ皆さんの強い要望で、機械に強いジブンがその役目に抜擢されちゃいまして。家の中にカメラを設置するなんて、ジブンも心苦しかったんですよ?」

「いやいや、今すっごく笑顔だからね!? どうせカメラを調整しながら、『ちょっとスパイごっこみたいで楽しい、フヘヘ……』とか思ってたんでしょ!?」

「秋人さんにそこまでジブンのことを理解してもらえているなんて、光栄です!」

「あの、褒めてないからね……。ていうか本当だったんだ」

 

 

 パスパレのみんながいる時点で大体予想できてたけど、やっぱりカメラの調整役は麻弥ちゃんだった。いつもは周りの状況を伺って丁寧に会話に混ざる麻弥ちゃんだけど、機械絡みの話になると途端に暴走してオタク特有の早口になる。現に今も彩ちゃんたちと笑顔で怪しい会話をしているけど……。

 

 

「いい映像がたくさん撮れたので、今晩は徹夜で編集する予定です!」

「その編集が終わったら、あたしの携帯にも動画を送ってね!」

「ず、ズルいよ日菜ちゃん! 私も私も!」

「えへへ、大人気ですねアキトさん!」

「こんなので人気になっても嬉しくないんだけど……」

 

 

 そういや、このカメラっていつから取り付けられてたんだろう? もしかしてもしかするとだけど、玄関以外にも盗撮されていたりする?? だって玄関でいい映像なんて撮れるわけないし……。だったらどこ? まさかお風呂やトイレじゃ……ないよね? ここで麻弥ちゃんに問い詰めてもいいけど、笑顔で盗撮の事実を暴露しそうでちょっぴり怖い。後で確認してカメラを壊しておこう、うん。

 

 

「そういえばイヴちゃん、さっき秋人くんの秘密を暴いたと言っていたけれど、それは本当?」

「はい。麻弥さんのカメラがバッチリ映像を記録し、さっき私がアキトさんの部屋でその物証を掴みましたから」

「えっ、いつの間に部屋にいたの!? 僕が部屋を離れたのってさっきのことだよね!?」

「アキトさんの目を盗んで、素早く部屋に忍び込みました! これぞブシドーの極意です!」

「いや、そんな自慢げに言われても……。それにブシドーの心得が不法侵入って、自分で自分の信念を穢しちゃってるよ……」

「アキトさんのための行動なら、どんなことでも正義なのです!」

 

 

 本当の正義は自分が抱く信念だってよく言われるけど、傍から見たら僕がイヴちゃんを調教して従順にさせてると思われても仕方ないよね……。

 それはそうと、もう僕の部屋が近所の公園かのように出入り自由で好き勝手に遊ばれている。もはや僕の部屋に何が置いてあって何がなくなっているのかなんて、僕よりも彼女たちの方が詳しいくらいだ。まあ生活に必要なモノも嗜好品もみんなが進んで買ってきてくれるので、僕よりもみんなの方が詳しいのは納得できるけどね。

 

 

「アキトさんの部屋から拝借しました。これを見てください!」

 

 

 イヴちゃんは持っていたチラシを僕たちに見せびらかす。まだ僕が何を隠しているのかを知らない彩ちゃん、千聖ちゃん、日菜ちゃんは、差し出されたチラシを目を見開いて覗き込む。

 その時、彩ちゃんと千聖ちゃんは顔を真っ赤にし、日菜ちゃんは呆れたような笑みで僕を見つめてきた。

 

 そりゃそうだ、だってそのチラシは――――――

 

 

「そ、それ、女の子が見ちゃダメなやつだから!!」

「なるほどねぇ。秋人くん、これを買いに行きたかったんだ~へぇ~」

「そ、そそそそんな秋人くん、こんなにエッチな……」

「人の趣味はそれぞれだから咎めはしないけど、これは刺激が強すぎるわ……」

「ジブンもそのチラシを見た時に驚きました。まさか秋人さんがエッチな本と特典のタペストリーを買いに行く気だったとは……」

 

 

 つ、遂にバレてしまった……。そのチラシには、今日僕が買いに行く予定だった単行本と特典のタペストリーがでかでかと記載されていた。もちろんR-18モノなので、そのエロ本に出てくるメインヒロインの全裸姿が鮮明に描かれている。モザイクや秘所を隠す加工もされておらず、紛れもなく僕のようなアンダー18歳が手にしてはいけないモノだった。

 

 バレてしまった以上、弁解はできない。だったら少し強気に、むしろ清々しさを感じるくらいの勢いでみんなに対抗してみよう。そうでないと、僕はこれから一生外出できなくなるだろうし……。

 

 

「ほ、ほらね。こんなのみんなに頼んで買いに行かせられないでしょ? だから僕が行ってくるよ……ダメ?」

 

 

 みんなはチラシに描かれている全裸のヒロインを眺めたままで、僕の質問に答えることはなかった。

 これはもしかして――――勝ったか!? 今まで女の子に甘やかされっぱなしで、女の子に玩具として扱われることもあったけど、遂にこの時が来たんだ! 女の子を論破し、何も言い返せなくなるこのシチュエーションこそ僕は待ち望んでいた。言うなればそう、自由を手にしたんだ! みんなにはちょっと意地悪しちゃったかもしれないけど、これで心置きなく外を歩くことができる。そして待望のエロ本とタペストリーを入手し、今日の夜はそれでしっぽりと――――――

 

 すると、急に彩ちゃんが僕の両肩を掴んで壁に追い詰めてきた。あまりに突然だったので、僕は抵抗できずにただただ彩ちゃんを見つめるしかない。

 

 

「秋人くん、私たち悲しいよ……」

「た、たかが外出くらいで大袈裟だよ。ほら、さっき千聖ちゃんの言ってた心配事も分かるけどさ、ちょっと近所まで行くだけだから大丈夫だって」

「うぅん、違うの。どうしてこんな本で欲求を満たそうとするのか、って話だよ」

「ふぇ?」

「目の前にイキのいいアイドルがいるんだよ! どうして私たちを使わないの!?」

「そっちぃ!?!?」

 

 

 他のみんなも頷いているところを見ると、彩ちゃんの意見はパスパレの意見として昇華されているようだ。みんなの発言はいつも奇想天外で、もう何度『そっち!?』とツッコミを入れたのか分からない。もちろんパスパレのみんなだけでなくどのバンドの子たちもこんな感じなので、もはや僕の発言の方が間違っているのかと錯覚してしまいそうだ。これが民主主義の圧力ってやつか……。

 

 彩ちゃんの発言に対しては、そりゃできるなら生身の女の子の方がいいに決まってる。だけどそんなことはみんなに頼めないし、そもそもみんなには純潔のままでいて欲しい。据え膳食わぬは男の恥と言われたとしても、このまま女の子たちの誘惑に乗ってしまったらもう僕は人間じゃなく、ただの犬だ。飼い主にエサを与えられて尻尾を振って喜ぶ犬にだけはなりたくない。これ、ニートが抱くちっぽけなプライドね。

 

 

「もう、水臭いなぁ秋人くんは。あたしたちがいるのに、こんな二次元の女の子で気持ちよくなっちゃってさ」

「そうね。目の前にこれだけの女の子が揃っているのに、何もしないなんて同性愛者と思われても仕方ないわよ。そう思われたくなければ、早く私たちをベッドに連れ込みなさい」

「一応指摘するけど、君たち芸能人だよね!? 1人の男に、しかもニートに身体を売っていいの!?」

「好きな男性にカラダを捧げるのは、武士の極意だと聞きました! なのでアキトさんは何も気兼ねする必要ありません!」

「なにその筋も何も通ってない極意! 嘘教えられてるよイヴちゃん!?」

「撮影機材は豊富に揃えてありますから、いつでも好きな女の子からどうぞです!」

「いやいや、撮影してどうするの!? 機械に強い麻弥ちゃんに撮られたら、本物のAV撮影になっちゃうよ!?」

「そこまでジブンの腕を認めてもらえるとは、恐縮です」

「褒めてないよ!! っていうかどうして顔赤くしてるの!?」

 

 

 もうみんな口々に好きなことを言い出すから、会話に追いつくだけでも大変だ。いや、もういっそのこと追い付かずに彼女たちだけ先走らせておけばいいのかな……? このままだと僕が過労死しちゃいそう。ニートなのに過労死するとはこりゃいかに……。

 

 

「あのね秋人くん。私たちは秋人くんの身の回りのお世話をして、何1つ不自由のない生活をさせてあげたいの」

「う、うん知ってる……」

「だからね、ちょっとでも性的にイライラしたら、私たちを呼んで欲しいなぁって。だってほら、1人で白いのをたくさん出したって虚しいだけでしょ?」

「それ、全世界でオナニーをしてる人が聞いたら一気に萎えそう……」

「そうですよ秋人さん! 男性の白液の中にはたくさんの生命が宿っているんです。秋人さんはそれをティッシュに無駄に吐き出しているんですよ? それは生命の大量虐殺となんら変わりません」

「それじゃあ世界で何度行われているか分からないオナニーのせいで、毎日世界人口並の生命が死んでることになるね……」

「でも秋人くん。あなたにはその生命を無駄にしない方法がある。目の前にいる私たちは、一体何のために存在するのか理解してるかしら?」

「ぼ、僕のお世話をするため……」

「そうね。でも一言でお世話と言っても、家事だったり掃除だったり、もちろんあなたの健康管理もその対象。つまり……この先は言わなくても分かるわよね?」

 

 

 なんだろう、どうして僕が言い包められる形になっているんだろうか……? 正しい発言をしているのは僕のはずなのに、何故か彼女たちの意見に妙な説得力を感じてしまう。そのせいで何が正しいのかそうでないのか分からなくなっちゃいそう……。

 

 千聖ちゃんが僕にどんな発言を求めているのか、それはもう分かっている。でもこの流れに乗ってしまったが最後、僕の生活は今よりも更に堕落したものになるだろう。もう少し詳しく言えば、常に誰かしらの女の子が僕の性的イライラを処理してくれるような生活ってことだ。もちろんそれは男の夢だし、僕としても憧れる生活だと思っている。思ってるだけで、決して口には出さないけどね。

 

 

「…………そう。ここまで誘惑されても靡かないのは意外だわ」

「でも、私たちは秋人くんのそういうところが好きになったんだよね」

「こんな優柔不断な僕のことを?」

「優柔不断なんかじゃないです! アキトさんは自分の中で正しいと思うものを貫き通しています。女性からどんな甘言を受けたとしてもです」

「あたしも秋人くんのそういうところを見習いたいなぁ。ほらあたしって、彩ちゃんほどじゃないけどふわふわしてるでしょ?」

「日菜ちゃん、それって私の悪口……?」

「さぁ~て、どうでしょ~?」

「あはは……ともかく、ジブンも秋人さんのこと、もっともっと好きになっちゃいました!」

「あ、ありがとう……」

 

 

 いきなりこうして褒められるとは思ってなかったら、背中が痒くなっちゃうな。さっきまでは散々僕のことを誘惑していたのも、僕を試そうとしていた――――ってことは流石にないか。でも、みんなが僕のことを純粋に想ってくれることは嬉しい。それでも自分のことは優柔不断な変態野郎としか思えないけど、それはニートをやっている以上仕方のない話だ。

 

 

「そうだ、あたしいいこと思いついた! 秋人くんはあたしたちと直接スるのは躊躇われるんだよね? だったら、あたしたちのタペストリーを作っちゃおうよ!」

「は……?」

「どうせ女の子の裸が載ってるタペストリーを買う予定だったんでしょ? だったら、その代わりにあたしたちがモデルになればいいんだよ!」

「そ、それってつまりみんなの全裸姿が僕の部屋に……!? でもそんなの、他のみんなが許すはずが――――」

「いいアイデアだよ日菜ちゃん! 私も賛成!」

「確かに、そうすれば秋人くんが余計な雌猿で自慰行為をすることもなくなる。うん、いい手だと思うわ」

「この時のために私はモデルの仕事を続けてきたのです! 頑張ります!」

 

 

 モデルはモデルでも、このままだとAVのパッケージの撮影みたいになっちゃうよ……。パスパレのみんなは芸能人だから撮影には慣れているんだろうけど、これまで培ってきた魅せ方を全裸タペストリーに捧げるなんて実力を無駄遣いさせているような気がしてならない。まあ芸能人の女の子たちが僕1人のために脱いでくれるってシチュエーションはとっても興奮できるんだけどね。それに僕自身もちょっぴり期待しちゃっている。これで彩ちゃんたちの芸能人魂が腐らなければいいけど……。

 

 

「そうと決まったら、早速撮影の準備に取り掛かりましょう! 撮影用のカメラや照明は、事務所の方が貸してくれるそうです」

「えっ、事務所OKでたの!? こんなことに対して!?」

「はい。事務所の方は秋人さんのことを大変気に入ってますから!」

「それに秋人くん、『こんなこと』じゃないよ。これは秋人くんが二次元の女の子に囚われないように、そして外出して他の女性に靡かないように、私たちをより身近に感じられるモノを提供するだけだよ。それ以上でもそれ以下でもない。私たちからのプレゼントだから」

「素直にその気持ちを受け取りたいんだけど、結局それって……」

「うん。だからね、秋人くんは外に出なくてもいいの。ずっと、私たちがお世話をしてあげるからね」

「で、ですよね……」

 

 

 彩ちゃんたちの笑顔は凄く眩しいが、捉えようによってはヤンデレ発言にも聞こえそうだよねこれ。芸能人の女の子が自らオナネタを提供してくれるなんて狂喜するくらいだけど、彩ちゃんたちの全裸タペストリーが部屋に飾られていたらずっと興奮しっぱなしで眠れなくなっちゃうよ……。

 

 

「秋人くんと一緒にいると、るん♪って来ることばかりだね! タペストリーで私たちを感じてもらうんじゃなくて、いっそみんなで一緒に暮らせたらいいのに~」

「そんなことになったら、僕が干からびちゃうよ……」

「でも日菜ちゃんの言う通り、おっきな家で1つ屋根の下で生活できたら楽しそう。そうすればもっと秋人くんと一緒にいられるし、1日中お世話できるもんね」

「そこまで行くと、もう介護じゃん……」

 

 

 そうやってパスパレのみんなは夢を語るが、僕にとってはありがたくもあり恐ろしい夢だったりする。ガールズバンドのみんなと一緒にいられるのはもちろん嬉しいけど、夜なんて中々寝かせてもらえなさそう……。

 

 

 そんな訳で彩ちゃんたちの一糸纏わぬ姿のタペストリーが作成されようとしていたんだけど、どこからかその話を聞きつけた他のみんなが自分たちの分も作ると大騒ぎになったので、騒ぎを抑えるためにひとまず僕の部屋に全裸絵が置かれる異常事態は避けられた。ガールズバンド全員の全裸タペストリーが置かれる事態になったかもしれない未来を考えると、この結果で良かったんだと思う。部屋一面が女の子の全裸絵なんて、自室なのに目のやり場すらなくなっちゃうから……。

 

 

 でも、興味はあるからちょっと名残惜しいかな……? ちょっとだけだよ??

 




 ポピパ編とRoselia編の2話の時点で、この小説の評価バーが赤MAXとなりました。バンドリ小説全体の中でも総合評価順位で上位5%に入ったので、ハーメルンでも勢いのあるジャンルだとひしひし感じます。


 次回はAfterglow編の予定です。


 この小説が気に入られましたら、是非お気に入り、感想、評価をよろしくお願いします! 
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新たに☆9以上の高評価をくださった

ロスこめさん、ゆゆにゃ~さん、ユーたさん、銀太さん、ネインさん、Doraguniruさん、カプ・テテフさん、にゃおーんさん、Black・wolfさん、カットさん、shun1164さん、のり塩さん、橙煉さん、シフォンケーキさん、なお丸さん、いわしの頭さん、咲菜さん、新城常平さん、三日月重教さん、yuucoさん、れすぽんさん、きときとさん、アークスさん、agrsさん、かきみーらさん、羽乃 秦御さん、幸村type0さん、如月 妖斗さん、ユマサア@現在執筆休止さん

ありがとうございます!


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