ガールズバンドの子たちに甘やかされる日常【完結】   作:薮椿

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不器用ちゃんたちに甘やかされる

 今一度確認しておこう、ここは僕の家だ。確認せずとも僕はガールズバンドのみんなから外出を禁止されているので、僕が僕の家以外の場所にいることはない。でも、どうしても確認しておきたかったんだ。この張り詰めた空気、流れる緊張感、重い雰囲気。もはや僕のプライベートな空間だとは思えない。どうしてこんなことになってしまったんだ……。

 

 

「湊さん、秋人の歯ブラシを持ってどこへ行くんですか?」

「どこって、歯ブラシを持ったら歯を磨くに決まっているじゃない。秋人の歯を磨いてあげるのよ」

「でも、自分の荷物が置いてあるところに行こうとしていましたよね? 持って帰ろうとしていたんじゃないですか?」

「そんなことする訳ないじゃない。変態じゃあるまいし」

「リサさんが言ってましたよ。『友希那の部屋に遊びに行ったら、男物の服がたくさんあった』って。写真を見せてもらいましたけど、同じ服が秋人の部屋にもあった記憶があります。その件についてはどう弁解します?」

「最近男装が趣味なのよ。まさか、美竹さんは人の趣味に文句を言うような人じゃないわよね?」

「湊さんが何をしようが関係ないですが、往生際の悪さには文句を言いたいですね……」

 

 

 なんか凄くギスギスしてるぅうううううううううううううううううううう!!

 友希那ちゃんと蘭ちゃんは、お互いの相性が良くもあり悪くもある。音楽への情熱の入れ込み方は似てるんだけど、それ故に衝突し合うことが多い。それも2人が不器用なのが一番の原因で、言ってしまえばお互いにコミュ障である。だからこそ、こうして会話をすると自分の主張の意図が上手く相手に伝えられない。その結果、傍から見ると喧嘩をしているように見えるのだ。しかも2人は喧嘩をしているとは思っていないので、余計にギャラリーが焦ってしまう。

 

 音楽の方向性とか、お互いのコミュ障が祟ったとか、それで喧嘩をするのはまだいいよ。お互いの考えをぶつけ合うことで、相手の音楽性も広がるだろうから。

 でも、今回ばかりは何の生産性もない。僕の服を盗んだのか盗んでないのか、どうでもいいようなやりとりでお互いが熱くなっている。とは言え、友希那ちゃんが盗んだことは会話の流れからして明らかだけどさ……。

 

 

 そんな訳で、今日は友希那ちゃんと蘭ちゃんが僕の家に来ている。

 2人は特に連絡をし合ってここに集合したのではなく、偶然たまたま僕の部屋で鉢合わせた。2人の制止役であるリサちゃんとモカちゃんがいてくれればこんな空気にはならなかったんだろうけど、今日はこの2人だけなので、これから部屋の空気がどれだけ重くなるのか分かったものじゃない。話によれば別に会うたび会うたびに喧嘩をしている訳じゃないらしいんだけど、今日は目を合わせた瞬間から2人は臨戦態勢だ。リサちゃん曰く、『いくらアタシでも、友希那と蘭が秋人を取り合う現場にはいたくない』そうだ。あのリサちゃんまでもが避けようとしているこの状況、一体どれだけ激しい戦闘が繰り広げられるって言うんだ……。

 

 

「湊さんにこれ以上何を言っても無駄ですから、もう諦めます。秋人の面倒は私が見るので、それを持って帰っていただいても構いませんよ」

「何を言っているのかしら? 今日は私が秋人のご奉仕役なのよ? 美竹さんこそ邪魔しないでくれるかしら?」

「あたしは事前に秋人に連絡を入れていました。無断で秋人に会うのはルール違反ですよ」

「あら、私も連絡を入れていたわ。しかも1ヵ月も前から、秋人と2人きりになれるこの日を予約していたのよ」

 

 

 あの、この空気で発言しづらいから心の中で叫ぶけど――――――どっちからも連絡来てないんですけど!? どうして平気で嘘つくの、ねぇねぇ!?

 お互いに相手のマウントを取りたいがために、如何にもアポを取ったかのような流れで会話をしている。しかも嘘を吐いていることに何の躊躇いの色も見せず、ひたすらありもしない事実を並べてマウントを取り合っている。怖い、女の子の争いほど怖いモノはないよ……。

 

 

「いくら話し合っても埒が明かないわね。こうなったら、どっちが秋人により良いご奉仕ができるかで決着をつけましょう」

「ちょ、ちょっと待ってよ2人共! 何も争わなくても……」

「いいですよ。湊さんとはいつか白黒をハッキリさせる必要があると思っていましたし、いい機会です」

「えぇ……お互いにそんなに殺伐としてたの……?」

「いつもはリサや青葉さんがいた手前、表面では交遊的に取り繕っていたわ」

「同じく。あたしたちの事情に、他のみんなは巻き込めないから」

「でも今日という今日は違う。どちらが秋人を満足させられるのか、あなたへの愛の力が試されるの」

「だから負ける訳にはいかない。特に湊さんだけには」

 

 

 女の子から求められるのはとても嬉しいんだけど、どうせならプライドをかけている音楽で勝負をしてもらいたいよ。対バンをするくらいだから、一応お互いに相手の音楽は認めているはずだ。だからこそ、お互いに譲れないもので衝突するのが理想だと思うんだけど……。

 

 2人の目を見てみると、音楽に情熱を注いでいる時よりも燃えている気がする。2人共不器用なくせに変なところで頑固だから、これは僕が何を言っても2人は止まらないだろう。むしろ、そんな不器用な2人に何をされるのか、ちょっと怖い……。

 

 

「最初の勝負は、たまたま私の手に歯ブラシが握られていたから、まずはこれを使いましょう」

「たまたまって、それ友希那ちゃんがパクろうとしてたやつだよね……?」

「ゴメンなさい、日本語が分からないの。私、楽譜しか読めないから」

「あのねぇ……」

「御託はいいですから、早く始めましょう。どちらが秋人の歯を綺麗に磨けるか。そして、どれだけ秋人を気持ちよくさせることができるか。判定はこれでどうです?」

「き、気持ちよくってなに!?!?」

「いいわよ。どんな条件であれ、Roseliaとして頂点を掴み取るのは当たり前だもの」

「こんなことを君たちの素敵な夢と一緒にしないで……」

 

 

 友希那ちゃんは僕をお世話する時にいつもRoseliaの夢と僕を並列に扱うけど、そのせいで相対的にRoseliaの夢の品位が下がっている。僕みたいなニートのお世話をすることにどんな価値を見出しているのかは知らないけど、まぁこれも友希那ちゃんらしい。どんなことでも手を抜かず全力で取り組むのが、如何にも彼女っぽい。

 

 

「先手必勝。まずは私からよ」

「よ、よろしく――――って、ちょっとちょっと!? どうして歯ブラシを自分の口に入れるの!?」

「んっ……どうしてって、歯ブラシには歯磨き粉が必要なことくらい、普通に考えれば分かるでしょう」

「い、いやそれって友希那ちゃんの、だ、唾液じゃん……」

「私のご奉仕は身の回りの世話だけではないわ。あなたの内面までお世話してあげたいの。だから私の唾液で、あなたの歯と口内を綺麗にしてあげるわ」

「湊さん、意外と変態なんですね……」

「愛する人のためなら最善を尽くすのは当然よ。それに、私の体液が秋人の身体に――――い、いけない。私としたことが、つい興奮して我を忘れていたわ……」

「興奮してなくても十分に変人だから……」

 

 

 これには張り合っていた蘭ちゃんも思わずツッコミを入れてしまうほどだった。友希那ちゃんが僕に並々ならぬ愛情を注いでくれているのは知ってるし、僕も彼女のご奉仕には感謝してるけど、こうして常人とは思えない行動を真顔でしちゃうのが玉に瑕なんだよなぁ……。しかも、本人はそれを奇行とは思っていないところがまた恐ろしい。しかもRoseliaのみんなも基本こんな感じだから、普段はツッコミを入れるメンバーが誰1人としていないことにも、友希那ちゃんの奇行に拍車をかけているんだと思う。

 

 するといつの間にか、僕の目の前に友希那ちゃんが近づいていた。もちろん歯ブラシを僕の口へ差し出して、口を開けろと言わんばかりに歯ブラシを軽く上下させる。歯ブラシは友希那ちゃんの唾液で輝いており、ガールズバンドでもトップクラスと言われた歌姫の唾液に思わず息を飲む。適当に100円の歯ブラシを買ってきて、友希那ちゃんに咥えさせたそれをビルの屋上から投げ捨てるだけで、多くのファンが争って奪い合うだろう。それくらいの価値を誇る歯ブラシを、僕が独り占めできるのだ。ちょっと興奮するじゃん……?

 

 

「ダメです。こんなのは認められません」

「あら、美竹さん。嫉妬は見苦しいわ」

「挑発には乗りませんよ。そもそも、公序良俗に反したプレイは無効です」

「プレイって、言い方がちょっとアレなんだけど……」

「だったら、美竹さんはどう秋人にご奉仕してあげるのかしら?」

「よくぞ聞いてくれました。秋人、あたしが一番あんたを満足させられるって証明してあげるから」

「た、楽しみにしてるよ……」

 

 

 あ、危ない……。このまま流れに身を任せていたら、あのまま歯ブラシを咥えていただろう。友希那ちゃんを味わえると思うと惜しかったけど、僕まで変態扱いされるのはよろしくない。蘭ちゃんからも超睨まれそうだったし、これで良かったんだろうな……。

 

 そして、今度は蘭ちゃんのターンだ。

 そう思った矢先、歯ブラシを持った蘭ちゃんは僕の後ろに回り込んだ。それから息つく暇もなく、蘭ちゃんは僕を優しく抱きしめてきた。

 

 

「ふぇぁっ!? ら、蘭ちゃん!?」

「秋人は女の子に抱きしめられながらご奉仕されるのが大好きなんだよね。あたし、知ってるから。秋人の部屋にあった薄い本でたくさん勉強したんだ。ほら、こんな感じに――――」

「な゛っ!? 蘭ちゃん、む、胸が……!!」

「こういう時って、『当ててるんだよ』って言って恥ずかしがればいいんだよね。そのセリフ自体が恥ずかしくて言えないんだけど、ドキドキしてるのはホントだよ。胸を密着させてるから聞こえてるでしょ? あたしの鼓動」

「う、うん……」

 

 

 ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!! 女の子に後ろから抱きしめられるシチュエーションは、僕の中でベスト3に入るくらいに興奮する。女の子から母性を感じられると言うか、全身を包み込んで甘やかしてくれているのが何とも心に響く。しかも、蘭ちゃんの意外に大きな胸が僕の背中に密着し、柔軟にその形を変える。その感触も相まって、僕も彼女と同じく心臓の鼓動の高鳴りが止まらない。

 

 

「秋人、口を開けて。そうそう、いい子だね。秋人はあたしの身体をクッションにして、ゆっくりしていればいいよ」

「ら、蘭ちゃん……? あまり子供扱いしないで……」

「だって、今の秋人が凄く可愛いから」

「うわぁっ!? む、胸が……」

「身の回りのお世話は全部あたしがやってあげるから、秋人はその間好きだけあたしの身体を触っていてもいいよ」

「そ、そんなこと……」

 

 

 蘭ちゃんって普段は素っ気ない態度だけど、だからこそ、こうやって穏やかな雰囲気で優しくされると心が高鳴ってしまう。しかも、僕の耳元で甘く囁いて誘惑してくるので、もう思考停止で彼女に身を委ねてしまいそうだ。蘭ちゃんのおっぱいを枕にしながら歯磨きをしてもらうこのシチュエーション。うん、悪くない。

 

 

「ちょっと美竹さん」

「湊さん……あぁ、そういえばいましたね」

「私を忘れていたのは百歩譲っていいとして、あなた、公序良俗に反したプレイは無効とか言っていなかったかしら?」

「これのどこが違反していると? 赤ちゃんに歯磨きをする時のお母さんたちは、みんなこうやっていますけど」

「僕、赤ちゃんだったんだ……」

「秋人を見ていると、明らかに興奮してるじゃない。ほら、下半身を見てみなさい。赤ちゃんにこんな生理現象は起き得ないわ」

「あっ、本当だ……。まさか秋人、赤ちゃんプレイで興奮したの?」

「ちょっ!? それじゃあ僕が変態みたいじゃないか!! そういうのを見るのはそこそこ好きだけど、決してやってもらって悦ぶような変態じゃないから!!」

「「いや、見るのが好きでも十分に変態だから」」

「どうしてそこだけ息が合うの!? さっきまでいがみ合ってたよね!?」

 

 

 普段は友希那ちゃんや蘭ちゃんの方が変態染みてるのに、僕を弄る時だけは真っ当な人間に戻るのはズルいよ……。これまで自分たちが行ってきた猥褻行為を棚に上げ、如何にも僕だけが社会の外れ者だと言わんばかりに蔑んでくる。まぁ、こんな扱いに慣れたと言えば慣れちゃったけどね。だからなのか、僕は未だにみんなからM男の称号を叩き付けられるんだろうなぁ……。

 

 

「ご主人様へご奉仕するなら、ご主人様に最も喜んでもらわなければ意味がないわ。だから、歯磨きはまたの機会にするとして……」

「ちょ、ちょっと待って!? 友希那ちゃん、どこ触ろうとしてるの!?」

「下半身をこんなに大きく膨らませて、辛いでしょう?」

「な゛ぁ!? そ、それは自分でやるから……」

「そうですよ、湊さんは手出ししないでください」

「ら、蘭ちゃん! 助かっ――――」

「秋人のここが大きくなったのはあたしのせいだから、あたしが鎮めてあげるのが普通だと思います。そうだよね、秋人?」

「え゛っ!? そんな質問をされても……」

 

 

 ここで蘭ちゃんに同意すると友希那ちゃん、友希那ちゃんに同意すると蘭ちゃんの機嫌を損ねてしまう。できれば穏便に済ませたいところだけど、こういった優柔不断なところばかり見せていると、いつか誰かに刺されそうで怖いよ……。それにぶっちゃけて言ってしまえば、蘭ちゃんのおっぱいを堪能しながら抱きしめられているこの状況をもっと楽しみたい自分がいる。でもそれを正直に言ってしまうと負けな気がするし、友希那ちゃんに白い目で見られるのは確実だ。

 

 それもこれも、僕の下半身が節操なしだからだろう。ほぼ毎日美女美少女に囲まれ、こうして誘惑されているんだから、そろそろ僕の性欲も耐性を付けてもらいたいものだ。みんなが帰った後なら好きなだけ扱いてあげるから、今は何としてでも収まって欲しい。

 

 ――――と言っても、思春期男子の性欲が気力だけで鎮められるはずないんだなこれが……。

 

 

「全く、男って単純ね。脂肪の塊を押し付けられただけで、下半身でしか物を考えられなくなるお猿さんに成り下がるのだから」

「う゛、ぐっ……。否定はできないけどさ……」

「別に蔑んでいる訳ではないわ。むしろ、私は嬉しいのよ。秋人が私たちで興奮してくれていることに。脳内で私たちを襲う妄想をしてくれていることに」

「そ、そんな激しい想像はしてないから!!」

「ちょっと待ってください。今、私たちって言いましたよね? 秋人を興奮させているのは私であって、湊さんではありません。さも2人の力みたいに言わないでくれますか?」

「あら、気付いていなかったのかしら? あなたが秋人にご奉仕する前から、彼は私の唾液の付いた歯ブラシを凝視して息を荒くしていたことに。秋人自身は気付いていないようだったけれど」

「えぇっ!? そ、それってホント……??」

「えぇ。だから、秋人の性欲を発散させる役目は私にあるのよ」

「そんな証拠もない主張は認められません!!」

 

 

 蘭ちゃんはそう言いながら、より強く僕を抱きしめる。

 ダメだ、蘭ちゃんの身体が気持ち良すぎて、このまま眠ってしまいそうなほど心地いい。2人の争いを止めたいのは山々だけど、現在絶賛女の子に懐柔されてダメ人間になっている僕では役不足だろう。

 

 

「仕方ないわね。あまり強引な手を使いたくはなかったけど、秋人の精をいただくために多少の無理をさせてもらうわ」

「それって何を――――って、ちょっ!?」

「み、湊さん!?」

 

 

 友希那ちゃんは僕の脚と脚の間に入り込むと、僕のズボンのチャックを口で咥えた。

 そして、そのまま手を使わず、口だけでズボンのチャックを降ろし始めた。僕は幸か不幸か、蘭ちゃんに抱えられているせいで動けない。そのせいで友希那ちゃんの奇行を見ていることしかできなかった。

 

 

「秋人の部屋にあった薄い本で、このようなシチュエーションがあったわ。てっきり私にやってもらいたいのかと思っていたけれど、違ったかしら?」

「うっ……好きなプレイではあるけど、みんなにやってもらおうなんて……」

「私は秋人の趣味がどれだけ変態だろうと、受け入れる覚悟があるわ。秋人が私をペットにしたいと言うならば、首輪をつけて夜中の公園を四つん這いで散歩するのも大歓迎。ペットなのに服なんていらないと命令されれば、一糸纏わぬ姿を晒すのも厭わないわ。美竹さん、あなたにその覚悟があるかしら?」

「バカにしないでください、それくらい余裕です。何なら、どちらが秋人に可愛がられるペットになるかで勝負してもいいんですよ?」

「女に二言はないわね? なら、早速準備を――――」

「ちょっとちょっと!? 勝負云々以前に、僕がペットプレイ好きって前提で話を進めないでよ!?」

「……? ならこの『催眠調教~憧れの先輩と同級生をペット奴隷に~』という本は何かしら?」

「そ、そんなものまで見つけてたの……?」

 

 

 R-18関連の書籍は全部隠してあるのに、ガールズバンドのみんなはまるで隠し場所を知っているかのようにあっさりと見つけ出す。そして今の友希那ちゃんのように、僕が本に描かれているシチュエーション好きだと思い込み、いつの間にかそのシチュエーションに沿うようなプレイを身に着けてきたりもする。さっきの口だけでズボンのチャックを降ろす行為も、友希那ちゃんが見つけ出した本のシチュエーションの一部だ。

 

 度し難い趣味だってことは自分でも理解してるけど、こうして女の子直々に指摘されると羞恥心が半端ない。友希那ちゃんや蘭ちゃんに攻められている興奮よりも、この恥ずかしさで身体が熱くなってきちゃったよ……。

 

 

「あ、あのね! 僕の趣味が変なのはもう否定しないけど、みんなにまで押し付けるようなことは絶対にしないから! だから、もっと自分のことを大切にして。そ、それに、2人が全裸で外を歩くなんて、他の人に見られたくないっていうか……」

「秋人……。そこまであたしたちのことを考えてくれていたんだ」

「そうだよ! だからね、業が深すぎるプレイは避けてもらえると助かるんだけど……」

「嬉しいわ。私たちには純潔でいて欲しいということなのね。いつか自分がその純潔を奪うから待っていろ、というあなたのメッセージ、しっかりと受け取ったわ」

「秋人のために初めてを取っておくなんて当たり前だけど、秋人からそう告白されると少し恥ずかしいかな……」

「い、いや、そこまで考えてはなかったんだけど……」

「あなたの優しさを感じたら、今まで争っていたのが馬鹿らしくなってきたわね」

「そうですね。あたしたちは協力して秋人のお世話をしなければならない。あたしたちが争っていたら、秋人を満足させることなんて到底できないですから」

 

 

 あ、あれぇ? なんか僕の伝えたいことが、微妙にズレた形で2人に受け止められた気がする……。

 でも、それで2人が仲直りしてくれたんだったら結果オーライだ。これでこれからも2人仲良くしてくれるといいんだけど――――――

 

 

「秋人がその気になったら、いつでも私の純潔を貫いてくれて構わないわ。なんなら、今すぐにでも」

「湊さん、抜け駆けは許しませんよ。秋人の初めてとあたしの初めては同時に失おうって、秋人と約束しましたから。そうだよね?」

「えっ、そんな約束は――――むぐっ、む、胸が……」

「美竹さん、また姑息な手で秋人を……。いや、私たちの初夜のために、秋人を興奮させてくれているのね。素晴らしい余興に感謝するわ」

「あたしが湊さんの前座……? 面白いことを言いますね。湊さんは食後のデザートがお似合いですよ。もちろんあたしがメインディッシュで」

「なるほど、それならば始めるしかないようね」

「はい。あたしたちの戦争を。どちらが秋人の初めてを奪い、自分の初めてを奪われるのかを――――」

「ど、どうしてこうなった……」

 

 

 さっきは一蓮托生の雰囲気を醸し出してたのに、またしてもお互いに戦意を燃え上がらせている。まぁ、友希那ちゃんと蘭ちゃんはこうして競い合っている方が似合っているのかもしれない。こうして仲間を気兼ねなく競争相手にできるのは、それだけ相手のことを信頼している証だ。喧嘩するほど仲が良いって言葉があるけど、この2人こそまさにその言葉を体現している気がするよ。

 

 

「なら、今回も先行は私からでいいわね?」

「はぁ? 秋人の童貞をかけているのに、それだと勝負がついちゃうじゃないですか!」

「流石に騙されなかったようね」

「人を舐めるのもいい加減にしてくださいよ……」

「舐めるのは秋人のあそこだけよ。秋人も私の歌声が発せられる口を自分の剛直で埋めることができて、さぞ興奮するに決まってるわ」

「そんな小さな口で、秋人のを咥えられるとでも? あたしはいつ秋人のものを咥える時が来てもいいように、発声練習がてらにバナナを咥えて練習していますから。湊さんは引っ込んでてください」

 

 

 でも、その喧嘩の内容がこれだから、せめて人前で自重してくれるのを祈るばかりだよ……。

 

 

 ちなみに、このあとすぐにリサちゃんとモカちゃんが遊びに来てくれたおかげで、2人の争いは無事に終息した。

 役得な状況を逃したと言うべきか、一時の興奮でお互いに純潔を捨てずに良かったと安心するべきか。とにかく、これからは僕の家に来る子がこの2人だけにならないよう、みんなに注意喚起しておかないと……。

 




 バンドリのキャラはみんな和気藹々としているので、友希那と蘭の関係は他のキャラ同士にはない特別な関係って感じがしますね。だからこそ、私は2人のこの関係が好きだったりします。
もっとお互いに会話をしているシーンを見てみたいのですが、友希那はRoseliaと香澄以外に絡むキャラが少なすぎるのが問題な気が……。


 どうでもいいですが、1話の登場キャラが少ないと話の展開が描きやすくて非常に楽だったりします(笑)
 でも1話でたくさん出してあげないと、投稿ペース的に次に登場するのが半年後とか余裕でありそうなのが怖いところ……



この小説が気に入られましたら、是非お気に入り、感想、評価をよろしくお願いします! 
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銀の弾幕さん、巌窟王蒼魔オルタさん、竜矢さん、病み美少女の操り人形さん、銅英雄さん、丸山 光輝さん、由夢&音姫love♪さん、トウロウおわさん、ahoさん、T-Kiさん、マグマさん、サマーブックさん、ラッキーラッキョさん、えつさけさん、youukkariさん、にゃるサーさん、松原悠斗さん、翡翠林檎さん、色即是空さん、roxzさん、仮面ライダー4:21さん、神操機さん、白黒君さん、幸島相馬さん、アークスさん、シュークリームは至高の存在さん、ひょい三郎さん、幻博さん

ありがとうございました!

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