夏休みが終わりいよいよ2学期。梨子と輝が花火を観たあの夜からいろいろなことがあった。梨子たち合唱部は、全国合唱コンクールで銀賞受賞という形で終わった。輝たち競技かるた部も全国大会団体戦で準優勝、2日目の個人戦では、輝が優勝を果たした。お互いそれぞれ持てる力を出し切った。 そして2学年には、最大の行事がある。
「林間学校のしおり作り、ですか? 」
そう、林間学校がある。今は、そのしおり作りを担当する人を決める時間である。
「桜内が適任だと思ったんだが…」
「けど先生。梨子は、ピアノと部活で忙しいんじゃ…」
「確かにそうだな…。じゃあ神崎、お前が桜内を手伝え‼︎ 」
「ええ⁈ 」
先生が輝を推薦した途端、周りから「いいんじゃない? 」「神崎君なら大丈夫だよ」「梨子ちゃんをフォロー出来るのは、神崎君しかいない! 」等の声が上がった。
梨子もうるうるとした上目遣いで、輝を見つめてくる。俺は、梨子の上目遣いに負けてしまったのだった。 あんな可愛い子の上目遣い負けてしまうのも無理ないです。
「わかりました。責任を持って引き受けさせていただきます」
こうして2学年の林間学校のしおり作りは、輝と梨子が引き受けることになった。
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放課後の部活で輝は、悠也先輩にしおり作りを担当することになったことを話した。
「林間学校のしおり作りか…。輝も大変な役引き受けたね」
「はい…」
「あれ大変だぞ。2日分の日程まとめなきゃだし」
「はい…。梨子、手際良さそうだし俺のやれることあるかな…。とりあえず梨子が教室で待ってるんで、行ってきます」
輝は、梨子のいる教室へと向かっていった。教室に向かうと梨子が自分の机の上で何やら悩んでいる様子だった。
「梨〜子」
「輝君、助けて〜」
梨子は、とても悩んでおり辛そうな声を上げていた。
「まぁ、まだ時間は充分にあるし俺も手伝うから」
それから二人は、しおり作りに取り掛かり始めた。 思ったより作業は
捗り今日は日程をまとめる所まで終わった。
「とりあえず今日は、こんなとこかな」
「続きはまた来週」
その日の夜の夕飯、輝は家で林間学校のことを話していた。
「最近学校どう? 」
「あー。楽しいよ。もうすぐ林間学校でさ、俺、そのしおり作りやることになったよ」
輝は、ご飯を食べながら喋る。
「お兄がしおり作り? 一人で? 」
「いや梨子と一緒に」
「梨子姉と? ふーん。お兄ってさ、梨子姉好き? 」
「ブハッ!? り、梨子のことが? な、なんで⁈ 」
舞がそう言った途端、輝は舞の言葉にビックリして飲んでいた麦茶を吐き出してしまった。
「え? だってよく一緒にいるし、花火の時だって一緒にいたじゃん 」
「べ、別に梨子はただのガールフレンドだし‼︎ 花火だって誘われたから行っただけだし‼︎ 」
輝は、舞の言葉に動揺してしまい手が震えながら麦茶を組んでおり机に麦茶がこぼれてしまっていた。
「梨子のことは、す、すすす好きとかまだそんなじゃないからww‼︎そ、そそそそれにか、仮に俺が梨子を好きでも向こうにその気がなきゃ意味ないだろwww⁈ 」
輝は、麦茶を口にし少し笑いながら喋っており口から麦茶をこぼしTシャツが汚れてしまっていた。
「り、梨子とはそんなじゃないからwww‼︎ 絶対そんなじゃない」
夕飯を終えた後、輝は自分の部屋のベッドに寝転がっていた。
「ったく舞の奴、変なこと言いやがって…。っていうか見てたのかよ。でも梨子は、俺のことどう思っているかな」
(俺といてもそんな嫌そうな感じ全くないし俺も梨子といる時間は楽しいしこの前の花火も楽しかったし。それに梨子は、どっちかというと結構美人だし…)
輝は、ふと梨子の顔を思い浮かべてしまった。
(…って何梨子の顔思い浮かべんだよ‼︎ 俺は)
その週末、輝は梨子の家で梨子と林間学校のしおり作りをしていた。
「日程のページはわかりやすくこのページまでにまとめて見やすくして空いたこのスペースに絵描くといいと思うんだけどどうかな? 」
「うん。すごくいいと思う。絵は私描くよ。輝君、すごいね。よくこんなに」
「昨日、夜中に考えたんだ。部活も大変だけどね」
思いのほかしおり作りは捗り学年分の印刷も含め今週中には出来上がりそうだった。
「疲れたね。休憩しようか。お茶持ってくるね」
「うん。ありがとう」
輝がそう言うと梨子は、お茶菓子を、持ってくる為部屋を出ていった。
輝は、机の上を簡単に片付けると梨子の部屋を見回した。棚には、梨子が過去に出たピアノコンクールでピアノスクールの仲間たちと撮った写真や梨子が過去に受賞したコンクールのトロフィーや賞状が置かれていた。部屋には、ピアノが置かれていた。
「すごいな…。小さい頃からずっとこんなに…。やっぱ梨子すげぇよ…」
「輝君、何してるの? 」
「え? あ、梨子」
輝が振り返ると梨子が麦茶を載せたトレーを持ってドアの前に立っていた。
「お母さんから差し入れ」
梨子がトレーを持って部屋に入ろうとした時だった。
「キャッ⁈ 」
梨子は、つまずいて転びお盆を落としそうになり輝がトレーを持ってあげた。
「ハァ…危ない。大丈夫か? 梨子」
「う、うん。ごめんね、輝君」
「「あっ…」」
二人が顔を上げると二人の顔は、息がかかるくらいの距離になってしまっていた。
(梨子…。やっぱ美人…。可愛い。髪、赤くて綺麗だな…。顔めっちゃ真っ赤。唇は桜色で綺麗だな)
(輝君。こうやってみると結構格好良いな)
二人の心臓の音がますます速くなってきこのままじゃきりがない。
「梨子、休憩向こうの部屋でしよ? ここじゃプリント汚しちゃうし」
「そ、そうだね」
二人は、部屋を出ていった。
(さっきまでのドキドキなんだったんだ? )
(私ってもしかして輝君が…。うんうん‼︎ でも輝君が私みたいな地味な子、好きになる訳ないし‼︎ )
それから班決めも行われ、輝は静矢、七海、梨子の3人と一緒になった。当日は、富士見ヶ丘駅に集合で合宿研修1週間前の今日は、富士見ヶ丘駅までのルートの打ち合わせをしていた。輝達の班は、静矢を中心に話を進めていた。
「じゃあ、桜ヶ丘駅前に当日は6時に集合ってことでいい? 」
「いいよ」
全員異議なしの様子だった。
「じゃあ当日、遅刻しないようにね。特に七海」
「何で私だけ指摘するのよ! 」
話し合いの結果、輝達は6時に桜ヶ丘駅に集合になった。
そして当日が来た。だが、輝はうっかり遅刻してしまい桜ヶ丘駅前で静矢の目の前で正座してしまっていた。その中に七海と梨子もいる。二人は呆れた目で輝を見つめていた。
「輝、今何時だかわかるか? 」
静矢は、怖い目つきで輝を睨んでいる。
「6時15分ですが…」
「集合時間は? 」
「えと…6時…です」
「どうしてお前は、時間を守れないんだ⁈ 学校は遅刻せずにちゃんと来れるのに‼︎ 」
静矢は、輝の両肩をゆさゆさとしながら輝を怒鳴りつけた。
「いや〜。前の夜、楽しみで眠れなくてさ…」
「「お前は、小学生か‼︎ 」」
静矢と七海は、同時に喋った。隣では、梨子がため息をついている。
「うっ…本当に申し訳ありません」
それから4人は、電車に乗り富士見ヶ丘駅まで向かっていった。駅前には、もうすでに多くの生徒が集まっていた。輝達は、ギリギリ間に合ったという所だった。2学年は、バスに乗ると桜ヶ山にあるキャンプ場へと向かっていった。こうして輝達2学年、一年に一度の林間学校が幕を開けたのあった。
キャンプ場の近くに着き、バスから降りると学年とクラスで記念写真を撮った。全クラス記念写真を撮り終わるとまず宿舎の掃除から始まった。
「輝。ここの掃除お願い」
「わかったすぐ行くよ」
皆で協力し合ったからか思っていたよりも掃除はすぐに終わってしまった。2学年全クラス宿舎内の掃除が無事に終わりいよいよ最初のイベントであるウォークラリーが始まった。始まってしばらく歩き輝達は、最初のチェックポイントに辿り着いた。チェックポイントには、先生が2人、2学年の音楽担任の先生と1組副担の先生がいた。
「この曲が何か当ててごらん」
伊勢崎先生は、そう言うとラジカセのスタートボタンを押して曲を流した。するとラジカセからピアノの演奏曲が流れた。輝、静矢、七海は、「え? 何これ? 」と何の曲かさっぱり分からず頭を非常に悩ませている。その中、梨子が手を挙げた。
「わかりました、先生。ショパンです。ショパンのエチュード10-12『革命』です」
「すごいよ! 梨子」
「桜内さん。わかるの? 」
「つい最近弾いたことあって」
「さすがピアノ経験者! すごいよ」
輝と静矢、七海の3人は、全く分からず答えることができた梨子に非常に感心してしまっていた。
「すごい!桜内さん。ショパンの革命を当てられたの貴方達ぐらいよ‼︎ 今のところ。じゃあ、2組7班にスタンプあげます」
スタンプを押して貰って最初のチェックポイントを後にしてしばらく七海があることを言った。
「ねぇ…このウォークラリー。ウチらで2組で一位抜け目指せるんじゃない? 」
「いいね!それ! 賛成! 」
「私も‼︎ やるなら一番目指したい‼︎ 」
「いいんじゃない」
と静矢が言う。
それからは、4人で力を合わせ次々にチェックポイントをクリアしていきついにチェックポイントは残り一つとなった。だがその最後のチェックポイントは、川を挟んだ所にあった。川は、流れが緩く流される危険性はなく途中に岩が5つある。ゆっくりと4人は、岩の上に足を乗せて1人ずつ歩いていく。輝、静矢、七海の3人は、川の向こうに辿り着いた。だが梨子が1人まだ一つ目の岩で立ち止まったままだった。
「梨子ちゃん。大丈夫? 」
「うぅ…。助けて〜。無理〜‼︎ 」
梨子は、泣きそうな声を上げる。すると輝は、放って置けず。梨子のいる元に行く為、「俺が行く」と七海と静矢に言い梨子のいる元にゆっくり向かった。
「梨子。手、貸して」
輝は、梨子に左手を差し出す。
「でも、輝君。落ちちゃうかもよ? 」
「平気だって。川は浅いし。ほら」
輝がそう言うと梨子は、輝の左手を握って立ち上がった。2人は、ゆっくりと静矢と七海のいる元に向かっていく。
「頑張って。あと少し」
「うん」
それから2人は、テンポを合わせて七海と静矢のいる方に向かっていき無事、静矢と七海のいる場所に辿り着き最後のチェックポイントへと急いだ。
それから4人は、最後のチェックポイントをクリアし宿舎に戻ったが結果はビリに終わってしまった。
ウォークラリー終了後、夕飯となった。夕飯は、飯盒炊爨でカレーだった。家で家族と夕飯を食べるのとは違い班のメンバーと食べるカレーは、もちろん絶品だった。
後半に差し掛かった頃、輝達の班のカレーがめちゃくちゃ美味いと何故だか噂になり他の班のメンバーがお代わりしに来て輝達のお代わりが少なくなってしまったのは別の話。
楽しかった夕食の時間もあっと言う間に終わってしまいいよいよ一日目最大のイベント肝試しがやってきた。全クラス男女がペアになりキャンプ場を1組ずつスタートする。途中、先生方がお化けになったり怖い仕掛けがありそれらを潜り抜ければゴールと言う極めて簡単なものだ。皆が順番に七海が持っているクジを引いていく。途中「えー。なんでアイツと〜⁈ 」等の女子の声が聞こえてきた。
輝も七海が持っているクジを引く。残っているクジは、2本。輝がクジをどっちにしようか選んでる最中、七海は物凄くニヤニヤしていた。輝は、勢いよくクジを引いた。輝の引いたクジには、「16」と書かれていた。 16、つまり輝は15番の人とペアになるということだ…。15番のクジを持っている人は梨子だった。輝は、梨子と組むことになった。ちなみに七海は、静矢とだ。
「梨子と、か…」
「よ、よろしく。輝君」
「おう、よろしくな」
それから二人は先生の合図の元、宿舎を出発した。七海は、ニヤニヤしながら二人を近くから見送った。二人が出発した後、静矢が七海ぬあることを聞いてきた。
「七海、さっきクジを少しいじったでしょ? 」
「え? なんで? 」
「俺が、お前の奇行を見てないとでも? 」
「アハハ…。バレちゃったか。私さ、あの二人絶対両思いだと思うんだよね。うまくくっつけたいじゃん? 」
「そうかな? 」
歩いている途中、最初は梨子は輝の服の袖を掴んでいたが徐々に腕にくっついてきた。
「梨子、あまりくっつくなよ」
「だ、だって…。何あるかわからないから怖くて…」
「ハハッ…。平気だって。こんな肝試し…」
大したこといと言おう輝が突然林の方からガサガサと音がして、「わーっ‼︎ 」と良いお化けに変装した先生が出てきた。梨子は、「きゃあっ‼︎ 」と悲鳴をあげ輝の背中にくっついてきた。
「ちょ! 梨子。くっつくなよ」
「怖い! 怖い! 輝君、助けて〜」
「梨子。騒ぎすぎ! 先行くよ 」
それから二人は、先を歩いた。それからというもの、梨子は、先生達が作った怖い仕掛けに物凄くビビリ輝の背中にずっとくっつきぱなしだったのは、また別の話。
肝試しが終わった後は、いよいよキャンプファイアーだ。ここでは、皆でフォークダンスを踊る。2学年全クラス、キャンプファイアーの前で集まる。その場所で輝は、他のクラスメートから桜ヶ丘中学の林間学校には、最後に好きな人と手を繋ぐとその人とカップルになれるという一つの伝説があることを聞いた。
「その話、本当か? どうせ、偶然かなんかじゃねーの? 」
「いや、過去の先輩で両思いになって付き合ったって話、先輩から聞いたぞ」
「へぇ〜」
梨子は、どう思っているんだろう…。ってなんで梨子のこと考えるんだよ‼︎ 俺は‼︎
いよいよ学年でのフォークダンス。2学年全員が曲に合わせて踊り出す。輝は、踊っている最中梨子の方を向く。
(梨子…)
「ねぇ、ちょっと。次の人と踊れないんだけど」
輝は、梨子に気を取られて別のクラスの女子と踊っていたのを忘れてしまっていた。
「え⁈ あ、ごめん‼︎ 」
輝は、すぐさま次の人に回っていった。曲に合わせて踊っている最中、梨子と踊れるのかということを無意識に考えてしまっていた。
梨子まであと4人、3人、2人…。ついに最後の一人との踊りが終わりいよいよ梨子と踊る、と思ったが梨子と手を繋ごうとした直前で曲が終わってしまった。
全クラス男女共にそれぞれ入浴が終わりついに消灯時間。輝は、眠れず1階の方に向かった。1階に降りると梨子がソファに座り夜空を見上げていた。輝が声をかけるとどうやら梨子も、眠ることができず部屋を出たみたいだ。それからは、2人でしゃがんで夜空を見上げながら今日あったいろいろなことを話した。
「梨子。肝試し楽しかったな」
「え〜。私、すごく怖かったよ。でも…、輝君とだから楽しかった。それに夜の晩御飯。輝君があんなに料理上手いなんて知らなかったよ。あとあの後、私他のクラスの女の子から『輝君、料理できてカッコいいよね。紹介してよ〜』とか言われちゃったよ」
梨子は、そう言い輝に優しく微笑んだ。
「そ、そっか…」
「あと、輝君。ウォークラリー、私のせいでビリになっちゃってごめんね」
「ハハッ。なんで梨子が謝るんだよw 梨子のせいじゃないって。気にすんなよ」
「ありがとう、輝君。そろそろ戻ろう」
「そうだな」
2人が立ち上がって部屋に戻ろうとした時だった。懐中電灯を持った誰かが1階に降りてくる。梨子は、危険を察し輝と一緒にソファの死角に素早く隠れた。
「見回りの先生かな? 」
「見つかったら…噂になっちゃう…かな? 」
梨子は、恥ずかしそうな様子だった。何故なら梨子と輝は、2人でソファの裏側に隠れており2人の顔は互いの息がかかるくらいの距離となっているからだ。
「それちょっと…」
梨子と夜一緒にいたことが噂に…。それはそれで大変なことになるかも…。絶対、男子に茶化されそう…。
「
「
どうやら見回りの先生みたいだった。コツ…コツ…と足音が迫ってくる。輝と梨子は、ドキドキしながらソファの裏側にじっとして隠れる。
しばらくして足音がどんどん遠くなっていった。輝がソファの裏側から顔を出す。どうやら見回りの先生は、離れていったみたいだ。
「いっちゃったね…」
「あぁ。部屋戻るか」
「待って」
輝が部屋に戻ろうとすると梨子が輝の腕を掴んで引き止めた。
「梨子? 」
「あのさ…。もう少し一緒にいちゃ…ダメ? 」
梨子は、輝の腕を掴み上目遣いで輝を見つめてくる。彼女の頰はほんのりとピンク色に染まっており、夜空に照らされてより彼女の美しさが引き立っていた。
「え? いや、でも明日早いし」
「ダメ…かな」
梨子は上目遣いで輝を見つめる。輝は、ついに梨子の上目遣いに負けてしまったのだった。
それから2人は、30分くらいソファの裏側から夜空を眺めた。次の日の翌朝、梨子は梨子の部屋のルームメイトに輝は、輝の部屋のルームメイトに「昨日、夜何してたの? 」と聞かれたのは別の話。
次回もお楽しみに!
あと梨子ちゃんの誕生日の話は、おいおいどこかで書きます。