「そんなことより、演習を続けたいんだけど...時間もそう無いし。」
カカシと対峙するナルトは、軽い口調で言った。
「ああ、お前の本気とやらを見極めさせてもらおうか。」
カカシは、気持ちを切り替えるとナルトに相対した。
「カカシ先生相手なら...丁度良い戦闘訓練になりそうだってばよ。頼むからあっさり負けないでくれってばよ?」
「言ってくれるじゃないの...例えアカデミーで三味線を引いていたと言っても、所詮はアカデミーを卒業したばかりの見習いに変わりはない。大人をなめてもらっちゃあ、困るな。」
この時、カカシが想定していたナルトの実力はサスケと同程度かやや上...位だった。
「別になめちゃいないってばよ。だから...」
そこで一度言葉を切るナルト...そして...
「少しだけ本気を出すってばよ。」
全身を九喇嘛のチャクラに包まれるナルト。
この時代に来て、初めて戦闘で九尾チャクラモードとなった。
「なっ!?...ナルト...その姿は...」
ナルトの変化に驚くカカシ。ただ見た目が変わった訳ではないのはすぐに、理解できた。
「俺は、自分の腹の中の九尾...九喇嘛と和解している。この姿は九喇嘛のチャクラと共鳴した姿だってばよ?」
「九尾と和解!?そんなことが...」
「さて...この状態の俺が、カカシ先生とどれくらい渡り合えるか...試させて貰うってばよ。」
「なっ!?」
その言葉と同時にナルトの姿が消えた...カカシがそう思った時にはナルトはカカシの懐に飛び込んでいた...
「くっ!」
慌てて距離を取ろうとするカカシ。
だが、ナルトはそれを許さず攻撃を繰り出す。
的確に、カカシに攻撃を加えていくナルト。
カカシは防戦一方となる。
ミズキの時の失敗を糧に、あれから自分の影分身を相手に組手を繰り返してきたナルトは、自分の力、体格、スピードなど、戦闘能力を完全に把握していた。
そして...
「あ...」
『チリーン』
「カカシ先生...いくらなんでもこれは無いんじゃないか?」
あっさりと、カカシから鈴を奪うことに成功してしまうナルト。
「無茶言わないでくれる?あんなスピードに付いていけるわけ無いでしょ...」
カカシが言い訳を口にする。
『この頃のカカシの小僧は腑抜けていたからな。お前が想定しているのは、オビトとの決戦辺りのカカシだろ?全盛期のカカシと比べてるからそう思っちまうんだろ。』
「なるほど...」
九喇嘛の言葉に、納得するナルト。
「それにしても...油断しすぎには変わりないってばよ。この世界には、カカシ先生より強いやつなんて、いくらでもいるんだし、もうちょっと気を引き締めて欲しいってばよ。」
「.........面目ない。」
油断はその通りなので、謝るしかないカカシだった。
「それで...どうするってばよ?この演習の趣旨とは違うんだろうけど、鈴を取れちまったんだし...残りをあの二人と協力して取った方が良いのかな?」
ナルトの言葉に、少し考えたカカシだったが、
「ん~、いや、お前はそのまま丸太に行ってくれ。それに、答えを知ってるお前が二人を誘導したら、あの二人の資質を見られないからな。」
そう言ってナルトに指示を出した。
「了解...」
チャクラモードを解いて、丸太に向かうナルト。
「末恐ろしいねぇ...全く...」
その後ろ姿を見送りながら、ナルトの強さを思い出して、冷や汗を流すカカシだった。
それから数十分...時計のアラームがなり、演習が終了した。
開始場所に集まった一同。
そしてカカシは、結果を伝える。
「さて、演習の結果だが...まずはうずまきナルト...合格だ。」
「えっ?」
「はっ?」
ナルトの合格を、信じられない表情で見つめるサスケとサクラ。
その二人に鈴を見せるナルト。
(どうなってやがる...この俺が...触るのがやっとだったってのに...一体どうやって...)
サスケは、ナルトが見せた鈴を呆然としながら見ていた。
「それから、他の二人についてだが...」
カカシの続きの言葉を口にする。
「ま、お前たちもアカデミーに、戻る必要は無いな。」
カカシの言葉に、サスケは満更でもない顔をした。
サクラも合格だと喜ぶ。
しかし、カカシの言葉には続きがあった。
「ああ...お前たち二人...忍者をやめろ。」
「どういう意味だ。」
サスケは激昂して怒鳴り出す。
「お前らは忍者になる資格もないガキだって事だよ。」
その言葉に、サスケがカカシに掴みかかろうとした。
だが、あっさりと組伏せられる。
「だからガキだってんだ。お前ら忍者をなめてんのか?何のために班ごとにチームを分けて演習やってると思ってる。」
「実を言うと、ナルトは鈴が取れなくとも合格にしていた。この演習の意味を理解していたからだ。」
「ど、どういうことですか?」
サクラが、カカシの言葉を聞き返す。
「サクラちゃん。俺が始めに確認しただろ?..."俺『たち』が鈴を奪えば良い"って。この演習は、もともとチームワークを見るためのものなんだ。鈴の数を減らし、あえて争わせる状況を作る。それでもチームのために動けるかどうか...それを見るのが、この演習の目的なんだってばよ。」
「あんた...気付いていたなら、どうして私たちに説明しないのよ。」
ナルトの説明を聞いたサクラは、何故教えなかったのかと怒り出す。
「言った所で、アカデミーでドベだった俺の言うことに、耳を傾ける気があったのか?サクラちゃんは...」
「それは...」
ナルトの言葉に、思わず詰まってしまうサクラ。
「俺が出来るのは、二人へのヒントのためにカカシ先生に確認することくらいだったんだってばよ。」
ー先生...確認だってばよ?俺たちが先生から鈴を奪えば良いんだな?ー
ーん?...ま、そうだな。お前たちが俺から鈴を奪えれば合格だー
サスケは、あの時の会話を思い出していた。
「任務は班で行う。確かに忍者にとって、卓越した個人技能は必要だ。が、それ以上に重要視されるのはチームワークだ。」
カカシの説明は続いた。
「チームワークを乱す個人プレイは、仲間を危機に陥れ、殺すことになる。例えばだ...」
そう言ってカカシはクナイを取りだし、サスケの首に当てると、
「サクラ。ナルトを殺せ。でないとサスケが死ぬ事になる。」
「そんな!?」
その言葉に固まるサクラ。
「悪いけど、サクラちゃんに殺されてやるわけにはいかないんだ...だから...抵抗させて貰うってばよ。」
強烈な殺気をサクラにぶつけて構えるナルト。
「ひっ!?」
サクラは、その殺気に腰を抜かしてしまう。
「ナルト...ちょっとやりすぎだ...まあ、こう言う事態になりかねないって事だな。」
「わりぃってばよ。」
実は、サクラの軽すぎる態度に危機感を抱いたナルトは、この機会を利用して、サクラに緊張感を与えようと考えていたのだった。
その後、慰霊碑の話をしたカカシは、
「お前らに、もう一度だけチャンスをやる。ただし、昼からはもっと過酷な鈴取り合戦だ。それから、ペナルティとして、お前ら二人は飯抜きな。ナルトは監視をしろ。もし、二人に食わせたら、お前も失格にするから。」
そう言って姿を消すカカシ。
「二人とも、もうカカシ先生はいなくなったし、さっさと弁当食べるってばよ。」
「そんなことしたら、せっかく合格したのにあんたまで失格になっちゃうわよ?」
「...。」
「良いんだってばよ。カカシ先生も言ってたろ?これから、俺たちはこの班で任務を行っていくんだって。それから別に俺に参加するなって言われてもいないし、午後からの演習...俺も参加するつもりだ。三人で協力すれば、残りの鈴も奪えるってばよ。」
「...ナルト...今まで私はあんたをバカにして来たのに...ゴメン...ナルト。ありがとう。」
「...スマン」
二人はナルトに感謝しつつ、弁当を食べ始めた。
その時、カカシが三人に向かい突進して来た。
そして...
「お前ら~。合格。」
カカシはにっこりと、笑い三人に合格を告げるのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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希望しない