対峙するナルトとヒナタを...
本来、愛し合う二人...しかし、今やナルトは世界を破滅させようとする魔獣...
そしてヒナタは、そのナルトを止めようとナルトの前に立ち塞がる。
「グルルルルルルルル...」
ナルトは臨戦態勢を取った。
(まずはナルト君の動きを止めないと...)
ヒナタはナルトの足を止めようと一歩踏み出す...
「ガァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
より前にナルトが動き出した。
「!?」
一気に詰め寄るナルト。その腕がヒナタを殴り付ける。
「くっ!?」
ヒナタはなんとかその攻撃を防ぐが、ナルトの攻撃は止まらない。
ナルトの纏うチャクラの衣...その尾が腕に変化し全方位からヒナタに迫る。
『八卦掌回天!』
それらを回天を使って弾くヒナタ。
自身が纏うのチャクラの形は翼を持つ女性型...自分の意思の通りに動く...転生眼に開眼したとは言え、もともとは白眼であったその瞳の特性は変わっていない。
当然、自らが修めた技も使えるのだ。
しかし、状況はヒナタにとって不利な展開だった。
そもそも、自分は転生眼に開眼したばかり...
使い方は理解しても、それを使いこなすレベルには達していない。
対して、ナルトは人柱力として研鑽を続けていた。
そして、今は本能のままに動き回る。
なんとかナルトの攻撃を防御することには成功している為、ナルトの動きに対応は出来ているが、ナルトの動きを止めると言う自分の目的のために動く事が出来ない。
このままでは、遠からず自分の方が先にスタミナ切れを起こしてしまう...
と、その時ふいにナルトの動きが鈍った。
見ると、ナルトの身体を鎖が縛りつけていた。
「息子の未来の嫁が頑張ってるんだもの...私も母親として負けてられないってばね。」
それは、クシナの封印の鎖。
ヒナタの動きから、ナルトの動きを止めようとしている事を察したクシナは、再び封印の鎖を発動したのだ。
幾ら壊土転生体で無限のチャクラを持っているとは言え、それは自然にチャクラが回復していくだけ...
先ほどありったけのチャクラを使ったクシナは、未だ完全にチャクラが回復した訳ではない。
それでも、ミナトに協力してもらいナルトの足を止められないまでも動きを鈍らせる程の鎖を発現させた。
無理やり術を発動させたのだ...クシナと...クシナをサポートするミナトの身体はあちこちに罅が入っていった。
限界を超えて術を発動した反動が来ているのだろう。
それでも二人の表情には笑顔が見られた。
それはヒナタと言う『希望』を見れたから...
ヒナタを失った絶望により、世界そのものを憎み、破滅の魔獣と化したナルト。
そのナルトには、自分たちの声は届かなかった。
当然だ...自分たちはナルトに親らしいことを何一つすることが出来なかったのだから...
しかし、自分たちだけでなく仲間や恩師...友人たちの言葉すら届かない...
また、息子を救ってやれない...
二人にとってそれは許しがたい事実...
悔しさに歯噛みし、しかしどうしようもない現実に諦めかけたその時...
息子が愛して止まない、日向ヒナタが立ち上がった。
彼女こそ、ナルトを救える唯一の存在だ。
自分たちの行動は無駄ではなかった。
自分たちにとって、日向ヒナタは希望なのだ。
息子を幸せにしてやりたい...
しかし、現実に自分たちは死んでしまっているため手を差しのべることが出来ない。
激動の前世を過ごし、そんな中で掴み取った幸せ...
そして、この世界で心が折れかけていたナルトを支え、また幸せを与えた...
そのどちらにもヒナタが関わっている。
きっと今のナルトも、ヒナタなら救ってくれる。
ならば、自分たちはそのヒナタのサポートをしよう。
それこそが、今自分たちがここにいる意味だと信じて...
いや...ヒナタを希望とするのはクシナやミナトだけではなかった。
今や、この場にいる全ての人間がそう感じていた。
先ほどと違いクシナの鎖は、ナルトを拘束するだけの力はない...
ならば...
「チャクラを使いきった俺たちにだって...」
「まだ出来ることがある。」
「例え術が使えなくとも...」
「物理的に鎖を引っ張る事くらいなら...」
その場に集った忍たちは、まるで綱引きをするかのように、クシナが作った鎖を握り、ナルトを止めようと協力して引っ張った。
(私は一人じゃない...こんなにも大勢の人がナルトは君を助けようと動いてくれてる...)
その光景を見たヒナタは涙を流した。
(そうだ...この力は私だけの物じゃないんだもの...皆の願いが...祈りが...心が宿った力...)
「だから...絶対に負けない!!!」
ヒナタは一気に間合いを詰めると、ナルトを抱き締めた。
そして...纏った翼を広げる。
「今こそ皆の心の力を...」
その翼は人々のねがいそのものだった。
大きな翼は、破滅の魔獣と化したナルトを抱擁するように包み込む。
「グォォォォォォォォ!!!!」
翼の包容から逃れようと暴れるナルト。
しかし、鎖の縛りとヒナタによりそれは敵わない。
「おい...見ろ。」
ネジが異変に気付いた。
「ナルトを覆うチャクラが...」
「憎悪に包まれた衣が...」
他の人間も気づき出した。
ヒナタの翼に包まれたナルト...
そのナルトの纏うチャクラの衣が、まるで天に浄化されていくように、ヒナタの翼に宿った一つ一つの願いと一緒に光の粒子となって登っていく...
だんだんと、ナルトの纏うチャクラが小さく薄くなっていった。
それに比例するように、ヒナタの翼も薄く小さくなっていく。
「やった!」
「これなら。」
「頑張ってヒナタ。」
今までにないナルトの変化に手応えを感じる忍たち...
しかし...
(っ!?...足りない...)
ヒナタは焦っていた...
(ナルト君を助かるにはほんの少し...あとほんの少しだけ...力が足りない...)
自分の翼に与えられた人々の願い...
その力を持ってナルトの憎しみのチャクラを消していった。
しかし、ナルトを完全に戻すには、翼の力がわずかに足りていないとヒナタは感じていた。
(どうしたら良いの...)
ヒナタの表情は苦しそうに歪んでいた。
そうしている間にも、自分の翼はどんどんと小さくなっている。
ナルトの方も小さくなって来ているが、このままでは、自分の翼の方が先に消えてしまうだろう。
(ナルト君はいつも私を助けてくれた...なのにどうして私はいつもナルト君を助ける事が出来ないの...)
思い出されるのはこれまでのナルトとの思い出。
しかし、いつだって自分はナルトに助けられる方...
或いは、迷惑をかけてばかり...
前世の最後では、ナルトや娘の命を道連れにしてしまった。
今度こそは...そう思って立ち上がったのに、まだ力が足りない...
(お願い...ほんの少し...後もう少しだけ...私に力を...誰でもいい...ナルト君を助ける力を...)
ヒナタは、懸命に願った。
自分の願いは翼の力にはなり得ない。
自分は、それを纏めてナルトに流し込む事しか出来ないのだ。
だから、ナルトを思う他の誰かの心が必要だ。
ふいに自分の肩に手を置かれた気がした。
『大丈夫...俺が行くってばさ!』
「え!?」
それは懐かしい声...しかし、あり得ない声...
「ボルト...」
その人物の名を...思わず呟くヒナタ。
ふいに感じた肩の温もりはもう感じない。
しかし、ヒナタは笑みを浮かべた。
(父さんをよろしくね...ボルト...)
ヒナタは信じた。例え世界が変わっても...自分たち家族の絆は繋がっているのだと...
その昔...モモシキに連れ去られたナルトを助けに向かったボルトを送り出すときと同じように、自分はボルトを信じる...
・
・
・
ここは、ナルトの精神世界。
辺りはまるで廃墟のように荒廃していた。
そこは前史において、ナルトの家があった場所。
そして、ナルトとヒナタ...ヒマワリの最後の場所でもあった。
その中でナルトは力なく横たわっていた。
ナルトは憎しみに包まれた後、この中で無限に涌き出る敵(憎しみ)と戦い続けていた。
最初こそ抵抗していたが、敵はどんどんと増えていき、やがて押されだし、そして倒れるように気を失ったのだ。
ナルトが気を失ったことで、敵は姿を消した。
あくまでもナルトの身体を支配することが敵の目的であった。
当然だ。その敵自体、ナルトの憎しみの感情が作り出した物なのだ。
ナルトの意識を完全に殺してしまえば、憎しみから生まれたその者たちもまた消えてしまう。
だから、ナルトが再び立ち上がるまで、包囲するだけで良かった。
「「「グルッ!?」」」
変化は突然現れた。
憎しみから生まれた彼らが、どんどんと消えていったのだ。
と、その時更なる変化...いや乱入者が現れた。
その人物は、初め薄く揺らぎまるでそこにいないかのように気配すら無かった。
しかし、どんどんとその姿は鮮明になっていく。
そして、その人物はナルトに近づくと...
『起きろ!クソ親父!!!』
「へぶっ!」
ナルトを思い切り踏みつけた...
瞬く間に覚醒するナルト...
「ボルト...その起こし方は止めろとアレほど...」
言い掛けて止まる...
自分は今なんと言った?
ボルト?そんなハズはない...
ボルトはあの世界に、ただ一人残してきてしまった...
自分はこの世界に来てしまったし、ヒナタもヒマワリも死んでしまった...
恐る恐る見ると、自分が知るボルトよりも大きくなっていた。
顔に大きな傷を持ち、右目に転生眼のようの眼を持っていた。
しかし、面影がある...
「ボルト...なのか?」
呆然と呟くナルト。
ボルトはニッと笑う。
「何やってんだってばさ...父ちゃん。」
「ボルト...俺は...」
残してしまった負い目からか、目を伏せるナルト。
すると、ボルトが近づきナルトの胸に拳を当てた。
「俺は憎しみになんて負けなかったぜ?父ちゃんは、そんな俺の父ちゃんだろ?しっかりしてくれってばさ...」
「ボルトッ!」
目の前ボルトが幻かどうか...それはナルトにもわからない...それでも、目の前の息子が愛おしい。
ナルトはボルトを抱き締め涙を流した。
「父ちゃん...俺たちは憎しみの感情に流されやすい...人間だからな...大事なものを傷つけられたら怒るのも当然だってばさ...」
「ああ...」
「でも俺たちは『忍者』でもある...堪え忍ぶ者...それが忍者だろ?」
「ああ...」
「俺の父ちゃんは、忍の中でも火影にまで上り詰めた忍の中の忍なんだ。俺を...皆を失望させんなってばさ...」
「そうだな!」
ボルトの言葉の一つ一つがナルトに活力を与える。
「母ちゃんも、外で父ちゃんを助けようと必死に頑張ってくれてる。」
「ヒナタが!?」
だとすると、ヒナタは生きている...
ナルトは、歓喜した。
「ミナトじいちゃんや、クシナばあちゃんも...それにサスケのおっちゃんたちや仲間の人達も一緒になって頑張ってるんだ。」
「父ちゃんたちも...」
「だから、さっさとこんな所から出なきゃなんねぇだろ?」
「ああ...そうだな!」
ナルトは再び立ち上がる。
「父ちゃん...母ちゃんの力で周りの敵は大分減った...敵の中心にいる巨大な化け物さえ倒せば、戻れるってばさ。」
ボルトが指し示す先には十尾に似た何か...巨大な生き物がいた。
さっきまで、一人で孤独に戦い続けていたナルト...
しかし今は一人じゃない。
外ではヒナタやミナトたちが...
そしてここにはボルトがいる...
「よし...いっちょ、俺たち親子の力ってやつを...」
ナルトは掌に拳を打ち付ける。
「「見せてやるってばよ(さ)!」」
二人が同時に動き出す。
それを迎え撃つ敵たち。
しかしナルトとボルトのコンビは、かつてのサスケとナルトのコンビを彷彿させるかのように息があっていた。
一足す一が、二ではなく三にも四にも...或いは十にもなるかのように互いが互いをフォローし合い、弱点を補い敵の中枢に迫る二人。
そして...
「父ちゃん!」
「わかってるっ...てばよ!」
二人は同時に超巨大な螺旋丸を作り出した。
「「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」」
ズドォォォォォォォォォォォォォォン!!!
二人の螺旋丸を食らって倒れる巨大な魔物。
「やったな...ボルト...」
その最後を見てナルトは隣にいるボルトに声を掛けた。
しかし、そこにボルトの姿は無かった...
「帰ったのか...ありがとな...ボルト...」
ナルトは確信していた。
あのボルトは、自分が産み出した幻などでは決してないと。
世界を越えて、助けに来てくれた息子にナルトは、感謝の言葉を送った。
その言葉が世界を越えてボルトに届くと信じて...
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一方現実世界にて...
「!?ナルト君から感じる憎しみの気配が一気に薄まった!」
ヒナタは、ナルトから感じる憎しみのチャクラの力が大きく減退したことを感じた。
(ボルトがやってくれたのね...ありがとう...ボルト...後は母さんの仕事だよね...)
ヒナタが最後の気合いを込める。
バァンッ...
ナルトを包む最後の衣が消え去った。
同時にヒナタの纏う衣も消滅する。
ゆっくりと前のめりに倒れていくナルト。
しかし、そのナルトが地面に倒れる前にヒナタがナルトを抱き締めた。
「おかえりなさい...」
「ただいま...」
二人の抱擁する姿を見た一同は、戦いの終わりを感じ、爆発するように雄叫びを上げるのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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希望しない