木の葉の里を出発してしばらく...
一同は、現在昼食を取っていた。
「うわ...ナルト。随分と豪華なお弁当ね...」
ナルトの弁当を、見たサクラが驚きの声をあげる。
「ああ...愛妻弁当ってやつだってばよ。」
「愛妻弁当って...あんた意味わかって言ってるの?」
満面の笑みで答えるナルトに、少し引いてしまうサクラ。
(愛妻弁当って...どうせ親が作ったんでしょ?あ...でもナルトって親がいないのよね...じゃあ、自分で作った?いや、いつもカップ麺ばっかりって言ってたし...じゃあ本当に誰か女の子が?いやいや、それは無いわよね...ナルトに惚れるような女の子なんているわけ無いし...)
これまでの任務でナルトの評価を改めたが、それでもナルトが、モテるとは思っていないサクラだった。
「.........。」
その一幕を見ながら、カカシはその弁当を作った人間にアタリを付けていた。そして...
(ナルトがいないからって、変にヒナタにちょっかい出したりしないかね...うちの上層部...特にダンゾウの一派は...もしナルトの逆鱗に触れたら木の葉は滅亡だ...火影様がちゃんと止められていたら良いんだけど...)
あり得る想像に、肝を冷やしていた。
「.........。」
サスケはナルトの幸せそうな笑みを複雑な表情で見ていた。
少し前までは、自分と似ている...そう考えていたナルトが、まるで別人に思えてならない。
その感情が、寂しさから来るものか、嫉妬から来るものか、それとも怒りから来るものか...今のサスケには理解できなかった。
昼食の一幕からさらに時間が経ち、ナルトたちは一路、タズナの国である波の国へ向けて、歩を進めていた。
その道すがら、サクラが波の国に忍がいるのかと今カカシに聞いた。
カカシの説明で波の国には忍がいないが、他の国には忍がいると知るサクラ。今回の任務で他国の忍と戦闘にならないか不安になる。
「ま、安心しろ。Cランクの任務で忍者対決なんてしやしないよ。」
カカシはサクラを安心させるように、話した。
タズナは、その言葉に少し後ろめたそうな顔をした。
一同がそんなやり取りをしている中、ナルトはと言うと...九喇嘛と会話をしていた。
『ナルト...お前、今回の任務...どう動くつもりだ?』
「どうって?」
『例の二人の事をどうするのかって事を言っとるんだ。』
「ああ...再不斬と白の事か...」
九喇嘛の言っている意味を、ようやく理解できたナルト...
ナルトは少し考えたあと...
「そう...だな...俺は...成り行きに任せようと思う...」
『そりゃどう言う意味だ?』
「確かに、あの二人は助けられるなら助けてやりたい...そう思う。でも...今の俺にはそんな余裕は無いんだってばよ。手を差し伸べる機会は作るつもりだ。でも、その手を掴む気がないヤツまで救う気はないんだってばよ。」
『要するに、救われたいと二人が望めば助けるってことか?』
「そう言うことだな...今の俺に...全てを救うなんて気なんて無いんだってばよ。俺が救いたい...守りたい人...そこには明確に優先順位があるって事だ。」
『ふんっ。(結局、救おうと行動はするんじゃねぇか)』
未来に...世界に絶望し、一見、冷たく変わってしまったように見えるナルト。それでもナルトの本質は変わっていない。九喇嘛は、そう感じるのだった。
それから、さらに少し歩いていると、ふいに水溜まりが見えた。
それを見たナルトは...
(確か...霧隠れの中忍だってカカシ先生言ってたな。でも...雨も降ってないのに水溜まりって...霧隠れの忍はバカなんじゃねぇか?)
『お前に言われたらおしまいだな。それに昔のお前は気付いてもいなかったじゃねぇか。』
(うるせぇぞ。九喇嘛。自分がバカなのは、俺自身がよーく知ってるってばよ。それに昔は昔だってばよ。)
九喇嘛とのやり取りをしながらも、カカシに視線を向けるナルト。
当然カカシも気付いていた。
(敵の目的が知りたい...少し泳がせとけ。)
(了解)
目で会話をする両者。
その時、水溜まりから二人の忍が現れ、カカシを襲った。
襲撃者はカカシを鎖で拘束すると、鉤爪の様な武器を使い、カカシをバラバラにしてしまう。
「一匹目...」
目の前でバラバラにされるカカシを見て、一瞬固まるサクラ。
だが、すぐに思い直して、タズナのガードに入る。
(カカシ先生がこんな簡単にやられるハズない。)
サクラの様子に、頷くナルト。
(やっぱ...演習の時に、強めの殺気を浴びせておいて正解だったってばよ。不測の事態でも、冷静に考えられてる。)
「二匹目...」
襲撃者は次にナルトをターゲットにする。
ナルトを背後から襲撃する忍たち。
その攻撃をナルトは間一髪(といった感じに装って)かわした。
そこにサスケが割って入り忍たちに攻撃を加える。
忍たちは、全員殺すのは難しいと考えたのか二手に別れた。
一方はナルトに。
もう一方はタズナと、それを守るサクラに向かった。
(私がタズナさんを守らないと...)
サクラはタズナを守るために前に出てクナイを構える。
敵の忍がサクラに攻撃を加える数瞬前に...
「やらせるか!」
サスケが間に割って入った。
だが、さらにその前で攻撃を止めるものがいた。
変わり身で攻撃をかわしていたカカシであった。
カカシは、忍の攻撃をあっさりと止めるとそのまま敵を拘束してしまう。
サスケがもう一人の方を見ると、既に倒されていた。
(カカシがやったのか?それとも...)
サスケが考えていると、カカシがタズナに質問をしていた。
「タズナさん。こいつらのターゲットは、間違いなくあなただった。我々は、あなたが忍に狙われているなんて話は聞いていない。依頼内容は、ギャングや武装集団からの護衛だったはず。これだとBランク以上の任務になる。何か訳ありみたいですが...依頼で嘘を持ち込まれては困ります。これだと、我々の任務外ってことになりますよ?」
「この任務、私たちにはまだ早いわ。やめましょう。」
カカシの説明に、便乗するように中止を促すサクラ。
「んー...こりゃ荷が重いな。」
「フン...帰りたきゃ帰れ。俺は任務を続行するぞ。」
カカシが中断を決めようとしたときに、サスケが宣言した。
(命がけの戦闘...俺はこういう任務を待ってたんだ。実戦ほど、自分の戦闘能力を上げる手段は無い。)
サスケの宣言に、どうしたものかと悩むカカシ。
そんなカカシに、タズナが声をかけた。
タズナは本当の依頼内容を話す。その内容は、間違いなくBランク以上のものであった。
「しかし、わかりませんね。相手は忍すら使う危険な人物。なぜそれを隠して依頼されたのですか?」
カカシの当然の疑問に対し、
「波の国は超貧しい国じゃ。大名ですら金をもっていない。もちろんワシらもそんな金はない。高額なBランク依頼をするような...」
タズナは暗い顔で言った後に、続けて、
「まあ、おまえらがこの任務をやめれば、ワシは確実に殺されるじゃろう...なーに、お前らが気にすることじゃない。ワシが死んでも10歳になる孫が一日中泣くだけじゃ。あ、それにワシの娘も木の葉の忍を恨んで一生寂しく生きていくだけじゃ。いや、なにお前たちのせいじゃない。」
そう言って笑った。
そのあまりの言動に、げんなりするカカシ。
「カカシ先生...ひとまずこの任務...継続しようってばよ。」
その話を聞いてから、ナルトも任務を継続するようにカカシに話した。
それを見たタズナは「勝った」そう思った。
だが、ナルトは一言タズナに告げる。
「タズナのおっちゃん。」
「なんじゃ?」
「俺たちが任務を継続する...それは良いってばよ。でも...」
「あんたが、依頼内容を隠してた事で俺たちが死んでたら...あんたはどうしてたんだ?」
「そ、それは...」
「もし、嘘をついたまま俺たちが死んだら、例え橋が完成したとしても、あんたはその橋を誇れるのか?」
「.........。」
「あんたに、帰りを待つ家族がいるように、俺たちにだって帰りを待つ仲間や、家族がいるってばよ...そこの所...少しで良いから考えて欲しいんだ...」
「...そう...じゃったな......正直...超スマンかった...」
ナルトの言葉を聞いたタズナは、土下座をしてナルトたちに謝罪した。
「タズナのおっちゃん。顔を上げてくれ...」
「ワシを許してくれるのか?」
「ああ...それに言ったってばよ?任務続行だって...良いだろ?先生?」
「ま...仕方ないかな...」
「ハァ...わかったわよ。」
ナルトの宣言に、同意する二人を見て改めてタズナは頭を下げるのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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希望しない