再不斬の首に千本手裏剣が突き刺さった。
それを放った人物...お面を被った子供が姿を表す。
カカシは再不斬の脈を計り、確かに心臓が止まっていることを確認した。
(白...)
ナルトはその人物を見て、少しだけ感傷に浸っていた。
恐らく、自分にとっての忍の原点は彼と、再不斬の不器用なまでの生き様...そしてその最後...それに反発したいと、心から願った事が始まりだったと思う。
ナルトが感傷に浸っている間に白とカカシのやり取りは終わり、白は再不斬を連れて姿を消した。
戦闘は終わった。
カカシは額当てで左目を隠すと、一つ溜め息を付く。
「さ...俺たちもタズナさんを家まで連れていかなきゃならない。元気良く行くぞー。」
その掛け声と共にカカシは倒れた。
写輪眼の使い過ぎによるものだった。
「ハァ...カカシ先生...締まらないってばよ...」
ナルトは、呆れながら一つ溜め息を着いた。
(さて...白はアレに気付くかな?)
ナルトはこの戦いで、あることを仕掛けていた。白達を救おうとするナルトの手を取るか...その一つ目の試しだった。
しかしそれに白が気付けずに、このまま敵対したとしても仕方がないと覚悟もしていた...
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一方その頃...
白は、ナルト達から離れた場所で、再不斬の蘇生を行おうとしていた。
再不斬の口布を切ろうと、クナイを近づける白の手を、再不斬が掴んだ。
「良い...自分でやる。」
再不斬は、自力で蘇生していた。
「一週間程度は痺れて動けませんよ?...でも再不斬さんならじきに動けるようになりますかね?」
「次...大丈夫ですか?」
「次なら...写輪眼を見切れる。だが問題は...」
再不斬は、先の戦いでカカシの攻略についてある程度予測を立てていた。しかし...
「あの少年...ですね?」
そう...問題はもう一人...カカシをして自分より強者であると断言させた少年...その少年の実力は把握できていない...
「うずまきナルト...とか言ったな...」
「彼は...何者なのですか?」
「ヤツは...人柱力...尾獣と呼ばれる意思を持つ巨大なチャクラの塊...それを体に封印されたものだ。」
「なるほど...それでアレほどのチャクラを...」
再不斬の説明を聞いて、あのチャクラの衣を纏ったナルトの姿を思い出す白。
寒気がするほど強大なチャクラだった。
自分は、彼と正面から戦って勝てるだろうか...
自問自答する白...
「木の葉は過去、人柱力の封印が解かれて、尾獣が暴れまわったことがあるそうだ...そんなものを内に抱えて、ヤツはどんな生き方をしてきたのだろうな...」
再不斬は独り言のように呟いた...
「.........。」
白はその言葉に想像する...
人は弱い...自分より強いもの...得体のしれないものに、嫉妬し、或いは恐怖してそれを排除しようとする。
自分の父が母を殺したように...そして父が自分を殺そうとしたように...
(あの子も...きっと...)
ナルトの境遇に思いを巡らしていた白は、再不斬の口布...その間に何かが挟まっている事に気付いた。
「再不斬さん...ちょっと失礼します。」
白はそれを取り出す。
(手紙?)
「白...なんだそりゃ?」
「再不斬さんの口布...に挟まってたんですけど...」
その内容を見た白は、冷や汗を感じた。
差出人はうずまきナルト...
そして、その宛先は...自分だった。
(僕と再不斬さんの関係に気付いていた?いや、そもそも、なぜ僕の名前を...)
「白...何が書いてある...」
『白へ...話したいことがある。六日後、指定の場所まで来てほしい。うずまきナルト。』
「な...どういうことだ...あいつはお前を知っているのか?」
その内容に、驚く再不斬。
(考えられるのは白とナルトが知り合いだった...もしくは、既に自分達の情報が出回っていたか...いや...それはあり得ない...もしそうなら、カカシがあの時見逃すハズが無い。)
「そんなハズはありません...僕は彼とは初対面のハズです。」
白は、驚きながらも答える。
「だったら、一体これはなんなんだ...」
「.........わかりません。」
再不斬は、冷静になるため軽く息をはく。そして...
「.........わかった。一先ずそれは良い。それで...どうするんだ?」
「え?」
「ヤツに...うずまきナルトに会いに行くのか?」
手紙の内容...それについてどうするかを白に尋ねる。
「僕は...話してみたいです...彼と...」
「...好きにしな。」
再不斬は、そう言うと力を抜いた。
まだ回復には時間がかかる。
ナルトに対する対策も思い付かない。ナルトは再不斬との戦い、あきらかに手を抜いていた。
現状、勝てる要素が見つからない。
ならば、直接白が会うことで、少しでも情報を得られれば...そう考えていた。
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一方、ナルト達は、倒れたカカシを運び、なんとかタズナの家までたどり着いていた。
「大丈夫かい?先生。」
タズナの娘、ツナミが寝込んだカカシに声をかける。
「いや...一週間程、動けないんです。」
カカシの返答に、
「なあによ。写輪眼って凄いけど、体にそんなに負担がかかるんじゃ考えものよね。」
サクラが、カカシの様子に呆れていた。
「そう言えば、凄いって言えばナルト...あんた一体なんなの?」
サクラが再不斬との戦闘を思い出して、ナルトに聞いた。
「なにって?」
「おかしいじゃない。アカデミーでドベだったあんたが、なんであんなに強いのよ。」
サクラの追及は続く。
「そうだ。演習の時から、おかしいとは思っていたが、お前アカデミーでは落ちこぼれを演じてやがったのか?それに、あのチャクラを纏った姿...アレはなんだ?」
サスケも、ずっと疑問に思っていたことを聞く。
サスケは、演習の時から不審に思っていた。
なぜ、ナルトだけが鈴を取れたのか。
なぜ、ナルトは演習の目的に気付けたのか?
アカデミーでのナルトからは考えられなかったのだ。
それからの任務では目立った動きこそしていなかったが、それでもアカデミーの頃のナルトなら、自分が活躍しようと躍起になり、足を引っ張る位はしていたハズなのだ。
二人の注目を集めたナルトは...
ちらりとカカシを見ると、
「まあ、アカデミーでの話はサスケの言う通りだってばよ?」
「落ちこぼれを演じてたってこと?なんでそんなこと...」
サクラがその言葉に疑問を持つ。
「そうする必要があった。俺が言えるのはここまでだってばよ?」
「どういう事よ?」
サクラは理解できない。ナルトの境遇を知らないが故に。
だが、サスケは気付いた。ナルトの境遇を知るが故に。理由は知らないが、ナルトは里の大人達に迫害を受けていた。
そんなナルトが力を持つと知られたら...恐らく里の者達は大勢でナルトの排斥に動くだろう。
「そうか...ならそれは良い。だが...あの力はなんだ?あんな術...見たことも聞いた事もない。」
サスケは更に追及する。
「それは...話して良いの?カカシ先生。」
「ダメ。言ったでしょ?機密事項だって。」
しかしカカシがそれを止める。
「そんな。」
「ちっ。」
「それよりも...さっきからどうにも引っ掛かってる事があるんだよね...」
「引っ掛かるって?なにが?」
サクラが聞くが、それには答えずカカシは考えに没頭する。
「いやね...あの再不斬...仮面の少年...死体の処理...そうか...俺としたことが...完全にしてやられた...恐らく...再不斬は生きている。」
カカシは仮説から、再不斬生存説を導きだした。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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希望しない