再不斬が生きていると告げるカカシ。
「ど、どういう事よ。カカシ先生。再不斬が死んだの、ちゃんと確認したじゃない。」
驚くサクラは、カカシに詰め寄る。
「確かに確認はした...が、あれはおそらく...仮死状態にしただけだろう。」
カカシは、再不斬が生きている根拠を説明する。
「超...考えすぎじゃないのか?追い忍は、抜け忍を狩るもんじゃろ?」
タズナは、考えすぎではないか?と問いかける。しかしカカシはそれを否定する...
「いや...クサイと当たりをつけたのなら、出遅れる前に準備をしておく。それも忍の鉄則。どのみち、ガトーの手下に更に強力な忍がいないとも限らん。」
「先生...出遅れる前に準備って何をするの?先生、当分動けないのに...」
サクラは当然の疑問をぶつけた。
「...お前達に修行を課す。」
その言葉に驚くサクラ
「修行ったって、私たちが今ちょっと修行をしたところで、たかが知れてるわよ?第一、カカシ先生とナルトがいれば、あの再不斬ってヤツも問題なく倒せるんでしょ?」
「.........。」
サクラの言葉にイラつくサスケ。
ナルトが落ちこぼれを演じていた...
そこは良い。だが、その本当の実力は自分を遥かに超えるものだった...
見下していたハズのナルト..
(だが、アイツは本当は俺を歯牙にもかけていない...こんな屈辱的な事があるか...俺は木の葉のエリート...うちは一族なんだぞ...そして、俺はヤツを殺す位の力を付けなきゃならないってのに...)
「フン...ならお前は隠れて震えてればいい...カカシ...修行は俺だけで良い。」
「サ...サスケ君?いくらなんでもそんな言い方...」
サスケの苛立った声に困惑するサクラ。
「...まあ、サスケの言い方はともかく、サクラちゃんも修行をしておいた方が良いってばよ。再不斬が生きてるってことは、あのお面のヤツも再不斬の仲間。それに、ガトーにまだ戦力が無いとも限らない。俺も、サスケも、サクラちゃんも、戦闘の機会がいつ回ってくるか解らないからな。」
「.........そうよね...」
ナルトの言葉を理解したサクラは...
(サスケ君...私を心配して...あえて突き放すよ
うな言い方をしたのね...)
先程の、サスケの言葉を自分の都合の良いように解釈していた。
「ま...ナルトの言う通りかな...それに、この先、忍者として任務をこなしていけば、嫌でも戦闘力は必要になってくる。修行をしておいて損は無いハズだ。」
カカシが補足のように付け足した。
「無駄だよ...そんなことしたって...」
その時、タズナの孫、イナリが部屋に入ってきた。
「ガトーに歯向かって、勝てるわけないんだ...」
何もかも諦めたような目をしたイナリ...
ナルトは事情を知っている...それでも、反論せずにはいられなかった。
「なら...お前はタズナのおっちゃんがやってる事も無駄だって言うのか?この国の為に...いや、お前の未来のために命がけで橋を作ってるタズナのおっちゃんを見て何も感じないのか?」
「.........。」
イナリは、何も言わずに部屋へと逃げ帰ってしまった。
「すまんのう...あの子は父親をガトーに殺されておるんじゃ。」
タズナは、イナリの事情を話した。
「少し...イナリと話してくるってばよ...」
ナルトはそう言うと、イナリの部屋に向かった。
イナリは部屋の中で、父の写真を片手に泣いていた。
「よぉ...泣き虫。入るってばよ?」
ナルトは軽口を叩きながら、部屋に入る。
「な...なんの用だよ。」
泣き虫呼ばわりされたイナリは袖口で涙を拭うと、ナルトに憎まれ口を叩く。
「なに、ちょっと...お前と話してみたくなってな。父ちゃんの事...タズナのおっちゃんに聞いたってばよ。」
「それが...なんなんだよ...」
「お前を置いて...死んだ父ちゃんが...憎いか?」
「な...そんなハズ無いだろ?」
「そうだよな?泣いてるくらいだし、悲しいんだよな。」
「当たり前じゃないか。」
イナリは、大声で怒鳴った。自分は父の死をこれほど悲しんでいるのに...目の前のコイツは何を言っているのか...そう、思った。
「けど...その割には、お前...父ちゃんのことバカにしてるよな?」
「ど、どういう事だよ。」
「お前の父ちゃんは...ガトーに逆らって殺された...これは合ってるよな?」
「...そうさ。だから言ったんだ。ガトーに逆らうなんて無駄だって。殺されるだけだって。」
イナリの言葉に、ナルトは問う。
「つまり...お前の父ちゃんは、ガトーに逆らって...無駄死にしたって事だな?」
「え?」
「お前の父ちゃんは、お前が言う無駄な事をして死んだって...そう言ったんだってばよ?」
「ち...違う。」
「お前が言ったんだぞ?」
「違う...父ちゃんは...父ちゃんは僕とこの町の人たちを守ろうとしたんだ!」
イナリの心からの叫びに、ナルトは微笑むと、イナリの頭に手を置いた。
「わかってるじゃねえか。」
「え?」
突然、優しくなったナルトの声に、驚くイナリ。
「イナリ...お前の父ちゃんは、決して無駄死にしたわけじゃねぇ。お前を守ることが出来た。お前の母ちゃんも、じいちゃんも、お前を見守る人たちに、後を託す事も出来た。少なくとも俺は...お前の父ちゃんを...カイザって人を尊敬するってばよ。」
(俺には守れなかった...そして俺の父ちゃんに至っては...)
「兄ちゃん...」
「だから、お前も憧れたんだろ?カイザって人に...」
「でも、結局ガトーに殺されたんだ...父ちゃんは...」
「イナリ...父ちゃんの死を無駄にするかどうか...それはお前次第だってばよ?」
「え?」
「お前の父ちゃんが...命を賭けて守ったお前が、自分の行動で証明するしか無いんだ。お前の父ちゃんが命を賭けて残すのに相応しい男だったって...」
ナルトの真剣な言葉...だが、イナリは体を震わせると...
「でも...僕...怖いんだ...ガトーが...死ぬのが怖いんだ...」
「そんなの、誰だってそうさ...俺だって死ぬのは怖ぇ...」
「ナルト兄ちゃんも?」
「ああ...でも...それ以上に怖いのは...自分の大切な人を失う事だってばよ。このままガトーを放置しておけば、おそらくタズナのおっちゃんも、お前の母ちゃんも...殺されるだろう...近い内に...」
「そんな...!?」
ナルトの言葉に動揺を隠せないイナリ...
「僕は...どうしたら良いの?ガトーと戦う力なんて無い。でも母ちゃんや、じいちゃんを死なせたくなんて無い。」
イナリは泣きながらナルトに訴えた。
「イナリ...俺に...依頼してみないか?金は...そうだな...いつか、お前が大きくなった時に後払いで良い。」
ナルトは意外な提案をする。
「何を?」
「お前は...どうして欲しい?」
その言葉にイナリは考える。
自分達を逃がして欲しい。自分達を守って欲しい。
幾つもの願いがあった...
だが、イナリが求めたのは...
「ガトーを...ガトーコーポレーションを...倒して...僕には戦う力が無いから...だから...」
イナリは絞り出すように、それを口にした。
「イナリ...その依頼...このうずまきナルトが引き受けたってばよ...今からは俺が...お前の戦う力だ。」
ナルトはイナリの依頼に力強く、そう答えるのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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希望しない