白との密談から翌日...
「さて...俺の体調も完全に戻った。そして、再不斬が生きているなら...おそらく今日辺り仕掛けてくるだろう...」
カカシはそう予測した。
そして、それは正しい。今日がこの波の国の任務においての山場であり、決着の日でもある。
「カカシ先生、俺は少しの間別で動きたいんだけど...良いかな?」
そんな中、出発前にナルトが切り出した。
「ん?何か考えがあるのか?」
「ああ、もし俺がガトーだったら、再不斬を泳がせて本命にしつつ、失敗したときの為にイナリかツナミさんか...はわからないけど人質にするんじゃないかって思うんだってばよ。」
「再不斬の襲撃は陽動にも使えるし、別動隊がここを襲撃する可能性もあるんじゃないか?」
「.........。」
カカシは、ナルトの言ったことについて考える。
(ナルトの推測は、確かにあり得るものだが...再不斬とあのお面の少年を相手にするのに、ナルトの戦力が抜けるのは痛すぎる。)
「カカシ先生...何も問題無さそうなら、影分身を置いてすぐに駆けつけるってばよ。」
ナルトは、カカシが何を考えて悩んでいるのか想像が出来たため補足した。
実際、前世の世界に置いて、ツナミを狙った刺客は来ていたのだ。その刺客たちは、然程強くはない者達だった為問題は無かったが、この世界も同じとは限らない。
故に、分身では無く自分が護衛に付く必要があった。
(白達には悪いけど、少しの間カカシ先生達の相手をしてもらうってばよ。)
「わかった。だが俺たちの任務はあくまでもタズナさんの護衛だ。何も問題が無ければ、すぐにこっちに来てもらうぞ?」
「わかってるってばよ。」
ナルトと別れたカカシ達は、建設中の大橋に到着した。
「な、なんだあ、これは。」
そこに、タズナの大工仲間が何人も倒れていた。
「どうした、いったい何があったんじゃ。」
急いで仲間の元に駆け寄ったタズナは、何があったのか聞くが...
「ば、化け物...」
聞いた仲間はそれだけ言うと気を失ってしまった。
(やはり...)
それを見たカカシは原因を予測していた。
そして...
急に辺りを霧が立ちこめた。
(やっぱり生きてやがったな...早速おでましか...)
「来るぞ。」
カカシの言葉に身構える一同。
「ねぇ、カカシ先生...これってあいつの霧隠れの術よね。」
「ああ...」
サクラの確認の言葉に頷くカカシ。
そこに、再不斬...そしてお面を付けた白が姿を現す。
「よぉ...カカシ...借りを返しに来たぜ?」
再不斬は、カカシ達を見ると一人足りないことにすぐ気付いた。
「あのナルトってガキはどうした...ヤツにも借りを返さなきゃならねぇんだが...臆したって訳でも無いだろ?」
ナルト不在の理由を訪ねる再不斬。
今回の戦い...半分はナルトを叩き潰すことを目的としているからだ。
「ナルトはガトーの別動隊を警戒してタズナさんの家族を護衛してるよ...何も問題無ければその内こっちに来るさ...」
カカシは素直に応じた。それはナルトと言う強力な増援を気にさせることで、再不斬たちの集中力を削ぎたいといった狙いがあったからだ。
「フン...まあ、ガトーのヤツは俺達を信用なんぞしてないだろうからな...それくらいやるかもしれん...」
いかにもガトーがやりそうだと、再不斬も同意する。
「だったら...ヤツが来るまでにお前らを皆殺しにして、ヤツを絶望させてやることで、借りを返すとしよう...」
その発言とともに、再不斬の水分身が、カカシ達を襲った。
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一方その頃、ナルトはツナミに辺りを見回って来ると言って外に出ていた。
仙人モードになり、周囲を警戒する。
「!?」
そして程なく、二人の刺客の気配を捉える。
その二人は、前世の時と同じだった。
「さて...どうすっかな...」
(あいつらを倒すのは簡単だけど...イナリの見せ場を取るのもな...少し様子を見るってばよ。)
様子見を決めたナルト...
二人の刺客は、タズナの家に浸入すると、ツナミを連れて行こうとした。イナリを守るため、自分の命をかけて人質をかって出るツナミ。
(母ちゃん...ごめんよ...僕は...ガキで弱いから...母ちゃんは守れないよ...それに死にたくないんだ...僕...怖いんだ...)
泣きながら震えてうずくまるイナリ...その時、ナルトの声が聞こえてきた。
『俺だって死ぬのは怖ぇ...』
それは、ナルトと初めてあった時に交わした言葉だ。
『でも...それ以上に怖いのは、自分の大切な人を失う事だってばよ。』
(そうだ...死ぬのは怖い...でも...母ちゃんが死ぬのは...もっと...怖い...)
『イナリ、俺が...お前の戦う力だ。』
(ナルト兄ちゃんは、辺りを見回るって言ってた。きっと近くにいる。だからそれまでは...僕が...時間を稼ぐんだ。)
「待てぇ...か、母ちゃんから離れろ。」
勇気を振り絞り、刺客たちに突進するイナリ。
二人の刺客は、イナリを手に持った刀で切り裂こうとした。
「イナリ!?...」
思わず目を覆ってしまうツナミ。
だが、イナリの悲鳴も、切り裂かれるような音も一向に聞こえては来なかった。
恐る恐る、目を開けるツナミ...そこには...
刺客達の刀をチャクラの腕で止めたナルトが立っていた。
「イナリ...よく...頑張ったな。」
「ナルト兄ちゃん!」
ナルトの姿を見たイナリは、ナルトの背中にカイザを重ねた。
自分が憧れたヒーローの姿...
「お前が、あいつらを引き付けてくれたお陰で母ちゃんも救えたってばよ。お前が母ちゃんを救ったんだ。」
見ると、ツナミはナルトの影分身が既に保護していた。
「クソ...なんなんだこれは。」
刀を掴まれている刺客たちは、なんとかその腕から抜こうとするが、びくともしない。
それどころか...
ビキッ
少しずつ刀身にヒビが入っていき...やがて...
バリン
耳触りの悪い音を立てて、刀身が砕け散ってしまった。
「な、なんなんだよ...お前は...」
得物を失った刺客達は、ナルトの力に恐れを抱く。
「イナリに雇われた忍さ...それよりも...お前達にいつまでも構ってる訳にもいかないんでな...そろそろ終わらせてもらうってばよ。」
そう言ったナルトは、チャクラの腕を操作すると大きく振りかぶる。
「おい...何をするんだ?やめてくれよ...な?」
「お、俺たちは命令されただけなんだ。許してくれよ。二度と悪さをしないと誓うから。」
二人の刺客は往生際悪く、言い訳を言って許しを請うた。
「悪いが、お前らみたいなのを信用する気は無えってばよ。」
ナルトは、二人を無視すると森の方へと投げ飛ばした。
投げ飛ばした...と言っても、尾獣の力で投げ飛ばされたのだ。そのスピードは容易に二人の意識を奪い、さらに森の木々に身体を激突させ、そのまま二度と目を醒ますことは無かった。
二人が死んだ事を仙人モードのチャクラ探知で確認したナルトは、
「さて、ここはもう大丈夫だろう。ここはお前に任せるってばよ。」
「ナルト兄ちゃん...うん。」
ナルトが、自分を認めてくれた。その事実が堪らなく嬉しい...
イナリは、高揚感を感じながら、大きく頷いた。
「イナリ...お前の依頼は必ず果たす。」
最後に、イナリに約束したナルトは、
「じゃ...行ってくるってばよ。」
そう言って橋を目指すのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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希望しない