逆行したナルトの物語 完結   作:アーク1

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帰還

「次は...お前の番だってばよ?」

 

分身ナルトは、冷めた目をしてガトーに告げると右手にクナイを持ち、ガトーの首に当てた。

 

「ヒッ!」

 

自らの屋敷が破壊され、放心していたガトーだったが、その冷たい感触によって、現実に引き戻される。

 

「や、止めてくれ...殺さないで...金をやる...あの小僧が依頼主だと言うなら、私が小僧の倍...いや10倍出そう...だから...」

 

「お前はさっき、再不斬を裏切ったばかりだろう?」

 

「そ...それは...」

 

金で助命を求めるガトーだったが、再不斬を裏切った事実を指摘されて、何も言えなくなってしまう。

 

「もう良いか?だったら...これで終わりだってばよ!」

 

ナルトがガトーに止めを刺そうとクナイを動かした、その瞬間...

 

「ナルト兄ちゃん、止めてぇ!」

 

大声でイナリが、ナルトの動きを制止した。

 

イナリは、ナルトがガトーの部下たちを相手に無双する姿を見て、まるで英雄を見ているように興奮していた。

 

しかし、完勝しガトーを拘束した後のナルトの表情を見て、その考えは一変する...今のナルトは怖い...そう思った。

 

直後に大きな爆発音が響き、ナルトの言動から、ガトーの屋敷を破壊したのだと知った。

 

『ガトーと、ガトーコーポレーションを倒して...』

 

自分は、ナルトにそう依頼した。

 

その内の一つ、ガトーコーポレーションを終わらせたナルトは次にガトーを殺そうと動く。

 

ナルトの目は、完全に凍りついていた。

 

イナリは、思わず叫んでいた。

 

「何で、止めるんだってばよ?イナリ...こいつはお前のじいちゃんや母ちゃんの命を狙い、町の人達を苦しめ、お前から父ちゃんを奪った...死んで当然のヤツだってばよ?」

 

「それでも...(僕はナルト兄ちゃんに、こんな顔をして欲しくないんだ...だから)もう良いんだ...ガトーを拘束した所で依頼は達成したって事にするよ。だから...そんな冷たい目をしないでよ。いつもの兄ちゃんに戻って。」

 

「イナリ...」

 

分身ナルトは、イナリの叫びに苦笑すると、クナイを下げて、消えてしまう。

 

そして、

 

ポン...

 

イナリの頭に手が添えられる。

思わず振り向くイナリ...その手の主は、ナルトの本体だった。

 

ナルトは尾獣玉を撃ってすぐ、尾獣化を解き、戻ってきていたのだ。

 

「イナリ...お前は強ぇな。大事な人が殺されてるのに、そいつを助けようなんて...並の男には出来ないってばよ。」

 

ナルトは、イナリのよく知る笑みを浮かべて、イナリを称賛した。

 

「違うんだ...僕は...ただ...(ナルト兄ちゃんに笑っていて欲しかっただけなんだ。)」

 

 

二人がそんなやり取りを行っている時、なんとか命が助かったガトーは...

 

(クソ...バカにしやがって...私を怒らせたこと...必ず後悔させてやる...)

 

船に向かって、一人逃げようとしていた。

 

「どこに行くんだ?ガトー...」

 

だが、その進路を塞ぐものがいた。

 

「ヒッ!ざ...再不斬...」

 

「ナルトがお前を見逃しても...お前が俺達を裏切った事実は変わらねぇ。忍を裏切ったらどうなるか...教えてやる。」

 

自らが小鬼と揶揄した男...その形相は小鬼なんてものでは決して無かった...

 

「死ね...」

 

ガトーはあっさりと、その命を終わらせたのだった。

 

「ナルト兄ちゃん...ガトーが...」

 

それを見たイナリは、恐怖に震えた。

 

「気にすんな。お前のせいじゃ無い。あれは自分の行動の結果だ。全ての人が、イナリみたいに強い訳じゃ無ぇんだってばよ。」

 

ナルトは悲しそうに、そう話すのだった。

 

「再不斬さん...」

 

ガトーを殺した再不斬に、白が近寄ってくる。

 

「無事だったみたいだな。」

 

「ええ...はっきり言って、僕ではナルト君の相手にもならかったですよ。ずっと手加減されてましたから...」

 

「そこまでか...」

 

ナルトの力は、どうやら自分が想像しているよりも、遥かに上のようだ...

 

(あの爆発の時に感じた巨大なチャクラ...あれもヤツの力の一端...か...)

 

そこまで考えた再不斬は、

 

「白...俺はヤツの提案に乗ってみようと思う。ガトーのヤツも始末しちまったしな...お前はどうする?」

 

白に問いかける。

 

「僕は、再不斬さんの道具です。もちろん、一緒に行きますよ。」

 

白は、当然の事のように答えるのだった。

 

一方、ナルトに気絶させられたサスケは、ちょうど目を覚ました所だった。

 

「サスケ君!気が付いたのね。良かった。」

 

サクラが、声をかけるなり、

 

「俺は...痛っ」

 

一瞬、自分がなぜここにいるのか理解できなかったサスケ...だが全身の痛みが、記憶を呼び覚ます。

 

「そうか...俺は...(負けた...のか...あのお面野郎に...そしてナルトに...)」

 

「ちくしょおおおおおお...」

 

サスケは、悔し涙を浮かべていた。

こんなハズでは無かった...アカデミーを卒業し、順調に力を付けて、イタチを殺す...そんなビジョンがサスケにはあった。

 

しかし、現実はそんな甘いものではなかった...ナルトに...白に負けた事実が強くサスケを苦しめる。

 

「サスケ君...」

 

サクラは、どうやって声をかけたら良いのかわからなかった。

 

どんな慰めの言葉も、今のサスケには効果が無い...そう思えた。

 

「ま、お前はまだ忍になったばかりだ。まだまだ伸びる。ナルトが気になるのはわかる。同期だからな...だが、今敵わないからと言って、この先もそうとは限らんだろ?今回の戦いでも、強くなった実感はあったろ?その悩みはお前にはまだ早すぎる。」

 

「カカシ...そう...だな...」

 

カカシの言葉に少しだけ気持ちを切り替えられたサスケは、未だ暗い表情ながらも頷いた。

 

そして再不斬たちは...

 

「世話になったな。ナルト...」

 

「ナルト君、本当にありがとうございました。」

 

ナルトに挨拶に来ていた。

 

「行くのか?」

 

「ああ...俺達は雇われていたとは言え、ガトーの一味だったからな。ここにはいられないさ。」

 

「そうか...」

 

「それと...お前の提案だが...受けてやる。」

 

「本当か!」

 

再不斬の言葉に喜ぶナルト。

 

「ええ...君の力は十分見せて貰いました。僕達は、君の夢に賭けてみようと思います。」

 

「落ち着いたら連絡をする。」

 

「本当にありがとうございます。」

 

二人はそう言うと、姿を消すのだった。

 

こうして、波の国の事件は幕を閉じた。

 

その後、またも写輪眼の反動で倒れたカカシの回復を待ち、とうとう木の葉に帰ることになった。

 

挨拶を交わすカカシとタズナ。

 

そしてナルトも...

 

「ナルト兄ちゃん...行っちゃうの?」

 

イナリは、寂しそうに言った。

 

「ああ。俺にも帰りを待っていてくれる人がいるからな。それに、またいつか...会えるってばよ。」

 

「本当?」

 

「もちろん。じいちゃんの後を継いで大工になるんだろ?そうだな...今回の依頼の報酬...まだ考えてなかったな。よし、じゃあお前が一人前の大工になったら、お前に家を作って貰うかな。」

 

ナルトはイナリを励まそうと、そんな提案をした。

 

「うん!その時は、任せて。橋作りだけじゃなくて、家作りも勉強するから。約束だよ。」

 

その提案を聞いて元気になるイナリ。

 

「イナリ...お前の行動は町の人達に勇気を取り戻した。きっとそれは、この町をまた賑やかにする。お前は父ちゃんと同じ...この町の英雄だってばよ。」

 

「ナルト兄ちゃん...」

 

ナルトの言葉に、嬉しさのあまり、涙を浮かべるイナリ。

 

「僕...きっと立派な大工になるから...だから...」

 

「ああ。さよならは言わないってばよ。またな。イナリ。」

 

「うん。きっとまた。元気でね。ナルト兄ちゃん。」

 

そうして、ナルト達は木の葉へと帰っていった。

 

イナリは、この時の約束を果たすため、努力を重ね、後に波の国一番の名工と呼ばれることになるが、それは別の話である。

 

「それはそうとナルト...勝手に依頼を受けた罰は受けてもらうから...」

 

「げっ!」

 

帰還の途中、良い笑顔でカカシはナルトに宣告した。

 

その罰により、全員の荷物を背負って帰るハメになるナルトだった。

 

「あ、木の葉の門が見えてきたわよ。」

 

初めての他国での長期任務...やはりサクラもひさしぶりの故郷に嬉しそうな声を上げた。

 

「ふぅ...大変な任務だったな...」

 

ほっと一息付くカカシ。

 

「.........。」

 

無言のサスケ。

 

そしてナルトは、門の前に待っていた人物を見て、駆け出していた。

 

門で待っていたのは、ヒナタだった。

 

ヒナタは、ナルトから貰った九尾のチャクラを覚え、ナルトが木の葉の近くまで来ていることを察したのだった。

 

「ナルト君。おかえりなさい。」

 

「ただいま。ヒナタ。」

 

ナルトは、ヒナタの笑顔での出迎えに、やはり自分の帰るべき場所はヒナタの所だと再確認した。 

 

「え?何あれ?」

「?」

 

二人の様子を見たサクラとサスケは、驚いていた。

 

「あー...付き合ってるらしいよ?あの二人。」

 

カカシがさらっと真実を告げる。

 

「えええええええええええええええええ!」

 

サクラは驚愕して叫ぶのだった。

 

解散したあと、サクラの追及をかわしつつ、二人きりになったナルトとヒナタ。

 

「久しぶりだね。ナルト君。」

 

「本当にな。そうだ...ヒナタ、弁当ありがとうな。美味しかったってばよ。」

 

「本当?」

 

「もちろんだってばよ。」

 

「少し不安だったんだ...ナルト君の口に合わなかったらどうしようって。」

 

「そんなことあるわけ無いってばよ。すっげえ旨かったってばよ。」

 

「本当!?じゃあ、また作ってくるね?」

 

「ああ。楽しみにしてるってばよ。」

 

「.........。」

 

会話が途切れる。

 

ナルトは、ヒナタの手を握る。

そして...

 

「ヒナタ...会いたかったってばよ。」

 

「うん。私も...会いたかった...とっても...」

 

「ナルト君...本当に無事で良かった...改めて、おかえりなさい。」

 

「心配かけたな。ただいま...ヒナタ。」

 

二人はお互いに見つめ合うと、唇を重ねた。

今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。

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