逆行したナルトの物語 完結   作:アーク1

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砂漠の我愛羅

「痛ぇじゃん。クソガキ。」

 

木の葉丸がぶつかった人物...砂隠れの下忍カンクロウだった。カンクロウは、木の葉丸の胸ぐらを掴み持ち上げた。

 

「やめときなって。後でどやされるよ?」

 

カンクロウの隣にいた同じく砂隠れの下忍...テマリがカンクロウを嗜める。

 

「ごめんなさい。私がふざけて...」

 

サクラが代わりに謝るが、カンクロウは特に反応することなく、そのまま木の葉丸を持ち上げている。

 

「うるせーのが来る前に、ちょっと遊んでみたいじゃん?」

 

カンクロウは、ナルトとサクラを見て木の葉のレベルを見ようと考え挑発していた。

 

「く...苦しい...コレ...」

 

木の葉丸は苦しそうに呻いている。

その様子に心配そうにモエギとウドンが木の葉丸の名前を呼んだ。

 

「ハァ...」

 

ナルトは一つ溜め息を付くと、カンクロウに向かって歩き出した。

 

それを見たカンクロウは、チャクラ糸を使いナルトを転ばせようとする。

 

「なに!?」

 

だが、チャクラ糸は全く動かなかった。

まるで大岩に付けているかのような感触に戸惑うカンクロウ。

 

ブチッ

 

それ所か、チャクラ糸は途中で切れてしまった。

 

ナルトが何かをした様子は無い...だが...

 

カンクロウは警戒した。

 

自分に気付けなかっただけで、何かしたのは間違いなく、目の前の人物だと。

 

そう...既にナルトはカンクロウの目の前にいた。

 

(何をしてくる...)

 

カンクロウが身構えていると...

 

「うちの里の子供がすまなかった。その子も反省しているハズだ。もういいんじゃねぇか?」

 

ナルトが謝った事に拍子抜けするカンクロウは、

 

「あ、ああ。」

 

思わず木の葉丸を放してしまう。

 

その隙にナルト達の後ろに隠れる木の葉丸。

 

だが、このまま終わるのはばつが悪いと感じたカンクロウは、

 

「おい、俺は金髪のガキ...てめえみたいに小利口にしてるガキが一番嫌いじゃん。」

 

そう言って背負っていたものを取りだそうとした。

 

「おい。カラスまで使う気かよ。」

 

流石にそれは不味いとテマリが止めに入る。

 

「カンクロウ、やめろ。」

 

だが、それより先に止める者がいた。

 

「里の面汚しめ...」

 

三人目の砂隠れの下忍...我愛羅だった。

 

我愛羅の姿を見たナルトは、少しだけ前世の我愛羅を思い出していた。

 

自分と同じような境遇にあり、一度は敵対したが、その後は誰よりもお互いの価値観を共有できた。

 

さらに自分が火影となった後も、火影と風影...対等な立場であり、いつまでも友であった。

 

自分が死んだ時、我愛羅は悲しんだだろうか...

それとも、今の俺のように全てに認められる事などあり得ないと諦めてしまったのだろうか...

 

(我愛羅...すまない...)

 

ナルトはかつての友に謝る事しか出来なかった。

 

「喧嘩で己を見失うとは呆れ果てる...何のために木の葉くんだりまで来たと思っているんだ...」

 

木の上に逆さで立ちながら我愛羅はカンクロウを詰る。

 

言い訳をするカンクロウ。

 

「黙れ...殺すぞ...」

 

だが、我愛羅はその言い訳を聞くことなく、一言で黙らせる。

 

木の上から消えた我愛羅はナルトの達の前に現れた。

 

「君たち悪かったな。」

 

謝罪する我愛羅。

 

その言葉にナルトは行動を起こす。

 

「それなら、ちょっと頼みたい事があるんだってばよ。」

 

ナルトには、どうしてもやっておきたい事があったのだ。

 

ナルトは九喇嘛との会話を思い出していた。

 

 

『ナルト...お前、今回は尾獣達をどうするのか決めているのか?』

 

「もちろん、助けるってばよ。出来れば、暁に人柱力が殺される前になんとかしたい所なんだけど...」

 

『全員は...無理だな。既に何人かは狩られているだろう。』

 

「.........そうか。」

 

『それで?助けた後はどうするんだ?』

 

ナルトは九喇嘛の質問に、自分の夢...構想を語った。

 

「もちろん、他の人柱力や人柱力を失った尾獣の意思は尊重するつもりだ。多分...ビーのおっちゃんは協力はしてくれないと思うし...」

 

『ナルト...ワシに一つ考えがある。お前の目的を達成するには、他の人柱力や尾獣と早い段階で意志疎通を図る必要があるだろう?』

 

『そこでだ...まずは他の人柱力と接触する。』

 

 

「俺と...拳を合わせてくれないか?」

 

ナルトは自分の拳を出して、そう言った。

 

「?」

 

ナルトの意図を読めず、頭の中で疑問符を浮かべる我愛羅。

 

「迷惑をかけたのはこちらだからな...君がそれで良いと言うなら構わん。」

 

しかし、何ができるわけでも無いと思い直した我愛羅は、腕を動かす。

 

「我愛羅、止めろ。きっとなんか仕掛けてくるつもりじゃん。」

 

「そうだよ。罠かもしれないし...」

 

カンクロウとテマリが制止する。しかし...

 

「黙れ...」

 

それを再び黙らせる我愛羅。

 

我愛羅自身、ナルトに興味があった。

 

カンクロウの糸を封じたナルトは、自分の獲物に相応しいのではないか...そう感じていた。

 

二人の拳が合わさった、その時...

 

辺りの景色が変わった。

いや、景色が無くなり周り全てが漆黒に包まれた。

 

「なんだ...一体どうなっている?」

 

我愛羅は警戒を最大限にして、辺りを探る。

 

「そんなに警戒しなくても何もしないってばよ。」

 

そんな我愛羅に冷静に諭すように声をかけた人物がいた。

 

我愛羅は、その人物が誰なのかわからなかった。

 

先程、拳を合わせた人物に似ている...だが、目の前の人物は少年ではない。大人の男であった。

 

それは精神世界でのナルトの姿。前世のナルトの最後の姿であった。

 

「お前は誰だ?さっきのヤツの仲間か?それに、ここはどこだ?」

 

当然、そんなことなど知らない我愛羅は、目の前の人物が、この現象を起こした犯人だと認識しているため、警戒を緩めることはない。

 

「そんなに一辺に質問するなってばよ。ちゃんと説明してやるから。」

 

ナルトは苦笑しながら、話し掛けた。

 

「良いだろう...だが、少しでもおかしな事をすれば...お前を殺すぞ?」

 

「殺されてやる訳にはいかないが...まずは話を聞いてくれてサンキューな。我愛羅。」

 

「何故俺の名前を知っている?」

 

ナルトはそれには答えず、自己紹介から始めた。

 

「そうだな...まずは俺の事だが...俺は、うずまきナルト。さっきお前と拳を合わせたヤツと同一人物だってばよ。」

 

「つまり、さっきの姿は変化の術で化けていたと言うことか?」

 

「いや...そうじゃねぇ。あれは今の俺の姿だ。」

 

「何を言っている?」

 

聞けば聞くほど謎が増える我愛羅に、

 

「うーん...なんて説明したら納得できるか...」

 

『ナルト...ここは精神世界だ。お前の記憶を見せてやった方が説明が早い。だいたい口下手なお前がヒナタを納得させられただけでも奇跡なんだ。』

 

上手く説明出来ず、悩むナルトの後ろにいた九喇嘛が、声をかけた。

 

「うるせぇぞ。九喇嘛。」

 

軽口を叩き合う二人。だが、我愛羅はそれ所ではなかった。

 

(なんだ...この化け物は...これじゃまるで...俺の...)

 

その時、自分の後ろから強烈な気配を感じた...

思わず振り向く我愛羅。

 

「お前は...」

 

そこにいたのは...自らの内に封印された化け物...『守鶴』がいた...

 

『ようやく俺を認識したか...全く...』

 

守鶴は、呆れたように我愛羅を見る。だがそこに、今まで我愛羅の意識を支配しようとしていた憎しみの心が感じられない。

 

『それにしても...遅ぇぞ。もっと早く接触しろよなナルト。それとクソキツネも。』

 

「え?守鶴...お前ってば...俺の事がわかるのか?」

 

守鶴の言い様に驚くナルト。

 

『ああ...六道のじじいが、お前をここに送るとき、一緒に俺たちの記憶の一部を転写して送ったのさ。俺たちは元々はチャクラの集合体だからな。じじいには簡単だったんだろう。』

 

「そっか...六道の大じいちゃんが...」

 

ナルトはハゴロモに心から感謝した。

きっとハゴロモは、この世界でもナルトは尾獣達を助けると、わかっていたのだろう。

 

だから、ナルトを知っている尾獣達の記憶をこの世界に一緒に送ったのだ。

 

『って訳で、お前の記憶を見せるより俺の記憶を我愛羅には見せる。なんせ、ずっと一緒にいたからな。それでほとんどはわかるだろう...』

 

「わかった。お前に任せるってばよ。」

 

守鶴の提案に、ナルトは頷いた。

 

「んじゃ、我愛羅。まずは守鶴の記憶を見てもらうってばよ。」

 

「あ、ああ...」

 

我愛羅は、理解できない現状に頷く事しか出来なかった。

今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。

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