少年がいた...
その少年は、生まれながらに化け物を体の内に封印されていた...
その力を制御出来ずに苦しんでいたが、誰も少年の苦しみを理解しようとはしなかった...
それどころか少年を嫌い、恐れ、憎む者達ばかりだった...
それは、実の父も同じ...
そんな中、一人だけ少年を理解してくれる人がいた...
少年は、その人といる時だけ安心できた...
だが、その安息も唐突に終わりを告げる...
ある日、少年は一人の忍びに襲われた...
少年は、その忍を返り討ちにした...
その少年は、自分が殺した人物が、唯一自分を理解してくれていたハズの人であった事を知った...
そして、それをけしかけたのが、自分の父であることも...
少年は、他人を見限った...
唯一、自分だけを愛せば良いと考えるようになった...
少年は、強さを求めた...
自らの身に、化け物を宿す自分は、強さこそが存在理由であると考えたから...
それからの少年は、強者を殺すことを生き甲斐にしていた。強者を殺すときのみ、自分の生を実感できた...
少年は、ますます孤独になった...
だが、少年は別に気にならなかった...
他人にどう思われても構わなかった...
そう思い込んでいたから...
そんな少年は、ある任務の折り、一人の少年と出会った...
その少年は、敵であった...
その少年は、自分と同じであった...
その少年は、自分と違う生き方をしていた...
その少年は、自分に勝った...
何故この少年はこれほど強いのか...
少年はわからなかった。
だから、少年は聞いた。
その少年は答えた。
「自分を認めてくれた大切な仲間だから...」
少年は、他人...いや...自分の大切な人を守る為に戦っていた。
少年は、その生き方を羨ましいと感じた。
出来る事なら、自分もこの少年のように...
それから少年は、変わった。
少しずつ、里の人々も少年を認めるようになった。
やがて少年は青年となり、風影となった。
そして、自分に違う生き方があることを教えてくれた友と世界を救った。
友もまた火影となった。
青年は、その友と時には助け、時には助けられ互いの里をより良い所にしようと懸命に働いた。
青年は、家族を得て、里の者達に慕われ、幸せだった。
ある日、青年の友が死んだ...
うずまきナルトが殺された...
守鶴は、ハゴロモの意思により記憶の一部を過去に送った。
「これがお前の...いや...俺が歩んで来た記憶か...」
我愛羅は、静かに呟いた。
『そうだ...』
守鶴は肯定する。
「お前は未来から...時を渡って来たのだな?ナルト...」
我愛羅はナルトを見ると、そう言った。
今見たものは、幻術では無いと自分の魂が理解していた。
そして目の前の尾獣達も...
「ああ...」
ナルトもまた、静かに肯定する。
「そうか...結局俺たちは...どれだけの偉業を遂げても、認められぬ者なのかもしれないな...」
ナルトの最後を知った我愛羅は、悲しそうに呟く。
火影となり、忍の世界を救ったナルトですら、同じ木の葉の者に裏切られた...
だったら...自分達は、何を目指したら良いのか...
「そんなことは無いさ...ほとんどの里の人達は俺も我愛羅も受け入れてくれていたってばよ...ただ...全ての人に認めて貰うことは...できないのかも知れないな...」
「なら、俺たちは、どうしたら良かったんだ?」
ナルトの言葉に思わず聞いてしまう我愛羅。
「俺は...もう火影を目指す気はないってばよ...ただ...今は別の夢に向かって動いてる。」
「夢だと?それはなんだ?」
「俺はさ...俺たちのような人柱力や、差別なんかで居場所のない奴等を受け入れる事ができる...新しい里を作りたいんだってばよ。」
ナルトは、自分の夢を語った。
「つまり、自分達だけの世界を造ると言うことか?それでは昔の俺と変わらないぞ?」
我愛羅の言葉に首を振るナルト。
「昔のお前は自分しかいなかっただろ?俺が目指すのは、俺たちを認めてくれる人達で作った里だ。そこは俺たちだけが存在するわけじゃない...お互いを認め合って、助け合ってさ...そんな人達が暮らす場所にしてぇんだ...」
「俺たちや...里の住人を認めてくれるなら、別に人柱力である必要は無いし、ぶっちゃけ忍である必要もない。もちろん、あまり大きくなると守れなくなるし、制限はかけるつもりだけどな...」
我愛羅は黙って話を聞いていた。
「まあ、この考えは、そもそも俺が家族を今度こそ幸せにしたいって目標を得たからこそ考えたんだけどな...」
ナルトは最後にそう言って苦笑した。
「我愛羅...俺の目指す夢を聞いてもらった訳だけど、お前に聞きたい。俺の夢を手伝ってくれないか?」
ナルトは、我愛羅の目を見ると問いかけた。
「.........。」
「もちろん、強制はしないってばよ。我愛羅なら今回だって頑張れば風影になれるだろうし...それは前世のお前が証明してみせたからな。」
ナルトはそう言って話を閉じると、我愛羅の答えを待つ。
我愛羅は一度目を閉じる...
そして、目を開けるとナルトの目を見て口を開いた。
「ナルト...お前は一つ勘違いしている...」
「?」
「俺は、お前が知る未来の俺では無い...この世界の我愛羅だ。」
「.........。」
「お前が知る未来の俺は、この時こんな会話をしてはいないだろ?」
「ああ...」
「俺は、風影など目指したいとは思わん。」
我愛羅は未来の自分と今の自分は、別人だと断言しながらも、未来の自分が何故風影を目指したのかを理解していた。
他の人に認められたい...もちろんそれもあるだろう。
ナルトを見て、未来の自分はナルトの様に生きたいと願っていたハズだから...
しかし、最も大きな理由はそれではない。
未来の自分が風影を目指したのは、何よりもナルトが火影を目指していたからだ。
ナルトと対等でありたい。
自分のために泣いてくれた友と...
それが未来の自分が風影を目指した理由なのだ。
今回、ナルトは火影を目指す気はないと言う。
ならば、自分が風影を目指す理由も無かった。
「俺に協力してくれるって事で良いのか?」
ナルトの確認に頷く我愛羅。
「それで...俺は、この後どう動いたら良いんだ?」
我愛羅の問いに、これからの計画について話すナルト。
具体的な策はシカマルが用意してくれた。
シカマルは、ナルトの相談を受けた後、自分の手でナルトの状況を調べていた。
ナルトの現状は、話で聞くよりも、遥かに酷いものだった。
シカマルは、自分の安易な提案でナルトが、この里を去る事を決めてしまった事を後悔しつつも、協力することに決めた。
自分は流石に木の葉を捨てる気は無いが、せめてナルトが穏便に里を抜けられる様にと策を考えたのだった。
「取り合えず、我愛羅は今回は予定通りに動いてくれて良いってばよ?」
「つまり、このまま木の葉崩しに参加すると言うことか?」
「ああ...俺は、それを全力で止めるってばよ。」
ナルトの挑発するような言葉に、
「手加減はせんぞ?」
そう言って、軽く笑うのだった。
それから、九喇嘛の助言により守鶴から一部のチャクラをもらったナルト。
『これで、この世界のワシの半身を取り戻す事が出来れば、恐らく既に魔像に取り込まれてしまった尾獣に干渉できるハズだ。それを介して全ての人柱力と会話ができるようになる。あの尾獣空間のようにな。』
九喇嘛は、この世界に逆行した事でチャクラの量が増大していた。もともとチャクラの塊である尾獣が自身の全てを過去の自分と同化させたのだ。
その結果、本来、出来ないことも出来る可能性があった。
魔像に干渉することは、本来出来ない。
あの尾獣空間は、あくまで取り込まれていた孫悟空を通して、他の尾獣と直接触れる事により、入ることが出来た。
だが、今回はナルトに他の尾獣の力を宿し、この世界の残りの半身を取り戻す事が出来れば、恐らくその場から魔像に干渉し、尾獣空間に入ることが出来る。
九喇嘛はそう確信していた。
「半身ってことは、第四次忍界大戦で四代目が大蛇丸に穢土転生されるまで待たないといけないのか...でも、それじゃあ他の人柱力を救えないってばよ?」
その頃には、既に残っていた人柱力は自分とビーのみであった。
我愛羅は既に尾獣を抜かれていたし、他の人柱力は既に死亡していた。
『いや...おそらくだが...この後起こる木の葉崩しで、大蛇丸は穢土転生を使う。一瞬だがワシの半身のチャクラをあの時に感知した。』
ナルトの疑問に、九喇嘛が答えた。
「そういやぁ、あの時初代と二代目を相手に三代目のじいちゃんは戦ったって戦闘記録があったってばよ。」
上忍になるためにと、イルカとカカシに詰め込まれた勉強...
その中には、忍として必要な知識の他、過去の戦術や戦略、そして幾つかの戦闘記録等も当然含まれていた。
中でも、木の葉崩しと言う事件に際し、三代目が大蛇丸を押さえた時の戦いは目撃者も多く、詳細に記録が残っていた。
「確か、じいちゃんは穢土転生の三体目の召喚をなんとか阻止したらしいけど...つまりその三体目が...」
『ああ...四代目火影...波風ミナトだな。』
九喇嘛は断言するのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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希望しない