『四代目火影...波風ミナトだな。』
「.........。」
九喇嘛が出した名前に考え込むナルト...
「?...どうした?ナルト」
急に黙り込んでしまったナルトを不審に思った我愛羅は声をかけた。
「あ...い、いや...なんでも無ぇってばよ...ただ、どうやって接触したものかと考えてたんだってばよ。」
慌てて返事をするナルト
「そうか...」
我愛羅は特に疑問は持たず、納得した。
『.........。』
九喇嘛はその様子を何かを言う訳でも無く、黙って見ていた。
「ああ...確か、あの戦いは音隠れの忍の結界術で他の忍は入れなかったらしい...」
「どうにかなるのか?」
「多分...な...」
「だが、そうなると俺の方の対応はどうする?他の忍に任せるのか?」
ナルトが大蛇丸の方に行くとなると、自分の方の対処は出来ないのではないかと、我愛羅は思った。
「そっちは影分身をやって時間を稼がせるつもりだ。」
「分身なんかで、俺の相手が務まるのか?」
流石にムッと来た我愛羅は、そう言うが、
ナルトは不敵に笑うと、
「我愛羅、確かにお前は強ぇ。今のお前でも、並の上忍クラスの戦闘力はあるだろうな...それでも、俺は火影クラス...分身でも今のお前に遅れは取らねぇってばよ。」
未来では風影にまで登り詰めた我愛羅も、それは未来での話。
現時点での戦闘力の差は分身程度のハンデでは埋められるものでは無い。
ナルトはそう言っているのだ。
「だが、憎しみから解放された守鶴と協力して当たれば...」
『今のお前じゃ、まだ、俺様の力を制御することは出来ねぇよ。』
我愛羅の案を守鶴は否定した。
『お前がナルトの様に尾獣化しようとすれば、俺様のチャクラに意識を飲み込まれて二度と戻れなくなるぞ?俺様の力を使いたいなら今まで通り狸寝入りの術を使うんだな。』
「そうか...」
気落ちする我愛羅。
『まあ、尾獣チャクラを利用した砂の獣人化は今までよりも安定して使えるだろうよ。少なくとも破壊衝動には支配されることはねぇハズだ。』
そんな我愛羅をフォローしようと、守鶴は、メリットも告げた。
「そうか。...守鶴...よろしく頼む。」
我愛羅は、守鶴が自分を慰めようとしてくれたのを理解して、嬉しそうにそう言った。
『ふん...』
守鶴は返事はしなかったが、少し嬉しそうに尻尾を振っていた。
「ツンデレだってばよ...」
『ツンデレだな...』
そんな守鶴を生暖かい目で見つめるナルトと九喇嘛。
『うるせぇぞ...特にクソギツネ...てめえに言われたか無ぇんだよ。』
『なんだと...やるのか?アホダヌキ。』
睨み合う二匹の尾獣。
「ふ...ふははははははははは...」
それを見た我愛羅は思わず笑ってしまった。
「我愛羅?」
「尾獣も意思を持ち、時には怒り、時には喧嘩もする...俺たちと同じだったんだな...」
「ああ...九喇嘛も...守鶴も...決して化け物なんかじゃ無ぇ。もし、九喇嘛達が化け物になったのなら...それはきっと...俺たち人間がそうさせたんだ...」
ナルトは、悲しそうに言った。
「改めて...俺も協力するぞ。ナルト。共に俺たちの安息の場所を作ろう。」
「よろしく頼むってばよ。我愛羅。」
その宣言と同時に、現実世界に戻ってきた両者。
「我愛羅...大丈夫かい?」
「こいつに何かされたじゃん?」
心配そうにテマリとカンクロウが声をかけてきた。
ナルトと拳を合わせた瞬間、我愛羅が黙り込んでしまったのだから無理もないだろう。
「ああ...大丈夫だ。すまない...心配をかけたな。」
「え?あ...いや...何も無いなら良いんだ。」
(やっぱ、なんかされたじゃん?)
今までに無く素直な我愛羅に戸惑う二人。
「二人とも、もう時間が無い...そろそろ行こう。」
そんな二人を促す我愛羅。
その目は、二人が今まで見たことが無いほど穏やかだった。
「あ、ああ...」
「わ、わかったじゃん...」
未だ、我愛羅の変貌に付いていけない二人は、頷くことしか出来なかった。
「そう言えば、名前を聞いていなかったな?」
現実世界では、名乗り合っていないことに気付いた我愛羅はナルトに訪ねる。
「うずまきナルトだ...」
「俺は、我愛羅だ。ナルト...次にお前と相見えるのを楽しみにしていよう。」
「ああ。」
(やっぱ、我愛羅の様子が変じゃん?)
(まあ、特に害は無い...と言うか安定してるみたいだし、取り敢えず様子を見た方が良さそうだ。)
後ろでヒソヒソ話すテマリ達。
そんな二人を連れて我愛羅は去っていった。
「ねえ...ナルト...あんたなんで、あんなことしたの?」
ナルトが突然、拳を合わせて欲しいと頼んだ事を疑問に思ったサクラが聞くが、
「うん?まあ、ちょっとな...そんなことより、早く行かないとヒナタが待ちくたびれちまうってばよ。修行の時間も無くなるし。」
ナルトは、適当にはぐらかして待ち合わせの場所へと歩いていってしまった。
仕方なく付いていくサクラと木の葉丸たち。
待ち合わせの修行場に着いたナルト達を、先に着いて待っていたヒナタが出迎えた。
とてつもない冷気をもった目で...
「ねえ...ナルト君...なんでサクラさんが一緒にいるのかな?」
笑顔で質問するヒナタ。
そう...顔は笑っていた...しかし目が怒っていた...
(こ、怖いってばよ...)
その圧力はナルトをして恐怖させるものだった。
木の葉丸たちなど、泡を吹いて気絶している...
(ナルト...あんたヒナタにちゃんと理由言ったの?)
サクラが小さな声で聞いてくる。
(え?いや急だったし、言う時間なんて無かったってばよ。)
(あんた、影分身使えるんだから先に行かせて事情説明しとけば良かったじゃない。)
(いや、そこまでしなくても...)
サクラはヒナタの気持ちがなんとなくわかった。
ヒナタにとっては二人きりで修行する時間は、デートのようなものなのだ。
きっと、毎日楽しみにしていたハズだ。
そこに、他の女の子を連れてナルトがやって来れば、怒りもするだろう。
(大人びている様に見えるナルトだけど、恋愛関係は子供レベルね...)
サクラは思った...
「ナルト...あんたちょっと、そこで正座してなさい。」
「え?なんで?」
「いいから、やりなさい。」
「...はい。」
二人の女の子の圧力に屈したナルトは、その場で正座した。
その隙に、サクラはヒナタを伴い離れると事情を説明した。
サクラがナルトに恋愛感情を持っていないと、はっきり告げた事で安心したヒナタ。
「ふふ...でもヒナタは、本当にナルトの事が好きなのね。」
サクラに嫉妬するヒナタを可愛いと思ったサクラは、思わずヒナタをからかう。
「え?その...うん...大好きだよ...」
顔を真っ赤にしながらも、しっかりと肯定するヒナタに、サクラも顔が赤くなってしまった。
「さて...時間もあまり無いし、修行しましょうか。」
「うん。」
正座しているナルトを許して修行を始める三人。
初日のサクラには、取り合えず体術の訓練をさせた。
どのみち、もうすぐ中忍試験が始まるため、新しい術を習得する時間は無いのだ。
そうして、その日は解散となった。
木の葉丸達が気が付いた時には修行が終わっており、悔しがっていた事を記しておく...
それから六日後...
カカシに呼び出された第七班の三人は、相も変わらず遅刻しているカカシを待っていた。
そんな折り、サスケがサクラに声をかけた。
「サクラ...その...この間は悪かったな...」
どうやら、時間が経って冷静になってから言い過ぎたと思ったようだ。
「ううん...サスケ君の言う通りだと思うから。」
首を振ってサスケを許すサクラ。
「サスケ君...私も...きっと強くなるからね...足手纏いなんて言わせないように...」
「あ...ああ...」
強く宣言するサクラに戸惑いながらも頷くサスケだった。
そんな二人をナルトは、微笑ましそうに見ていた。
しばらくして、カカシが待ち合わせに姿を現した。
「いきなりだが、お前達を中忍選抜試験に推薦しちゃったから。」
そう言って志願書を三人に配るカカシ。
受け取ったナルトは、
(いよいよだってばよ...)
自分の夢のため、行動を開始する時が来たと胸を踊らせるのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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希望しない