教室の扉を開けたナルト達...
そこには、既に中忍試験の受験者達が集まっていた。
殺気とはまた違う...独特の雰囲気に飲まれそうになるサクラ。
と、その時...
「サスケ君、遅い~。」
サスケに、同期の一人...山中いのが抱きついてきた。
「サスケ君から離れろ、いのぶた!」
いのとの言い合いで、サクラはいつもの調子を取り戻した。
いのの登場と共に、ナルトの同期のメンバーも集まってくる。
ヒナタは、ナルトを見て静かに微笑んでいた。
そんなヒナタを見たナルトは、目で返事だけをすると軽く頷く。
ほとんどのメンバーは、そんなやり取りに目を向ける事はなかったが、唯一人...シカマルだけは複雑そうな顔をして、二人を見ていた。
この中忍試験...その間に起こる木の葉崩し...それをきっかけにシカマルがナルトに授けた策が実行される。
それはナルトの夢に繋がるのかも知れないが、人柱力を失うことになる里にとっては大打撃である。
なによりも、ナルトとの別れを意味する...
今からでも説得すべきか...
そんなシカマルの心情を理解してか、ナルトはシカマルに近づくと肩に手を置いた。
シカマルはナルトの目を見ると、苦笑する。
説得は無理だと、納得してしまったのだ。
それほど、ナルトの目は揺るぎのない強い目をしていた。
そんなやり取りの中、キバがナルト達を挑発してくる。
「俺達は、相当修行したからな。お前らにゃ負けねーぜ。」
「.........。」
だが、サスケはもとより、サクラも...それどころか、挑発に乗ることを期待していたナルトすら反応を返さない。
「って、無視かよ...」
思わず、ツッコんでしまうキバ。
「いや...それだけ自信をつけてるんだ。相当頑張ったんだろう?期待してるってばよ?」
「あ?あ、ああ...」
ナルトの予想外の言葉に、思わず頷いてしまうキバ。
(こいつ...こんな落ち着いたキャラだったか?)
ナルトの様子に違和感を感じるキバ。
後になってから、上から目線で語られていることに気付いて憤慨する事になるのだが...
そんな同期で騒ぐナルト達を、見兼ねた一人の忍が接触してきた。
薬師カブトである。カブトは中忍試験の心構えや、態度、情報をナルト達に教える。
「ここに集まった受験者達は、各国から選りすぐられた下忍のトップエリート達なんだ。そんなに甘いもんじゃ無いですよ?」
最後にカブトは、そう言って締めた。
静まり返るナルトの同期たち...
「おい、ナルト...お前やっぱり変だぞ?」
キバが真っ先に口を開く。
だが、それはカブトの言葉によるものではなかった。
「変って何が?」
ナルトが聞くと、
「お前、いつもだったら、こんな風に沈黙が訪れると真っ先に騒ぎ出してたろ。例えば、受験生達に大声で名乗った挙げ句に、てめーらにゃあ、負けねーぞ!とかって言ったりして。」
「うっ...!?」
ドンピシャだった...
キバの台詞は正に、前世のナルトが確かにこの試験で言ったもの...
今のナルトにとっては、黒歴史に近い...
「そうよ、アカデミー卒業間近から、急に大人しくなった気はしてたけど、今日はいつにもまして冷静...と言うかちょっと大人っぽくて、カッコい...じゃない...とにかく変よ。」
いのもキバの言葉に便乗する。
周りを見れば、シノやチョウジ...事情を知らない者も同意見の様だ。
(案外...こいつらはこんなに昔から俺の事をしっかりと見てくれていたんだな...)
ナルトは、自分の同期達が自分の事を、これほど見てくれていた事に嬉しくなった。
(この事に、最初から気付いてさえいれば...前世でも、俺は火影なんて目指す必要はなかったのかも知れねぇな...)
「ぷ...あはははははははははは...」
ナルトはなんだか可笑しくて大声で笑ってしまった。
「おい、笑うんじゃねえ。」
キバはムキになって騒ぐ。
「いや...別にキバを笑った訳じゃ無ぇってばよ。」
ようやく笑いが治まったナルトは、キバを宥めると、
「ありがとな、キバ。俺を心配してくれて...」
ナルトはそう言って、屈託なく笑った。
その純粋な笑みを見たキバを含む同期たちは、思わず赤面してしまう。
こんな無防備な笑顔を、向けられる事などそうは無い...
(やっぱり、ナルトのヤツ...変わったわ...チェックしとこうかしら...)
いのは、ナルトに少しやられた様だ...
その後、音忍によるカブトへの襲撃があり、そして...
「静かにしやがれ、どぐされヤローどもが!」
第一の試験が始まった。
試験官、森乃イビキによる筆記試験。
因みに、ナルトとヒナタは隣の席である。
「よろしくな、ヒナタ。」
「うん。」
軽く挨拶をかわす二人。
ナルトも、今回は余裕があった。
ナルトは、上忍になるためにイルカから無理矢理詰め込まれた知識がある。
それなりに自信があった。
流石に、前世のように無回答で突破する気は無い。
(とは言え...保険はかけとかねぇとな...)
ナルトは、この中忍試験の第一の試験が筆記試験だと知っていたため、予め影分身を変化させて小さな虫になり、サクラの答案を見れるように、細工をしていた。
影分身が体験したものは、オリジナルに還元されると言う、影分身の特性を使ったカンニングだ。
万が一、自力で解けなかった時の為に用意した。
そして...
(あっぶねー...本当に分からないのが何問もあったってばよ...そういやぁ...あの地獄の勉強から何年も経ってるもんな...覚えてないのもあるか...ハハハ...)
ナルトが冷や汗を流す中、最後の問題が始まった。
イビキは、問題を出す前に受験者に条件を出した。
最後の問題を受けて間違った場合は、二度と中忍試験を受けられないと。
それが嫌なら辞退しろと忠告するイビキに、一人...また一人と受験者が辞退していく。
(それにしても...こうして別の視点でイビキの試験を見てると...スゲー嫌らしい試験だってばよ。)
ナルトは、下忍としてでは無く試験官としての視点で今回の試験を考えていた。
流石に尋問、拷問のスペシャリストと呼ばれるだけあって、人の心理を付いた嫌らしい試験だ。
ナルトはそう考えていた。
そして、規定の時間が過ぎた。
イビキはこの問題のネタばらしを始める。
「受けるを選んだ君たちは、難解な第10問の正解者だと言っていい。これから出会う困難にも立ち向かって行けるだろう...入口は突破した。中忍試験...第一の試験は終了だ。君達の健闘を祈る。」
最後にイビキは、合格した受験者達を讃える言葉を口にする...と同時に、窓を割って乱入して来た者がいた。
みたらしアンコ...第二の試験の試験官である。
(.........そう言えば、この頃はアンコは痩せてたんだよなぁ...)
アンコの空気の読めない派手な登場に周りが固まる中、ナルトは全く別の事を考えていた。
「57人!イビキ...19チームも残したの?」
イビキから残りの受験者数を聞いたアンコが、驚く。
それでも、ナルトの前世の時よりも少ない...それはナルトの言葉が無かったからだろう。
「今回の第一の試験...甘かったのね!フン...まあ、いいわ。次の第二の試験で半分以下にしてやるわよ。」
アンコは、合格した受験者達に向かってサディスティックな笑みを浮かべて言い放った。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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