逆行したナルトの物語 完結   作:アーク1

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第二の試験開始

第二の試験の担当試験官『みたらしアンコ』の先導のもと、第一の試験をクリアした受験者達は、第44演習場...通称「死の森」にやって来た。

 

第二試験の内容について、アンコが説明を始める。

 

それは、巻物の奪い合い...

それぞれのチームには、「天の書」「地の書」のどちらかが配布され、それらを奪い合い、両方の書を揃えて中央の搭まで行くというもの...

 

また、この試験以降は死ぬこともあるため同意書にサインを求められた。

 

今回はナルトが騒いでいないため、アンコがクナイを投げる等のイベントも無く、淡々と話が進んでいく。

 

そして...

 

「これより...中忍選抜、第二の試験...開始。」

 

アンコの開始の合図とともに、各々の入口から一斉に受験者達が行動を開始する。

 

それぞれが死の森に入ってしばらくすると、あちらこちらから、人の悲鳴が木霊した。

 

それは、受験者達の悲鳴...同じ受験者に襲われた者...

逆に返り討ちに会った者...

或いは、死の森に生息する猛獣などに襲われた者...

 

受験者たちは、早くも第二の試験の洗礼を受けていた。

 

そして、ナルト達の所にも襲撃者が現れる。

 

隙を窺う雨隠れの忍。

だが、なかなか隙を見せないナルト達に業を煮やした襲撃者は、正面から巻物を奪おうと襲ってきた。

 

ナルト達を、所詮はアカデミーを卒業したばかりの新人...と侮っていた事もある。

 

サスケの迎撃により、襲撃者の撃退に成功した。

 

だが、敵の気配は他にもあった。

 

サスケはナルト達に目配りをすると、

 

「一旦、三人がバラバラになった場合、例えそれが、仲間であっても信用するな。敵が変化の術で化けて、こちらの油断を誘う可能性がある。」

 

「念のため、合言葉を決めておく。いいか...合言葉が違った場合は、どんな姿形でも敵とみなせ。」

 

そう言って合言葉を二人に教える。

 

「よく聞け...言うのは一度きりだ。

忍歌『忍機』と、問う。その答えはこうだ...」

 

"大勢の敵の騒ぎは忍よし、静かな方に隠れ家もなし、忍には時を知ることこそ大事なれ、敵のつかれと油断するとき"

 

「.........サスケ...もう一回頼む...」

「ナルト...あんたね...」

「一回だけだと言ったろ...巻物は俺が持つ...」

 

三人が少しの間話し合いをしていると、突然暴風が三人を襲う。

 

その風に吹き飛ばされ、バラバラにされるナルト達。

 

暴風が止んだ後、サスケは茂みに隠れて、敵の次の動きを待った。

そこに、サクラが合流する。

 

サスケの合言葉に、サクラは左手を胸に当てながら、淀み無く答える

 

サスケは、その「答え」にサクラを本人と認めた。

 

しばらくすると、ナルトが合流してくる。

 

「痛ぇ...おい、みんな。大丈夫か?」

 

笑いながら近づいてくるナルト。

 

「ナルト、ちょい待ちなさい。合言葉...」

 

そのナルトにサクラが合言葉を聞く。

 

「分かってるって...『大勢の敵の騒ぎは忍よし、静かな方に隠れ家もなし、忍には時を知ることこそ大事なれ、敵のつかれと油断するとき』」

 

ナルトもまた、淀み無く答える。

 

その答えを聞いた時、サスケはナルトに向かって躊躇無くクナイを投擲する。

 

「うわぁ!」

そのクナイをかわすナルト。

 

「ちっ...今度は俺の攻撃を避けるほどのヤツか...」

 

敵の強さに、警戒心を強めるサスケ。

サクラもまた、油断無く構えていた。

 

「よく...わかったわね...」

 

二人の様子に、騙すのは無理だと判断した襲撃者は、変化の術を解く。

 

音隠れの忍の襲撃者は、サスケになぜニセモノとわかったのか尋ねた。

 

「この状況は、演習場に入る前から想定していた。」

 

サスケは、演習場に入る前の待機時間の会話を思い出していた。

 

「サスケ...この試験は、チームの人間以外は全てが敵だってばよ。」

 

「ああ...」

 

「もし、なんらかの方法で俺たちがバラバラになった場合、本人と確認するための合図を考えておいた方が良いってばよ。」

 

「合言葉でも考える?」

 

ナルトの話しを聞いたサクラは、ナルトに提案した。

 

「いや...合言葉は...俺が覚えられる自信が無ぇってばよ...」

 

「え?ナルト...あんた、頭が悪いのは演技じゃ無かったの?」

 

「ハハハ...面目ないってばよ。」

 

ナルトは、自分が勉強が得意でないことを笑って誤魔化しつつも認めた。

 

「だから、合言葉はなんでも良いんだ。重要なのは、それじゃなく...『左手を胸に当てること』これをしながらその時決めた合言葉を覚えられる範囲で答える。それをもって合図にしようと思うんだ。」

 

サスケは、ナルトの提案に頷いた。

上手くすれば、これを逆手にとって敵を嵌める事が出来るかもしれない...そう考えた。

 

そして、その時は訪れる。

 

敵が、地面で自分達の会話を聞いていることに気付いたサスケは、わざと合言葉を教えた。

 

それを得意気に、何もせずにそらんじた者はニセモノ...つまりはそう言う事だった。

 

「お前の合言葉は正解だが...足りてなかったのさ...」

 

サスケの言葉に、何となく理由を察した襲撃者。

 

「なるほど...つかれも油断もないってわけね...思った以上に楽しめそうね...」

 

だが、襲撃者は特に気落ちする様子は無く、むしろ楽しそうに答えた。

 

一方、同じく風に吹き飛ばされたナルト...

吹き飛ばされた場所で巨大な蛇に襲われるが一瞬で片付けると仙人モードになり、サスケ達を捕捉していた。

 

「さて...サスケもサクラちゃんも、前の世界でのこの時点より、実力は高いけど...流石に大蛇丸相手じゃ荷が重いってばよ。」

 

ナルトは急ぎ、サスケ達の元へ向かった。

 

そしてサスケ達はと言うと... 

 

音隠れの忍に扮した大蛇丸と対峙していた。

 

「私たちの『地の書』欲しいでしょ?君たちは『天の書』だものね?」

 

サスケ達の班が何の巻物を所持しているか把握している大蛇丸は、そう言って地の書を見せびらかした後、地の書を丸飲みした。

 

そして...

 

「さあ...始めようじゃない...巻物の奪い合いを...『命懸けで...』」

 

その瞬間、大蛇丸からとてつもない殺気が放たれた。

 

一瞬で自分の死をイメージさせられたサスケは、そのあまりに濃密な殺気に思わず吐いてしまう。

 

サスケは、サクラの無事を確かめる...

すると、サクラもまた先程の殺気に身体を震わせていた。しかし、サスケより軽症のようで両の足で立ち、クナイを構えて大蛇丸をにらんでいた。

 

(どう言うことだ?)

 

自分は金縛りにあったかの様に動けなくなっていると言うのに...なぜサクラは立っていられるのか...

こんな状況だと言うのに、恐怖よりも疑問がサスケの頭を支配していた。

 

(へぇ...私の殺気に耐えられるなんてね...この子もちょっと興味深いわね...)

 

大蛇丸もまた、サクラの様子に興味を抱いた。

 

そしてサクラは...ナルトとの修行を思い出していた。

 

 

中忍試験が始まる前の日...

軽く修行をした後、ナルトが話し始めた。

 

「ヒナタ...サクラちゃん...明日の中忍試験は、かなり大変な物になると思う。おそらく死人も出るような試験になるハズだってばよ...」

 

「そ...そんなに?」

 

ナルトの言葉に少し怖じ気付くサクラ。

 

「じゃあ、止めとくか?サクラちゃん。」

 

ナルトの挑発に、首を振って否定するサクラ。

 

その言葉を満足そうに聞くナルト。

ナルトは、話を続ける。

 

「まあ、そんな試験だ...おそらく中には殺しを主な目的とした忍も来てるだろう。だから...」

 

「だから?」

 

「最後に、二人には俺の殺気に耐える修行をしてもらうってばよ。」

 

「それは、必要なことなの?ナルト君...」

 

ヒナタがナルトに聞き返す。

 

「中忍試験で必ず必要か...それはわからない...でも...こういう事態はいつ起きるかわからねぇ...本気の殺意には相手の身体を硬直させたり、戦意を挫いたり、判断を鈍らせたり...相手にいろんな影響を及ぼす...それは、そのまま自分の死を意味するようなもんだ...これに耐えるには慣れて貰うしか無いんだってばよ...」

 

ヒナタとサクラは神妙に頷いた。これまでの任務や演習で心当たりがあったからだ。

 

「ただ...明日の試験を考えて、やるのは1度きりだ...それ以上は明日に差し支えるだろうしな。じゃ...始めるってばよ。」

 

その言葉の後、ナルトから放たれた殺気に、サクラもヒナタも腰を抜かしてしまった。

 

サクラに至っては、あまりの恐怖に涙を流し、失禁までしていた。

 

すぐに殺気を収めるナルト。

 

二人に謝り近付くと、二人とも我先にとナルトにすがり着いた。

 

殺気を放って、二人を威圧したのはナルトなのだが、ナルトは既に殺気を収めていた。

 

とにかく二人とも何か、すがり付くものが欲しかったのだ。

 

それほど恐ろしかった。

 

「怖がらせてゴメンな...でも、きっと二人にとってこの経験は役に立つときが来るから...」

 

ナルトは、もう一度謝ってから、二人が落ち着くまでそのまま好きなようにさせていた。

 

落ち着いた後に、サクラに殴られるだろうな...と、戦慄していたが...

 

 

サクラは、その時のナルトの言葉が痛いほど理解できた。

 

サスケですら、嘔吐し地面にヘタリ込んでいるのだ...

 

おそらく、何も知らずに自分が受けていたら、昨日と同じ事になっていたハズだ。

 

そんな状況で襲われたら、ひとたまりも無い。

 

こうしてまだ立っていられるのも、ナルトの殺気を経験していたからだ。

 

そして、サクラの様子に奮起したサスケもまた、身体にカツを入れてヨロヨロと立ち上がる。

 

サクラに負けている訳にはいかない...

 

サスケのプライドが、大蛇丸の殺気による恐怖をかろうじて上回ったのだ。

 

「ふふ...私の殺気に耐えて立ち上がれた事は、評価するわ...でも...立ち上がれただけじゃ...ね...」

 

大蛇丸はサクラを無視し、立ち上がったサスケに攻撃を加えた。

 

「ぐっ...」

 

まだ、先程のショックから抜けきれていないサスケの動きは鈍い。

大蛇丸の攻撃に為す術無く吹き飛ばされるサスケ。

 

更に大蛇丸が攻撃をしようと、サスケを追いかける。

 

その時...

 

サスケと大蛇丸の間に、手裏剣が刺さった。

 

「悪いな...サスケ...合言葉は...忘れちまったぜ...」

 

二人の間に手裏剣を投げた人物...ナルトは、左手を胸に当てながら、そう言って笑った。

今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。

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