逆行したナルトの物語 完結   作:アーク1

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ナルトVS大蛇丸

「悪いな...サスケ。合言葉は...忘れちまったぜ...」

 

ナルトは、そう言いながら状況を整理していた。

 

相手は間違いなく大蛇丸。

対してサクラ、サスケ両者とも目立った傷は無い。

 

「二人とも...大丈夫か?」

 

「うん...ナルト...ありがとう。」

 

サクラはナルトが来たことで安心した。

これまでの任務でもナルトが来れば、大丈夫と言う信頼があった。

 

一方サスケはと言うと、サクラの様には余裕が無かった。なんとか立ち上がる事は出来たが、先程の殺気によるショックはまだ残っており、冷静に考える事が出来なくなっていたのだ。

 

(ダメだ...このままじゃ三人とも殺される...あの殺気は、カカシより遥かに上だった。コイツは間違いなく腕もカカシより...)

 

サスケはこの場を見逃してもらうため、

 

「巻物ならお前にやる。頼む...これを持って、引いてくれ。」

 

そう言って巻物を差し出す。

 

「なるほど...センスが良い..."獲物"が"捕食者"に期待できるのは、他のエサで自分自身を見逃して貰うことだけですものね。」

 

相手の言葉を了承と受け取ったサスケは、巻物を相手に向かって投げた。

 

だが、その巻物は途中で別の人物にキャッチされてしまう。

 

「ナルト...余計な事をするな!」

 

恐怖と不安から、巻物を渡す邪魔をしたナルトに向かって声を荒げるサスケ。

 

だが、ナルトはあくまで冷静に答える。

 

「サスケ...落ち着け。アイツに巻物をやったからって、アイツは俺たちを見逃すことなんてしないってばよ。」

 

ナルトの言葉に可笑しそうに笑った大蛇丸。

 

「この場にいるって事は、あの大蛇を倒してきたのね...ナルト君...」

 

「そして...正解よ?巻物なんて、殺してから奪えば良いんだもの...」

 

その瞬間、大蛇丸からまたも凄絶な殺気が放たれる。

先程受けたばかりなため、多少の耐性は着いていたが、それでも身体の震えは止まらない。

 

そんなサスケにナルトは、

 

「サスケ...大丈夫だってばよ。俺の仲間は、絶対に殺させたりなんかしねぇ。」

 

ハッとするサスケ。

 

その言葉は、波の国で再不斬の殺気に怯えるサスケに向かってカカシが言った言葉と同様だった。

 

(情けねぇ...俺はあれから何も成長してねぇってのか?)

 

「フン...お前に守って貰うほど俺は落ちぶれちゃいねぇ。」

 

サスケは、気合を入れるとナルトに反発するように言い放つ。

 

不思議と身体の震えは止まっていた。

 

サスケの様子を見たナルトは、口角を上げると、

 

「ああ...だけど...サスケは巻物とサクラちゃんを頼むってばよ。俺もコイツ相手に巻物を死守しながら戦うのは厳しいからな...」

 

サスケにそう頼んだ。

 

「ちっ...わかった。ナルト...負けるなよ?」

 

サスケは、ナルトに頼られたのが少し嬉しかった。絶対に口にはしないが...結局、舌打ちをしながらもナルトを激励する。

 

「当たり前だってばよ。」

 

二人のやり取りを大蛇丸は興味深そうに見ていた。

 

自分の殺気に耐える所か、まるで堪えた様子の無いナルト...

 

そのナルトへの反骨心からか、怯えから立ち直ったサスケ。

 

(特に、このナルト君...この子は少し妙ね...カブトからの資料によると典型的な落ちこぼれって話だったけど...この状況で落ち着きすぎだわ...)

 

「作戦会議は終わったかしら?」

 

(とりあえず、一当てして様子を見ましょうか...元々の目的はサスケ君の方だしね...)

 

「ああ...待っててくれたのか?そいつはサンキューだってばよ。まあそう言う訳で...お前の相手は俺だってばよ。」

 

大蛇丸の言葉に、ナルトはそう返すと九尾仙人モードになる。

 

「な...!?」

 

その姿...いやその内包する強大なチャクラに驚く大蛇丸。

 

(これは一体...これは九尾のチャクラ?...いえ...あり得ないわ。九尾は憎しみの塊。こんな風に安定して纏うなんて出来るハズが無い...それに、仙人化もしている?自然エネルギーも混じっている気がするわ...)

 

「来ないのか?なら...こっちから行くってばよ。」

 

ナルトの言葉を聞いた大蛇丸。

驚きはあったが警戒を怠っていたわけではない。

 

だと言うのに、ナルトの姿を見失ってしまった。

 

ナルトを捕捉したときには、ナルトは既に大蛇丸の目の前にいた。

 

「おらぁっ!」

 

ナルトの掛け声と共に、渾身の拳が大蛇丸にヒットする。

 

「ぐはっ...」

 

予想外の出来事に受け身も取れずに吹き飛ぶ大蛇丸。

何本もの木に激突し、ようやく制止した。

 

「ぐっ...なんて力...それに速さも...あの子は一体...」

 

「考えている暇は無いってばよ?」

 

「くっ...」

 

すぐ目の前にナルトがいた。

その声に反応し、一瞬で印を結び、術を発動した大蛇丸...その反応の速さは流石としか言いようが無い。

 

大蛇丸の発動した術を食らい、粉塵に包まれるナルト。

 

だが...咄嗟に放った術ではチャクラの練り込みが足りない...

大蛇丸としても不本意な威力の術であった。

 

故に...

 

「この程度の術じゃ...このチャクラの衣の突破は無理だってばよ?」

 

粉塵が晴れた時...そこには無傷のナルトが立っていた...

 

大蛇丸は、その結果を予想しており立て続けに術を連発する。

 

ナルトは、それを防ぎ...或いは避けてチャクラの腕を飛ばして反撃する。

 

「ハァ...ハァ...ハァ.........。」

 

戦いは、ナルトがやや優勢だった。

 

大蛇丸は次第に防戦一方になっていき、息を切らせる。

 

「凄ぇ...ナルトのヤツ...こんなに強いヤツだったのか...」

 

「うん...ナルトが強いのは知ってたけど...まさかここまで強いなんて思わなかったわ...」

 

ナルトの本気の戦いを初めて目の当たりにするサスケとサクラは、あまりのレベルの違いにそんな感想しか出て来なかった。

 

ずっとナルトに劣等感を抱いていたサスケをして、素直に感心するしかなかったのだ。

 

二人の見守る中、ナルトと大蛇丸は、一旦距離を取る。

 

「ここまでだな...」

 

「ハァ...ハァ...ハァ.........そうね...」

 

二人は、戦いを止めると話し始めた。

 

「ナルト君...提案があるのだけど...」

 

「聞くってばよ?」

 

「ここで、退かせてもらえないかしら...」

 

そう言うと、飲み込んでいた地の書を取り出した大蛇丸は、

 

「これをあげるわ?それで今回は手打ちってことにして欲しいのよ...」

 

地の書をナルトに向かって放る大蛇丸。

 

飲み込んでいたハズのそれは、しかし汚れも無く綺麗なままだった。

 

「ナルト!?聞くな。コイツはここで始末した方が良い。何をするかわからないぞ!」

 

サスケが大蛇丸の提案を拒否するようナルトに大声で叫んだ。

 

「そうよ...はっきり言って、ソイツは異常よ?今のうちに倒しておいた方が良いわ。」

 

サクラもサスケに同意見だった。

 

しかし...

 

「良いってばよ...今回は見逃しておく。」

 

ナルトは了承した。

 

「な?」

「どうして?」

 

驚く二人。

 

「ふふ...まだ試験は始まったばかり。お互いここで消耗し過ぎる訳にはいかないものね...」

 

大蛇丸は理解していた。一見、優勢に見えるナルトだが、実はナルトも限界に近い事を...

 

ナルトがこの時代に逆行してきて数ヵ月...身体に慣れるように修行は続けていたが、本当に全力で戦うのは今回が初めてだった。

 

結果、ナルトの身体はその動きに付いていけずあちこちが悲鳴をあげていた。

 

それは九尾の回復力を以てしても、回復出来ない程に...

 

「さっさと行くってばよ...」

 

ナルトは大蛇丸に動く様促す。

 

「わかってるわ...でも...置き土産位残さないと...ね...」

 

大蛇丸はそう言うと、首を伸ばしてサスケに迫る。

 

大蛇丸の歯がサスケの首に突き立てられ...る事は無かった。

 

ナルトが伸ばしたチャクラの腕が、大蛇丸の頭を押さえていたのだ。

 

「約束は...守って貰うってばよ?」

 

ナルトは油断していなかった。

 

(サスケに呪印を施させるわけにはいかねぇってばよ...)

 

「.........仕方ないわね...ナルト君...この借りはまたいずれ...」

 

ナルトが大蛇丸の頭を放すと、大蛇丸はすぐに元に戻し残念そうに呟いて姿を消した。

 

大蛇丸の気配が遠ざかったのを確認したナルトは力を抜くと、

 

「二人とも、無事で良かったってばよ。」

 

サスケとサクラに笑いかけ、そのまま意識を失うのだった。

今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。

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