ヒナタは、ナルトの様子がおかしいことに気付いていた。
ナルトはイルカの指示で先に帰ることになった。
それでも、ナルトを心配したヒナタは学校が終わるとナルトを探して町を駆ける。
ナルトの家に寄ってみたが、ナルトがいる気配は無い...
辺りが夕暮れ時に差し掛かった頃、もしかしたらという思いで、ナルトがよく修行をする川原に向かった。
そこにナルトはいた。
ヒナタは声をかけようかどうか迷う。
それは、自分が毎日見てきたナルトと、今、自分が見ているナルトの雰囲気がまるで違っていたからだ。
今まで自分が見てきたナルトは、落ちこぼれと言われて、周りから白い目で見られて...それでもその状況を変えようと、がむしゃらに努力していた。
自分はその姿に憧れ、またそんなナルトを見ていると勇気が出た。
日向家で...落ちこぼれと言われている自分...
ナルトを見ていると、そんな自分でも変われるんじゃないか...そんな気がした。
でも、今のナルトは迷子になって途方に暮れた幼子の様な...まるで今にも泣き出しそうな表情を浮かべている。
そのナルトは、おもむろに手裏剣ホルダーから数枚の手裏剣を取り出すと、丸太に向かって投擲した。
その軌道やスピードはとてつもなく、アカデミーで一番のうちはサスケの手裏剣術を遥かに上回る様に見えた。
「凄い...」
思わず感想を口にしてしまうヒナタ。
「誰だ!」
ナルトはその声に反応し、一瞬でヒナタの元に辿り着く。
「ヒナタ...」
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ヒナタを見つけたナルト。
(そう言えば、よく俺の修行を見てたって言ってたっけ...それにしても...下忍にもなってない子供の気配にも気付かないなんて...)
自分が、あまりにも腑抜けていると改めて思い、気を引き締めると、ヒナタに声をかける。
「俺に何か用でもあるのか?」
「えっと...あの...その...」
突然目の前にナルトが現れた事で緊張したヒナタは、なかなか言葉を出すことが出来ない。
(そう言えば、昔のヒナタってこんな感じだったってばよ...懐かしいな...)
ナルトはヒナタの様子に、思わず小さな笑みを浮かべた。
一方、ヒナタは時間が経って落ち着いて来た。
いつものナルトなら、あたふたして結局何も言い出せない自分に呆れて帰ってしまうのに、今日はジッと待ってくれている。
その事で余裕が出来たヒナタは、自分の思考を纏めると話始めた。
「あの...今日のナルト君...いつもと様子が違ったから、心配で...」
「.........そっか。」
ヒナタの言葉を聞いたナルトは、この時代に逆行して以来、初めて心の中に暖かい物を感じた。
この時代にも自分を気にかけて、心配してくれる人がいた。
それがヒナタだったことが何よりも嬉しかった。
「それで...ナルト君...その...何かあったのかな?」
ナルトは、一瞬話すべきか迷った。
信じて貰えるような話では無いし、何よりもヒナタにとっては自分が不幸になる未来の話になる。
ナルトは、少しの間悩み...しかし決断した。
「俺の話...聞いてくれっか。ヒナタ。」
「うん。」
それは...『うずまきナルト』と言う人間の生涯だった...。
生まれてすぐ、里の為に九尾を封印され、ナルト=九尾として里の大人達から迫害を受けてきた。
そんな里の者たちに認めてもらいたくて、小さな頃から火影を目指した。
やがて少年は成長し、周りの者たちもナルトを認め始める。
やがて少年は里を救い、世界を救うほどの忍へと成長した。
ずっと夢だった火影になり、憧れていた家族も手に入れた。
火影になってからは里の為に働き続けた。
そして...
うずまきナルトは、里の人間に殺された。
妻であるヒナタや娘のヒマワリを道連れに...
「それ...本当の話...なんだよね?ナルト君...」
「...ああ。」
ヒナタはナルトの話を真剣に聞いていた。
未来から来たと言う話には当然驚いた。
その話の中で自分がナルトと一緒になれたと聞いて嬉しかった。
ナルトが火影になれたと聞いて誇らしかった。
だが、その結末を聞いたヒナタは...泣いていた。
なんて悲しい物語なのだろう...
ナルトがどれだけ努力をしてきたか...この時代のナルトを見続けてきたヒナタには手に取るように理解できた。
だが、悲しむヒナタにナルトは、驚く言葉を口にする。
「だから、もう...俺には近づかない方が良いってばよ。」
「えっ!?...ど、どうして?」
ヒナタは、突然告げられたナルトの言葉に驚き、固まった。
「言ったろ?未来でヒナタは俺と一緒になったせいで殺されたって。だから、このまま俺の近くにいればきっと...だから...サヨナラだってばよ。」
ナルトは、そう言って離れようとした。
ヒナタはそんなナルトの表情を見て思った。
今のナルトを一人にしてはいけない。
「ナルト君!」
ヒナタはナルトを抱き締めた。
「は、離してくれってばよ。」
「嫌...ナルト君を一人になんて絶対にさせない。」
ヒナタは強い口調でナルトに告げる。
「ナルト君...気づいてないでしょ?ナルト君、泣いてるよ?」
「えっ?」
ナルトは、自分の頬に手を当てる...
触れた手は、涙で濡れていた...
「ナルト君が私を心配してくれるのは嬉しいよ?でも、私だってナルト君が心配だよ。だって...私は...ナルト君が大好きだから...」
ヒナタの姿に...未来のヒナタがダブって見えた。
「辛かったよね、ナルト君...泣いて良いんだよ?」
「あっ...ううぁ...うああああああああああっ」
ナルトは泣いた。ヒナタにしがみついて...大声で...子供のように...
それからしばらくして、辺りはすっかり暗くなっていた。
「ハハッ...良い年した大人が、子供に泣きつくなんてな...はずかしいってばよ...」
ナルトは落ち着きを取り戻していた。
「ねぇ...ナルト君...」
「うん?」
「ナルト君は、これからどうするの?」
ナルトが落ち着くまで、ずっとナルトを抱き締めていたヒナタは、顔を紅くしながら、ナルトにこれからの事を尋ねた。
「...九喇痲にも聞かれたんだけど...何も思い付かねぇんだってばよ。俺は前世で火影になるために頑張って、火影になってからは火影として頑張って来た。でも、俺はもう...火影を目指したいとは思えないんだってばよ...だけど...俺から火影を取ったら、な~んにも無かったんだ。だから...正直どうしたら良いか...」
ナルトは今の気持ちを正直に告げる。
「ねえ...ナルト君。ナルト君は、前世で後悔したこととかは無かったの?」
「そりゃあ、あったさ。助けられなかった人...救いたかった人...そして何より...家族を守れなかったこと...」
ナルトはヒナタやヒマワリの最後を思い出していた。
その思いを聞いたヒナタは一つの提案をする。
「ねぇナルト君。だったら、今回は家族の為に生きてみようよ。ナルト君が一番守りたい物を守れるように...」
「家族の為?」
「そう。わ、私も協力するから...」
そう言ったヒナタの顔は真っ赤に染まっていた。
「ハハッ...ハハハハハハハハ...」
「や、やっぱりおかしいかな?」
「いや。おかしくなんかないってばよ...ただ...こんな簡単な事にも気づけなかった自分が笑えただけだ...そうか...そうだな...俺は守りたい...今度こそ。俺の家族を。」
ヒナタの提案を聞いたナルトは、吹っ切れたように清々しい表情をして自分の思いを口にした。
「ヒナタも協力してくれるか?」
「もちろんだよ?」
「じゃあ、ヒナタ...俺たちが大きくなったら...結婚してくれ。」
「はい。...はい?」
思わず返事をしてから、ヒナタは何を言われたのか気づいて固まってしまう。
「ヒナタ...俺はもう一度...ヒナタと家族になりたい。だから...結婚してくれ。」
もう一度、ナルトは真剣な表情でヒナタにプロポーズした。
「えっと...その...ほんとに...私なんかで...良いの?」
「ヒナタが良いんだ。」
「...はい。ふつつかものですが...よろしくお願いします。」
「ありがとう。ヒナタ。愛してるってばよ。」
ヒナタの返事を聞いて、嬉しくなったナルトはヒナタを抱き締めて口づけをした。
「な、な、な、なナルトくん...い、いま...私...きゅう~」
「ひ、ヒナタ?しっかりしろってばよ~」
ナルトの口づけを受けたヒナタはあまりの嬉しさに気絶してしまった。
もともと上がり症なのを、ナルトを元気付けるために、無理して気を保っていたのだ...
ナルトのプロポーズと口づけで限界を超えてしまったのだった。
その様子をナルトの中から見ていた九喇痲。
「ふん...一週間もいらなかったな。」
独り言のように呟いた。
ありがとう...ヒナタ。お前のお陰で、俺が目指すべき目標が出来たよ。
この生は家族の為に...
ナルトは、改めて自分の今生の目的を胸に決意した。
例え、逆行して人生をやり直しても...目標が変わっても...
真っ直ぐ...自分の言葉は曲げねぇ。それが俺の忍道だってばよ。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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