逆行したナルトの物語 完結   作:アーク1

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ナルトVSネジ 後編

「何...勝った気になってるんだってばよ...運命を変える所を見たいって言ったのは、お前だろ。」

 

ネジの『柔拳法八卦六四掌』を無防備にくらい、チャクラを封じられたナルト...ヨロヨロと立ち上がり...しかしナルトは笑いながらネジに言った。

 

「強がるな...もはやお前に勝ち目など無い。」

 

「見せてやる...運命ってヤツに抗い続けて得た俺の力ってやつを...」

 

(やるぞ!九喇嘛...)

 

『待ちくたびれたぜ!』

 

「ハァァァァァァ!」

 

ナルトは、チャクラを練ろうとする。

 

「無駄なことは止めろ...全ての点穴を突かれた今、お前はチャクラを練る事は...何!?」

 

チャクラを練る事は出来ない...そう断言しようとしたネジだったが、その言葉は途中で止まってしまう。

 

何故なら、ナルトからチャクラが漏れだしていたからだ。

 

さらに、八卦六四掌によって受けた傷も塞がっていく。

 

「バカな...お前は一体...」

 

「俺は...生まれた時に、腹の中に九尾を封印された人柱力...物心がついた時には、木の葉の大人たちは、ほとんどが俺を化け物として見ていた。俺は、その運命に抗う為に戦い続けて、今では九尾とも和解した...それが...」

 

九尾チャクラモードとなるナルト。

 

「この姿だってばよ。」

 

ナルトは、このために敢えて八卦六四掌を受けた。

 

ネジの価値観を壊すためには、実際に見せた方が良いと考えたのだ。

 

「さぁて...お前が言う運命を変える所を...見せてやるってばよ...」

 

ナルトは、そう言って走り出した...

 

「な!?速い...」

 

あまりの早さに、ナルトを見失ってしまうネジ。

 

狭い試験場で、ほとんどの空間を認識するネジの白眼を持ってしても、その姿を捉えることが出来なかった。

 

「こっちだってばよ!」

 

ナルトの攻撃を受けて、吹き飛ぶネジ。

 

「くっ...落ち着け...例えこの眼で捉えられなくても...向こうも近接戦が得意な忍だ。攻撃が当たる瞬間に感覚を研ぎ澄ませて、回天でいなす。」

 

ネジは、回天の力でナルトの攻撃にカウンターを当てる事を考えた...

 

「今度はこっちだってばよ。」

 

「今だ...『回天!』」

 

まさか、回天でカウンターを合わせるとは思わなかったナルトは、まともに回天を喰らってしまう。

 

「ぐっ...」

 

ナルトは、チャクラの腕を使って地面を掴み、吹き飛ばされそうになるのを止めた。

 

「流石にやるな...ネジ。だったら...」

 

『影分身の術!』

 

影分身の術を使い、四人に分かれたナルトは、ネジを囲むように四方に散った。

 

「四方から同時に攻撃する気か?無駄だ...俺の回天は全方位をガードする絶対防御術だ。」

 

「誰が同時に攻撃するって言ったんだってばよ?」

 

ナルトは、ネジの言葉を否定する。

そして...四方から、時間差で攻撃を始めた。

 

チャクラの腕を伸ばし、四方からタイミングをズラして攻撃をする。

 

全ての攻撃を避けることは出来ず、ネジは回天を使った。

 

だが、ナルトの攻撃は止まらない。

弾かれても、すぐに別のチャクラ腕がネジを攻撃した。

 

しかし、ネジの方はずっと回天を続ける訳にはいかなかった。

 

チャクラを放出し続け、回り続ける回天はチャクラもスタミナも消耗が激しい...

 

「くっ...もう...限界だ...」

 

回天の終息する時を狙われたネジは、とうとうナルトの攻撃を受けてしまった。

 

体力と、チャクラの消耗...そしてダメージによって倒れるネジ。

 

もはや、勝負は決した...

誰もがそう思ったその時...

 

ネジが立ち上がった...

 

「なんで...立ち上がるんだってばよ?お前の敗けは明白だ...お前の言葉を借りるなら...これが運命ってヤツだろ?」

 

ナルトは、敢えてネジの言葉を借りて尋ねる。

 

「知るか...」

 

なぜ立ち上がったのか...ネジ本人にも理解出来なかった。

 

どう考えても、この状況で自分がナルトに勝つことなど不可能だ...

 

今までの自分ならそう考えていたハズだ...

 

「だが...負けたくない...俺は、まだ...戦える...」

 

もはや、白眼を発動することすら出来ない身で...それでも負けたくなかった。

 

そんなネジを見たナルトは、ニッと笑った。

 

「良い眼だってばよ...白眼で何もかも悟った気になってた...この戦いを始める前のお前の眼よりずっと良い...今のお前となら...対等に戦ってやる。」

 

ナルトは、そう言うと九尾モードを解除した。

 

「良いのか?勝つチャンスだっただろうに...」

 

「言ったろ?今からは対等に戦うって。」

 

ナルトは、ネジに合わせてチャクラすら使うつもりは無かった。

 

「行くぞ...ナルト...」

 

「来い...ネジ。」

 

お互いが、激突する。その戦いはチャクラを用いず、忍術を用いず、ただただひたすらに、殴り合うだけのものだった。

 

殴っては殴られ、殴られては殴り返す...

 

防御もなく、ただただ殴る...

 

忍の戦いとはとても呼べない、原始的な戦いだった。

 

だが...お互い、ボロボロになりながらも、二人は楽しそうに笑っていた。

 

「おおおおおおおおおお...」

 

「はあああああああああ...」

 

そして...二人の戦いは唐突に終わりを告げた...

 

もともとのダメージ量...そしてスタミナ...ましてや戦闘経験すらナルトの方が有利だったのだ。

 

限界を迎えたネジは、ナルトの攻撃により静かに倒れた。

 

その身体が地面に着く寸前、ナルトがネジを支える...

 

「試験官?」

 

ナルトは試験官であるゲンマを見る。

 

それを見たゲンマは、試合の終わりを告げた。

 

「勝者...うずまきナルト。」

 

「「「「「「ワアアアアアアア」」」」」」

 

その瞬間...観客が歓声を上げた。

とても、忍とは呼べない戦いであったが、その泥臭く...それでいて熱い戦いに観客たちは熱狂した。

 

しかし、観客席のある一角...そこだけは、全く違う雰囲気を醸し出していた...

そこは、木の葉の人間たちが集まる一角...その一角は、周りが熱狂と興奮に包まれる中、逆に、沈黙に包まれていたのだ。

 

木の葉の人間たちは、初めて目の当たりにしたナルトの本当の力に、畏怖していた...

 

ナルトは、そんな会場の反応には興味がなかった。

 

その時、ネジが目を覚ます。

 

「...俺の...負けか...」

 

すぐに状況を理解するネジ。

 

「そうだな...そして...俺の勝ちだってばよ...」

 

ナルトは、そう言うとネジに肩を貸して立ち上がる。

 

「試合は終わりだ...医務室までは運ぶってばよ...」

 

まだ、足の覚束ないネジは、素直に頷いた。

 

医務室へ向かう途中...

 

「ナルト...俺は、今まで日向の憎しみの運命は変えられない...そう思ってきた...でも...お前と戦って、自分の本当の思いに気付いた。俺は、日向を変えたい...ナルト...俺は、火影になれると思うか?」

 

ネジは、ナルトに今の気持ちを伝え、尋ねた。

 

「それは...わかんねぇってばよ...」

 

ナルトは安易になれるとは言わなかった...

 

「ただ...」

 

「ただ?」

 

「初めから諦めてたら...ソイツはきっと何者にもなれやしない...俺から見ても...お前は天才だと思う...目指して努力する価値は、きっとあると思うってばよ?」

 

ナルトはそう言って笑った。

 

「ありがとう...」

 

その言葉に、ネジは綺麗な笑みを浮かべて感謝するのだった。

 

その後、医務室でヒアシから真相を聞かされたネジは、その話を疑う事もなく受け入れた。

 

「自分から話しておいてなんだが...信じるのか?ネジ...こんな話を...」

 

「ええ...今の俺には...父の考えが何となく解ります...父は...宗家を憎んでいましたが...きっと、ヒアシ様を憎んでいたわけでは無かったのでしょう...父上は...宗家の替え玉としての人生に抗ってみせたんですね...兄であるヒアシ様と...俺を守ることで...」

 

その言葉を聞いたヒアシは、思わず涙ぐむ。

 

「お前の成長を...弟に見せてやりたかったよ...ネジ...」

 

ネジとヒアシの確執は、この時完全に無くなったのだった。

 

一方、ナルトの方は...

 

正座をさせられていた...

ヒナタの説教を受けながら...

 

「ねえ、ナルト君?私がネジ兄さんと試合をするとき、無茶するなって言ってたよね?」

 

「はい...」

 

「同じことが、自分には当てはまらないのかな?」

 

「いや...決してその様な事は無いってばよ?」

 

「自分の姿を見てくれるかな?」

 

「.........。」

 

ボロボロだった...当然だ...あれだけ殴り合ったのだ...

九尾の回復力を以てしても、まだ治りきってはいなかった。

 

「何か言うことは無いのかな?」

 

「ご、ごめんなさい...」

 

ナルトが素直に謝った事で、取り敢えずナルトを許すヒナタ。

 

「ナルト君が無事で良かった...ナルト君が私を心配してくれるように、私だってナルト君が心配なんだよ?」

 

「う...本当にごめんってばよ...ヒナタ...」

 

ヒナタの言葉を聞いたナルトは、もう一度深く謝るのだった。

 

「うん...謝ってくれたから許すよ?でも...次の試合が終わるまで...そのまま正座ね?」

 

「.........はい...」

 

ヒナタは笑顔で、罰を告げるのだった。

今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。

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