「何...勝った気になってるんだってばよ...運命を変える所を見たいって言ったのは、お前だろ。」
ネジの『柔拳法八卦六四掌』を無防備にくらい、チャクラを封じられたナルト...ヨロヨロと立ち上がり...しかしナルトは笑いながらネジに言った。
「強がるな...もはやお前に勝ち目など無い。」
「見せてやる...運命ってヤツに抗い続けて得た俺の力ってやつを...」
(やるぞ!九喇嘛...)
『待ちくたびれたぜ!』
「ハァァァァァァ!」
ナルトは、チャクラを練ろうとする。
「無駄なことは止めろ...全ての点穴を突かれた今、お前はチャクラを練る事は...何!?」
チャクラを練る事は出来ない...そう断言しようとしたネジだったが、その言葉は途中で止まってしまう。
何故なら、ナルトからチャクラが漏れだしていたからだ。
さらに、八卦六四掌によって受けた傷も塞がっていく。
「バカな...お前は一体...」
「俺は...生まれた時に、腹の中に九尾を封印された人柱力...物心がついた時には、木の葉の大人たちは、ほとんどが俺を化け物として見ていた。俺は、その運命に抗う為に戦い続けて、今では九尾とも和解した...それが...」
九尾チャクラモードとなるナルト。
「この姿だってばよ。」
ナルトは、このために敢えて八卦六四掌を受けた。
ネジの価値観を壊すためには、実際に見せた方が良いと考えたのだ。
「さぁて...お前が言う運命を変える所を...見せてやるってばよ...」
ナルトは、そう言って走り出した...
「な!?速い...」
あまりの早さに、ナルトを見失ってしまうネジ。
狭い試験場で、ほとんどの空間を認識するネジの白眼を持ってしても、その姿を捉えることが出来なかった。
「こっちだってばよ!」
ナルトの攻撃を受けて、吹き飛ぶネジ。
「くっ...落ち着け...例えこの眼で捉えられなくても...向こうも近接戦が得意な忍だ。攻撃が当たる瞬間に感覚を研ぎ澄ませて、回天でいなす。」
ネジは、回天の力でナルトの攻撃にカウンターを当てる事を考えた...
「今度はこっちだってばよ。」
「今だ...『回天!』」
まさか、回天でカウンターを合わせるとは思わなかったナルトは、まともに回天を喰らってしまう。
「ぐっ...」
ナルトは、チャクラの腕を使って地面を掴み、吹き飛ばされそうになるのを止めた。
「流石にやるな...ネジ。だったら...」
『影分身の術!』
影分身の術を使い、四人に分かれたナルトは、ネジを囲むように四方に散った。
「四方から同時に攻撃する気か?無駄だ...俺の回天は全方位をガードする絶対防御術だ。」
「誰が同時に攻撃するって言ったんだってばよ?」
ナルトは、ネジの言葉を否定する。
そして...四方から、時間差で攻撃を始めた。
チャクラの腕を伸ばし、四方からタイミングをズラして攻撃をする。
全ての攻撃を避けることは出来ず、ネジは回天を使った。
だが、ナルトの攻撃は止まらない。
弾かれても、すぐに別のチャクラ腕がネジを攻撃した。
しかし、ネジの方はずっと回天を続ける訳にはいかなかった。
チャクラを放出し続け、回り続ける回天はチャクラもスタミナも消耗が激しい...
「くっ...もう...限界だ...」
回天の終息する時を狙われたネジは、とうとうナルトの攻撃を受けてしまった。
体力と、チャクラの消耗...そしてダメージによって倒れるネジ。
もはや、勝負は決した...
誰もがそう思ったその時...
ネジが立ち上がった...
「なんで...立ち上がるんだってばよ?お前の敗けは明白だ...お前の言葉を借りるなら...これが運命ってヤツだろ?」
ナルトは、敢えてネジの言葉を借りて尋ねる。
「知るか...」
なぜ立ち上がったのか...ネジ本人にも理解出来なかった。
どう考えても、この状況で自分がナルトに勝つことなど不可能だ...
今までの自分ならそう考えていたハズだ...
「だが...負けたくない...俺は、まだ...戦える...」
もはや、白眼を発動することすら出来ない身で...それでも負けたくなかった。
そんなネジを見たナルトは、ニッと笑った。
「良い眼だってばよ...白眼で何もかも悟った気になってた...この戦いを始める前のお前の眼よりずっと良い...今のお前となら...対等に戦ってやる。」
ナルトは、そう言うと九尾モードを解除した。
「良いのか?勝つチャンスだっただろうに...」
「言ったろ?今からは対等に戦うって。」
ナルトは、ネジに合わせてチャクラすら使うつもりは無かった。
「行くぞ...ナルト...」
「来い...ネジ。」
お互いが、激突する。その戦いはチャクラを用いず、忍術を用いず、ただただひたすらに、殴り合うだけのものだった。
殴っては殴られ、殴られては殴り返す...
防御もなく、ただただ殴る...
忍の戦いとはとても呼べない、原始的な戦いだった。
だが...お互い、ボロボロになりながらも、二人は楽しそうに笑っていた。
「おおおおおおおおおお...」
「はあああああああああ...」
そして...二人の戦いは唐突に終わりを告げた...
もともとのダメージ量...そしてスタミナ...ましてや戦闘経験すらナルトの方が有利だったのだ。
限界を迎えたネジは、ナルトの攻撃により静かに倒れた。
その身体が地面に着く寸前、ナルトがネジを支える...
「試験官?」
ナルトは試験官であるゲンマを見る。
それを見たゲンマは、試合の終わりを告げた。
「勝者...うずまきナルト。」
「「「「「「ワアアアアアアア」」」」」」
その瞬間...観客が歓声を上げた。
とても、忍とは呼べない戦いであったが、その泥臭く...それでいて熱い戦いに観客たちは熱狂した。
しかし、観客席のある一角...そこだけは、全く違う雰囲気を醸し出していた...
そこは、木の葉の人間たちが集まる一角...その一角は、周りが熱狂と興奮に包まれる中、逆に、沈黙に包まれていたのだ。
木の葉の人間たちは、初めて目の当たりにしたナルトの本当の力に、畏怖していた...
ナルトは、そんな会場の反応には興味がなかった。
その時、ネジが目を覚ます。
「...俺の...負けか...」
すぐに状況を理解するネジ。
「そうだな...そして...俺の勝ちだってばよ...」
ナルトは、そう言うとネジに肩を貸して立ち上がる。
「試合は終わりだ...医務室までは運ぶってばよ...」
まだ、足の覚束ないネジは、素直に頷いた。
医務室へ向かう途中...
「ナルト...俺は、今まで日向の憎しみの運命は変えられない...そう思ってきた...でも...お前と戦って、自分の本当の思いに気付いた。俺は、日向を変えたい...ナルト...俺は、火影になれると思うか?」
ネジは、ナルトに今の気持ちを伝え、尋ねた。
「それは...わかんねぇってばよ...」
ナルトは安易になれるとは言わなかった...
「ただ...」
「ただ?」
「初めから諦めてたら...ソイツはきっと何者にもなれやしない...俺から見ても...お前は天才だと思う...目指して努力する価値は、きっとあると思うってばよ?」
ナルトはそう言って笑った。
「ありがとう...」
その言葉に、ネジは綺麗な笑みを浮かべて感謝するのだった。
その後、医務室でヒアシから真相を聞かされたネジは、その話を疑う事もなく受け入れた。
「自分から話しておいてなんだが...信じるのか?ネジ...こんな話を...」
「ええ...今の俺には...父の考えが何となく解ります...父は...宗家を憎んでいましたが...きっと、ヒアシ様を憎んでいたわけでは無かったのでしょう...父上は...宗家の替え玉としての人生に抗ってみせたんですね...兄であるヒアシ様と...俺を守ることで...」
その言葉を聞いたヒアシは、思わず涙ぐむ。
「お前の成長を...弟に見せてやりたかったよ...ネジ...」
ネジとヒアシの確執は、この時完全に無くなったのだった。
一方、ナルトの方は...
正座をさせられていた...
ヒナタの説教を受けながら...
「ねえ、ナルト君?私がネジ兄さんと試合をするとき、無茶するなって言ってたよね?」
「はい...」
「同じことが、自分には当てはまらないのかな?」
「いや...決してその様な事は無いってばよ?」
「自分の姿を見てくれるかな?」
「.........。」
ボロボロだった...当然だ...あれだけ殴り合ったのだ...
九尾の回復力を以てしても、まだ治りきってはいなかった。
「何か言うことは無いのかな?」
「ご、ごめんなさい...」
ナルトが素直に謝った事で、取り敢えずナルトを許すヒナタ。
「ナルト君が無事で良かった...ナルト君が私を心配してくれるように、私だってナルト君が心配なんだよ?」
「う...本当にごめんってばよ...ヒナタ...」
ヒナタの言葉を聞いたナルトは、もう一度深く謝るのだった。
「うん...謝ってくれたから許すよ?でも...次の試合が終わるまで...そのまま正座ね?」
「.........はい...」
ヒナタは笑顔で、罰を告げるのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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