逆行したナルトの物語 完結   作:アーク1

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穢土転生

「しまった!」

 

ヒルゼンは、目の前に現れた三体の棺を見て、思わず声を上げる。

 

次に、乱入者を見ると、

 

「何をしに来おった、ナルト...お陰で三体目まで召喚を許してしまったわい...」

 

乱入者であるナルトに抗議をする。

 

ヒルゼンからすれば、三体目の召喚はなんとしても阻止したかった...

 

だが、そのタイミングをナルトの乱入により逃してしまったのだ。

 

怒るのも当然だろう。

 

「そんな怒るなってじいちゃん...援護に来たんだってばよ。」

 

しかしナルトは、一向に堪えた様子もなく、笑いながら答える。

 

「援護どころか、足を引っ張っとるわ!」

 

ナルトは、ヒルゼンの突っ込みを笑って受け流すと、次の瞬間、真剣な顔を作った。

 

「じいちゃん...説教は後だってばよ?...出るぞ...」

 

ナルトの言葉に、確かにその通りだと気持ちを切り替えたヒルゼンは、目の前の棺に意識を集中する。

 

まず二つの棺が開き、召喚された者が姿を見せる。

 

「ほぉ...お前か...年を取ったな...猿飛...」

 

「久しぶりよのぉ...サル...」

 

初代火影...柱間

二代目火影...扉間

 

二人の火影がヒルゼンに気付き、話し掛ける。

 

「まさか、このような事で御兄弟お二人に再びお会いしようとは...残念です。覚悟してくだされ...初代様...二代目様...」

 

ヒルゼンは、険しい顔で柱間たちを睨む。

 

柱間たちは、直ぐに状況を理解する。

 

「穢土転生か...禁術で、ワシらを呼んだのはこの若造か?大したヤツよ。」

 

「だとすると猿飛よ...ワシらは、貴様と戦わねばならぬ...と言うことか。」

 

大蛇丸は、三人の火影たちの話をいつまでも聞いているつもりはなかった。

 

「年寄りの寄り合い話はその辺にして、そろそろはじめましょうか...」

 

(なにせ...向こうの方も面白そうだものね...)

 

大蛇丸は、柱間と扉間の頭に術式を仕込んだクナイを埋め込む。

 

そして、柱間達に生気を吹き込み...

 

「完成ね。猿飛先生...しばし、先代の人達との遊戯を楽しんで下さい?」

 

大蛇丸は、ヒルゼンに背を向けると、もう一つの棺から出てきた人物...

 

四代目火影...波風ミナトに近づく。

 

 

時間は戻って、ミナトが棺より出て来て直ぐの話...

 

大蛇丸は、まずヒルゼンを止める為に柱間と扉間のコントロールを優先した...

 

そのため、ミナトはしばらく意識を保っていた。

 

「ここは...そうか...穢土転生で呼び出されたのか...」

 

ミナトもまた、直ぐに自分の置かれた状況を察した。

 

召喚者を探すと、そこに先代火影であるヒルゼンが、さらに先代の初代、二代目...そして大蛇丸と対峙していた...

どうやら、穢土転生の召喚を行ったのは大蛇丸のようだ...

 

(まさか、木の葉と敵対しないといけないなんてね...)

 

ミナトは心の中で、自分の状況に舌打ちする。

 

と、その時...その場にもう一人...まるで場違いな少年がいることに気付いた。

 

「君は...」

 

聞こうとして、直ぐに気付く...

 

その少年が纏っているチャクラの衣...

 

そのチャクラが自分のよく知るチャクラであったことを...

 

「もしかして...君は...ナルト...かい?」

 

ミナトの問いを聞いたナルトは、

 

「その通りだってばよ?四代目火影...波風ミナト...」

 

ナルトは、あまり友好的とは言えない目をして答えた...

 

 

(さて...どうしようかしらね...四代目の意識を奪うのは簡単なんだけど...ナルト君の戦闘力を考えると...わざと四代目の意識を残しておいた方が時間稼ぎになりそうだし...ナルト君がこっちに参戦するのは厄介なのよね...)

 

大蛇丸は、ミナトをどうするか決めかねていた。

 

後ろでは、既に柱間、扉間VSヒルゼンの戦いが始まっている。

 

できるだけ、ナルトの相手は四代目に務めて貰いたいが、どちらの方がナルトの足止めとして相応しいか...

 

(まあ...このまま四代目の意識は残しておきましょうか...その方が面白そうだしね...)

 

結局、面白さを優先した大蛇丸は、ミナトの意識を残すことにする。

 

「さて...私は私で、この戦闘を楽しまないとね...サルトビ先生?」

 

大蛇丸は、未だ二人の火影を相手に善戦するヒルゼンとの戦いに加わる。

 

大蛇丸が参戦したことで、ヒルゼンは押され始めた。

 

一方、ナルトの方は...

 

「ナルト...オレは君の父親だ。わかるかい?」

 

ミナトは、ナルトに会えた嬉しさから、なんとか自分が父親であることを伝えようと試みる。

 

「知ってるってばよ...」

 

だが、ナルトの返答は素っ気ない...

 

「.........やっぱり...オレを恨んでいるんだね...」

 

ナルトの態度の冷たさ...

 

ナルトと予期しない再会の嬉しさで忘れていたが、ミナトはナルトに九尾を封印した。ある意味で、里の生け贄にしたようなものだ...

 

恨んでいないハズがない...

 

それを思い出したミナトは、目を伏せて呟く...

 

そんなミナトの問いに、ナルトはゆっくりと口を開く...

 

「そう...だな...正直、今の自分の気持ちはわからなかった...あんたを恨んでるのか...それとも許してるのか...実際に会ってみないとわからねぇ...そう思ってたってばよ...」

 

「こうして...あんたを直接見て、わかった...どうやら...俺は、あんたが憎いみてぇだってばよ...」

 

「.........。」

 

覚悟はしていた...

それでも実の息子に憎いと直接言葉を投げられたミナトは、想像以上の苦しみを感じた。

 

「少し...勘違いしてるってばよ?俺が憎いと言ったのは、あんたが俺を人柱力にしたことだと思ってねぇか?」

 

ミナトが、何に罪悪感を抱いているのか...なんとなく察したナルトは、苦笑しながらそれを否定する。

 

「え?」

 

予想外の言葉に思わず聞き返すミナト...

 

「俺があんたを憎む理由は、人柱力にしたことじゃねぇってばよ...」

 

「それなら...一体...」

 

理由がわからない...ミナトにはどうしても、他に理由が思い当たらなかった。

 

「知りてぇのか?俺があんたを憎む理由が...」

 

「ああ...例え憎まれていたとしても...息子の事だ...知りたいに決まっている。」

 

ミナトは、ナルトから目を逸らさず、ナルトに返す。

 

「なら...拳を合わせてくれっか?それで理由がわかるってばよ...」

 

ナルトは拳を突きだして、ミナトに告げた。

 

「.........わかったよ...ナルト...」

 

ミナトはナルトを疑うような事はせずに、突きだされたナルトの拳に、自分の拳を合わせた。

 

(ナルト...君が何を考え、何を経験してきたのか...何故、オレを恨むのか...教えてもらうよ...)

 

その瞬間...ミナトの意識は、ナルトと共有された精神世界へと旅立つのだった...

今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。

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