「しまった!」
ヒルゼンは、目の前に現れた三体の棺を見て、思わず声を上げる。
次に、乱入者を見ると、
「何をしに来おった、ナルト...お陰で三体目まで召喚を許してしまったわい...」
乱入者であるナルトに抗議をする。
ヒルゼンからすれば、三体目の召喚はなんとしても阻止したかった...
だが、そのタイミングをナルトの乱入により逃してしまったのだ。
怒るのも当然だろう。
「そんな怒るなってじいちゃん...援護に来たんだってばよ。」
しかしナルトは、一向に堪えた様子もなく、笑いながら答える。
「援護どころか、足を引っ張っとるわ!」
ナルトは、ヒルゼンの突っ込みを笑って受け流すと、次の瞬間、真剣な顔を作った。
「じいちゃん...説教は後だってばよ?...出るぞ...」
ナルトの言葉に、確かにその通りだと気持ちを切り替えたヒルゼンは、目の前の棺に意識を集中する。
まず二つの棺が開き、召喚された者が姿を見せる。
「ほぉ...お前か...年を取ったな...猿飛...」
「久しぶりよのぉ...サル...」
初代火影...柱間
二代目火影...扉間
二人の火影がヒルゼンに気付き、話し掛ける。
「まさか、このような事で御兄弟お二人に再びお会いしようとは...残念です。覚悟してくだされ...初代様...二代目様...」
ヒルゼンは、険しい顔で柱間たちを睨む。
柱間たちは、直ぐに状況を理解する。
「穢土転生か...禁術で、ワシらを呼んだのはこの若造か?大したヤツよ。」
「だとすると猿飛よ...ワシらは、貴様と戦わねばならぬ...と言うことか。」
大蛇丸は、三人の火影たちの話をいつまでも聞いているつもりはなかった。
「年寄りの寄り合い話はその辺にして、そろそろはじめましょうか...」
(なにせ...向こうの方も面白そうだものね...)
大蛇丸は、柱間と扉間の頭に術式を仕込んだクナイを埋め込む。
そして、柱間達に生気を吹き込み...
「完成ね。猿飛先生...しばし、先代の人達との遊戯を楽しんで下さい?」
大蛇丸は、ヒルゼンに背を向けると、もう一つの棺から出てきた人物...
四代目火影...波風ミナトに近づく。
時間は戻って、ミナトが棺より出て来て直ぐの話...
大蛇丸は、まずヒルゼンを止める為に柱間と扉間のコントロールを優先した...
そのため、ミナトはしばらく意識を保っていた。
「ここは...そうか...穢土転生で呼び出されたのか...」
ミナトもまた、直ぐに自分の置かれた状況を察した。
召喚者を探すと、そこに先代火影であるヒルゼンが、さらに先代の初代、二代目...そして大蛇丸と対峙していた...
どうやら、穢土転生の召喚を行ったのは大蛇丸のようだ...
(まさか、木の葉と敵対しないといけないなんてね...)
ミナトは心の中で、自分の状況に舌打ちする。
と、その時...その場にもう一人...まるで場違いな少年がいることに気付いた。
「君は...」
聞こうとして、直ぐに気付く...
その少年が纏っているチャクラの衣...
そのチャクラが自分のよく知るチャクラであったことを...
「もしかして...君は...ナルト...かい?」
ミナトの問いを聞いたナルトは、
「その通りだってばよ?四代目火影...波風ミナト...」
ナルトは、あまり友好的とは言えない目をして答えた...
(さて...どうしようかしらね...四代目の意識を奪うのは簡単なんだけど...ナルト君の戦闘力を考えると...わざと四代目の意識を残しておいた方が時間稼ぎになりそうだし...ナルト君がこっちに参戦するのは厄介なのよね...)
大蛇丸は、ミナトをどうするか決めかねていた。
後ろでは、既に柱間、扉間VSヒルゼンの戦いが始まっている。
できるだけ、ナルトの相手は四代目に務めて貰いたいが、どちらの方がナルトの足止めとして相応しいか...
(まあ...このまま四代目の意識は残しておきましょうか...その方が面白そうだしね...)
結局、面白さを優先した大蛇丸は、ミナトの意識を残すことにする。
「さて...私は私で、この戦闘を楽しまないとね...サルトビ先生?」
大蛇丸は、未だ二人の火影を相手に善戦するヒルゼンとの戦いに加わる。
大蛇丸が参戦したことで、ヒルゼンは押され始めた。
一方、ナルトの方は...
「ナルト...オレは君の父親だ。わかるかい?」
ミナトは、ナルトに会えた嬉しさから、なんとか自分が父親であることを伝えようと試みる。
「知ってるってばよ...」
だが、ナルトの返答は素っ気ない...
「.........やっぱり...オレを恨んでいるんだね...」
ナルトの態度の冷たさ...
ナルトと予期しない再会の嬉しさで忘れていたが、ミナトはナルトに九尾を封印した。ある意味で、里の生け贄にしたようなものだ...
恨んでいないハズがない...
それを思い出したミナトは、目を伏せて呟く...
そんなミナトの問いに、ナルトはゆっくりと口を開く...
「そう...だな...正直、今の自分の気持ちはわからなかった...あんたを恨んでるのか...それとも許してるのか...実際に会ってみないとわからねぇ...そう思ってたってばよ...」
「こうして...あんたを直接見て、わかった...どうやら...俺は、あんたが憎いみてぇだってばよ...」
「.........。」
覚悟はしていた...
それでも実の息子に憎いと直接言葉を投げられたミナトは、想像以上の苦しみを感じた。
「少し...勘違いしてるってばよ?俺が憎いと言ったのは、あんたが俺を人柱力にしたことだと思ってねぇか?」
ミナトが、何に罪悪感を抱いているのか...なんとなく察したナルトは、苦笑しながらそれを否定する。
「え?」
予想外の言葉に思わず聞き返すミナト...
「俺があんたを憎む理由は、人柱力にしたことじゃねぇってばよ...」
「それなら...一体...」
理由がわからない...ミナトにはどうしても、他に理由が思い当たらなかった。
「知りてぇのか?俺があんたを憎む理由が...」
「ああ...例え憎まれていたとしても...息子の事だ...知りたいに決まっている。」
ミナトは、ナルトから目を逸らさず、ナルトに返す。
「なら...拳を合わせてくれっか?それで理由がわかるってばよ...」
ナルトは拳を突きだして、ミナトに告げた。
「.........わかったよ...ナルト...」
ミナトはナルトを疑うような事はせずに、突きだされたナルトの拳に、自分の拳を合わせた。
(ナルト...君が何を考え、何を経験してきたのか...何故、オレを恨むのか...教えてもらうよ...)
その瞬間...ミナトの意識は、ナルトと共有された精神世界へと旅立つのだった...
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
-
希望する
-
希望しない