(さよなら...父ちゃん...あの世で母ちゃんと幸せにな...)
ミナトを見送ったナルト...正面切って父親とは言えなかった...
それはけじめ...ミナトの選択の結果死なせる事になった前世でのヒナタとヒマワリ...
二人の事を思えば、どうしてもミナトを父と言うわけにはいかなかった。
だから、心の中でだけそう呼んだ...届かないとわかっていても...
そのナルトに九喇嘛が声を掛ける。
『感傷に浸ってる暇は無ぇぞ?ナルト...ここは外とは時間の経過が違うが、それでもゼロじゃ無ぇんだ。さっさと他の尾獣とのリンクを始めるぞ...』
九喇嘛の言葉に気分を入れ換えるナルト...
「行けそうか?九喇嘛。」
『当たり前だ...この世界のワシの半身と同化したことで、予想通り感知力が格段に上がった。仮に、魔像に捕らわれた尾獣がいたとしても、その強制力を超えられる。』
「わかった...じゃあ...始めてくれってばよ。九喇嘛。」
『任せろ!』
九喇嘛は、手を合わせて目を瞑る...
そうすることで、他の尾獣たちの探知をしているのだ。
『よし...全ての尾獣の位置は把握した...尾獣空間を開くぞ...準備はいいか?ナルト...』
「頼む。」
瞬間...辺りの景色が変わる。
そして、ナルトを中心に全ての尾獣が囲んでいた。
「はは...久しぶりだな...皆。」
久しぶりに集った尾獣達を懐かしそうに見つめるナルト。
『久しぶり...じゃねぇだろナルト...勝手に死にやがって...』
孫悟空が悪態を付きながらも、笑った。
「心配かけちまったみたいだな...孫...」
『ふん...』
照れ隠しなのか、そっぽを向く孫悟空。
「今のところ...暁に捕らわれているヤツはいるのか?」
ナルトの問いかけに、穆王が答える。
『今のところは...私だけです。』
「そうか...」
既に、捕らわれてしまっている尾獣がいることに心を痛めるナルト。
『心配するな...ナルト...今回のリンクで魔像の場所はわかった。魔像の強制力を超えた今のワシなら、近くまで行けば、穆王のチャクラとリンク出来る。後は、綱引きの要領で引っ張れば助け出せる。』
「本当か!九喇嘛。」
九喇嘛の言葉に安堵するナルト。
『さて、ナルト君...時間も無いことですし、用件を済ませてしまいましょう。』
又旅が、言った。
『今回は時間が無いからって、ウタカタ達には、遠慮してもらったんだしな。』
犀犬も、同調する。
『ヤグラは、もう死んじゃったけどね...』
磯撫が言った。
あまり、悲壮感が無いのはそれなりに納得の行く往生をしたのかも知れない。
『ナルト...俺たちのチャクラを再びお前に預ける。』
牛鬼が、ナルトに向かって手を差し出した。
そこに、重明が手を乗せる。さらに...犀犬が...穆王が...孫悟空が、磯撫、又旅、そして...
『俺様のチャクラは一度やってるが...まあ、ついでだ...』
最後に守鶴が手を乗せた。
重ねられた手に触れるナルト。
その手に全ての尾獣からチャクラが流れ込む。
その瞬間、又も場所が変わった...
「待っておったぞ...アシュラの転生者...うずまきナルト...」
「ん?あんたは...六道の大じいちゃん...」
そこに、いたのは六道仙人...ハゴロモだった。
「なんで...」
「再び、全ての尾獣達との絆を結んだ事で、ワシとの間に繋がりが出来たのだ。」
「そっか...さっき皆からチャクラを貰ったから...」
「そう言えば、折角会えたんだから、礼を言わねぇとな。大じいちゃん...俺を助けてくれてありがとうだってばよ...」
ナルトは、前世でハゴロモに助けられたことを思い出して、礼を言う。
「礼は不要だ...なにせ...ワシは厳密にはお前を助けたワシとは別の存在なのでな...」
「え?...どう見ても六道の大じいちゃんじゃないか?」
ハゴロモの言葉を理解できないナルト...
「お前の世界のワシが、お前をこの世界に送った瞬間、この世界はお前が辿った世界とは別の世界となったのだ...」
「つまり...どう言う事だってばよ?」
「お前がこの世界に来た事で、本来生きているハズの無い人間が生きていたり、生きていたハズの人間が死んだりしたじゃろう?」
「それは...俺が歴史を変えたって事じゃねえのか?」
「それは違うな...歴史を変えたと言うなら、何故お前は変えた事実を覚えている?」
「?」
ナルトにはハゴロモの説明が全く理解できない。
「うーむ...お前に分かりやすく言うのは難しいが...本当に歴史を変えたのならば、変えた事実を覚えている人間がいてはおかしくは無いか?...変える前の歴史が無かった事になるのだから、変えた事実も無くなるハズなのだからな...」
「歴史とは...大きな木の枝の様なものだ...きっかけによって枝分かれするな。お前がこの時代に現れた事で、そこから新しい枝が生まれた。それが、この世界じゃ。」
「なるほど...そう言うことか...」
ガーデニングが趣味のナルトは、枝に例えられた事で、ようやく理解した。
「つまり、大じいちゃんも他の尾獣たちと同じように、記憶をこの世界に送ったんだな?」
「そう言うことじゃ...記憶はあるが、それは今のワシが助けた訳ではない...だから礼は不要だと言ったのじゃ。」
「まあ、大じいちゃんがそれで良いって言うなら、俺は良いけど...それで...何のために出てきたんだってばよ?」
ナルトが改めて、用件を尋ねる。
「うむ...この世界に来た事で、未来でワシが授けたワシの力は無くなってしまっただろう?」
「ああ...」
「お前に、再び託そうと思ってな...何しろこの世界では、母上が復活する可能性はまだあるからのぅ。お前が信用出来ることは、未来の記憶を得たワシも理解しておる。だから早めに渡しておこうと考えたのじゃ...こうして、尾獣達との絆を取り戻した様だしの...」
ナルトは、考えた...
確かに、六道の力は欲しい...
これからの為にも、力はあって困ることは決して無いのだから...
だが、前世では陽...日の力をナルトに...陰...月の力をサスケに分けて渡していた...
そして、今のサスケに力を託すのは不安があった...
「お前の考えている事は、わかっておる。インドラの転生者にこの力を分けて渡すのを心配しておるのだろう?何しろ、腕を無くす程の大喧嘩をした訳だしのぅ...」
「いや...それはお互い納得してるから良いんだってばよ。ただ...今のサスケは復讐に駆られてる...そんなサスケに力を与えると、ろくなことにならない気がしてな...」
実際、一度は木の葉を消そうとまで考えていたのだ...
その力があれば、すぐに実行していたに違いない。
「ならば、今回はお主一人に陰陽両方の力を渡せば良いのではないか?」
六道仙人の提案に少し考えたナルトは、
「なあ...大じいちゃん...その力は俺かサスケにしか託すことは出来ねぇのかな?」
思い付いたことがあり、ハゴロモに尋ねた。
「む?そんなことは無い...が...まあ素養は必要かの...それにもともと、この力はインドラかアシュラ...二人の転生者に、渡すように調整されておるから、託したとしてもお前達の様に直ぐに使いこなす事は出来んじゃろうて...」
「俺たちで無くても託せるんだな?」
ハゴロモの言葉に、念を入れて確認するナルト。
「うむ...そうじゃの...」
「だったら...」
ナルトは、サスケでは無く、別の人物を陰の力を託す相手として提案してみる事にした。
その者の名は...
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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希望しない