追っ手を足止めするために残ったシカマル。
シカマルは、わざと足跡を残し枝を折ることで痕跡を残し、追っ手に追われる様に仕向けた上で、別方向に移動した。
「さぁて...なんとか時間稼ぎをしねぇとな...」
(未来のオレは生き残ったみてぇだが、今回も必ず生き残れるかはわからねぇ...今出来る最善手を取って時間を稼ぐしかねぇ...)
シカマルは、陽動の為に移動しながらも自身に有利な場所へと巧みに敵を誘導する。
身を隠すシカマル...
そこに音の忍が8名姿を表す。
その内の一人が、そこにあった足跡を見て、ニヤリと笑う。
(今だ!)
見事にシカマルの策にかかる音忍たちに、別方向から影しばりの術をかけるシカマル。
「!?こ...これは...」
突然動けなくなった音忍たちは、驚きの声をあげる。
「わりぃが、お前らには俺の時間稼ぎに付き合って貰うぜ?」
姿を見せたシカマルに対し、音忍たちはしかしそれほど焦っているように見えなかった。
「なんだ、まだガキじゃねぇか...こんなのに全員捕まっちまうとは...」
「これが噂に聞く、木の葉の影しばりの術か。」
それどころか、シカマルを子供だと嘲笑し、雑談を始める音忍たち。
(1...2...3...4.........8人か...一人足りねぇ...こいつらの余裕の理由はそれか?)
事前に敵の人数をヒナタに聞いていたシカマルは、もう一人いるハズだと辺りを探る。
だが、感知タイプでは無い自分には、気配を消して機を窺う敵を見つけることはできない。
(だったら...)
シカマルは、足に巻き付けた手裏剣ホルダーから手裏剣を...腰のカバンからクナイを何本か取りだし、影しばりの術で拘束している音忍に投擲した。
その手裏剣やクナイは、投擲された別の手裏剣によって落とされる。
だが、シカマルに特に落胆した様子はない。。
先程の攻撃は、隠れている9人目を探し出す為のもの。
(あそこか...)
投擲された手裏剣から9人目の隠れている位置を割り出したシカマル...
だが、テマリとの試合で消耗しているシカマルは、チャクラが残り少ない。
(それでも...諦める訳にはいかねぇ。アイツと約束したんだ...例えチャクラが残り少なくても...最後まで足掻いてやるぜ...)
シカマルは、覚悟を決めて特攻を仕掛けようとした。
一人でも多く倒す...そのつもりでクナイを構える。
「俺たちに攻撃を仕掛けた瞬間、お前の人生の終わりだ。」
わかっている...特攻を仕掛けた瞬間9人目が自分の首を取るだろうことは...
それでも、いつまでも影しばりの術で止めておくことは出来ない以上、シカマルの選択肢は限られていた。
「行くぜ...」
シカマルが、一歩踏み出そうとしたその瞬間...
「ようやく追い付いた...」
シカマルの担当上忍...猿飛アスマだった。
「アスマ...なんで...」
突然のアスマの登場に驚くシカマル。
そんなシカマルを尻目に次々と敵を殺して行くアスマ。
敵の全滅を確認したシカマルは、ホッと安堵のため息をついた。
(ふう...なんとか生き延びたな...約束...守ったぜ?...ナルト...)
一方、我愛羅たちは、担当上忍のバキの命により、木の葉から撤退しようとしていた。
それを追いかけていたサスケが、ついに追い付く。
「逃がしゃ、しねぇよ...」
それを見た我愛羅が一歩前に出る。
「テマリ...カンクロウ...お前達は先に行け...ここは俺が引き受ける。」
それは、自分達を心配しての発言だとカンクロウ達はすぐに気付いた。
木の葉に来て以来、我愛羅が変わったのは感じていた...
それまでの我愛羅は、自分以外に関心が無かった...
唯一、戦闘で自分を満足させられるだけの強者にのみ...殺す対象として関心を示す...それだけだった。
それは肉親である自分達でもそうだ...多少は他の人間よりは興味を持っていた...特にテマリの言うことはそれなりに守ってくれていた事からもそれは伺える...
だが、カンクロウの言うことはまるで聞こうとはしない。
カンクロウが、自分に恐怖していることを知っていたからだ。
そんな我愛羅が、木の葉に来てから他者に関心を持つようになった...
いや、他者との繋がりを持とうとしたのだ...
テマリもカンクロウも、突然の変化に驚いた...
だが、一緒に中忍試験を受けている内に、自然とその変化を受け入れていた。
ようやく、普通の兄姉として接する事が出来たのだ...
だから...
「いや...ここは俺が残るじゃん?」
カンクロウが我愛羅を止めて、自分が残る事を告げる。
「カンクロウ...しかし...」
不安そうな我愛羅。
それを見たカンクロウは苦笑し、
「正直に言う...俺はお前が怖かった...あの化物の姿のお前を見てからずっと...いつか俺が殺されるんじゃないかって...そう思った。お前と同じ班にならないといけないと知った時は、本気で嫌だった...」
「.........。」
「でも、お前は木の葉に来て変わったじゃん?俺らの事を心配したり、或いは守ろうとしたり...そんなお前を見てたら、お前を怖がってた自分が恥ずかしいと思った...俺はお前の兄貴なのにな...」
「カンクロウ...」
「たまには、兄貴らしくカッコつけさせて欲しいじゃん?だから我愛羅はテマリを守ってくれ?」
カンクロウの独白と頼みを聞いた我愛羅は、頷いた。
「わかった...死ぬなよ?カンクロウ...」
「当たり前じゃん...」
そして後ろを振り向いた我愛羅は、テマリと共に先を進んだ。
「待て!」
サスケが我愛羅を追いかけようとする...
「お前の相手は俺じゃん?」
だが、その進路をカンクロウが塞ぐ。
「ちっ!」
だが、そこに更なる第三者が声がかかる。
「いや、お前の相手はこっちだ...」
それはシノだった。
シノはサスケに我愛羅を追うように言って、カンクロウと戦いを始めるのだった。
内容は、コミック版と同じなので割愛...
...俺の出番っ!...(byシノ)
「待て...」
そしてサスケはと言うと、我愛羅達に追い付いていた。
「てめぇら砂が、何を企んでいるのか知らねぇが...お前は俺が止める...」
サスケの宣言を受けた我愛羅は、
「テマリ...下がっていろ...」
サスケと戦う事を決めた。
「我愛羅...しかし...」
サスケと戦うことに否定的なテマリ...
今は、サスケに構わず逃げに徹するべきなのではと考えていたのだ。
「カンクロウと約束した...お前を守ると...」
「我愛羅...」
カンクロウとの約束を果たすためにサスケと戦う...そう言いきった我愛羅に泣きそうになるテマリ...
なぜ、もっと早く我愛羅と姉として仲良くしてやれなかったのか...
テマリは後悔していた。
「来い...うちはサスケ。」
「行くぞ...」
二人の戦いが始まった...
(守鶴...)
『わかってるぜ...』
我愛羅は、守鶴の力を借りて砂の化身と化す。
それは、小型の守鶴を象った鎧を着ているような姿だった。
全身を砂の鎧で覆った我愛羅...
しかし、そんな重いもので全身を覆っている状態だというのにスピードはむしろ増していた。
「くっ...」
サスケはなんとか、攻撃をかわしているが、次第に追い詰められていく...
「こうなったら...」
最後の賭けとでも言うように、千鳥を作りカウンターを狙うサスケだったが...
「そ...そんな...」
その突きが我愛羅に当たる寸前、砂の鎧から突然出てきた砂の腕に止められていた...
「俺の勝ちだ...」
「ぐはっ!」
我愛羅の砂の尾に叩きつけられ意識を失うサスケ。
我愛羅がサスケに止めを刺そうとした、その時...
顔面を蹴られて、吹き飛ぶ我愛羅。
「わりぃな...我愛羅...ここからは...俺が相手だってばよ...」
分身ナルト達が追い付いた。
既に目を覚ましていたヒナタ、サクラもいる。
「サスケ君」
サクラは、サスケを心配してサスケの元に向かった。
気絶してるだけなのを確認し安堵するサクラ。
「我愛羅...敵の応援が来た以上...私も戦うよ。」
テマリは、我愛羅にそう言った。
並び立つ二人。
だが、ナルトにもパートナーがいる。
「いえ...貴方の相手は私です...」
ヒナタがナルトの隣に立ち、言った。
あのハゴロモとの邂逅からヒナタは既に目を覚まし、現実に復帰していた。
「テマリ...お前は、あのくの一の方を頼む。だが油断はするなよ?」
「我愛羅...わかった...」
我愛羅の頼みを聞き、ヒナタと対峙するテマリ...
そしてナルトと対峙する我愛羅...
「さて...分身とは言え手加減はせんぞ...ナルト...」
「確かにこの状態じゃ、力比べでは敵わねぇかもしんねぇけどな...こっちは潜ってきた修羅場が違うんだってばよ...」
激突する両者...
そして、ヒナタとテマリの戦い...
「私の相手はあんたか...確か...日向ネジと予選で戦った、くの一だな?」
ヒナタに見覚えがあったテマリが確認する。
「日向ヒナタです...」
「そうか...でも...あんたじゃ、あたしには敵わないよ?」
「やってみないと、わかりませんよ?」
ヒナタは、笑いながら答える。
それは、今の自分の力に自信があったからだ。
「フン...なら...さっさと片付けるとするさ!」
二人の戦いが始まった。
戦いが始まるとすぐに、テマリは大扇子を使い突風を巻き起こす。
それによって舞い上がった粉塵で身を隠しながら、距離を取るテマリ...
ヒナタは攻撃の手段が接近戦に限られているのに対し、テマリは中遠距離をメインに接近戦もこなす忍だ...
一度、距離を取られたヒナタは苦戦する...かに見られたが...
「な!?」
突然、消えたヒナタ...そして、ヒナタは別の場所に移動していたのだ。
驚くテマリ。
「どういうことだい...あれはもしかして...噂に聞く飛雷神の術ってやつか!」
四代目火影が得意としていた、時空間忍術...それは、他里にまで恐れられていた...
テマリは、その術に当たりを付けるが、もちろんそれは誤りだ...
ハゴロモから、陰の力を授かったヒナタ。
その力を受けた輪廻眼は、自身の見た物や生き物の場所を入れ換える力を持っている。
ヒナタは、まだ輪廻眼を開眼するに至ってはいないが、自分の見た物と自分を入れ換える事だけは出来た。
そして、その術は白眼と言う広範囲に...そしてほぼ360度に近い視界を持つヒナタとの相性がとてつもなく良かった。
まるで、瞬間移動をするように場所を変えるヒナタに、的を絞れないテマリ...
「くっ!これじゃ、攻撃を当てられない...」
と、その時、目の前にヒナタが現れた...
「ちぃ!」
テマリは、勘で後ろに飛ぶ事で事なきを得ていた。
だが、冷や汗が止まらない。
距離を取っても、一瞬で縮められてしまう...
これでは対策の取り様が無い。
焦るテマリ。
しかし、ここでヒナタに誤算があった...
ヒナタは、まだハゴロモの陰の力を完全に把握したわけではない...
故に完全に使いこなすことが出来ていないのだが、更に、その術がどれだけのチャクラを使うのかも把握出来ていなかった...
ヒナタは、うかれていたのだ...
(この力があれば、ナルト君と一緒に戦える...足手まといにならずに...ナルト君を守る事ができる...)
慢心し、瞳術に頼りきった戦い方をしたヒナタ...
そして、限界が訪れる...
「あれ?」
突然身体が動かなくなった...
チャクラを使いすぎたのだ...
テマリは、動きを止めたヒナタに、好機と見てクナイを投げた。
その攻撃を、呆然と見つめるヒナタ...
(そんな...私...ここまでなの?)
あまりにも呆気ない終わり...
折角ナルトと相愛になれたのに...
これから、ナルトと共に歩めるハズだったのに...
ナルトを支えると、約束したのに...
「ナルト君...」
思わず目を瞑るヒナタ...
だが、いつまで経ってもクナイが自分に届くことは無かった...
目を開けるヒナタ...そこにいたのは...
「待たせて悪かったな...ヒナタ...」
クナイを鷲掴み、ヒナタを守る様に立つ...本体のナルトがそこにいたのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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希望しない