テマリとの戦いにヒナタを送り出したナルトは、我愛羅と対峙していた。
「ようやく本体のお出ましか...」
「俺の分身との戦いで、随分と消耗してるみてぇだけど...大丈夫か?」
「当然だ...」
お互いに軽口を叩き合う二人...
そして...
「やるぞ...守鶴...」
『おう...バカ狐に目にもの見せてやるぜぃ!』
「行くぞ...九喇嘛...」
『ふん...まあ、相手は人柱力としてヒヨッコの我愛羅と、尾獣で最弱の守鶴だ...せいぜい手加減するんだな?ナルト。』
互いに
内に住む尾獣に話しかける...
砂を纏い...狸の様な姿となる我愛羅...
対してナルトは、九尾チャクラモードとなった。
仙術も...六道の力も使わず、あくまでも対等な条件で我愛羅と戦うつもりなのだ。
「行くぞ!」
「来い!」
二人の戦いが始まった。
守鶴と和解し、今の状態になっても、冷静さを保つ事が出来るようになった我愛羅...
我愛羅は砂を巧みに使い、ナルトに攻撃を仕掛ける。
「よっ!ほっ!とりゃ!」
だが、それらはナルトによって難無く避けられてしまう。
「だったら...」
我愛羅は、避けられない広範囲の砂を直接ナルトにぶつけようとする。
「!?マズイってばよ...」
我愛羅の意図を察したナルトは、高速で我愛羅の元へと近付く。
何故なら、砂を操る我愛羅とて、砂に生き埋めになれば助かりはしない。
我愛羅の術は、我愛羅のいる場所こそ最も安全な場所なのだ。
「速い!」
ナルトの動きは、我愛羅が対戦したロック・リーを遥かに超えている。
守鶴が見せた記憶で、その速さは知ってはいたが、知っているのと実際に体感するのとでは、雲泥の差があった。
「行くぞ!我愛羅...まずはこの攻撃に耐えて見せるってばよ...」
そう言ったナルトの右手には、既に術が発動していた...
『螺旋丸!!!』
「くぉっ!」
螺旋丸を腹部に受けて吹き飛ぶ我愛羅...
我愛羅の身体は、何本もの木々を突き抜けてようやく止まる。
「くっ...これが螺旋丸か...砂の鎧を纏ってなお、内部にこれほどの衝撃を与えるとはな...」
『大丈夫か?我愛羅...』
「ああ...確かに予想以上のダメージを受けたが...まだ...戦える...」
『へっ!上等だ...今度はこっちの番だぜ...』
守鶴の激励を受けた我愛羅は、チャクラを練る。
そのままナルトに向かって猛スピードで突進した。
「正面から?いくらなんでも無謀だってばよ...」
真っ直ぐナルトに向かってきた我愛羅に、驚きを隠せないナルト。
ナルトと我愛羅の自力の差は明白だ...
そんな相手に正面から来るとは思っていなかったのだ。
だが、当然我愛羅はそんなことは理解していた。
自身は囮...
本命は...
『多重砂手裏剣』
「!?」
ナルトの後ろに、大量の砂手裏剣が浮かんでいた。
一斉に襲いかかる砂の手裏剣。
「くっ!」
身構えるナルトだったが、その手裏剣は衣から飛び出した九本の尾によって全て弾かれてしまう。
『はっ!こんな策にひっかかるなんて情けねぇぞナルト!』
それは九喇嘛が、チャクラを操作してナルトを守ったからだった。
「言ってくれるな...」
憎まれ口を叩く九喇嘛に苦笑しつつも、我愛羅の作戦に舌を巻くナルト...
「なんなの...この二人...」
そんな戦いを見ていたサクラは、呆然と呟く...
ナルトの強さは知っていたが、我愛羅も下忍の域を遥かに超えた戦闘力を持っている...
そして、お互いそれを当然のものとして受け入れているように見えた...
そのまま、何度か小競り合いを続ける両者だったが...
「我愛羅...本気で来い...」
ナルトが、突然叫んだ。
「!?」
その意味を理解する我愛羅...
ナルトは、狸寝入りの術を使い...完全体の守鶴となる様に言っているのだ...
だが、我愛羅は戸惑っていた...
守鶴と和解しても、その力を現状使いこなせないと守鶴から断言されていた。
完全体になったとき、守鶴の意思に自分の憎悪が入り込み...以前のように暴走するのではないか...
気がついたら、ナルトや...テマリ...ここにいる全ての人間を殺してしまうのではないか...
それを心配していたのだ。
そんな我愛羅の心情を、ナルトは理解していた。
「俺を舐めるなよ?我愛羅...」
「ナルト?」
「お前が、全力で来ても俺の方が強ぇってばよ...お前の全力...必ず受け止めてやる...だから...来い...我愛羅。」
ナルトの言葉を聞いた我愛羅は...
「わかった...」
一言そう言うと、周りの砂を一気に取り込む...
そこに...巨大な守鶴が姿を現した。
『狸寝入りの術』
強制的に眠る我愛羅。
守鶴の意識が表に出る。
我愛羅が危惧したような暴走は起こらなかった。
「何...あの化け物...」
サクラは、その姿に恐怖する。
「っ痛...ここは...」
と、その時サスケが目を覚ました。
「あ、サスケ君...目を覚ましたのね?」
「サクラ?...ここは...!?そうだ...俺はあの砂のやつと戦って...サクラ...アイツはどうなった?」
自分の状況を思い出したサスケは、我愛羅がどうなったか訊ねる。
サクラは、震える手である方向を指差す。
そこに目を向けたサスケは...
「な!?なんだ..あの化け物は...」
その巨大な身体を見て驚く。
「あれが、サスケ君の追っていた砂の忍よ?」
「バカな...あんなヤツに勝てるハズがない...」
その巨体に、戦意を失うサスケ...
しかしその目の先に、その化け物に対峙する人物がいた。
(ナルト?よせ...ナルト...いくらお前でも、あんなのに勝てるわけが無ぇ...)
ナルトに逃げるように願うサスケ。
だが次の瞬間、その考えは吹き飛んでしまう。
「やるぞ...九喇嘛!」
『おお!』
ナルトは掌を合わせる...
すると次の瞬間ナルトの纏うチャクラの衣が、どんどん巨体化していく...やがて、そのチャクラは九本の尾を持った狐を型取る。
「さ...サスケ君...あれって...教科書に載ってた...木の葉を襲ったって言う九尾の妖狐...よね...」
サクラが震える声でサスケに聞いた。
「あ...ああ...」
サスケはその巨大な姿を見て唐突に理解した。
(ナルトが、木の葉の里の連中に疎まれていた理由はこれか!)
木の葉を襲った九尾は、封印された...
どこに...どうやって...肝心な所が秘匿されていたが、ナルトという人間に封印されていたのだと...
(ナルトは、九尾の力を完全にコントロールしてやがる...アイツがあれほど強いのもこれなら頷ける...)
サスケの目の前では、まるで怪獣対決の様相を呈した戦いが繰り広げられていた。
『風遁 練空弾』
巨大な風の礫が、ナルトを襲う。
ナルトは、後方に飛んでそれをかわした。
そして組み合う二体の獣...
今度はナルトが仕掛ける。
守鶴を、投げ飛ばしたのだ。
ドォーン!!!
そこは、木の葉の町の外れだった...
戦っている内に、森から出て町の方まで移動していたのだ。
いや...ナルトがそのように仕向けていた。
「な...なんだ...あの化け物は...」
突然現れた巨大な狸に驚く木の葉の住民たち...
只でさえ、木の葉崩しで大蛇丸が各地に口寄せした大蛇や音の忍と戦い疲弊していたのだ...
そこに、さらに巨大な化け物が姿を現した事に、戦意を失う。
だが、次の瞬間...その感情は恐怖に変わった。
かつて見た化け物が姿を現したのだ...
「あ、あれはまさか...九尾!」
「まさか...封印が解けたのか?」
「い...いやあああああああああああああ...」
「う、うわあああああああああああああ...」
パニックに陥る住民たち...
その時、起き上がった守鶴が口を開ける。
九尾もまた口を開けた。
『「尾獣玉!」』
お互いが放った尾獣玉は、しかし守鶴のものよりも、ナルトが使ったものの方が威力が大きいようで、少しずつ守鶴の方に押し込まれていった。
やがて...
『ぐおおおお...』
守鶴は、尾獣玉をもろにくらい、元いた森の方にまた、吹き飛んでいった。
守鶴を追って、町から離れていく九尾...
「た...助かった...」
「おい、誰か火影様に連絡しろ。化け狐が正体を現したって...」
「で、でもあの九尾...私たちを守ってくれたみたいよ?」
「何をバカな...あの九尾だぞ?」
「そ、そうだけど...」
「まあ...どちらにしても、九尾の封印が解けた事は報告しないとな...」
その言葉に、とりあえず頷く一同だった。
一方、吹っ飛ばされた守鶴は...
『ぐ...バカ狐め...相変わらずのバカ力だぜ。』
『当然だ...アホ狸...お前とワシでは自力がまるで違うんだよ...』
九喇嘛が、守鶴を捕まえる。
それは尾獣化した姿ではなく、九喇嘛本来の姿。
『てめぇ!バカ狐...ナルトはどうした...』
「悪いな...守鶴...俺たちの勝ちだってばよ!」
守鶴の問い...それに答えたのは、我愛羅の本体の近くにいつの間にかいたナルトだった。
「起きやがれ!我愛羅...」
ナルトの拳骨が我愛羅の頭に突き刺さる...
「っ痛!」
その瞬間覚醒した我愛羅。
身体を保てなくなる守鶴...
「くっ...」
地面に着地した我愛羅...その首にはナルトの手に握られたクナイが突きつけられていた...
ナルトには、自分の砂の鎧を突破する術があるのだろう...そう考えた我愛羅は...
「俺の負けだな...」
素直に、負けを認めるのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
-
希望する
-
希望しない