逆行したナルトの物語 完結   作:アーク1

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自来也からの頼み

ナルトが同期たちとの交流を深めていた頃...

 

「エヘヘヘへ...」

 

一人の男が望遠鏡片手に、女風呂の覗きをしていた。

 

もちろん、自来也である。

 

「まだ、そんなくだらんことをしとるのか...お前は...」

 

そんな自来也に、呆れた声がかかる。

 

「一応、取材ですからのぉ...」

 

その声に、特に驚いた様子もなく返し、後ろに振り返る自来也。

 

「ホムラのおっちゃんに、コハル先生か...ご意見番がこのワシに何の用かのぉ...」

 

「何の用だと?皆まで言わずとも分かっておるだろう...」

 

「...............。」

 

「三代目が暴走して行った式典...そこでのナルトの宣言は聞いていたな?木の葉の民たちの反応や、今後の対応を考えて、木の葉はナルトの宣言を承認することに決めた...」

 

「お前も無論承知しているだろうが、ナルトは木の葉の人柱力だった。その事は木の葉の秘事として箝口令を敷いていたが、今回の件で恐らくそれは他里に伝わったと見て良い...」

 

「人柱力が里を抜ける...五里のパワーバランスから考えても、これからの木の葉の力は恐ろしい程に低下することになる。」

 

「三代目には此度の一件の責任を取って辞任して貰った。この状況で辞めるのも無責任な話ではあるが...こうでもせんと他の上役が納得せんのでな...」

 

コハルが後を引き継ぐ...

 

「今の状況...隣国のいずれかが、いつ大胆な行動に出るかも分からぬ。今や揉め事の種はそこら中に転がっておる。大蛇丸だけではない。」

 

それを受けてホムラが、

 

「いいか、一つ基本的な方針を言っておく...五代目火影は今すぐにでも必要だ。」

 

そう言うと、コハルが今回の用件を告げる。

 

「そして、昨日火の国の大名と設けた緊急会議で、自来也...それがお前に決まった。」

 

「おあいにく様...ワシはそんな柄じゃ無いのぉ...」

 

ホムラ達の話を聞いた自来也は、しかしこれを断る。

 

「これは決定事項だ。それに三忍と謳われたお主程の忍が柄でないと言うなら、他に誰がいると言うのだ。」

 

ホムラは、拒否する自来也に他に候補がいないことをあげて説得する。

 

「三忍ならもう一人いるだろ...綱手のヤツが...」

 

ナルトから話を聞いていた自来也は知っている...本来の歴史では綱手が五代目になっていることを。

 

自来也の言葉に暫し考えるコハルだったが、

 

「...確かにあの子ならその器かも知れんが...その行方が皆目見当もつかん。」

 

現状、行方もわからない綱手を推すわけにはいかなかった。

 

「ワシが見つけて連れてくる。そうすりゃ問題は無いだろ?」

 

自来也はそう言ったが、

 

「しかし...」

 

ホムラは尚も食い下がろうとする...

 

「やる気の無いワシよりも、切れ者の綱手姫の方が火影に向いとる。」

 

「.........。」

 

自来也の言葉に、黙り込む二人...

お互いを見返しながら、どちらが里のためになるか考えていた。

 

「わかった。早急に考慮しよう。ただし、綱手捜索隊として三人の暗部をお前に付ける。」

 

結局ホムラが折れた。その代わりに暗部を付けることを提案するが、

 

「心配しなくても、逃げやしねーっての。見張り役は余計だのぉ...ただ、旅のお供に一人連れていきたいヤツがいる。」

 

自来也はこれを却下して、他の人物をお目付け役にしたいと提案した。

 

その人物の名前を告げたときのホムラとコハルは、驚き反対もしたが、綱手の説得に必要だと言って強引に認めさせた。

 

そして、自来也は今、その人物に会うため死の森へと足を踏み入れている。

 

目的の場所に着く自来也。

 

中を覗いてみると...

 

「はい。ナルト君...これも美味しいよ?」

 

「いつもありがとなヒナタ。」

 

「ううん...ナルト君にお弁当作ってくるの...私も凄く楽しいんだよ?だから気にしないで。それに、いくら食べ物に困らないって言っても、こんな所で生活してたら栄養が偏っちゃうよ...」

 

「そう言ってくれると嬉しいってばよ...それでも...やっぱりありがとな...」

 

「うん。」

 

「ヒナタ...」

 

「ナルト君...」

 

二人の顔が近づく...

 

「何をやっとるかぁ!」

 

堪らずに大声を出して突入する自来也...

 

「キャッ!」

 

「お?エロ仙人。久しぶりだってばよ...」

 

自来也の突然の訪問に驚くヒナタと、少し驚きつつも、照れを隠すように挨拶をするナルト。

 

「ナルト...お前のぉ...お前のせいでワシが大変な目に遭ってるって時に、お前は彼女とヨロシクやってるってぇのは、どうなのかのぉ...」

 

自来也は、呑気そうなナルトを恨めしく思いながら、愚痴を言う。

 

「ん?エロ仙人...なんかあったのか?」

 

ナルトが聞くと、

 

「お前の宣言後、三代目が火影を辞任したのは知っているだろ?」

 

「ああ...」

 

頷くナルト。

 

「そのせいで、ワシが五代目にさせられそうになっとるんだのぉ...」

 

「ん?良い話じゃねぇか...エロ仙人が火影になれば、もう少し木の葉も変わると思うってばよ?」

 

昇進の話だから良い話だと、どこか他人事のように言うナルト。

 

「何を言うか...ワシにはやらなければならない事があるのだ。火影なんてしてる暇はないのぉ...」

 

「それって...大蛇丸の事か?」

 

自来也のやるべき事...ナルトには心当たりがあった。

 

「.........未来のワシは、そこまでお前に話したのかのぉ...」

 

「...ああ、少しだけ...名前は聞かなかったけどな...あの時はよく分からなかったけど...今ならそれが大蛇丸の事だったってわかる。俺を弟子に取ったのも、多分サスケを取り戻そうと躍起になってた俺の姿に...自分の姿を重ねてたんじゃないかって...今は思うんだってばよ...」

 

ナルトは目を伏せながら答えた。

 

「......まあ...そうだ...ワシは大蛇丸と決着を着けねばならん...それに未来では、綱手のヤツが五代目になっておったのだろぉ?」

 

「ん?確かにそうだけど...この世界でどうなるかはわからねぇってばよ?」

 

ナルトに確認した自来也は頷くと、

 

「よし、ナルト...お前はこれからワシの綱手捜索の任務に同行して貰うからのぉ...」

 

「はっ?なんで俺が...」

 

自来也の突然の言葉に驚くナルト...

 

「未来では、お前が綱手の説得に一役買ったのだろ?」

 

「いや、あの時は俺が諦めずに火影を目指し続けてたし、俺の努力を認めてくれたからこそだってばよ?はじめて会った時なんて『火影なんてクソだ』...とか言ってたし...今の俺に説得は無理だってばよ...」

 

「それでも、ワシ一人で行くよりは可能性が高い。だから頼む...ナルト。」

 

ナルトの拒否に食い下がろうと必死な自来也。

 

「嫌だって...」

 

それでも、拒否するナルト...

 

「師匠命令だ...」

 

「この世界じゃ師弟になってないってばよ...」

 

「口寄せの契約書...貸してやったろのぉ...」

 

「ぐっ...」

 

そんな二人のやり取りを見ていたヒナタは、

 

「ナルト君...行ってきなよ?」

 

そう言った。

 

「ヒナタ?」

 

ナルトが自分を心配して、残ろうとしているのは理解していた。

 

ナルトにとって、自来也は大切な存在だ。

本当なら、無条件に手を貸してやりたいハズなのだ。

 

ナルトから言い出せないのなら、自分がナルトの背を押してやれば良い。

 

「ナルト君...ナルト君が自来也様と旅に出ている間...私は父上との修行を続ける。どの道、五代目が決まらないと、私たちの里抜けの話も進まないでしょ?」

 

「.........。」

 

「私は大丈夫だから...ね?」

 

「ヒナタ...わかったってばよ...」

 

ヒナタの言葉に、ようやく腹を決めるナルト。

 

「嬢ちゃん...よくやった。よしナルト...善は急げだ。明日出発するからのぉ。」

 

「明日ぁ!」

 

急な話に驚くナルト。

 

「良いから...頼んだぞナルト。」

 

「へぇーい...」

 

明らかにテンションの低い声で返事をし、去っていく自来也を見送るナルト。

 

「フフ...自来也様って...楽しい人だね。ナルト君...」

 

「...ああ...」

 

ナルトは、自来也とのやり取りを懐かしいと感じて、思わず笑みが溢れた。

 

「ナルト君...明日...出発前に家に寄ってくれるかな?腕によりをかけてお弁当作るね?」

 

「ありがとな...ヒナタ...」

 

今度こそ二人の影は一つになるのだった。

今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。

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