逆行したナルトの物語 完結   作:アーク1

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うちはイタチ

時間は少し遡る...

 

ナルトは、宿場から移動していた...

それを追うイタチ。

 

少しすると、場所は宿場町から離れ、ある林のある場所に出た。

 

「ナルト君...もうこの辺で良いだろう?人混みからは、十分離れたはずだ...」

 

イタチが不意に声をかける。

 

その言葉に移動を止め、イタチに向き合うナルト。

 

「そうだな...ここならちょうど良さそうだってばよ...」

 

「.........。」

 

「.........。」

 

対峙する両者...

 

「始める前に、一つ聞きたい...君は一体何者だ?」

 

イタチがナルトを見ながら話しかける。

 

「お前が言っていた通り、九尾の人柱力だってばよ?」

 

それに答えるナルト。嘘は言っていないが、正解には程遠い答えだ...

 

「そういう意味で言った訳じゃないのは理解してるだろう?どれだけ強大な力を持っていようと、それを扱うのはその者自身...例え君に天性の才能があったとしても、君が子供である以上、未熟な部分は必ずある...」

 

「だが...君にはそれが見当たらない...まるで歴戦の勇士を思わせる風格さえ見える...」

 

「.........。」

 

「もう一度聞く...ナルト君...君は...何者だ?」

 

全く眼を逸らす事なく、ナルトに問いかけるイタチ。

 

しばし沈黙したのち、ナルトが、フッと笑った。

 

「やっぱり、お前は凄ぇヤツだってばよ...流石にサスケが憧れてただけあるな...」

 

これまで、ナルトと対峙したほとんどの敵は、ナルトの容姿を見て油断し、そこを突かれて負ける者がほとんどだった...

 

先ほどの鬼鮫もそうだ。イタチには幾分劣るだろうが、鬼鮫とて、暁のメンバー。

ああも、あっさり倒せたのは...本人が言ったようにナルトを人柱力と言ってもただの下忍の子供...と侮っていたからだ。

 

しかし、イタチは違う。

もちろん、目の前で鬼鮫があっさり殺された事もあるのだろうが、それをマグレとは考えない。油断なく身構えている。

 

「良いだろう...話してやるってばよ...お前には聞く権利があるだろうしな...まあ、この話を信じるかどうか...それは、お前次第だけどな。」

 

そして、ナルトは語り始める。自らの事...

そして、自身の前世におけるイタチやサスケとの関わり...そして、その最後...

 

総てを聞き終えたイタチは、静かに考えていた...

 

確かに、俄には信じがたい話ではある...

六道仙人...時空間忍術による時間逆行...

 

全て、伝説上の話だ...

だが、嘘というには余りにも話が生々しかった...

 

それに、ナルトの戦闘力はあまりにも高すぎる...

何よりも、自分の真実を知っていた...

 

「ナルト君...仮にその話が本当だったとして...君は俺に何を望んでいる?」

 

「どういう意味だってばよ?」

 

「君の言うことが真実なら、君は今日ここで...俺たちが君に接触することを知っていた事になる...そして、暁の目的が尾獣にある以上...君にとってもこの接触は危険な事だったハズだ...」

 

「..................。」

 

「事前に知っていたなら、ルートを変えるなり、もっと早く出発するなり、接触を回避する方法もあった。だが、君はあえて俺たちと接触した...そして鬼鮫を邪魔と言って殺し、俺をここに誘い込んだ...つまり、俺に用事があったと見るのが正しいだろう...違うか?」

 

イタチの推測...その推測にナルトは、

 

「いや...合ってるってばよ。」

 

肯定した。

 

「確かに俺はあんたに用があった...」

 

ナルトは、単刀直入に告げる。

 

「イタチ...志村ダンゾウは死んだ...俺が殺した...」

 

「何!」

 

驚くイタチ...

 

「アイツは俺に枷をかけようと、俺の大事な人を誘拐しようと画策したんだってばよ。俺は木の葉への牽制の為に見せしめとして屋敷ごと、ヤツを消し飛ばした。屋敷にダンゾウがいるのはしっかり感知してたからな。ダンゾウは間違いなく死んだハズだってばよ。」

 

「なん...だと...」

 

それを聞いてイタチは、固まってしまう。

 

「イタチ...あんたが、ダンゾウの指示で暁のスパイをやってるのは知ってる...だが、アイツはもういない...だから...暁から抜けてくれねぇか?それが俺の頼みだってばよ...」

 

ナルトの頼みを聞いたイタチ...

 

「それは...出来ない...暁は木の葉の想像を超える組織だ...放っては置けない...」

 

しかし、その頼みを拒否するイタチ。

 

「暁は、俺が潰す...やつらの狙いが人柱力である以上、敵対するしか道が無いからな...長門たちには悪いけど...」

 

「それでも、俺は...」

 

イタチは、それでも決断できない。

 

だからナルトは、イタチの心を動かす言葉を口にする。

 

「イタチ...あんたがサスケの為に、その生涯をかけて願ったサスケの幸せは、あんたのせいで叶わないんだってばよ...」

 

「どういう事だ?」

 

「サスケは結局、あんたの真実を知った...その結果、木の葉転覆を目論み、テロリストとして、各国に指名手配された。第4次忍界大戦の後は、家族こそ出来たが...罪の意識が消えなかったんだろうな...ずっと贖罪の旅を続けてた...本当は、家族と共に在りたかったハズだ...。それでも自分の過ちを償う...そう言ってほとんど木の葉に帰ることは無かった...」

 

「.........。」

 

「イタチ...あんたにとって、サスケが何よりも大事だったのは解る..だけど、未来のあんたが言っていたってばよ?『自分は何もかも一人でやり過ぎた...』って...」

 

「.........だが、俺が暁から抜けたとしても、俺が木の葉で犯した罪が消える訳ではない。木の葉の根幹を揺るがす事件だ...木の葉の上層部が、真実を公表するとも思えない...俺やお前がそれを伝えたとしても、誰も信じないだろう?どうするつもりだ?」

 

ナルトから聞いた未来の自分の言葉...そしてサスケの幸せ...その事に心を動かされたイタチ。だが、懸念はまだある。

 

「そこでだ...イタチ...あんたにはここで死んでもらう...」

 

ナルトは、そう言うと六道仙人モードに再びなった。

 

「!?」

 

「そろそろサスケたちも来るみたいだ...精々本気で抵抗してくれってばよ?」

 

「なるほど...そういう事か...だが、手加減はせんぞ?それでお前が俺に勝てるか...だ。」

 

ナルトの言葉に何かを察したイタチ...

そう言うと、写輪眼を発動させ構える。

 

「上等だってばよ!」

 

少しの間小競り合いをする両者。

 

(そろそろか...)

 

自来也とサスケの気配を感じたナルトは、イタチを見る。

 

すると、イタチの眼は万華鏡写輪眼になっていた。

 

『月読』

 

ビクンッ...

 

ナルトの動きが止まる。

 

イタチの特別な幻術『月読』によって、今ナルトは三日間...様々な手法で痛め付けられる悪夢を見ている。

 

「ナルト君...結局、何をするにも力がいる...君が俺を助けようとしてくれたのは理解したが...俺に勝てないなら...結局ここまでだ...」

 

イタチは、クナイを構えナルトにゆっくりと近付いた。

 

「ナルトォ!」

 

その時、自来也に背負われたサスケが、その場に現れる。

 

その光景を見て叫ぶサスケ。

 

イタチのクナイがナルトに刺さる...その瞬間...

 

「わりぃな...イタチ...俺に幻術は効かねぇんだってばよ...」

 

ナルトの呟きと共に、ナルトのクナイがイタチを刺した...

 

倒れるイタチ。

 

サスケは、その光景を見て呆然としていた。

 

「殺ったのかのぉ?」

 

近付いてきたナルトに自来也が聞く。

 

「ああ...うちはイタチは、死んだ。」

 

『うちはイタチは死んだ。』

 

その言葉がサスケの脳裏を何度も叩く...

 

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ...

 

「ふざけるなぁ!ナルトォ!アイツは俺が...」

 

サスケはそれをようやく認識すると、今度は興奮し叫びだす。

 

「ハァ...ハァ...アイツは...俺が...」

 

「む!イカンのぉ...」

 

もともと、まともに動くことすら困難なサスケの身体...

 

興奮し、叫んで動こうとした為に傷が開いてしまっていた。

 

「サスケ...お前にはわりぃが、お前の夢の一つはもう永遠に叶わないってばよ。」

 

ナルトは、そんなサスケに残酷な現実を突きつける。

 

「ナルトォ!」

 

あまりの怒りに、サスケは千鳥を発動させ、ナルトを攻撃しようとしたが、もはや千鳥を使うだけのチャクラの無いサスケはそのまま気絶してしまう。

 

「エロ仙人...サスケを宿に連れていってくれっか?今は、時間を置いた方が良いってばよ...」

 

「お前はどうするんかのぉ?」

 

「後始末...俺が背負ったこの求道玉は、触れたあらゆる物を消すことが出来るんだってばよ...大蛇丸に穢土転生で利用されたら可哀想だってばよ...コイツはもう十分苦しんだ。」

 

ナルトは悲しそうに答えた。

 

「わかった...ワシはサスケを連れて先に戻っておるからのぉ...」

 

自来也は、そう言うと再びサスケを背負い飛び立った。

 

「さて...」

 

ナルトは、右手の掌をイタチの傷口にあてる。

 

すると、イタチの傷が塞がりやがて目を醒ますイタチ。

 

「これで...イタチ...お前は死んだ...なにしろ伝説の三忍の一人...自来也が証言してくれるしな。」

 

「色々聞きたいことはあるが、一つ...何故月読が効かなかった?あれは本来回避は不可能な幻術だ。かかった瞬間には時間も空間も俺が支配した場所で俺の設定した幻を見る事になる。例えすぐに解いたとしても、それは幻により精神に多大なダメージを負った後。それが何故...」

 

『それは、ワシが話してやろう。』

 

イタチの質問...それを聞いたナルトは、何故か口調が変わる。

 

『なにしろ、ナルトのヤツは説明が下手くそなんでな...』

 

「...九尾か?」

 

『ほぉ...すぐに気付くとはな...流石だ...』

 

感心する九喇嘛。

 

『さて...お前の疑問だが...簡単だ...ワシがナルトのチャクラを乱したからだ。お前がナルトに幻術をかけようとナルトのチャクラに干渉した瞬間...それに支配される前に消し飛ばした。』

 

「.........。」

 

『その術が時間を無視出来たとしても、幻術である以上、お前のチャクラがナルトに干渉し、支配してからその効力は発揮される。ワシはその前の段階で止めたと言うことだ。』

 

「つまり、俺たち人柱力...尾獣と仲良くなった俺たちは...幻術使いには最悪の敵って事だってばよ?」

 

再び、ナルトが口を開く。

 

「なるほどな...」

 

九喇嘛の説明に納得するイタチ。

 

「まぁ、とにかくこれで、お前は死んだ事になった。名前を変えて、別の人間として生きてくれってばよ。」

 

「サスケはどうなる?」

 

「サスケは暫くは立ち直れないだろうけど、今はそっとして置いた方が良いってばよ。」

 

「わかった。サスケのことはお前に任せる。...世話になったなナルト。」

 

「そう思うなら、いずれ作る...俺の新しい里作りに協力してくれねぇか?」

 

「新しい里?」

 

「もうすぐ、俺と...俺の大事な人...日向ヒナタは木の葉を抜ける。それに、他の人柱力にもコンタクトを取った。俺たちのように、居場所の無い人間を集めた新しい里を作りたいんだってばよ...」

 

ナルトは、これからの構想を語った。

 

「良いだろう...ほとぼりが冷めて少し経ったら、俺もそこに合流しよう。」

 

それを聞いたイタチは、ナルトの頼みを聞くことにした。

 

どちらにしても、すでにイタチ自身...自分の居場所が無いのだ。ナルトに協力することで、自分の居場所を作ることができる。

 

なにより...サスケの動向を見守れる可能性が高かった。

 

こうして、イタチもまた未来とは違う歴史の中、違う生き方をする事になるのだった。

今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。

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