逆行したナルトの物語 完結   作:アーク1

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綱手

人柱力会議から、さらに数日が経過した。

 

ナルトと自来也は、綱手の情報を求め大きな街へと来ていた。

 

そこで、綱手が短冊街にいることを突き止めた自来也は、ナルトを伴い目的の場所へと向かっていた。

 

その道すがら...

 

「のぉ...ナルト?」

 

「ん?なんだってばよ。」

 

「綱手のヤツに会う前に、一つ聞いておきたいんだが...」

 

自来也は、そう言うとナルトに聞いた。

 

「綱手のヤツは最初、火影就任を断ったと言っておったな?」

 

「ああ...前にも言ったと思うけど...『火影なんてクソだ。馬鹿以外やりゃしない...』って言ってたからな...」

 

そのあまりの言動に頭を抱える自来也...

 

「綱手のヤツはそこまで言ったのか...それでよく火影を引き受けることになったのぉ...」

 

「あの時は、その言動にキレた俺が綱手のばあちゃんに喧嘩を売ったんだよなぁ...」

 

「それはまた...命知らずだのぉ...」

 

自来也は、綱手に喧嘩を売るという事を想像して冷や汗を流した...

 

「もちろん、当時の俺が敵うわけもないんだけど...ちょうどエロ仙人から螺旋丸を教わっててな...第二段階までは習得してて、それをぶつけようとしたんだってばよ...まあ、当たらないわデコピン食らうわ、散々だったけど...」

 

「で、その螺旋丸(未完成)を見た綱手の婆ちゃんと賭けをすることになったんだってばよ...一週間でマスターすれば、ばあちゃんの首飾りを貰う...マスターできなければ有り金を渡す...って内容の賭けをさ...」

 

「.........(綱手のやつがあの首飾りをのぉ...)」

 

自来也は、その話を聞いたときに思った。

綱手はその時既に、ナルトの何かに期待していたのだと。

 

「で、一週間後...大蛇丸も三代目に封印された腕をなんとかしてもらうために、ばあちゃんの所に来ていてな...戦闘になったんだってばよ...その戦闘で螺旋丸をマスターして賭けに勝ったんだけど...その後、理由はわかんねぇけど...ばあちゃんも火影の就任を受けることにしたんだよな...」

 

「う~む...イマイチ要領を得んのぉ...(以前のナルトは火影を目指し続けていたそうだから...或いは...)」

 

ナルトの話では、綱手の心変わりの理由まではわからなかったが、首飾りを賭けるという言葉から、おおよその理由を推察した自来也。

 

おそらく、以前のナルトにナワキやダン...二人の男を重ねていたのかもしれない...そう考えた。

 

しかし、今のナルトは火影など目指してはいない...それどころか里を抜けようとしている程だ...

 

(これは...思った以上に難易度が高そうだのぉ...)

 

どうやって綱手を説得するか...

少し憂鬱になる自来也だった。

 

そして、短冊街に到着した自来也たち。

 

ある居酒屋にて、偶然にも綱手に会うことに成功する。

 

「ふん...懐かしい顔だ...私に何か用事かい?」

 

自来也に会うなり、憎まれ口を叩く綱手。

 

「率直に言う...綱手...里からお前に、五代目火影就任の要請が出た。」

 

「!?」

 

自来也の言葉に驚く綱手とシズネ。

 

「お前があちこちで遊び呆けている間に、木の葉の情勢は大きく変わってのぉ...」

 

「大蛇丸が、木の葉に戦争を吹っ掛けたって話は、噂話程度には情報を仕入れてる...だけどそれは失敗したそうじゃないか?」

 

綱手が言う。

 

「まさか...木の葉崩しで三代目様が...」

 

シズネは最悪のシナリオを考える。

 

「いや...三代目は元気なんだが...」

 

それを否定する自来也...しかし、その歯切れは、悪い...

 

「なんだ...知ってることがあるなら、はっきり言いな!」

 

綱手か後を促す...

 

「ちと...その後の政治的判断に失敗してのぉ...責任を取って辞任したって訳だ...」

 

チラリとナルトを見てから言う自来也。

 

ナルトは、我関せず...黙々と食事をしていた。

 

「猿飛先生は、何したってのさ?」

 

「それは...こんな場所では言えんのぉ...それで...返答は?引き受けてくれるか?」

 

自来也の問いに少し考える綱手...

 

「どうなんだ?綱手...」

 

自来也が再度聞く。すると...

 

「あり得ないな...断る。」

 

綱手は、そう言って拒否する。

 

(やっぱりな...)

 

ナルトは、予想通りの返答に静かに思っていた。

 

「どうしてもダメかのぉ?」

 

自来也は、なおも食い下がる。

 

「だから言ったろ?エロ仙人...綱手のばあちゃんに頼むより、端からエロ仙人が火影をやった方が良いってばよ...」

 

そんな自来也をからかうかの様に、ナルトが口を挟んだ。

 

「自来也...さっきから当然のようにお前の横にいるそのガキはなんだ?おまけに人をババア呼ばわりするとは...失礼なガキだね...」

 

ナルトの言動にカチンと来た綱手が自来也に、訊ねる。

 

「......うずまきナルトだよ...」

 

(なるほど...コイツが九尾のガキか...)

 

それだけで、ナルトが木の葉の人柱力だと理解する綱手。

 

「自来也...この子は前の弟子と違って、口がとてつもなく悪い上に、顔まで悪いようだね。」

 

その悪口を聞き流しアクビをするナルト...

 

「おまけに態度も悪い...目上に対する礼儀を知らないガキだね...」

 

額に血管が浮き出るのを懸命に堪える綱手...

 

「四代目と比べられりゃ、誰だってキツいだろーよ...なんせアイツは忍としての器は歴代一だった。術の才に優れ、頭脳明晰...人望に満ち...ワシ並みに男前だったしのぉ...」

 

綱手の様子をハラハラしながら見守りつつ、そう言った自来也。

 

「だが、その四代目すらすぐに死んだ...里のために命まで賭けて...命は金とは違う...簡単に賭け捨てするのは、バカのすることだ。」

 

四代目について、そう評価する綱手...

 

「それは違うってばよ...」

 

その評価を否定したのはナルト...

 

「確かに四代目は命を懸けて里を救った...だけどあの時...九尾に攻撃されそうになった赤ん坊を、その身を盾にして守った...その行為は里のためでもないし、ましてや簡単に命を賭けた訳でもねぇ...ただ家族を守りたい...それだけの強い思いが身体を突き動かしたんだ...家族のために命を賭けるのは...当たり前の事だ...決してバカにされる行動なんかじゃねぇ...」

 

「お前...知ってるのか...あの時の事を...」

 

ナルトの言葉に、四代目がナルトの父親であることを、ナルト自身認識していることに気付いた綱手...

 

「知ってる...四代目が俺に九尾を封印したこともな...」

 

「.........それでも...父親を擁護するのかい?」

 

「別に四代目を、擁護してる訳じゃねぇってばよ...自分の子供を助けようと命を賭けた...その行動は決してバカにされるもんじゃねぇって、そう言ってるだけさ...その後、里のために俺を人柱力にした事は、また別の事だってばよ...」

 

「まあ、四代目についてはともかく...私のじいさんも二代目も...戦乱の収拾を何よりも望んだみたいだけど...結局は夢半ばに里のために犬死にしただけ...」

 

当事者のナルトが割りきっている以上、四代目を引き合いに出すのは悪手と考えた綱手は、初代と二代目を引き合いに出す。

 

「変わったな...綱手...心でどう思ってきたのかは知らねーが、口にまで出すとはのぉ...」

 

「ふん...こう見えて五十代なんでね...歳月は人を変えるのよ...」

 

「火影なんてクソよ...バカ以外やりゃしないわ...」

 

(本当に言いやがったのぉ...綱手のやつ...)

 

「もう良いだろ?エロ仙人...火影ってのは木の葉にとっての心の拠り所でなきゃならねぇ...伝説の三忍ってネームバリューは良いけど、火影をクソだ...なんて言うヤツに任せるわけにはいかねぇってばよ...」

 

呆れ口調で、続けるナルト。

 

「だいたい、綱手のばあちゃんはすぐにキレるし、面倒くさがりだし、口も悪いし、火影に向いてないってばよ...」

 

ブチッ

 

何かが切れる音がする...

 

「さっきから、随分となめた口を聞いてくれるね...ガキ...この私に向かっていい度胸じゃないか!表へ出な?」

 

綱手は、ナルトにそう言い放つと、外に出ていった。

 

「ナルト!お前何してくれるんかのぉ...」

 

焦る自来也...

 

「まあ、なっちまったものは仕方ないってばよ...」

 

ナルトは、苦笑いしながらそう言うと外に向かった。

 

自来也は肩を落として、その後を追うのだった...

今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。

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