時間は少し遡る...
ナルトが綱手の説得に成功し、一行は木の葉へと戻ってきた。
木の葉の門の前にて...
「やれやれ...まさか、こんな形でここに戻ってくることになるとはね...」
懐かしい木の葉の里を見て、一人嘆息する綱手...
「良いじゃないですか、綱手様。きっと木の葉の人達も喜んで迎えてくれますよ。」
シズネは、嬉しそうに綱手を励ます。
綱手の付き人として、綱手の火影就任はとても嬉しい事なのだ。
(どうだかね...)
シズネの言葉に、あまり楽観的になれない綱手。
「さて...いつまでも、ここで、こうしておるわけにもイカン。中に入るとするかのぉ...」
自来也の言葉で中へと向かう一行。
「こ、これは自来也様。それに綱手様まで...おかえりなさい。」
門番の忍が、自来也たちに気付き敬礼する。
「お前は...」
その中にナルトがいることに、何かを言いたそうにする門番だったが、自来也が一睨みして黙らせる。
そうして、木の葉の里へと久しぶりに足を踏み入れた綱手。
一行は、そのままヒルゼンのいる火影室へと足を進めていた。
勿論、綱手の発見...そして火影就任の了承についての報告するためである。
現在は、まだヒルゼンが火影業務を行っていた。
火影を辞める事を公表したヒルゼンではあったが、後任が決まらない為辞めることが出来なかったのだ。
その道すがら...
ヒソヒソ...ヒソヒソ...
「.........。」
ヒソヒソ...ヒソヒソ...
「.........。」
一行を目撃した木の葉の人々は、その中にナルトを発見すると、近寄ることはせず遠巻きに見ては、小声で話していた。
「おい、ナルト...あいつらぶん殴ってもいいか?」
その露骨な視線にいい加減キレかけていた綱手は、ナルトに向かって言った。
「それは、止めた方が良いってばよ。」
綱手の言葉に、苦笑しながら言うナルト。
「何故だ?」
「あれで怒ってたら、木の葉の人間がほとんどいなくなっちまうってばよ...」
「.........。」
ナルトの記憶は見ていたが、改めて自分の目で見ると、ナルトの現状の酷さに何も言えなくなる綱手。
「ばあちゃんが気にすることじゃねぇってばよ...」
そんな綱手にナルトが気にするなと伝えるが、同じ木の葉の人間として...何よりもこれから木の葉を率いる事になる次期火影として、ハイそうですか...等と簡単に頷く訳にはいかなかった。
そんな綱手の心境をなんとなく理解しているナルトは、それ以上特に言うことはなく、一行はそのままヒルゼンの元へと向かった。
そうして火影室の前まで来たナルトたち。
中に入ろうとすると、ナルトが自来也に告げた。
「エロ仙人...わりぃけど、俺はここまでだってばよ。」
「む...何故だ?お前さんも今回の任務には携わっていたし、報告も一緒にするべきだと思うんだがのぉ...」
「正直...じいちゃんとは顔を合わせ辛いんだってばよ...」
ナルトの言葉に、納得する自来也。
確かに、ヒルゼンが火影を辞する事になったのは、ナルトの里抜け発言のせいだ。
(とは言え、あれは猿飛先生の自業自得だと思うがのぉ...)
「わかった。報告はワシらのほうで済ませておく。」
「サンキュー、エロ仙人。それじゃあ、綱手のばあちゃんとシズネのねえちゃん、後は頼むってばよ。それから...エロ仙人...強く生きろよ?」
そう言って、ナルトはその場を後にした。
「ナルトのヤツ...何を言っておるんかのぉ?」
ナルトの捨て台詞が気になる自来也...
「まあ、良いだろ。それよりさっさと火影室に入るよ?」
綱手が、入室を促す。
火影室に足を踏み入れる自来也たち。
「おお...戻ったか自来也。首尾よく綱手を連れ戻す事が出来た様じゃな。」
入室した自来也たちを歓迎するヒルゼン。
「なに...ナルトのヤツが上手いこと綱手のヤツを説得してくれてのぉ。」
「アレを説得と言うのか?」
綱手が自来也にツッコむ。
「プッ...確かに説得とは言い辛いですけど、綱手様に言うことを聞かせるには、巧妙な手だったと思いますよ。」
シズネは、その時の事を思い出して吹き出す。
確かに賭けを持ち掛け、戦闘を行うことを『説得』とは言い辛いだろう。
それでも、綱手を口で普通に説得するよりも、ずっと良い手だった。
「そうか...ナルトがのぅ...」
ナルトの名前に、疲れた表情を見せるヒルゼン。
「.........三代目...ナルトの件は聞いた。そして、ここに来る途中、里の反応も見た。正直...今更、木の葉にナルトを残すことは不可能だ。」
「......わかっておる。」
綱手の言葉に、やや遅れて返事をするヒルゼン。
「さて、綱手。自来也から聞いていると思うが、お前に五代目火影をやって貰うことになった。了承してくれるな?」
ヒルゼンは気持ちを切り替えると、綱手に告げる。
「わかっている。五代目火影として私は戻ってきたのだからな。」
「ならば良い。早急に引き継ぎを済ませたい。明日、上役を集めて顔合わせを済まそう。」
「わかった。その場には、シズネも連れていくが構わないな?」
ヒルゼンの提案に、条件を付ける綱手。
「何故じゃ?」
「シズネには引き続き、私の補佐をしてもらうつもりだからさ...」
「わかった。」
綱手の言葉に理解を示すヒルゼン。
「自来也...折角だ。お前も出ろ。」
と、綱手は今度は自来也を見ると、そう言った。
「な、何故ワシまで...」
慌てる自来也。
「もともと、最初に五代目火影を打診されたのはお前だろ?一応、顔くらい出しておけ。」
「ぐっ...わかった。」
正論であるが故に、頷かざるを得ない自来也だった。
翌日...
会議室には、ご意見番であるホムラたちを始め、木の葉の上役が集まっていた。
「さて...私が、今度五代目火影に就任する綱手だ。」
集まった上役たちに挨拶をする綱手。
自来也は、席には付かず壁にもたれ掛かって、その様子を見ていた。
「うむ。綱手が五代目就任を了承してくれて、ホッとしたわい。」
上役の一人が言う。
その場に集った者たちも、異論は無いようだ。
「さて...私が火影を継いだからには、火影としてお前たちに、一言言っておくことがある...」
「なんじゃ?」
「今回の騒動...三代目が責任を取って終わったが...私から言わせれば木の葉全員の責任だ。」
「なんだと!」
思わず立ち上がる上役の一人。
「うずまきナルトが里を抜ける事になったのは誰のせいだ?」
「それは...三代目がワシらの制止を聞かず、あんな式典を開いたから...」
上役の言葉...
「違うだろ?...それは里を抜けるのに、ちょうど良いタイミングだっただけだ...」
しかし、綱手はそれをばっさりと否定する。
「.........。」
「ナルトが里を抜けるのは、抜けたいと思わせる程に、木の葉があの子を迫害してきたからだろ?」
「それは...」
綱手の言い分に、言葉を詰まらせる上役。
「そうだ...そしてそんな風潮を作り出したのは、あの子を九尾の生まれ変わりとして扱った、あんた達木の葉の上層部だろ...」
「し、仕方なかったのだ。あの時は、里のため...そうする必要があった。」
綱手の糾弾に言い訳を始める上役達。
「ふん...その結果、木の葉から人柱力がいなくなるって訳か?」
「ぐ...」
「まあ、良い。結局責任は三代目が取った。私は、一言言っておきたかっただけさ。」
綱手の糾弾が終わりホッと一息する上役達。
「さて、私が火影になるに当たって、秘書を付ける。ここにいるシズネだ。」
綱手は、シズネを紹介した。
ようやく、五代目火影就任の議題内容に入った会議。
シズネの事は上役達も承知しているため、特に混乱は無い。
頷く上役達。
「それから、私の相談役を一人指名したいのだが、構わないか?」
「誰を指名するのだ?」
ホムラが聞くと、綱手がニヤリと口角を挙げる。
その表情を見て、自来也は嫌な予感を覚えた。
(あの表情...見覚えがある...ナルトの精神世界で、ナルトに耳打ちされていたとき...)
「そこにいる自来也を指名したい。」
「なぁ!?」
綱手は自来也を相談役に指名した。
驚いて、妙な声を上げる自来也。
「ほぅ...自来也をか。」
「そうだ。ナルトが木の葉を去る以上、木の葉の戦力は著しく低下したと他里に見られるだろう。だが、私と自来也...三忍のうち二人が木の葉に戻ったと発表すれば、他里への牽制にはなるハズだ。」
「うむ...確かにな。」
「そう言うわけだ。自来也。よろしく頼むぞ?」
イイ顔で自来也に、そう言った綱手。
周りの上役達も、その絶妙な手には感心していた。
「いやいや、よろしく頼むじゃねえのぉ。ワシにはやらなきゃならない事があるんだ。そんな暇はねぇっての。」
一人、自来也だけが反対していた。
だが、綱手は自来也の肩に手を置くと...
「自来也...私はお願いしてる訳じゃない...五代目火影として命令しているんだ...」
楽しそうに、そう言った。
「おぅっふ...」
ガックリと膝を付き、絶望する自来也。
そんな自来也に、綱手は優しい声で言った。
「自来也...書類仕事とか...面倒なことはお前に任せたぞ?」
「ぐっはっ」
完全に倒れこむ自来也。
「こ、こんな事なら...最初からワシが火影を受けていれば良かったかのぉ...」
自来也は最後にそう呟くのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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希望しない