逆行したナルトの物語 完結   作:アーク1

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木の葉に戻った綱手姫

時間は少し遡る...

 

ナルトが綱手の説得に成功し、一行は木の葉へと戻ってきた。

 

木の葉の門の前にて...

 

「やれやれ...まさか、こんな形でここに戻ってくることになるとはね...」

 

懐かしい木の葉の里を見て、一人嘆息する綱手...

 

「良いじゃないですか、綱手様。きっと木の葉の人達も喜んで迎えてくれますよ。」

 

シズネは、嬉しそうに綱手を励ます。

 

綱手の付き人として、綱手の火影就任はとても嬉しい事なのだ。

 

(どうだかね...)

 

シズネの言葉に、あまり楽観的になれない綱手。

 

「さて...いつまでも、ここで、こうしておるわけにもイカン。中に入るとするかのぉ...」

 

自来也の言葉で中へと向かう一行。

 

「こ、これは自来也様。それに綱手様まで...おかえりなさい。」

 

門番の忍が、自来也たちに気付き敬礼する。

 

「お前は...」

 

その中にナルトがいることに、何かを言いたそうにする門番だったが、自来也が一睨みして黙らせる。

 

そうして、木の葉の里へと久しぶりに足を踏み入れた綱手。

 

一行は、そのままヒルゼンのいる火影室へと足を進めていた。

 

勿論、綱手の発見...そして火影就任の了承についての報告するためである。

 

現在は、まだヒルゼンが火影業務を行っていた。

 

火影を辞める事を公表したヒルゼンではあったが、後任が決まらない為辞めることが出来なかったのだ。

 

その道すがら...

 

ヒソヒソ...ヒソヒソ...

 

「.........。」

 

ヒソヒソ...ヒソヒソ...

 

「.........。」

 

一行を目撃した木の葉の人々は、その中にナルトを発見すると、近寄ることはせず遠巻きに見ては、小声で話していた。

 

「おい、ナルト...あいつらぶん殴ってもいいか?」

 

その露骨な視線にいい加減キレかけていた綱手は、ナルトに向かって言った。

 

「それは、止めた方が良いってばよ。」

 

綱手の言葉に、苦笑しながら言うナルト。

 

「何故だ?」

 

「あれで怒ってたら、木の葉の人間がほとんどいなくなっちまうってばよ...」

 

「.........。」

 

ナルトの記憶は見ていたが、改めて自分の目で見ると、ナルトの現状の酷さに何も言えなくなる綱手。

 

「ばあちゃんが気にすることじゃねぇってばよ...」

 

そんな綱手にナルトが気にするなと伝えるが、同じ木の葉の人間として...何よりもこれから木の葉を率いる事になる次期火影として、ハイそうですか...等と簡単に頷く訳にはいかなかった。

 

そんな綱手の心境をなんとなく理解しているナルトは、それ以上特に言うことはなく、一行はそのままヒルゼンの元へと向かった。

 

そうして火影室の前まで来たナルトたち。

 

中に入ろうとすると、ナルトが自来也に告げた。

 

「エロ仙人...わりぃけど、俺はここまでだってばよ。」

 

「む...何故だ?お前さんも今回の任務には携わっていたし、報告も一緒にするべきだと思うんだがのぉ...」

 

「正直...じいちゃんとは顔を合わせ辛いんだってばよ...」

 

ナルトの言葉に、納得する自来也。

 

確かに、ヒルゼンが火影を辞する事になったのは、ナルトの里抜け発言のせいだ。

 

(とは言え、あれは猿飛先生の自業自得だと思うがのぉ...)

 

「わかった。報告はワシらのほうで済ませておく。」

 

「サンキュー、エロ仙人。それじゃあ、綱手のばあちゃんとシズネのねえちゃん、後は頼むってばよ。それから...エロ仙人...強く生きろよ?」

 

そう言って、ナルトはその場を後にした。

 

「ナルトのヤツ...何を言っておるんかのぉ?」

 

ナルトの捨て台詞が気になる自来也...

 

「まあ、良いだろ。それよりさっさと火影室に入るよ?」

 

綱手が、入室を促す。

火影室に足を踏み入れる自来也たち。

 

「おお...戻ったか自来也。首尾よく綱手を連れ戻す事が出来た様じゃな。」

 

入室した自来也たちを歓迎するヒルゼン。

 

「なに...ナルトのヤツが上手いこと綱手のヤツを説得してくれてのぉ。」

 

「アレを説得と言うのか?」

 

綱手が自来也にツッコむ。

 

「プッ...確かに説得とは言い辛いですけど、綱手様に言うことを聞かせるには、巧妙な手だったと思いますよ。」

 

シズネは、その時の事を思い出して吹き出す。

 

確かに賭けを持ち掛け、戦闘を行うことを『説得』とは言い辛いだろう。

 

それでも、綱手を口で普通に説得するよりも、ずっと良い手だった。

 

「そうか...ナルトがのぅ...」

 

ナルトの名前に、疲れた表情を見せるヒルゼン。

 

「.........三代目...ナルトの件は聞いた。そして、ここに来る途中、里の反応も見た。正直...今更、木の葉にナルトを残すことは不可能だ。」

 

「......わかっておる。」

 

綱手の言葉に、やや遅れて返事をするヒルゼン。

 

「さて、綱手。自来也から聞いていると思うが、お前に五代目火影をやって貰うことになった。了承してくれるな?」

 

ヒルゼンは気持ちを切り替えると、綱手に告げる。

 

「わかっている。五代目火影として私は戻ってきたのだからな。」

 

「ならば良い。早急に引き継ぎを済ませたい。明日、上役を集めて顔合わせを済まそう。」

 

「わかった。その場には、シズネも連れていくが構わないな?」

 

ヒルゼンの提案に、条件を付ける綱手。

 

「何故じゃ?」

 

「シズネには引き続き、私の補佐をしてもらうつもりだからさ...」

 

「わかった。」

 

綱手の言葉に理解を示すヒルゼン。

 

「自来也...折角だ。お前も出ろ。」

 

と、綱手は今度は自来也を見ると、そう言った。

 

「な、何故ワシまで...」

 

慌てる自来也。

 

「もともと、最初に五代目火影を打診されたのはお前だろ?一応、顔くらい出しておけ。」

 

「ぐっ...わかった。」

 

正論であるが故に、頷かざるを得ない自来也だった。

 

翌日...

 

会議室には、ご意見番であるホムラたちを始め、木の葉の上役が集まっていた。

 

「さて...私が、今度五代目火影に就任する綱手だ。」

 

集まった上役たちに挨拶をする綱手。

自来也は、席には付かず壁にもたれ掛かって、その様子を見ていた。

 

「うむ。綱手が五代目就任を了承してくれて、ホッとしたわい。」

 

上役の一人が言う。 

その場に集った者たちも、異論は無いようだ。

 

「さて...私が火影を継いだからには、火影としてお前たちに、一言言っておくことがある...」

 

「なんじゃ?」

 

「今回の騒動...三代目が責任を取って終わったが...私から言わせれば木の葉全員の責任だ。」

 

「なんだと!」

 

思わず立ち上がる上役の一人。

 

「うずまきナルトが里を抜ける事になったのは誰のせいだ?」

 

「それは...三代目がワシらの制止を聞かず、あんな式典を開いたから...」

 

上役の言葉...

 

「違うだろ?...それは里を抜けるのに、ちょうど良いタイミングだっただけだ...」

 

しかし、綱手はそれをばっさりと否定する。

 

「.........。」

 

「ナルトが里を抜けるのは、抜けたいと思わせる程に、木の葉があの子を迫害してきたからだろ?」

 

「それは...」

 

綱手の言い分に、言葉を詰まらせる上役。

 

「そうだ...そしてそんな風潮を作り出したのは、あの子を九尾の生まれ変わりとして扱った、あんた達木の葉の上層部だろ...」

 

「し、仕方なかったのだ。あの時は、里のため...そうする必要があった。」

 

綱手の糾弾に言い訳を始める上役達。

 

「ふん...その結果、木の葉から人柱力がいなくなるって訳か?」

 

「ぐ...」

 

「まあ、良い。結局責任は三代目が取った。私は、一言言っておきたかっただけさ。」

 

綱手の糾弾が終わりホッと一息する上役達。

 

「さて、私が火影になるに当たって、秘書を付ける。ここにいるシズネだ。」

 

綱手は、シズネを紹介した。 

 

ようやく、五代目火影就任の議題内容に入った会議。

 

シズネの事は上役達も承知しているため、特に混乱は無い。

 

頷く上役達。

 

「それから、私の相談役を一人指名したいのだが、構わないか?」

 

「誰を指名するのだ?」

 

ホムラが聞くと、綱手がニヤリと口角を挙げる。

 

その表情を見て、自来也は嫌な予感を覚えた。

 

(あの表情...見覚えがある...ナルトの精神世界で、ナルトに耳打ちされていたとき...)

 

「そこにいる自来也を指名したい。」

 

「なぁ!?」

 

綱手は自来也を相談役に指名した。

 

驚いて、妙な声を上げる自来也。

 

「ほぅ...自来也をか。」

 

「そうだ。ナルトが木の葉を去る以上、木の葉の戦力は著しく低下したと他里に見られるだろう。だが、私と自来也...三忍のうち二人が木の葉に戻ったと発表すれば、他里への牽制にはなるハズだ。」

 

「うむ...確かにな。」

 

「そう言うわけだ。自来也。よろしく頼むぞ?」

 

イイ顔で自来也に、そう言った綱手。

 

周りの上役達も、その絶妙な手には感心していた。

 

「いやいや、よろしく頼むじゃねえのぉ。ワシにはやらなきゃならない事があるんだ。そんな暇はねぇっての。」

 

一人、自来也だけが反対していた。

 

だが、綱手は自来也の肩に手を置くと...

 

「自来也...私はお願いしてる訳じゃない...五代目火影として命令しているんだ...」

 

楽しそうに、そう言った。

 

「おぅっふ...」

 

ガックリと膝を付き、絶望する自来也。

そんな自来也に、綱手は優しい声で言った。

 

「自来也...書類仕事とか...面倒なことはお前に任せたぞ?」

 

「ぐっはっ」

 

完全に倒れこむ自来也。

 

「こ、こんな事なら...最初からワシが火影を受けていれば良かったかのぉ...」

 

自来也は最後にそう呟くのだった。

 

今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。

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