逆行したナルトの物語 完結   作:アーク1

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日向の屋敷にて...

火影室の前で、自来也たちと別れたナルト。

 

そのナルトは、帰還の挨拶を兼ねて日向の屋敷に向かっていた。

 

既にヒアシとの顔合わせは済ませており、ヒアシもナルトの事を気に入ってくれた。

その為、いつでも屋敷に入って構わないとお墨付きも貰っていたのだ。

 

「お邪魔します。」

 

「あなたは!」

 

日向家に足を踏み入れたナルト。

 

そのナルトを待っていたのはハナビとの遭遇であった。

 

「.........何かご用ですか?」

 

ハナビの表情は固かった...その表情のまま、挨拶も無く用件を聞くハナビに、苦笑するナルト。

 

前回の訪問時、もちろんヒナタの実妹であるハナビとも顔を合わせている。

 

しかし、前世では良好な関係を築いていた義妹のハナビも、この世界では初対面...

 

ましてや、ハナビからすれば、大好きな姉を木の葉から連れ去ろうとする憎い相手である。

 

この頃のハナビとヒナタは、決して良好な関係では無かった。

 

憧れていた姉を負かしてしまったハナビ...

その結果、父はヒナタを見捨てハナビもまた、跡目を継ぐために厳しい稽古を積んでいた。

 

年下の自分が、姉を負かしてしまった負い目...

跡目を継ぐことになってしまったプレッシャー...

そして、父の期待に応えようとする責任感...

 

全てが、ハナビからヒナタを遠ざける要因となっていた...

 

しかし、ハナビは決してヒナタを嫌いになったわけではない...

 

確かに直接試合をしたときに、ヒナタへの失望はあった。

それでも、昔は憧れ、目標として来た姉なのだ。

 

嫌いになれるハズなど無い。

 

その姉を、木の葉から連れ去ろうとする目の前の少年...

 

ハナビは、その少年が浮かべている苦笑に苛立つ。

 

「.........もう一度聞きます...何をしに来たのですか?」

 

「そりゃあ、もちろんヒナタに会いに来たんだってばよ。」

 

「生憎ですが、姉は父との稽古で忙しいんです。貴方と会う時間はありません。」

 

そう...ヒナタは今忙しい。

 

数週間前、ヒアシと和解したヒナタは現在、ヒアシ自らが指導をして日向流を極めようとしていた。

 

その稽古を間近で見たハナビは戦慄した。

 

自分が父と稽古していた時...当然厳しい稽古だった。

日向の跡目として恥じぬ様にと、過酷な修行を行ってきた自負もあった。

 

しかし、ヒアシとヒナタの修行はハナビのものとは別種である。

 

実戦を想定し、一歩間違えれば死ぬ可能性すらありえる組手...

倒れるまで続けられる八卦の型取り稽古...

 

ハナビは一度、二人を止めようとした...

 

しかし、ヒアシは勿論...ヒナタも辞めようとはしなかった。

 

「ナルト君の隣に立つ為に...私はもっと強くならないといけないの...」

 

ヒナタは、そう言って稽古を再開してしまった。

 

その時の事を思い出し、思わず唇を噛むハナビ。

 

「わかった。じゃあ挨拶だけさせて貰うってばよ。」

 

ナルトは、ハナビの言葉に頷いて言う。

 

「.........何故なんですか?」

 

そんなナルトに、ハナビが圧し殺した声で言った。

 

「ん?」

 

「何故...姉様が、あなたなんかを好きになったんですか?」

 

「.........。」

 

「以前、私はあなたを街で見掛けた事があります。その時のあなたは、街のお面屋に罵倒されてました。『疫病神』...と。その時、私の侍女のナツが貴方には関わるなと言いました...」

 

「.........。」

 

ハナビの言葉を黙って聞いているナルト...

 

「その通りでした...あなたに関わったせいで、姉様は木の葉から出て行くことになってしまった...何故...姉様はあなたなんかを...」

 

一度、爆発してしまった感情は、止めることが出来ない...

 

ハナビは、自身の思いを吐き出す...

 

そんなハナビに対し、ナルトが静かに口を開く。

 

「.........そうだな...俺はヒナタじゃ無いから、その問いには答えられない...」

 

「.........。」

 

「ハナビが言うように、俺と恋人になったことで、ヒナタが危険になったのは確かだってばよ...だからこそ木の葉にはいさせられない。ここには俺を憎む連中が多くいるからな...」

 

「やっぱり...だったら姉様の為に別れてくれれば良いじゃないですか。これじゃあ、姉様が不幸すぎます。」

 

ナルトの言葉に、激昂するハナビ。

 

「それは違うってばよ。」

 

だが、ナルトはそれを否定する。

 

「ヒナタは決して不幸にはさせない。」

 

「何故...そんなことが言えるんですか?」

 

ハナビが聞く。

 

すると、ナルトはニッと笑い、

 

「俺が、ヒナタを幸せにするからだってばよ。」

 

そう断言した。

 

その言葉に唖然とするハナビ。

 

「あなたは...何故、そんなことを言い切れるんですか...姉様は故郷を追われるんですよ?家族とも別れなければならない...あなたのせいで...それなのにどうして...」

 

大声で叫ぶハナビ。

 

その時、ハナビに声をかける人物がいた...

 

「そこまでだよ。ハナビ...」

 

「!?姉様...」

 

ヒナタだった。

そこにはヒアシもいる。

 

玄関先で、大声で話していれば当然目立つ。 

「ナルト君...帰ってきたんだね...おかえりなさい。」

 

ヒナタはまず、ナルトに挨拶をした。

 

「...ただいま。」

 

ヒナタの挨拶に、答えるナルト。

その表情には苦笑が浮かんでいた。

 

「ナルト...帰ってきたと言うことは、首尾よく綱手様に会えたのだな。」

 

ヒアシが聞く。

 

「はい。今は火影室で三代目に報告をしていると思います。」

 

「そうか...取り敢えずあがりなさい。」

 

ヒアシが言うが、

 

「いえ。今日は挨拶だけで帰ります。」

 

しかしナルトは、やんわりとその誘いを断る。

 

「ナルト君...ごめんね?」

 

「良いってばよ。」

 

「ハナビの事は、任せてくれる?」

 

「ああ。頼むってばよ。俺も...未来の義妹に憎まれていたく無いしな...」

 

「それじゃあ、失礼します。」

 

「うむ...すまんな。また明日、来てくれ。」

 

「はい。」 

 

ナルトは、日向家を後にする。

 

「父上...今日はこのまま稽古を終えても構いませんか?」

 

その後姿を見届けたヒナタが、ヒアシに聞いた。

 

「うむ...ハナビの説得はお前にしかできまい。」

 

ヒアシはすぐに頷くと、邪魔にならぬようにと、自室へと戻っていった。

 

「.........。」

 

ヒナタと二人きりになったハナビは、ばつの悪そうな顔をしていた。 

 

「ねぇ...ハナビ...」

 

「私は...間違ったことは言ってない。」

 

ヒナタがハナビに声をかけると、それに被せるようにハナビが言った。

 

「だってそうでしょ?あの人と関わったせいで、姉様は木の葉を出ていかなきゃならなくなったんだよ?それに家族とも離ればなれになって...」

 

「.........ねぇ...ハナビ...確かに、木の葉を出ることになったし、父上やハナビとなかなか会えなくなる...それは確かだよ?でもね...私は不幸なんかじゃないよ?」

 

「どうして?」

 

ハナビが聞くと、ヒナタはとても幸せそうな顔で、

 

「だって...大好きな人と一緒にいられるんだもん...私は今...凄く幸せなんだ。」

 

そう言った。

 

「なんで、姉様はあの人を好きになったの?」

 

ハナビは、どうしても知りたかった。

 

ハナビの問いに口を開くヒナタ。

 

「.........それはね、ナルト君が人に勇気を与えてくれる人だからだよ。」

 

「勇気?」

 

「ハナビも知ってるよね?昔の私は引っ込み思案で、自分に自信がなくて、争いも嫌いだった...」

 

頷くハナビ。

 

「勿論、私だってそんな自分が嫌いだった...そんなある日、ナルト君が一人で修行する姿を見掛けたんだ...」

 

「.........。」

 

「ナルト君は、アカデミーでは落ちこぼれで手裏剣術もなかなか上達しなかったわ...皆、そんなナルト君をバカにしてた...でも、私はそんなナルト君に共感した...私も日向の落ちこぼれ...きっとこの人も同じだ...そう思ってた...」

 

「でもね...ナルト君はそこで諦めたりしなかった。一人で...いつも遅くになるまで修行して...そんなナルト君を見ていたら、自分も変われるんじゃないかって...こんな私でも変われるんじゃないかって...そう思えたの...」

 

「.........。」

 

「私にとってナルト君は、私に勇気を...光をくれる人...太陽みたいな人なの...」  

 

「だから、私はナルト君が大好きなのよ。」

 

ヒナタは、ハナビの目をしっかりと見つめて断言した。

 

「姉様は...今...本当に幸せなの?」

 

ハナビは、それでももう一度訊ねる。

 

「幸せだよ。」

 

-俺がヒナタを、幸せにする-

 

その時、ハナビは先程ナルトが言ったことを思い出していた。

 

(...口先だけじゃ無いんですね...ナルトさん...)

 

「姉様...明日...あの人が来たら、もう一度話してみるよ...今度はちゃんと...」

 

ハナビはそう言った。

 

「うん。」

 

ヒナタは、その言葉に満足し頷くのだった。

 

次の日、姉の事を含めしっかりとナルトと話をしたハナビはいつのまにか、ナルトと打ち解けていた。

 

それどころか、前日の事が嘘のようにナルトになつくようになっていた。

 

その様はとても仲睦まじく、ちょっとだけヤキモチを焼くヒナタであった。

今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。

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