時間は少し戻る。
ハナビの事をヒナタに任せたナルトは、一人、現在ねぐらにしている死の森の祠へと戻ってきた。
「ハァ...疲れたってばよ...」
ハナビと仲良くなれていないことから、精神的に疲弊していたナルト。
その時、そのナルトに声をかける人物がいた。
「ようやく戻ってきやがったか...ナルト...」
そこにいた人物...それはサスケであった。
「なんだサスケか...怪我はもう良いのか?」
サスケの顔を見たナルトは、目を細めてそう言った。
「ふん...そんなもの...もともと大した怪我でも無いんだ。とっくに完治してるさ。」
サスケはそう言うが、未だに包帯も取れておらず、とても完調には見えない。
何よりも...
「そうか?お前の事だから、治療の途中で病院を抜け出したんじゃねえかと思ってたんだけどな。しかも、その身体でいつ帰ってくるかもわからねぇ俺を、こんな場所でわざわざ張っていた...と...」
ナルトの言葉にビクリッと身体を震わせるサスケ...
「そ、そんなことはどうでも良い...ナルト...俺は、てめぇを殺さなきゃならねぇ!」
その言葉を証明するかのようにサスケの目は、殺意にまみれていた。
「ほぉ...一応聞いておくけど...なんでだってばよ?」
「てめぇはイタチを殺した...」
「うちはイタチは、うちは一族を皆殺しにした張本人だろ?ソイツを殺して感謝こそされても、恨まれる理由は無ぇってばよ?」
「アイツは...イタチは...俺が殺さなきゃならなかったんだ...うちは一族の最後の生き残りとして...その為に、アイツは俺を生かしたんだからな。それをてめぇは...」
ナルトの言い様に激昂するサスケ。
だが、ナルトはサスケの言い分にむしろ呆れた顔をする。
「アホらしい...」
「なんだと!」
「あの時...そもそもイタチの目的は俺であって、お前じゃ無かっただろ?」
「違う!俺は生かされたんだ...イタチへの復讐者として...」
「はっ!そんなの、お前の思い込みに過ぎねぇだろ?」
「なんだと?」
「考えても見ろ?お前はイタチより遥かに劣る...年齢の問題じゃねぇってばよ?...同じ年齢の時を比較してもだ...イタチは俺らの年齢の時には、既に暗部に入る程の力を持っていたらしいじゃねぇか。そんなお前に、イタチが何を期待するってんだ?復讐者として選ばれた?バカらしい...お前がイタチを殺せるハズがねぇってばよ...」
「ナルトォ!」
あまりにも辛辣なナルトの言葉に、我慢が出来なくなったサスケが掴みかかる。
しかし、その攻撃はあっさりとかわされた挙げ句、逆に地面に引き倒されて腕の関節を極められてしまう。
「ぐぁっ!」
「お前が生かされたのが、イタチが自身を殺して貰うため?違う。イタチがお前を生かしたのは、お前を愛していたからだ...」
サスケを拘束しながら、言い放つナルト。
「な...に...」
「イタチがうちは一族を皆殺しにした理由はな...うちは一族が木の葉の里でクーデターを起こすつもりだったからだ...」
「う...そ...だ!」
「イタチは、うちは一族である事よりも、木の葉の忍である事を選んだ...それでも...お前だけは殺せなかった...家族として...両親はクーデターの首謀者...見逃すことは出来ない...だからせめて弟のお前だけでも生きていて欲しかった。」
「うそだ!」
「愛する弟に、憎まれてでも生きていて欲しかった...それがうちはイタチの人生だった。」
「嘘だぁ!!!!」
その瞬間...ナルトに関節を極められていた腕に千鳥を発動させたサスケ。
ナルトは、すんでの所で極めていた関節を離して距離を取る。
「てめぇの言った事なんて、全部デタラメだ。」
「ナルト...てめぇを殺す。」
サスケは再び千鳥を発動させる。
「.........。」
だが、ナルトは構えすらしない。
そのナルトの態度に益々苛立つサスケ。
「うおおおおおおおおおおお...」
そして、サスケはついに動き出す。
真っ直ぐにナルト目掛けて突っ込むサスケ。
そのスピードは、イタチに使った時のソレを上回っていた。
ナルトは棒立ちのまま反応しない...
いや...反応出来ないのだ...サスケはそう思った。
そしてサスケの千鳥がナルト目掛けて向かう。
殺った!
サスケが思った瞬間...
サスケは突然横から衝撃を受け、吹き飛ばされる。
「ぐっ...なにが...」
なんとか立ち上がりナルトを見ると、そこには一本のチャクラの腕が生えていた。
「九尾の力か...」
「.........サスケ...今のお前は俺が相手をするまでも無いってばよ。九喇嘛の尾の一本とでも遊んでいろ...」
ナルトの宣言と共に、チャクラの腕がサスケに向かって伸びる。
その腕は、サスケの動きを正確に捉えていた。
どこまでも追ってくる腕...
『火遁 豪火球の術!』
術で攻撃しても効果はない...
「くっ...だったら...」
サスケは起爆札を持ち、腕に張り付けた。
ドォォォォォォォン!!!!
けたたましい音と共に爆発が起こる。
「どうだ!」
もうもうと立ち込める煙...その煙が晴れると、そこにはまるで変わった様子の無い腕がそこにあった。
顔がひきつるサスケ。
そのサスケに向かって腕が突っ込んできた。
サスケは後ろに跳び、かわそうとするが、ついに捕まってしまう。
「さて...終わりだな...サスケ...」
「ちっくしょう...」
「まあ...なんだ...イタチを殺すっていうお前の夢を潰したのは俺だけど...まさかもう一つの夢も潰す事になるなんてな...」
「もう一つの夢だと?」
「ん?イタチを見て忘れちまったのか?お前の夢はもう一つあったろ?一族の再興って夢が...」
ナルトの言葉に、ハッとするサスケ...
「お前は、この世界に残った最後の『うちは』。お前が死ねば、うちは一族は滅亡だってばよ。」
一瞬、ナルトが何を言っているのかサスケは理解できなかった...
キョトンとするサスケの表情を見たナルトは笑う。
「まさか、お前...俺を殺すつもりだったのに、自分は殺されないとでも思ってたのか?」
サッと顔から血が引いていくサスケ。
この時、ようやくサスケは自分が思い違いをしていることに気付いた。
これまでナルトに接してきて、ナルトは自分の内に入れた人間にはとことん甘いということを理解していた。
例え、自分が傷付こうとも自分の仲間は必ず守ろうとする...
ナルトはそう言う人間だ。
だから、今回の事も笑って許してくれる...
サスケは心のどこかでそう思っていた...
しかし、サスケはナルトを殺そうとした...
それは、明確な敵対行為。
これまでも、ナルトは敵に対しては容赦なくその牙をたてた...
その牙が、今自分に向いている...
ナルトは右手の掌に螺旋丸を作った。
「お前を生かしておけば、また逆恨みから俺の命を狙うかもしれない...それはいずれヒナタを、巻き込むことになるかも知れない...だったら...ここでお前を...」
恐ろしく冷たい声でサスケに話しかけるナルト...
いや、それはまるで独り言の様でもあった。
その時、サスケはナルトの目を見てしまった。
そして、恐怖する...
ナルトの目は虚であった。そこには憎しみも情愛も何もない...
ただ、己の敵を排除しようとしているだけ...
「あ...あ...あああ...」
サスケは知らず知らずの内に身体が震えていた...
怖い...ナルトが...己の死が...イタチへの復讐は叶わず...最後に残った夢もまた、今尽きようとしている...自分の命と共に...
ナルトの螺旋丸がサスケに近づく。
そして、接触する...その間際...
「やめてええええええええええ!」
サクラの絶叫が辺りに木霊した。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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希望しない