時間はまた、遡る。
サクラは、サスケが病院を抜け出してからずっと、サスケを探していた...
そして、今日...偶然ナルトの帰還を知ったサクラは、ナルトにサスケを探してもらおうと、ナルトの元に来ていたのだ。
そこでサクラが目にしたのは、ナルトに逆恨みし、ナルトを殺そうとするサスケの姿...
だが、ナルトとサスケでは実力に差がありすぎる。
ナルトがサスケを制して、終わりだろう...サクラは、そう考えた。しかし、現実は甘くない...
そう...サスケはナルトを殺そうとしたのだ...
殺されたって文句が言える立場ではない。
笑って許す...なんて、本来そうあるわけが無い。
サクラは、自分の楽観的な考えに後悔していた...
そして、ナルトがサスケに何かの術を当てようとする。
それはきっと、サスケの命を奪うほどの威力があるのだろう。
気が付いた時...サクラは、思わず叫んでいた。
「やめてええええええええええ!」
「!?」
サクラの悲鳴が辺りに木霊した。
ナルトの螺旋丸がサスケの鼻先数センチで止まる。
「.........俺ってば一体何を...」
ナルトはこの時、正気を失っていた。
何度言葉を尽くしても、サスケは復讐に生きようとする...
そして今、その対象は自分だった。
ナルト自身、こうなることは予想していた。
しかし、実際に憎しみの篭った目で見られ、命を奪わんとナルトを執拗に攻撃するサスケの姿に、前世での自身の...そして愛する家族の最後がフラッシュバックする...
いつしか、サスケの姿は自分を...何よりも家族を奪った男たちの姿にだぶって見えるようになっていた。
敵は排除しなければならない。敵を生かしておけば、いつかヒナタを巻き込みヒナタを、殺してしまうかもしれない...
それだけは、絶対にさせない...
ナルトにとって、サスケはもはや"敵"という認識しか無くなっていた...
敵を排除する...無感情に、ただ目の前の敵を殺そうとしたその時、サクラの悲痛な叫びがナルトを正気に戻したのだ。
正気に戻ったナルトは、愕然としていた。
(まさかサスケを殺そうとしちまうなんて...ハハ...俺ってば...情けねぇな...いつまでも過去を引きずって...)
「くっ...はぁ...はぁ...はぁ...」
ナルトの拘束が一瞬緩んだ隙に、なんとか脱出したサスケ。
その身体は死の恐怖に震えていた...
スッとサスケを視線で追うナルト...
特に意識したわけでは無いが、それはサスケにとって、恐怖だった。
これまで、ただ復讐のためだけに生きてきたサスケは、その結果自分が死んでも構わないと思っていた...
しかし、ナルトの指摘によって自分が最後の『うちは』であり、自分の命にはうちはの再興がかかっていることにようやく気付いたサスケは、生への執着が生まれていた...
生きたい...生への渇望からナルトに恐怖するサスケ...
その目を見たナルトは苦笑する。
(こうなったら、この状況を利用してみるってばよ...)
一歩前に進むナルト。
サスケは、その分後ずさる。
その時、サスケとナルトの間に立ちふさがる者がいた。
サクラである。
「止めて、ナルト。お願いサスケ君を殺さないで。」
サクラはサスケを抱き、背中を向ける。
「お願いナルト...確かにサスケ君はあなたを殺そうとした...それは許される事じゃ無いのかも知れない...それでも...お願い...サスケ君を殺さないで...」
「サクラ?」
サスケは未だ震えが止まらずにいた。
ただ、呆然としながら自分を守ろうとしてくれているサクラの名前を呼ぶ。
「ナルト...サスケ君の代わりに私を殺してくれても良い...だからお願い...それでサスケ君を許して...」
「な!?」
サクラの言葉に驚くサスケ。
「ダメだ。サクラ...ナルト、お前を殺そうとしたのは俺だろ。サクラは関係ない!!殺すなら俺を殺せ!」
さっきまで、ナルトに怯えていたサスケだったが、サクラが自分の命を身代わりにするように提案した時、その恐怖は一辺に吹き飛んでいた。
あるのは、サクラを守ろうとする意思。
サスケは震えを止め、サクラの前にその身をさらす。
「ダメよ。サスケ君。ナルト...殺すなら私を...」
だが、そのサスケをサクラが止める。
「いい加減にしろ...サクラ...これは俺の問題だ。お前は関係ないだろ。」
「関係あるわよ。だって...」
サクラは、怒鳴った。関係ないハズがない。
「だって...私はサスケ君が好きだから!!!......大好きな人には生きていて欲しいの...」
「!?」
突然の告白に、驚くサスケ。自分を助ける為についた嘘なのではと疑うサスケ。
だが、サクラの表情を見て、そんな感情は無くなっていた。
サクラは、泣いていた...その涙はとても偽りの物とは思えなかった...そしてその言葉も...
「何でだ?」
「え?」
「何で...こんな俺なんかの事を...」
サスケには、どうしても自分が誰かに好意を向けられるような人間だとは思えなかった。
いつも仏頂面で、皮肉屋...
誰かに誘われても、拒否して常に一人だった...
イタチを殺す為に他の全てを犠牲にしてきた...
当然、同じ班になったサクラにも、それほど友好的に接した覚えはない...
それなのに、どうして...
そんなサスケに、サクラが口を開いた。
「最初は、ただのミーハーだったと思う...サスケ君はアカデミーのトップで、顔も格好良いし、他の同級生より大人びていて、クールで...アカデミーのほとんどのくの一は、貴方に憧れていたから...」
「.........。」
「でも、同じ班になって...いろんな任務を一緒にこなして...サスケ君も悩んだり、苦しんだり...私と同じ...普通の人なんだって気付いた...その時に、憧れが恋に変わったんだと思う。」
「サスケ君が、何か重いものを背負ってるのは分かってた...それを果たせず...自分に焦りを覚えていたのも...私は、そんなサスケ君を見て、サスケ君の力になりたいと思った...だからナルトに修行を付けてもらった...今の私の望みは、サスケ君を助けることなの...だから...」
サクラの独白を聞いたサスケは、瞠目する。
「ありがとう...サクラ...こんな俺を好きになってくれて...こんなに...俺に対して真っ直ぐ感情をぶつけてきたのは、多分...お前が初めてだと思う。」
「サスケ君...」
「本当なら、ここで返事をするべきなんだろうけど...今までそんなこと...考えてもこなかったから...どう答えたら良いかわからない...でも...少なくとも俺はお前に死んでほしくない...それは確かだ...だから...俺を殺してくれ...ナルト...」
サスケは、ナルトに頼む。
「お?おお...二人とも、俺のこと忘れたのかと思ってたってばよ...」
突然の告白タイムに、居心地悪そうにしていたナルトは、突然声をかけられて焦りながら答える。
「サスケ君!?」
「サクラ...返事をすることが出来なくて...済まない。」
謝るサスケ。
「サスケ君、ダメ...お願い...私を置いていかないで...」
懇願するサクラには返事をせず、ナルトに近付いていくサスケ。
「ナルト...済まなかった...」
イタチへの復讐心が薄れたサスケは、素直にナルトに謝罪する...
「覚悟は良いか?サスケ。」
「ああ...」
「サスケ君!!!!!!」
ナルトは拳を振り上げると、サスケの頭を思いきり叩いた。
「ぐぁっ...」
「じゃ、これでチャラにしといてやるってばよ...サスケ...」
頭を押さえるサスケにナルトが告げた。
「ナルト?」
サクラは、呆然とその様を見ている。
「さっきまでのサスケなら、もしかしたら俺は本当にお前を殺してたかもしんねぇ...でも今のお前は、殺す必要が無いと思った...それだけだってばよ...」
「どういう事だ?」
「お前はもう、復讐に生きる男じゃ無いだろ?」
サクラを見ながら、ナルトは言った。
「え?」
「お前の心が今も復讐に囚われてるなら、サクラちゃんを身代わりにしてでも次の機会を待つだろ?でも、お前はサクラちゃんを守ろうと自分の身をさらした...サスケ...今でも俺に復讐したいか?」
「いや...冷静に考えれば、ただの逆恨みだって分かった...」
「だったら、もう俺たちが争う必要なんて無いだろ?」
「でも、俺はお前を殺そうとした...」
サスケは、不安だった。
「それは、もう良いってばよ...俺がお前を殺そうとしたのは、未来でヒナタや家族の害になるかもと考えたからだってばよ...」
「お前の命を狙った事は良いのか?」
「別になんともなって無いだろ?」
「うっ...」
自分の力はナルトの脅威になり得ていない...
そう指摘されたサスケは思わず呻く。
「それに...」
ナルトはサクラを見る。
つられてサスケもサクラを見た。
「お前を殺したら、今度はサクラちゃんが復讐に来そうだしな。」
笑いながら言うナルト。
「ちょっと、それどういう意味よ...でも...本当にありがとうナルト。」
落ち着いたサクラが、改めてナルトに礼を言う。
「二人とも...今日はもう遅い。帰った方が良いってばよ。」
「ああ...」
「うん。」
ナルトは、そう言うとサスケに向き直り告げる。
「サスケ...今のお前なら...イタチの強さに迫れるかも知れねぇってばよ...」
「え?」
「復讐に生きてきたお前にはわからねぇだろうけどな...人は、自分の大事な者を守ろうとする時にこそ、その強さを発揮するんだってばよ。」
「.........。」
「確かに、復讐心も強くなろうとするきっかけにはなるってばよ?でもそれで得られる強さなんて、自分を支える物にはなりはしねぇんだってばよ...」
ナルトは言葉を続ける。
「俺に恐怖したお前の...その震えを止めたのはなんだった?どうして、俺の前にまた出ることが出来た?もう一度...良く考えてみるんだな?」
ナルトの言葉に思うことがあったサスケは、素直に頷いた。
ナルトの見守る中、二人は町へと戻って行くのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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希望しない