綱手が木の葉に帰還し、正式に五代目火影となって一月が経過した。
ようやく引き継ぎも終わり、五代目火影である綱手を中心とした新体制が出来上がる。
その綱手は今、ナルトの元を訪れていた。
「綱手のばあちゃん!久しぶりだってばよ。」
「元気そうで何よりだな。ナルト。」
ナルトの姿を認めた綱手は、笑顔で挨拶をす
る。
だが、すぐにその表情は呆れに変わる。
「しかし...なんだ...一応、ここは木の葉の国有地なんだが...まるでお前の私有地みたいだな...」
ナルトがこの祠に移り住んで数ヵ月...
そこは、ナルトが住みやすいようにリフォームが施されていた...
ナルトの同期達を中心に、家具を持ち寄りそこは今や、ナルトの同期たちの溜まり場となっていた。
「まあ、町にはいられないんだし、大目に見てくれってばよ。ばあちゃん。」
「まあ、時間を貰ったのはこっちだからな...ある程度は大目に見てやるが...ここは演習でも使うからな...出ていく時には、片付けておけよ?」
「ってことは、とうとう決まったんだな?」
綱手の言葉に、その日が決まったのだと察したナルト。
「うむ。私が今日ここに来たのは、それを伝える為だ。引き継ぎやら、体制を整えるのやらで時間を食ったが、ようやくお前の里抜けの日程が決まった...」
「.........そうか...」
綱手からその事を聞いたナルト...しかし、ナルトはうかない顔をしている。
「うん?嬉しく無いのか?」
綱手が思わず聞くと、ナルトは途方に暮れたような顔で、
「どうかな?俺自身...よくわかってないんだってばよ...例え、どれ程蔑まれても...やっぱり木の葉は俺の故郷だったから...」
と、答えた。
その答えに、綱手は少し険しい顔をすると、
「ナルト...今はお前もまだ木の葉の一員だ。だから火影として、私からお前にアドバイスを贈る。自分で決めた事なら迷わず進め...例えその先に後悔が待っていようとも、自分で決めた事なら、少なくとも納得はできる。反対に中途半端な感情で、その選択をやめるならその先には後悔しか残らん。だから進め。それがお前の...ヒナタの幸せに繋がると信じて...な。」
ナルトは綱手の言葉を神妙な面持ちで聞くと、
「...五代目火影の言葉...しっかりと胸に刻んだってばよ。」
しっかりと告げるのだった。
「さて...ヒナタはここにはいないのか?ナルト。」
話を切り替えた綱手がナルトに聞いた。
「ヒナタなら、家でヒアシさんと修行してると思うけど?」
「ちっ!ここにヒナタがいれば面倒が無いのに...」
ナルトの返答に悪態を吐く綱手。
「ヒナタに何か用だったのか?ばあちゃん。」
「何を言っている。今回の件は、お前とヒナタ両方に関わる問題だろ?お前に言って終わりって訳にはいかないだろ。」
「あ!そうだったってばよ...」
「全く...そんなんで良く七代目火影としてやっていけたね...」
「相談役が優秀だったからな...」
「奈良のガキか...」
綱手はシカマルの事を思い出していた。
確かに、シカマルの頭脳は父のシカクに劣らず優秀だ。経験が無い分、今はシカクに比べて未熟だが、経験を積めばシカクに匹敵...或いはそれを超える忍になるだろう。
先の成長を楽しみにしたい所だが、シカマルはナルトの事情を知っており、里を抜ける策を授けた張本人でもある。
シカマル自身が、木の葉に失望している可能性は十分にあった。
(シカマルについては、少し注意しておいた方が良いかもしれんな...ナルトに続いて里を抜けると、言い出しかねん...)
綱手は、今後のシカマルの動向に注意しようと心の中で決める。
それから、綱手とナルトは日向家へと移動する。
綱手の側近であるシズネや、一部の暗部も当然
着いてきていたが、彼らは外で待機である。
「これは五代目様...それにナルトも...当家に何か御用でしょうか。」
綱手とナルトの姿を認めたヒアシが出迎える。
「うむ。薄々気付いていると思うが...例の件が正式に承認された。そこで、私自ら辞令を伝えようと出向いたのだ。ヒナタはいるか?」
綱手が用件を伝えると、ヒアシも神妙に頷く。
「わかりました。しかし、ヒナタは今修行で気を失っておりまして...少しお時間を頂きたいのですが?」
「構わん...ここで待たせて貰おう。」
「ありがとうございます。」
「ヒアシさん。ヒナタは大丈夫なのか?」
ナルトが心配して聞くと、
「チャクラの使いすぎで倒れただけだ。小一時間もすれば目が覚めるだろう。」
ヒアシは心配無いと答えた。
「そう言えば、ばあちゃんの方は、時間...大丈夫なのか?」
七代目火影として働いてきたナルトは、火影がどれ程多忙な立場か理解できていた。
疑問に思い聞くと、綱手はニヤリと悪い笑い方をすると、
「心配するな。遅くなれば遅くなったで自来也がなんとかするさ。ハッハッハッ...」
「アッハッハッハッハ...(強く生きてくれってばよ...エロ仙人...)」
綱手の答えに、かつての師に向かって冷や汗を流しながら、合掌するナルトであった。
それから少し経って...ヒナタが目を覚ました。
目を覚ましたヒナタは、ヒアシから事情を聞くと急ぎ身支度を整え、二人の待つ居間へと向かった。
「お待たせしました...五代目様。」
「良い。もともと、急に来たのはこちらなのだからな。」
綱手は気にしていないと告げる。そして、周りを見る。
そこに、綱手、ナルト、ヒアシ、ヒナタ、ハナビが集っていた。
全員が揃っていることを確かめると
「さて、さっさと本題に入るとするか。」
ヒナタとナルトに目を向ける。
そして...
「日向ヒナタ...本日より一週間の後...うずまきナルトの要望に従い、うずまきナルトと共に木の葉を抜けて貰う...良いな?」
「はい...」
ヒナタは神妙な面持ちで頷いた。
「...姉様...」
ハナビは、寂しそうな顔をする。
そんなハナビを気遣い、手を握るヒナタ。
「ヒアシ...お前には、娘を木の葉から追放する形になってしまうが、承諾してくれ。」
「五代目...既に私は娘との話し合いを済ませています。確かに、なかなか会えなくはなるでしょうが...いずれ、誰かの元へと嫁にいけば、同じことです。ナルトは、私が見込んだ男...ナルトになら娘を託せる...ナルトなら娘を幸せにしてくれる...私はそう判断しました。だから、私の事はお気になさらず...」
ヒアシは気負った様子もなく淡々と告げる。
「すまんな。」
綱手はもう一度謝罪する。
「さて...用件は以上だ。積もる話もあるだろう...私は退散するとしよう。それからナルト...」
「うん?」
「一週間以内に、お前のねぐらの荷物をかたしておくように...」
「ぐはっ...」
綱手の去り際の言葉に、思わず膝を突くナルト。
その姿は、綱手に相談役を命令された自来也の姿に、とても良く似ていたのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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