我愛羅を助けるため、ナルトたちは暁のアジトを目指し、移動していた。
場所は、既に把握している。
ナルトは魔像の中に囚われた穆王を感知することで方向や距離を探り、ある程度の目星を付けていたのだ。
いずれは、暁とも事を構えることになるのは覚悟していた。
暁の目的のために、尾獣は必要不可欠な力だ。
表のリーダーである長門...そして裏のリーダーであるオビト...
どちらも、手段こそ違うが必要なものは同じ...
そして、今回は二人を説得することは無理だろう事も理解していた。
平和のために、自ら世界に痛みを与える事を決めている長門...
対してナルトは、ヒナタの為なら世界を敵に回しても構わないと考えている。
個の善よりも、全のための善を考えている長門と、全よりも個...その幸せを優先すると誓っているナルトでは、その考えがまるで違う。
そして、オビト...
オビトは、最愛の女性であるリンのいる世界を望んでいた...
今ある現実の世界を否定して、幻の世界を求める...
それは、今のナルトには否定できない想いである。
今いる世界は現実の世界とは言え、ナルトにとっては、自分が生きた世界を捨てて来たようなものだ。
例えそれが、自分の意思によるもので無かったとしても、今の世界を精一杯生きると決めたナルトは、そう考えていた。
そんな自分が、オビトの願いを否定することは出来ない。
だからと言ってオビトのために、犠牲になるつもりもない。
(長門やオビトには悪いけど、抵抗させて貰うってばよ。この世界を生きる『うずまきナルト』として...何よりもヒナタのためにもな...)
ナルトが改めて決意を固めた時、フウがナルトに話しかけてきた。
「ナルト...」
「ん?」
その声は、普段のフウでは考えられないほど暗かった。
「どうしたんだ?フウ。」
心配になったナルトが聞き返す。
「あっしらって...なんなんッスかね...」
「どういう意味だってばよ?」
「重明から過去の話を見せて貰ったッス...あっしを殺したやつらは、平和のためだって言ってたッス...」
「.........。」
老紫も、思うことがあったのか静かに聞いていた。
「あっしら人柱力は、なんのためにこの世界に生まれてきたんッスかね...里のために生け贄みたいにされて...肝心の里の人たちに感謝されたりしない。里長は良くしてくれてたし友達もいたけど、里の人たちと会うことは制限されてた...」
「ナルトや我愛羅はあっしよりも、酷かったって聞いてるッス。そんな皆と合流して幸せに暮らそうって決めて...なのに今度は世界のために死ねって...」
「あっしらは...生きてちゃいけないんッスか?幸せになっちゃいけないんッスか?あっしらは...なんなんッスか...」
いつも元気なフウ...しかし、我愛羅が拐われ、自分の生そのものに疑問を感じたが為に、その瞳は弱々しくなっていた。
フウの問いに、皆答えられない。
この場に集った者たちは、ほとんどが似たような苦しみを味わってきていたから...
しかし、その中で二人...ナルトとヒナタだけはその問いの答えを持っていた。
「フウ...じゃあ、聞くけど...お前は世界のために死ねって言われたら死ぬのか?」
ナルトが聞いた。
「それは...」
フウは答えられない。
「世界の平和なんて、お前の...いや...俺たちの生を否定する理由にはならねぇってばよ。」
「フウは、友達をたくさん作りたいって言ってたよね?」
ヒナタが後を引き継ぐ...
「平和な世界を作る手段って一つじゃないと思う。滝隠れの里の長の理想って、とても素敵なことだって私も思う...でも、そのためにも貴方は生きてそれを伝えていかないといけない...そうでしょ?」
「ヒナタ...」
「自分の生に自信が持てないなら、俺達が認める。俺たちはお前に生きていてほしいってばよ。」
「私たちは、これから一緒に生活していこうと決めた家族だよ。」
「フウ...俺たち人柱力は、人柱力である前に人間だ。傷つけられたら痛ぇし、悲しい事があれば涙だって流す。楽しいときには笑うし、嬉しいときには喜ぶ...だから俺たちは生きてていいんだってばよ!」
「ハハ...そうっスよね。らしくなかったっス。よーし、いっちょやってやるっスよ!」
ナルトやヒナタの言葉に勇気つけられたフウは、元気を取り戻し、気合いの入った返事をした。
そんなフウの様子に、周りの人間も雰囲気を和らげる。
いつのまにか、フウは一行のムードメーカーになっていた様だ。
「よし!暁を潰して、我愛羅を助ける。皆...気合いを入れて行くってばよ!」
ナルトの号令に、皆一斉に返事をするのだった。
それから、数時間...とうとう暁のアジトに辿り着いた。
「これからメンバーを振り分ける。まず、俺とヒナタ、再不斬と白の四人で一小隊を作る。それから老紫をリーダーにフウとテマリで三人一組を組んでくれ。老紫の隊は我愛羅の救出を目的に動いてもらうってばよ。ただし、相手の傀儡師は毒を扱う。尾獣チャクラを常に身体に纏って傷を受けないように気を付けてくれ。テマリには、俺の九尾チャクラを渡しておく。」
ナルトの指示に頷く三人。
「俺たちの班は、その他の暁メンバーの牽制だ。ただ...こっちにも厄介なのがいる。」
ナルトから暁メンバーの特徴を聞いた一同は、その厄介さに冷や汗を掻きつつ頷くのだった。
我愛羅救出と、暁制圧作戦が始まろうとしていた。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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