「お前たちは...いや...お前は一体なんなんだ...」
ナルトと対峙していたオビトが呟く。
暁と言う組織の人間は、一人一人がS級の指名手配を受ける程の実力を持った忍だ。
だからこそ、五里も簡単には手を出せずにいた。
それがどうだ...半刻と経たない内に、メンバーの半数が倒されてしまった。
オビトは、その基点となっているのが、目の前にいるナルトであるとなんとなく理解出来た。
「俺はうずまきナルト...『九尾の人柱力』だってばよ。」
ナルトは当然のように答えた。
「お前には、他の人柱力の連中には無い何かを感じる。そして、何よりも...お前はこちらの事情を知りすぎているように思える...」
「流石だな...うちはオビト...」
「!?」
「そうだな...俺は...未来から逆行して来たうずまきナルトだってばよ...この答えで満足か?」
ナルトの答えを聞いたオビトは、その仮面をゆっくりと外す。
「なるほどな...俺の正体を知り、目的を知り、そして子供とは思えない戦闘力...そう言うことか...つまり、俺たちの計画は未来で成功し、お前はそれを止めるために時を渡って来た訳だ...」
オビトは、ナルトの答えに納得し、しかし見当外れの答えを出した。
「いや、未来で...お前の計画も...背後にいるマダラの計画も潰したさ。俺が時を渡ったのは、もっと個人的な理由だってばよ。そして、こうして今、お前たちと対峙することになったのは、ただの成り行きだ。お前たちが俺たち人柱力を狙っているから敵対した...ただ、それだけだってばよ。」
「成り行きだと!」
ただ、それだけのために何年も時間を費やして進めてきた計画が瓦解しようとしているということに、オビトは激昂する。
「そうだ。最初に言ったよな?俺たちから手を引けと...俺たちは、降りかかる火の粉を払ってるにすぎねぇ。正直、お前の気持ちは理解できるし、共感も出来る。俺もお前と同じ立場なら、お前の目的を支持してたと思う...だけど、お前の目的に尾獣の力が必要で、その為に俺たちを狙う以上...俺はお前を殺す!」
ナルトは淡々と告げる。
「ふざけるな!こっちこそ、貴様らを捕獲して尾獣を捕える。」
既に六道仙人モードになっているナルトは、そのまま、オビトに向かって突っ込んだ。
「速い!だが...」
オビトは、ナルトの予想以上の速さに一瞬面食らったが、かわせないと悟ると自らの万華鏡写輪眼の能力を使い、ナルトの体ごとすり抜けさせた。
そして、すり抜けさせたナルトに攻撃を仕掛けようと元の空間に戻ったその時...
「がはっ!」
自身の胸に激痛を感じ、膝を着く。
見ると、自分の胸部に拳大の穴が空いていた...
「どう...いう...ことだ...」
確かにナルトの攻撃はすり抜けたハズ...
「お前の能力は、未来でカカシ先生が見破ってたんだってばよ...さっき...俺がお前に突っ込んで行ったとき、俺はわざとお前にすり抜けさせた...そして、背中の求道玉を一つ、お前の心臓付近に留まらせておいたんだ...この求道玉は、触れたあらゆるものを削り取る力を持っている...後はお前が別空間に避難させていた本体の身体が戻ってくれば、それでお前は終わりだ...」
ナルトは悲しそうな顔をして、オビトに話す。
「カカシ...だ...と...」
「オビト...リンって人とあの世で仲良くしてくれってばよ...」
「リン...カカシ...先生...」
心臓を失ったオビトは、そのまま息を引き取った...
「バカな!」
その様子を目の当たりにしたゼツは、地面を潜り離脱を図る。
「逃がすか!」
ナルトの分身が、ゼツを追う。ゼツこそ、暁やマダラ...オビトの悲劇の引き金になった張本人...逃がす訳にはいかない...
ナルトは、螺旋丸を作り出し地面に潜ったゼツめがけてぶつける。
「ぎゃああああああああああ!」
「............。」
手応えはあった。しかし、地面を潜ったゼツの死体は発見しようがない...
ナルトは一抹の不安を抱えつつも、他の戦いに加わるべく辺りを見回した。
一方、ペインとはビー、ナルトの分身が戦っていた。
「なかなかに強い...でも俺たちの方がもっと強い...」
「ビーのおっちゃん...こいつらの中に本物はいねぇ。まずは復活させるやつから叩くってばよ。」
「こいつらについてはナルトの方が詳しい...俺はナルトの指示に従うZE!」
ニヒルな笑みを浮かべ、ナルトの指示に従い、着実にペインを減らしていくビーと分身ナルト。
そして最後のペイン...弥彦の姿をしたペインを倒す。
「長門!」
小南が、焦る。
その小南は、ヒナタとユギトが対峙していた。
「あなたは人柱力ではない...あなたがこの戦いに参加する理由はないハズ...」
小南は、ヒナタが人柱力で無いことをすぐに理解した。
それは、ヒナタが九尾のチャクラを纏っていたことからも、窺える。
九尾の人柱力は、うずまきナルトである以上、目の前のヒナタは、ナルトからチャクラを与えられているに過ぎない。
それでも、この少女の力は暁の水準から言っても侮れない。
九尾の力で底上げされているからなのか、その力は、今や上忍の中でも上のクラスに位置するレベルに達していた。
それでも、年齢から来る未熟さから、隙を見出だして反撃しようとするが、ヒナタのフォローに回ったユギトがそれをさせない。
そんな中で、トビは倒されペインも全てやられてしまった。
なんとか、ヒナタを退かせようと先の台詞を言ってはみたが、
「理由ならあります。あなた達が、ナルト君を狙うからです。ナルト君は私の大切な人です。その人の命を狙うなら...例え神様とだって戦ってみせます。」
「.........!!!」
決意を込めたヒナタの言葉に、強い衝撃を受ける小南。
弥彦や長門の願い...世界の平和の為に世界を敵に廻しても構わなかった...その為なら自分達の命を賭けるつもりだった。
でも、目の前の少女はどうだ...世界よりもたった一人の愛する人の為に戦う...
何故だか、小南には目の前の少女がとても眩しく見えた...
弥彦が殺されてから、長門も小南もがむしゃらに生きてきた。
世界のため...弥彦の理想を実現しようと...
でも、本当は違った。ただ弥彦の死に意味を持たせたかっただけだった。
弥彦は無駄死にしたんじゃない。
世界の為に、平和の為に死んだんだ...そう思いたかった...
平和の為と言いながら、本当は弥彦の為に戦ってきた事に今更ながらに気付いた小南は、今、自分に残っている大切な、もう一人の幼なじみを助けたいと強く感じた...
「降参するわ...その代わり、虫の良いお願いかもしれないけど、長門を助けてほしい...」
「小南!何を言っている。」
ペインを操る長門が、驚き声を挙げる。
「わかってるでしょ?長門...私たちはこの子たちに勝てない...」
そう、既にペインのほとんどは無力化され、残るは弥彦の身体を持つメインのペインのみ...
「だとしても、俺は最後まで戦う。弥彦から受け継いだ願いを叶えるために!」
「いい加減にしろ!長門。」
その言葉にナルトが吠える。
「お前のことは、前世の時に聞いた。俺とお前が同じ師を持つ兄弟弟子なことも...」
「なに?まさか...」
「そうだ...俺の師は自来也だ。」
「自来也先生...」
長門は、かつての師を思い、その名前を自然と口に出した。
「長門...お願いよ。私はもう、これ以上大切な人を失いたくない...」
小南は、涙を流していた...
「それでも...俺は...」
迷う長門...最後の一人になっても戦うつもりだった...
全ては世界の平和の為に...弥彦がやり残した事を受け継ぎ、その意思の元に戦ってきたのだから...
しかし、小南の涙を見た瞬間、その決意が鈍る。
「長門...弥彦ってヤツのことは、俺にはわからねえ。でも、弥彦ってやつが世界を平和にしたかった理由なら、俺でもわかるってばよ。」
「弥彦ってやつは、自分の仲間が、慕ってくれる人々が笑って幸せに暮らせる世界を作るために、平和を求めたハズだ。確かに、そこには自分達のような人間をこれ以上増やしたくないって正義感もあっただろうけどな。でも、一番はそれじゃない。世界を平和にする...それは、弥彦が自分の願いを叶える為のただの手段だってばよ。」
「...............。」
長門は思い出す...弥彦は自分の夢を語るとき、とても楽しそうだった。
平和になったら、三人でこんな事がしたい。あんなことがしたい。
それは、平和の先にあるもの...世界を平和にしてゴールではない。
しかし、その夢が叶えられることはなかった。
信じた人間の裏切りによって...
(そうか...俺は...弥彦を奪ったこの世界に復讐をしたかっただけなんだな...弥彦の願いを言い訳にして...)
「長門...もう止めましょう。弥彦はきっと...貴方がその身を削って作る平和なんて望んでいない。」
「そうだな...そうだった...弥彦は...アイツは仲間を何よりも大事にする良いヤツだった。俺は、ただ世界に復讐をしたかった...その為に小南を巻き込んだんだ。」
「ナルト...小南の命を保証してくれるなら、降伏をしよう。」
小南の涙ながらの説得、そして自分の本心を知った長門は、降伏をし、ナルトもこれを受け入れた。
そして、二人はこれからナルトが作る里に協力することとなる。
長門の体調に関しては、栄養を取ることと、ナルトの右手に宿った陽の力で一先ずの延命には成功した...が、いずれイタチとともに、綱手に看て貰う必要があるだろう。
その後...ナルトたちは、魔像に封印されていた尾獣を集まった全員で綱引きして引っ張りだすことに成功。
器の無い尾獣たちは、一先ずナルトの中に九喇嘛とは別に部屋を作り、入ることになる。
その後、ビー、ユギト、ウタカタは、ナルトたちと別れ里に戻る。
ユギトとウタカタは、半年後に合流する約束をした。
ビーは、出来る範囲で協力することだけは宣言した。
暁のアジトは、そのままナルト達が管理することになり、また、暁が貯めていた資金も里作りのために使うことになった。
こうして、ナルトの新しい里作りの土台が整ったのである。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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希望しない