ナルトが木の葉を抜けてから三年が経過した。
シカマルは今、街を巡回している。
(三年間で、随分と寂れたもんだな...)
シカマルは、辺りを見回しながら改めて思う。
ナルトが抜けた影響は、木の葉に計り知れないダメージを与えていた。
抑止力として、五大隠れ里には人柱力がいた。
そのバランスの中、質の良い忍びを育てていた木の葉は、他里に比べて多くの仕事が舞い込んでいた。
しかし、抑止力たる人柱力が抜けたことで他の人柱力のいる里に、依頼を強引に横取りされるようになっていたのだ。
しかし、それを咎める事は出来ない。
万が一戦争になった場合、戦略級の兵器とも言える尾獣を里にけしかけられた場合、例えどこかの戦場で勝利したところで木の葉の負けなのだ...
ナルトが抜けて一年もすると、忍びたちの仕事は激減し、木の葉に店舗を構えていた商人も一人、また一人と木の葉から撤退していった。
さらに、半年もすると雲隠れ以外の人柱力が全員出奔し、今や忍世界は雲隠れの一強国時代へと移っていった。
木の葉、砂、霧、岩の四国は、雲隠れのあぶれた仕事を取り合う状況となっている。
シカマルは、街の様子を見て廻っている。
今や、木の葉の忍は三分の一が職を失い、或いは転職し、或いは職を求めて他里に逃げ、或いは犯罪に手を染めている...
そんな中、こうして見回りの仕事を貰えているだけ、シカマルはマシな方だろう...
いや...シカマルだけではない。ナルトの同期たちや、ネジたち...あの時夢を語った者たちは、こんな現状でも、腐らず努力し一歩一歩夢に向かって進んでいた。
そんな中一人、シカマルだけはあの時から答えを出せないまま、過ごしていた。
ナルトに好感を持つものが火影に着く...それだけではこの里は変わらないだろう...
現に、今の火影...綱手はナルトに対して好意的だ。
それでも、里は変わらない。
むしろ、ナルトがいなくなったことで酷くなっているように思える。
「はぁ...いつまでこの不況は続くんだろうな...」
「綱手様に代わってから、木の葉は仕事が無くなる一方だ。」
「綱手様には、火影は早かったんじゃないか?」
「何言ってるんだ。ミナト様はもっと若かったろ...」
「俺、思うんだけどよ...うずまきナルトがいなくなったのが始まりだと思うんだ...」
「ああ?あの化け物がいなくなったからだってのか?」
「だってそうだろ?ナルト...と言うか九尾がいたから、他里も強引に仕事を横取りするようなことが出来なかった訳だし...」
「ふざけるな。あの化け物がいなくなって良かったと言ってたのはお前だろ!」
「そんなこと言ってねぇ!」
(今の状況もナルトのせい...か...そもそもナルトが木の葉を見限ったのは誰のせいだってぇの...)
シカマルは街の人間たちの話を呆れながら聞いていた。
「俺は...どうしたら良いんだろうな...ナルト...」
シカマルは迷い続ける。
一方、街の住人たちに噂をされていた五代目火影、綱手は今日も上役たちの詰問を受けていた。
「綱手...いつまでこのような状況を容認しているつもりだ。」
「しかり...このような状況にならないために、お前を火影として推したと言うに。」
「木の葉は今や衰退の一途を辿っておる。」
「商人たちも逃げ出しておるそうじゃないか...」
嫌味たらしく、現状を刻々と語る上役たち...
しかし、生憎綱手は黙って言われっぱなしでいられるような、大人しい性格はしていない。
「はっ!私や自来也の存在は、他里が積極的に木の葉に攻めてくる事への抑止にならなってるだろうが。それ以上の役割を期待されても困るね。私たちは人柱力じゃないんだ。」
今は、綱手の補佐役を務める自来也も続く。
「だいたい、その人柱力であるナルトが里を見捨てる原因を作ったのは、お主ら上役たちだったと記憶しておるのだがのぉ...」
「そ、それは...当時の状況を考えれば仕方がなかったのだ。」
「それに、そもそもその提案をしたのはダンゾウで、ワシらではない。」
上役たちが言い訳をし始める。
「結局、賛成したのなら同罪だ。」
しかし、綱手は相手にせず、そう言って切って捨てる。
「だいたい、お主らはナルトに何かしてやった事はあるのか?ナルトは何も知らぬ赤子だった。そんなナルトを生け贄のように、里の憎悪の対象にしておいて、そのままと言うのはどうなのかのぉ...ワシが知る限り、ナルトをケアしようとしておったのは三代目くらいのものだと記憶しておるがのぉ...」
「ちゃんと、生きていくのに十分な予算は出していた。」
「アカデミーにも通わせてやっただろ。」
上役たちが主張する。
「それは、木の葉としての方針だろ。貴方たち自身のナルトへの対応を聞いているのだ...」
綱手は、何もわかっていない上役たちに苛立たしそうに言った。
「...............。」
案の定、誰もが口を閉ざす。
「要するにお主らは、ナルトが何も知らぬのを良いことに、見て見ぬふりをしていた訳だ...事情を知るものたちだけでも、ナルトに優しく接しておれば、状況も変わっていたかもしれんのぉ...」
「いずれにしろ、ナルトはもうここにはいない。今出来る最善を尽くすしかあるまい。」
相談役のホムラが、そう結論を出す。
(そんなことは言われんでもわかってる。全く無駄な会議だ...)
綱手は、イライラしながら言葉を飲み込んだ。
ここのところ、上役たちとの会議はいつもこうだ。
ただ現状を嘆き、綱手を詰り、わかっている結論をだして終わり。
これを会議と呼べるのか甚だ疑問だ。
(ナルトのヤツは、今頃どうしてるのかねぇ。)
現状の原因の何割かは、確かにナルトにもあるため、一言言ってやりたいと思う綱手だった。
そんな折、世界を動かすニュースが飛び込む。
うずまきナルトを中心として集まった忍組織が、新しく里を立ち上げたのだ。
その名は『光の里』...
従来、忍たちの里は隠れ里と呼ばれ○隠れの里と、付けるのが習わしだ。
しかし、ナルトたちはそれを真っ向から否定する。
それは、ナルトたちの意思の現れ。
自分達は、隠れたりしない。
"光の中を堂々と、人として生きる"という...
この発表を受け、五大国の大名と五影による緊急の会合が開かれた。
この新しい里を受け入れるかどうか...
各国の思惑も交差しながら会議は二日間に及んだ。
結論は、受け入れるしかなかった。
ナルトたちにその気があるかは別にして、その力は無視できるものでは無く、また下手につついた結果、国が滅ぶことにもなりかねない...
それほどの力を有していることは、誰もが理解していた。
光の里を容認しつつ、様子を見る。
それが、五大国を中心とした世界のスタンスとなった。
そして、この新たな里の立ち上げの情報を得たシカマルは決意する。
「火影様...お願いがあります。俺を木の葉から抜けさせてください。ナルトの元へ行きたいんです。」
いつになく真剣な顔をして綱手に、自分の思いを語るシカマル...
その願いを聞いた綱手は、ため息をつきながら言った。
「いつか、こんな日が来るだろうと思っていたよ...お前は、ナルトの真実を知っている。そして、ナルトが迫害を受けているところを自分の目で見てきた...お前が今の木の葉にどんな感情を持っているか...理解はできる。」
「じゃあ...」
綱手の言葉に、願いを聞き入れて貰えるのかと浮き足立つシカマル。
「そうだな。お前の願いを聞き入れても良い。ただし、条件が二つある。一つは、一年間私の元で補佐の仕事を学ぶ事だ。」
それは、シカマルにとって願ってもない事だった。
「そして、もう一つ...」
それは、木の葉の利益に関する事だった。
当然だ。ただで将来有望な忍を他里に送る真似は出来ない。
綱手のもう一つの条件を聞いたシカマルは、難しそうな顔をしつつ、しかししっかりと頷くのだった
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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